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ルゥナ:好きな人がいるのに

好きな人がいる。

そのためだけに、ずっとその人を、追いかけて追いかけてーーー。

やっと彼が入団した騎士団入団の切符を手に入れたのに、


騎士になるのを許してもらうための条件が、



今、ルゥナの道を阻んだ。




「さあ、ルゥナ、父が選定した

三人の候補から、夫を選びなさい。これが半年前に言った条件だよ」



父が、ルゥナに言った。

目の前には、三人の、ルゥナの想い人ではない男・・いや美青年。


「オマエの親父さん、よっぽどオマエを騎士にしたくないんだな?

ざまあみろ、ルゥナ。ああ、それでもなりたいってんならオレを選べよ

オレを選んだ時点でオマエの目的の一つ、ぶっ潰してやらあ」


いかにも俺が上だと言わんばかりの言い方で、

荒っぽく真紅の髪をかきあげ

野性的で攻撃的な金色の瞳で射抜くそこそこの美男子。

背丈は頭一つ分高く。

不良で荒っぽい、やんちゃでいじめっこ

会ってはすぐ喧嘩になる幼馴染&同級生にて同クラ。

属性は“炎”。型は攻撃型。副属性は“超能力”。


題して、“不良でやんちゃでサディストないじめっこ”名はフレイム。


と、


「ルゥ、俺もいる。コイツらより俺にしろ」


静かに言葉少なに、けれど強く言い切ったのは低く心地よい美声の持ち主

毛先がゆるめでストレートな青髪に漆黒のバンダナをした

ミッドナイトブルーの切れ長の瞳を持つ、背丈はフレイムより少し高めの長身。

高等部一年、学園で決められた属性相性抜群パートナー(?)

気があるのかも疎いルゥナにも思えるくらい

ずっとそばにいて不器用だけど律儀に気遣ってくれる。

寡黙で冷静、時には甘い言葉も残酷な言葉もさらっといってしまう

本人としては他意はないようだけれどそこが厄介。

属性は“闇”と“水”。型は攻防型。副属性は“風”と“音”。かなり強い。


題して“寡黙で一途・律儀パートナー”名はルイード。愛称はルイ。


「ふふっ二人とも余裕がないですねぇ。まあ、僕は大人ですから、

大人の魅力でルゥナさんをゆっくり堕としてあげますよ。

ああでもルゥナさんは可愛らしくお優しい方ですからゆっくりはしていられませんね。

けれどじっくり、じわじわとそのうちに僕だけしか考えられないようにしてあげましょう」


ゆったりした口調で語る、大人の色香をこれでもかと強烈に放つ年上の青年

魅惑的な声と言葉、そしてツヤのある長いまっすぐな銀髪を後ろで束ね

ダテメガネがチャームポイントな、ルゥナの所属する王都魔法学園の医務室の先生。

特殊任務の先輩でありときたま上司になったりする五つ年上で、

大人だの余裕だのが口癖。

属性は、“自然”。型は使役型。副属性は特殊で、“召喚”


題して“大人フェロモンたっぷりあまあまキザ先生”



「そ、そんな・・・っっ!?」


好きな人がいるのに・・!!

わたしにはエリオスさまっていう初恋の人が・・!!


なのに、この三人から、未来の夫を選べだって・・?!

決められるわけがない、決められないーー!


ルゥナは半年前のことを激しく後悔した。




***








ーー好きな人がいる。

ずっと、ずっとーー小さい頃からずっとその人だけに想いを寄せてきた。


その人の名は、エリオス。エリオス・サルトさま。

陽の光のようにあったかくて優しい人。


雷鳴が轟く嵐の夜に、魔物から助けてくれた私の命の恩人。

今、私が生きているのはエリオスさまのおかげなの。


強くてかっこよくて優しいエリオスさまに、私は恋に堕ちた。


でも、彼は今年

高等部を卒業したら王国を守る“騎士”になると言っていた。


私は今年から高等部。

だから彼は、手の届かない遠い遠い存在になってしまう。

関わりがなくなってしまう。


そんなの、



ーーーー い や っ !



「お父様っ!お願いがあります!」


そうして

(エリオスさまの次に)愛してやまない父親に縋り付いたのが

半年前の高等部入学式前夜。


「愛しのルゥナの頼みだ、

父ができることならなんだって叶えてやろう」


父は嬉しそうな表情で私の次の言葉を待ってくれた。


ああ、きっとお父様は私のお願いを叶えてくれる。

私の初恋を・・ーー。


そう確信して疑わなかった。

だから。


「私、高等部に入ったら、成績トップ10とりますっ!

だからお父様!高等部を卒業したら、

“騎士”になることをお許しください!!」


高等部で成績トップ10以内に入れば、

騎士団入団の切符を貰えると共に、特殊任務にも参加させてもらえるのだ。

特殊任務には、“騎士”が同伴でついてくる。

もしかしたら、エリオスさまと参加できるかもしれないのだ。



「!?騎士だって・・!?

ーーっルゥナ!お、お前はクウォーツ家の長女なのだぞ!?

貴族の令嬢が命を賭して国に忠誠を捧げるなどーーだめだ!!

命など賭けてはならぬ。早世など許さぬぞ!!

この父のように(まつりごと)で国に尽くす道もあるのだぞ??」


父の顔からは血の気が引いて、取り乱した。

なにかにおびえるような恐怖と苛立ちの混ざった瞳で

ルゥナに猛烈に反対の意を示してくる。


・・なんでそんなに命にこだわるの?お父様。


ルゥナには、まだ

何がそんなに父親を怯えさせるのかわからなかった。


けれど、貴族の令嬢というのを理由に反対されるくらいで

折れる恋心を、ルゥナは持ち合わせていなかった。



「わかってます!だからこそです!

私はっ、私は母の血も受け継いでますっ」


「確かにお前の母リィネは、高貴な魔女の血筋で優秀だった。

魔女として才能も発揮していた。

だがっっ、今は・・っ、っーーー・・。

お前もわかるだろう・・っ?」


瞳を翳らせて拳をギュッと握り締める父が

ルゥナに確認するかのように言葉を投げかけた。


母は王都から離れた一族の領地で静養している。

母の家系は強力で万能な魔法使いの血統の貴族だった。

けれどもう、魔法はほとんど使えない。それくらい衰弱している。

それは、母がルゥナと同じ年頃の頃から魔女として生を全うしたから

だと、母から聞いた。


「っ、お母様はーーっ、名誉なことだとおっしゃっていました。

私もお母様のようにこの国に尽くしたいのですっ

私の属性は、政には不向きです。だから・・!」


魔法使いの使う魔法には、いくつもの種類があり、

大きく分けて、属性。それから小さく二つに分けて、型と副属性に分類される。


ルゥナは“光”属性で、型は防御型、副属性は、“浄化”・“治癒”だった。

戦闘には少し不向きかもしれないが、それでも政よりはよっぽど

騎士に向いている属性である。


「・・母のように、か。ルゥナはやはり、リィネの娘だ。

受け継いだ魔法も性格も体質も、っなにも、かも・・。

ルゥナ、騎士の道は過酷だぞ。騎士の九割は男だし、

女だからと下に見られることも多いだろう。

令嬢として生きることも難しくなる。

それでも選ぶのか?」


「はい、お父様!」


令嬢として、女として生きることは、

何もドレス着ておしゃれして買い物して女友達とサロン開くことだけじゃない。

女として生きることのメインはやっぱり、恋だと思うんだ、お父様。


女騎士がどれほど大変か・・なんて、やってみなくちゃ分からないけれど、

でも、エリオスさまと関わりがもてるなら、

エリオスさまのようにみんなを救えるなら、

私、きっとやり通せると思う。


騎士になりたい理由は、

ほかでもないエリオスさまに近づきたい一心であるけれど、

エリオスさまのように、

みんなを守り救える人になりたいという気持ちもあった。


「そうか・・。

そこまで意志が強いのなら、もう父には止める術もない」


父は苦笑いをしながら半ば諦めたように大きく息を吐いた。


「お父様・・っ!」


ああお父様っお願い聞いてくれるんですねっ・・!


パアッとルゥナが顔を輝かせた途端、


「ただし、条件がある」


父は厳しい表情で、何かを決意したかのように告げた。

言葉の硬さから、それは覆せない意志の強さが見られた。


「え・・?」


お父さま・・?

条件って一体・・ーー


父親の真剣な表情とまなざしをその身に受けて

一抹の不安を覚えた。

なんだか、嫌な予感がする。


「今から半年後、トップ成績で、

騎士団入団切符を手に入れられると確信できたなら、

そのとき提示した条件に従うこと。いいね・・?」


それは、あまりにも曖昧な前提条件だった。


トップ成績は死ぬ気でもぎ取るけれど、

そのあとの条件って・・。


「はい・・。あのっお父さま、

その条件って、なんですか?」


「それは半年後まで秘密だよ、ルゥナ。

というか、そのために色々準備しなければならないからね。

ルゥナが騎士の道を覆さないなら、拒否権はないぞ?」


先ほどとは打って変わって少し嬉しそうに話す父親。

少しずつ心に闇雲が覆っていく。

このもやっとしたものは、なに・・?


「ーーはい。覆しません。お父様に何を言われても。

騎士になるなと言われる以外なら、なんでも。」


ルゥナは不安を抱えながら、それでも強く頷いた。


だって。騎士になることが、

唯一無二で最大の夢と恋の一歩なのだから。

そのためになら、なんでもできる。



***



けれど、やはり最初に聞いておくべきだったのだと、

半年後に激しく後悔したのであった。

・・・聞いても、結局は同じ道を選択するのかもしれないけれど。



いや、最初に、ちゃんと父に、

好きな人がいて、好きな人のようになりたいという動機で

騎士になりたいといえばよかったのだ・・と今更ながらに思った。



こうして、三人の候補との高等部での魔法いっぱいの学園生活がはじまった。

求婚と拒絶の愛のいたちごっこの始まりである。


それがどれだけ大変か・・ルゥナはまだ知らない。

これから候補や厄介事が増えたり、自分のことを知ったりすることで待ち受ける困難を。

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