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6月のピアノ  作者: naomitiara-tica
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突発性難聴

この物語は創作です。モデルはありません。

智子が最初に突発性難聴と言われるものに襲われたのは33歳の時だった。



智子は隣の市の冴えない女子高に通っていたが、小さい頃から音感が良く、姉妹である母親達が水面下で争っていた2つ上の従姉妹の競い合いなど物ともせず、東京の総合大学の芸術課音楽部ピアノ科に推薦で合格した。



その大学は一流のレベルとは言い難かったが、地方の金持ちの子女、子息が放り込まれており、芸能人も何人か在籍してると言うのでちょっとした人気だった。



その大学に入ってから、智子と母親はこの世の天下を取った様に鼻高々だった。特に母親はまるで自分の娘まで芸能人になったかの様に、周りの人間達に吹聴して回った。



智子も、垢抜け無いその辺の女子高生だったなんてのはまるで自分の過去に関係なかったかのように、大学時代は町田あたりに住み、いっぱしの都会風を吹かしていた。



卒業後も勿論東京に残りたかった。が、楽団に入れるならともかく、東京あたりには、ピアノ教室の講師なんてのは掃いて捨てるほどいた。



しかも智子の実家も、いちサラリーマンであり、卒業してからまで智子の稼ぎをカバーしてやるほどの財力は無かった。そうじゃなくとも智子をその大学に入れて卒業させるために、個人ピアノレッスン代を含め、どれだけ金を使ったか分からなかった。



智子は仕方なく、うるさい親達のいる地方の実家に戻り、音楽の代任教員をやる事になった。そのうちピアノ教室でも開けと言うわけだ。



学生時代の彼氏と実質的に別れ、地元に戻って揉めた恋人もちらほら、まぁ、普通に青春時代を過ごして、たまたまスキーに一緒に行ったメンバーの男子と恋仲になり、知り合ってあっという間に27歳で結婚した。



男の子も2人設け、夫も優しくて智子の言いなりであったし、まぁ、いたって順調であった。



智子はそれまでどちらかと言うと、健康そのものだった。小さい頃から病気一つした事無く、料理自慢の智子の母親は、自分がきちんとした手料理で家族の健康を支えたので、智子はすくすくと健全に育ったのだ.....と、他人が聞くとつまらない自慢を良くした。



その智子が結婚してから何かと健康を害するようになった。難聴も、兆しがあったわけでも無く、別に普段の生活に極度なストレスがあるとも思えなかった。



しかし、大好きなピアノを弾いている時、それは突然襲って来るのだった。勿論耳鼻科にも行き、精神科にも行き、抗鬱剤ももらったが、結果は思わしく無かった。



お嬢様までとはいかないが、のほほーんと育った智子は、生まれて初めて、のんびりと健康に見える、周りの人間を憎いと思うようになった。

ピアノの先生なのに、難聴に襲われる智子。人生って、いろいろあるよね?

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