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一目惚れ。


 しばらく窓の外を、というよりは停まったまま動きのない真っ黒な車を眺めていた。


 今日はどんな子がこの施設に入ってくるのだろう。

久しぶりに増える家族だ。

男の子なのだろうか、女の子だろうか。

分かり合えるくらいには思っている等と言っていた美咲だが、家族が増えることはちょっぴり嬉しい。

美咲は男だが、小さい子の世話をするのが好きだった。

今、この施設で最年長である美咲はよく小さい子の面倒を見るよう頼まれていた。

それだけが理由ではないのだけれど。

懐いてくれて、笑顔を向けてくれる。俺と話す事によって、遊ぶことによって、その子達が嫌な過去を少しばかり忘れてくれたら...。

俺自身もよかったなぁって思えるから。

かわいそうだとは思わないくせに、複雑で厄介な感情だと思い直すのだった。


 そんなことを思っていると、ようやく車から人が降りてきた。

スーツを着た若い男...。

 美咲は思わずその男に見入っていた。

はっと息を呑む。

__綺麗だ。

大人の色気というのだろうか。

そこに立っているだけなのに、目が離せない。

 

__こんな気持ち初めて。

美しいものなら、今までにだって見たきた。

絶景と言われる沖縄の海も修学旅行でこの目にした。

確かに人と自然の美しさは比べるものではないが、美しいには違いない。

しかし、それとはまた別なのだ。


 美咲はこの男に、一目惚れしたことにまだ気付かないのであった。

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