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第5話 コンビ結成

ども。近いうちに某ゾンビ映画を見る為に、父によって映画館まで強制的に拉致られる事が決定した月光丸です(ぇ


第5話、投稿しました。


それではどうぞ。



盗賊退治が終了してから、数時間後…


「この度は、本当にありがとうございました」


現在甲冑とリシェルの二人は、とある食堂にて食事を頂いていた。


あれからドラング率いる盗賊一味は全員捕縛され、街は平和を取り戻していた。火事で燃えた建物も街の住人達が復興中。ちなみに最初に甲冑が吹っ飛ばしたサイクロプスは、目覚めた直後にまた暴れ出したものの、甲冑の姿を見た途端、彼に怯えながら森へと逃げ去ってしまった。


「まさか本当に盗賊共を退治して下さるとは。感謝してもし切れないくらいです」


『よせよせ。たまたまこの街にやって来た上に、俺の場合は暇潰しで倒しただけだ』


「それに、元々私達を捕まえようとして街が燃やされそうになったのだから、私達の手で倒さないと後味が悪いですわ」


二人はお礼自体には特に興味は無さそうである。ちなみにリシェルは既に傷の手当てを受けた後であり、甲冑は食事が出来ないので、床に座ったままくつろいでいる。


「それでも、盗賊共を倒したあなた方に我々が感謝している事に変わりはありませぬ。このご恩、一生忘れはしません」


「…ならば、一つお願いを聞いて頂けるかしら?」


リシェルが提案する。


「今回の件で私はもうクタクタ。この際、この街の宿で一泊休ませてくれると嬉しいですわ」


「それなら構いませぬ。好きなだけ泊まっていって下さい。もちろん、お金も取りません」


「そう、では」


『…ん?』


食事を終えたリシェルは立ち上がり、傘の持ち手部分を甲冑の首元に引っ掛け、そのまま引き摺り始める。


『おい、何で俺は引き摺られてるんだ』


「あなたにはまだ聞きたい事が山程ありますもの。きちんと説明して頂きますわよ」


『…はいはい、分かったよ』


甲冑は抵抗する事もなく、そのままリシェルに宿まで引き摺られていくのだった。







そして時間帯は夜。


『へぇ、中々お洒落な格好で』


「…放っといて下さる?」


二人は宿の一室で向かい合っていた。リシェルはピンクのネグリジェに着替えており、金色の髪は後ろに結んでいる。


『…えぇっと、何だっけ? 俺はお前に対して説明しないといけないんだったっけ?』


「えぇ、詳しく説明しなさい。あなたはいったい何者ですの?」


『何者、ねぇ……まぁその前に』


甲冑は自分の兜を取り、空っぽの鎧をリシェルに見せつける。


『まず、“デューラ”について説明しとこうか』






デューラ。


通称“首無し騎士”。


簡単に言うと、魔物の一種である。


人間が死に至る際、何かしらの未練があって死のうにも死に切れなかった魂は、天に召される事なくこの世に残る。


行く当ての無い魂はこの世を彷徨い、いつしか空っぽの騎士甲冑に宿り、デューラとして蘇生。この世に蘇る。


しかしデューラとしてこの世に蘇ったとしても、人間として生きていた頃の理性や思考、記憶等はほとんど失われる。


どれだけ日が経とうと、永遠に満たされない。


ほんの小さな未練の為に、死者の魂宿りし鎧はいつまでも、この世を彷徨い続けるのである。







『―――まぁ、大体こんなところだ』


「死者の魂宿りし鎧…」


ここでリシェルの頭にはある疑問が浮かぶ。


「けど、あなたの説明はいくつか矛盾してますわ。理性や記憶がほとんど失われるのなら、何故あなたは今もこうして会話が出来ているのかしら? それも、普通の人間みたいに」


『それは俺も分からん』


甲冑は壁を背にして座り、人差し指で自分の兜をクルクル回転させる。


『俺もある時、気付いたらこんな姿になっていた。人間のように会話も出来る、思考も失われていない』


『ただ』と甲冑は続ける。


『記憶については微妙なところだ。これでも結構長い年月を生きてるもんだから、忘れたものは全部忘れちまった』


「…あなたの名前も?」


『…自分が何者かも分からない、名前も覚えていない、自分が蘇った理由も分からない、温もりも感じない、何も満たされない、全てを失った方が楽になると思えるような存在………それが俺だ』


甲冑は自分の兜を頭の位置に戻す。


『同情はしてくれるなよ? そんなもん、されたところで何の励ましにもならねぇ』


「……」


『…俺の事については説明した。今度はそっちの番だ』


甲冑はリシェルにバトンタッチする。


リシェルは一息つき、そして口を開く。


「…改めて。私の名はリシェル・ミア・ヴィクティオーレ。元貴族の娘ですわ」


『元貴族?』


「えぇ……私、家出しましたの」


『…何だって?』


リシェルは話を続ける。


「私はヴィクティオーレ家の一人娘として、この世に生まれ育った。たくさんの召使いや家庭教師に囲まれる中、いつかヴィクティオーレ家を継ぐ人間として育てられましたわ」


『ほぅ……で、それが何故家出に繋がるんだ?』


「そう、そこですわ!!」


『おぅ!?』


リシェルがビシッと甲冑を指差す。


「私がどれだけ外に出ようとしても、危険だからと言って出してくれない!! 周りの召使い達は礼儀作法なんかの教育でいちいちうるさいし、挙句の果てには私の部屋にまで不審者が入らないようにと、監視役までつける始末!! そんなストレスが溜まるような場所にずっといられる程、私という人間はまともに出来ちゃおりませんわぁっ!!!」


『お、おぉ…』


リシェルの話す勢いがあまりにも凄過ぎて、流石の甲冑も若干引き気味になる。


「そこで私は考えた……いっそのこと、家出してしまおうと!! 私が屋敷からいなくなることで、屋敷の皆は私がどれだけ辛い思いをしたか分かってくれるはずだと思って!! そしてある時、私は遂に家出を実行しましたわ!! 今頃屋敷の皆は、この私を捜索してる真っ最中!! 皆がどれだけ帰るように言おうと、私の思いに気付いてくれるまでは屋敷に戻るつもりはありませんわぁっ!!!!」


『……』


爆発でもしそうな勢いで豪語するリシェルに対し、甲冑は完全に言葉を失っている。


「…以上ですわ。私の話を最後まで聞いて下さってありがとう」


『あ、あぁいえ…』


何て返事を返せば良いのか分からなかった甲冑は、ひとまず拍手を送る。


「まぁともかく、これで互いに事情は話しましたわね。それで、あなたはこれからどうしますの?」


『え、あ、あぁ……さぁね。俺は他にやる事なんて何も無いし、また今まで通り世界中を周るさ』


「では、私のボディガードになりません?」


『…は?』


リシェルの一言に、甲冑は唖然となる。


『…おいおい、話が急展開過ぎるぞ』


「他にやる事が無いのでしょう? 私が屋敷に戻ると決心するまでの間だけでも、私と共に世界を旅しますの。その方が、あなただって暇潰しには最適ではなくて?」


『たしかにそうだが……俺はガキの子守りまで引き受けるのは御免だぞ』


「子供扱いしないで下さるかしら。その空っぽの頭を窓の外に放り出しますわよ?」


『ヤ・メ・ロ!!!』


甲冑は素早く自分の兜を隠す。


「それで、結局あなたはどうしますの? 早く答えないと、今言った事を本当にやらかしますわよ?」


『選択の余地無ぇじゃねぇか!? もう良いよ、分かったよ!! 引き受けりゃ良いんだろ、引き受けりゃあっ!!』


甲冑もとうとうヤケクソになり、部屋の椅子を蹴り倒す。


「ふふ♪ これで決まりですわね」


『この性悪女め…』


「何か言いました?」


『いいえ、別に?』


甲冑がボソッと呟いた悪口にリシェルが反応するも、甲冑は何処吹く風である。


「ふぅん……あ、そうですわ」


リシェルがある事を思い出す。


「あなたの呼び名についても考えないといけませんわね。いい加減、名無しのままだと色々ややこしいですわ」


『あ、そっか。俺の名前の件もあったな。ちゃんと決めないとなぁ~…』


甲冑は頭を捻りながら(?)考え始める。


『とは言っても、自分の名前も忘れちまったし、碌に考えた事も無いし…』


「ヴェルザ」


『…ん?』


甲冑はリシェルの方を振り向く。


「ある昔話に出てくる黒騎士“ベルジオール”……同じ黒い鎧だし、そこから名前を取ってみましたわ」


『へぇ、ヴェルザか。悪くない…』


「…まぁ、似てるのは見た目だけですわね」


『おいコラ、一言多いぞ』


「あら、ごめんなさい」


『このガキ……いや、もう良い。名前も決まったんだし』


「何だったら、私の事も下の名前で呼ぶ事も許してあげてよ?」


『はいはい、次から呼ばせて貰うよ』


甲冑もといヴェルザは怒る気力も失せたのか、先程蹴り倒した椅子を立て直し、ドカッと座り込む。


『疲れた、俺はもう寝る』


「あら、あなたが疲れを感じるのかしら」


『精神的に疲れたんだよ!! 全く…』


ヴェルザは軽めに腕を組み、下を俯いた。


「随分と短気です事……ん? そもそもあなた、寝る事なんて出来ますの?」


リシェルが呼びかけるも、ヴェルザの返事は無い。


「…寝ちゃったのね。まぁ良いですわ」


リシェルもいつまでも起きていても仕方ないと判断し、ランプを消してからベッドに入る。


「…お休み、ヴェルザ」


そしてリシェルはそのまま眠りについた。







(…実はまだ起きてたりしてな)


寝たフリをしたヴェルザは心の中で呟く。


(リシェルが言っていた家出の話……これまた大胆な嘘をついてやがる…)


ヴェルザはベッドの方を振り向く。リシェルも疲れが溜まっていたのか、グッスリと深い眠りについている。


(…この娘、何かあるな)


ヴェルザは考える事をやめ、彼もまた眠りにつくのだった。









あれから翌日。


「本当に、もう良いのですか?」


「えぇ、いつまでもここに滞在するわけにはいきませんもの」


『また、暇潰しの旅に出るとするさね』


二人は既に出発準備を完了し、街を出ようとしていた。二人を見送る為に、村長やシオン達街の全員が門の前に集まっている。


「シオン。この剣、本当に良いのね?」


リシェルの手には、昨日盗賊退治に使用したレイピアが握られていた。


「うん。盗賊退治のお礼だ、受け取ってくれよ。それと二人共…」


「?」


「…ありがとう、姉ちゃん、兄ちゃん!」


シオンはニカッと笑う。


「…どういたしまして♪」


『かっかっか』


リシェルも笑顔で返し、ヴェルザは高笑いした。








シオン達に見送られた後、二人は森の道を歩き始める。


『それで、これからどうするんだ?』


「どう、とは…?」


ヴェルザは立ち止まり、リシェルに振り向く。


『…まぁ、一度引き受けると言っちまったし、今更文句言っても仕方ない。この際だ。お前の家出、付き合えるところまで付き合ってやるよ』


「…そう、ありがとう」


リシェルは傘を差し、彼に対しても笑顔を見せるのだった。










「はぁ、はぁ…!!」


一方、森の中を一人の人物が走っていた。


「くそ、何てザマだ…!!」


ドラングだ。


昨日の夜、捕らえられた盗賊達の中で彼だけは逃げ出していたのだ。


「くそ、あの鎧野郎に生意気娘……絶対許さねぇ、いつか殺してやる…!!」


ドラングは死に物狂いで走る。その時…


「ん……うぉっ!?」


ドラングは目の前の光景を見て思わず立ち止まる。


「な、何だこりゃ…!?」


ドラングは後ずさる。


彼の目の前には、この森に生息していたであろう魔物達が血を流して倒れていた。辛うじて生きている魔物もいれば、既に息絶えている魔物もいる。


「ど、どうなって……ッ!?」


うろたえているドラングの前を、一人の人物が通りかかる。


黒髪を結んだ、白装束の青年だ。


「な、何だお前は…!?」


「……」


青年はドラングを横目で見るが…


「……」


すぐに目を逸らす。


彼は、ドラングの事など眼中にも無かった。


「て、てめぇっ!! 俺を無視してんじゃねええええええっ!!!」


ドラングは懐からナイフを取り出し、青年に襲い掛かる。


「おおおおおおおおおっ!!!」





「馬鹿が」





-バシュゥッ!!-


「ご、がぁ…ッ!!?」


青年が刀を納めた直後、ドラングは体中が斬り刻まれる。


「…挑まなければ良いものを」


血飛沫を上げて倒れるドラングに振り向く事なく、青年はその場から姿を消すのだった。



ひとまずコンビ結成、そして甲冑の名前はヴェルザと命名。


ようやくここまで書けました。


それでは感想、お待ちしてます。



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