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チョコレイト・リリィの誘惑  作者:
あとがき
66/66

【あとがき】

 御機嫌よう、作者の凛です。

 『チョコレイト・リリィの誘惑』、無事に完結いたしました。


 このお話はホントにね……達成感がものすごいです。

 だって連載開始が昨年(二〇一五年)の九月頭でしたから、終わるまでの時点で既にもう一年以上経ってるわけでございますよ。

 ですが、このお話……というか、こういう雰囲気? っていうんですか。とにかくこういうお話を書きたいなぁと構想を始めたのは、実はそこからさらに二年ほど前なんです。

 つまりこのお話ができるまで、最低でも三年はかかってるんです。

 これは拙作『街恋物語』や『生徒会と愉快な仲間たち』(どちらも構想からおよそ七年かかっています。ちなみに生徒会は現在も連載中)に次ぐ長編大作ですよ。我ながら凄まじいと思います。


 その歴史については、語り出すと非常に長くなりますので、端折りつつ説明しますと……まず、何年か前に『魔王』というテレビドラマがありました。生田斗真さん・大野智さん主演のアレですね。

 それでまず、復讐ってものに興味を持ちまして。

 次に――これは連作になるんですが――『美しい隣人』と『サキ』というドラマが立て続けにありました。どちらも仲間由紀恵さん主演で、今作と似たような……と言うとおこがましいのですが、簡単に言えば謎の女性がある日突然現れてどうたらこうたらというスタイルの復讐モノです。

 ミステリアスな美女とか大好きなんです私。どっか闇を抱えてる的な。

 で、仲間由紀恵さん演じる主人公のサキ(沙希)がもう私の好みドストライクでして。こういうお話書きたい! とはこの頃から思っていました。


 実は、このお話は第三稿です。

 初稿は『花冠は常闇に香る』という題名で、『途中小説集』にもその残骸を入れてるんですが……香澄と亮太が幼馴染だったり、弁護士の八神がもともと復讐される側で秘書兼恋人みたいなのがいたり、忍海は亮太の同僚でギャグ要員だったり、帆波がただのサイコパスだったり、佳月は死んでなくてむしろめっちゃ元気かつブラコンだったりという、現在とは異なる設定が多々ありました。

 第二稿は確か『荒野に咲くプルメリア』みたいな題名だったと思います。書きかけの草案を見ると、現在と重なる部分が結構多くて、亮太と香澄の出会いのシーンなんかは割とそのままです。

 とにかく花を絡めたかったみたいですね。花冠は何でかよく分かりませんが、プルメリアは可愛い見た目のわりに毒を持っているらしいのでおそらく採用したのではないかと……結局没になりましたけど。

 この第三稿でもいくつか花言葉が入っていたり、香澄を始めとした登場人物が花に例えられる場面があったりします。

 ちなみにエピローグのひとつ前、実質的な最終話である『純潔を喪い、死を望む』。これは折れた白バラの花言葉なんだそうです。


 せっかくなので、野暮とは思いますが補足をしておきます。

 まず、静流視点で語られた過去について。

 あれは、睡眠薬かなんかで気を失った亮太が見た夢です。亮太自身はほとんど覚えていませんが、自分が静流であった(という体の夢を見ていた)記憶は無意識に残っていたらしく、その後は静流が生前呼んでいたように香澄のことを「香澄」と呼びます。

 次に、静流と亮太の関係について。

 モノローグで語られている通り、亮太の兄――宮代家の長男は、もともと双子でした。その片割れが、静流。つまり静流と亮太は、歳は離れていますが、血の繋がった兄弟です。だからそっくりなんです。香澄と、忍海は知っています。亮太は知りません。多分、兄も自分が双子であった事実を知りません。

 そして、帆波について。

 察してる方もいると思いますが、『失望』章で起きた火事の後、帆波はどういうわけだか生き残りました。多分母親に抱きすくめられていたので、ほとんど煙を吸うことがなかったのでしょう。それで消防隊員に見つかる前にどうにか逃げて、八神に拾われました。

 『報復』章の仁科、『嫉妬』章の美織など、復讐に加担した人物は『人を呪わば穴二つ』的なノリでみんなことごとく死にましたが、帆波だけは生き残っています。けれど帆波は自分がかつてクラスメイトの市村緋夏に対してそうしていたように、本来の名前を奪われ、八神からペットの兎として扱われることになりました。ある意味、これも罰です。


 瑠璃とその母親・範子など、火種を残しまくったまま終わっているのはもちろん仕様です。これから選択を間違えるようであれば、亮太も近い未来、同じ目に遭って死ぬでしょう。

 他にも出てないだけで、『悪意』はたくさん潜んでいます。ハッピーエンドでは、ありません。


 黒百合は、最後まで幸せであったのか。

 私の文才程度で、彼女の散り際を美しくできたかどうかはわかりません。が、いくら壮絶でどうしようもない人生だったとしても、彼女という人間を最後まで描ききることができたこと、非常に満足しています。

 ここまでのお付き合い、まことにありがとうございました。


 また次回、別のお話でお会いできることを楽しみに。

 凛でした。

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