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6月のピアノ  作者: naomitiara-tica
10/15

従姉妹の夫の出世と、長男の結婚

この物語は創作です。モデルはありません。

夫が仕事に慣れ始めた頃、従姉妹は保険会社を退職した。営業所のマネージャーにまで登りつめたのに。あっさりと。



あんなにバリバリがんばっていたのだが、どうやら社内のお家騒動の犠牲になり、上手く立ち回る事が出来ず、運も悪かったんだろう、精魂尽き果てたらしい。



いつも優しげに笑う仮面の下は勝気満面。天然に見せて一瞬にして人の顔色を伺う事の出来る従姉妹も、さすがに疲れ切ってしょげ切っていた。



いろいろ協力してくれて本当にありがとね〜と、ショートケーキを持ってお礼に立ち寄った時のやつれた従姉妹の顔を見て、智子は心の底からざまあみろと思った。



だいたい、母親兄弟の一族は営業なんて、外に出て活躍する血筋ではないのだ。どっちかというと内勤的、人に教えたり、書いたり、計算したり、設計したり、アシスタントしたりそんな仕事が合っているのだ。そんな柄にもない事をやるから苦労だけして実らないのだ。



と、智子は内心毒づいた。



しかし腹の立つ事に、見た目に反して用意周到な従姉妹はいつの間にか簡単なパソコンのスキルを身に付けていた。それを活かして雇用保険の切れた頃にWEB一般を扱っている小さな会社のアシスタントとして、素早く滑り込んだ。



しかも、5年ほど、東南アジアの国々に海外赴任していた従姉妹の旦那が日本に帰って来て、従姉妹が転職して目立たないポジションについた途端、海外での業績を買われて、海外開発チームマネージャーと言う800人の部下のいるチームのトップにのし上がった。



それに伴い、旦那は海外、自分はキャリアウーマンと、今まで家庭内別居だった最たる2人が、従姉妹が営業を辞め、旦那は日本に帰って来た事で寄り添うよう努力するようになったのだ。しょっちゅう家族で食事に行っている。



智子は必死に堪えた。



私達家族は、夫は仕事と言うか、会社運には恵まれなかった。しかし息子達は2人とも優秀。渋谷の学生用マンションに2人で暮らさせている。私はピアノ教室の先生。経済力のある自分の父親。私達家族は本物に仲が良いのだ。



旦那が海外赴任組のエリートで仮面だか何だかつかみ所のない夫婦、これまた娘も婚活もせず仕事ばかりしている従姉妹の家族より、よっぽど我が家の方が幸せに決まっている。世の中から見たらそう見えるに決まっている。



今日も半分ぐらいいろんな事が意識混濁して来た母親を病院に連れながら、智子はくちびるを噛み締めた。私は....私は幸せなのだ。



そんな日々が続いた頃、長男の結婚が決まった。学生時代からの恋人で長男にふさわしい、美人で利口者。しかも都会育ちのお嬢さんで英語もペラペラだ。



智子の鼻はまた高くなった。夫が今の会社に落ち着いてからここ数年の胸のつかえがすうっとした。


天敵の従姉妹の旦那が出世して悔しい智子。でも自慢の長男が理想のお嫁さん貰って良かったね!

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