七夕の恋花
一年に一度の七夕祭で貴方に逢う。
何年も何年も同じ姿のままで。
神様は一体いつまで、私たち二人のワガママを許して下さるでしょう。
「おう、なんか大人になったじゃん、華美」
「そういうあんたは、相変わらず何も変わってないのね、奏太」
今年で、もう五回目になる。
「そういう冷たい事、言うなって! 俺は俺で、精神的には成長しているんだぜ?」
いたずらっぽく笑う彼の顔も、五年前に彼が亡くなった時のまま、何も変わらない。
私は一六歳。目の前の奏太は一一歳。高校生と小学生。
だんだんと広がっていく二人の距離を、神様はいつまで見守ってくれるのだろう。
「私、あんたのせいで、高校生になっても好きな人一人出来ないんだから。このままじゃ、私、一生独身だわ」
「……それって、俺、喜んで言いわけ?」
「知らない。好きに受け取れば?」
まだ五年。もう、五年。
私たちの時間は、止まっているはずなのに。
ひび割れた砂時計から、時の砂がサラサラとこぼれ落ちるから。
「俺は、ずっと華美一筋です!」
私の記憶が、想いが五年前から動いてくれない。
「……私も。全く、どうしてくれんのよ。本当に」
今のままではいけない事くらい解っているつもり。
だけど、七夕の夜に咲く花火は永遠に二人だけで見ていたい。
五年前、初めて想いを交わしたあの日のままで。
読んで下さり、ありがとうございます。
私自身、ずっと変わらずに「すき」でいられるのって素敵で尊い事だと思っています。
このお話のヒロインと主人公のその後は考えておりません。
ずっと「すき」でいられるのか。それとも・・・。
ご自由に想像してくださったら、幸いです。