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6月のピアノ  作者: naomitiara-tica
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智子再び....➖最終回➖

この物語は創作です。モデルはありません。

夫が亡くなった。過労だ。



孫会社を60歳で定年し、お小遣いのような退職金をもらってから、東京オリンピックのために、あちこちに駆り出され、現場の仕事の量には決して困らなかった。



従姉妹の旦那は大会社から、50代後半に一度系列会社の社長に就任、65歳でその会社を退職して、つまり、二回退職金を貰っている。



退職した今は、どこかの小さい会社の役員で、週1顔を出す以外は、ほとんどゴルフにパチンコに飲みにと出かけていると言う。



遊んでいるくせに毎日早起きして朝ごはんを沢山食べて超ウザいと、従姉妹は毎回文句たらたら言っている。

そのくせ自分も毎度ソウルに遊び歩いている反面、夫や、娘達家族と旅行に行ったり食事に行ったりしている。



いいじゃ無いか。朝早く朝ごはん作ってやるぐらい。今までだって長い間、やって来たじゃ無いのか。



老後の蓄えなんか何の心配も無くこれからも生きて行けるじゃ無いのか?うちの夫なんて、65歳になっても現場で働いているんだから....



智子がそんな風に言うと、

『あら、智ちゃんは立派な息子が2人もいるんだし、いざとなったら扶養家族にして貰えるじゃない?それにおじちゃん達の遺産だって有ったでしょ。何と言っても智ちゃんは一生はピアノ弾いてられるでしょ!?』



ふん。



この従姉妹って、本当に上手い。と言うか本当に腹立つ。



智子が言われたい言葉を全て分かっている。智子に息子達と親の経済力の話とピアノの話を言えば、そこそこ満足する事を分かっている。



しかも、蓋を開けた内容も大体分かって言っているはずだ。息子達は2人とも一緒に過ごすことは叶わないだろう。何しろ2人ともそれぞれが嫁の実家に世話になっているんだから。



親の財産なんて言ったって、90歳まで生きた親じまいをして、不便な場所の家土地を畳んだだけ、借金にはならなかった....程度なのだ。現金など、数百万しか手許に無い。従姉妹の旦那の二回分の退職金には程遠いはずだ。



でも確かに.....私にはピアノがある。こうやって気持ちを慰める事が出来る。



と、そんな風に1人ごちていた時、夫が倒れたと言う知らせが有った。6月だった。



ガサガサの手。病院で、倒れた夫の手を見て....心から哀れだと泣けた。働き者なのに、運だけが無い人だった。



智子は1人になった。愛犬も去年亡くなったから本当に1人だ。しかし、不思議な事に、あれだけ長い間苦しんで来た耳鳴りと難聴がピタッと止んだのだ。まるでスイッチオフしたように。



夫の部屋や遺品を片付けながら、寂しかった。寂しくて堪らなかった。しかし、しかし、何だろう、この高揚感と興奮は?何だろう?この軽い体は?まるで独身時代に音大に合格した時のように希望と夢がいっぱいだ。



智子はるんるんと口ずさみながら、大好きな劇団四季のHPを開いた。



さぁ、これから自分だけの時間が始まる....


夫も居なくなって1人になった智子。どうやら逆に元気になったみたいね!そうそう、そうこなくっちゃ!

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