第4話 盗賊退治・決着
第4話、投稿しました。
それではどうぞ。
街から少し離れた森にて…
「……」
長い黒髪を結んだ白装束の青年が、一人静かに森の道を歩いていた。青年の腰には、一本の刀が携えられている。
彼が通って来た道には…
「グ、ァガ…」
「ギギィ…」
「シャア…ァァ」
森に生息していた魔物達が全員、血を流して倒れていた。
「でりゃあああああっ!!」
「まぁ危ない」
-ゴスッ!!-
「ほぐぁっ!?」
盗賊がリシェルに斬りかかるも、かわされた挙句背中を傘で一突きにされる。
『そ~らよっと』
-ドガガァンッ!!-
「「「ぎぃええええっ!?」」」
甲冑が繰り出すラリアットに、盗賊が二、三人ほど巻き込まれる。
「おい、さっさと潰さねぇか!!」
「む、無理ですドラングさん!! こいつ等強過ぎて手に負えな…げぶっ!!」
ドラングは今起こっている事態に焦りを隠せない。
「くそ、何故だ!! 何でだ!! 何で俺達グランダシーフが…」
-ドゴゴゴゴォンッ!!!-
「「「ぎゃあああああああああっ!!?」」」
ドラングの周りに、倒された盗賊達が吹き飛んで来る。
「…たった二人を相手に、ここまで追い詰められてんだああああああああああっ!!?」
「叫び方も下品ですこと…」
ドラングに対して呆れつつ、迫り来る盗賊を傘で殴り倒す。
「調子に乗るなぁっ!!」
「!」
盗賊がリシェルの右腕に鎖を巻きつける。
「くっ…!!」
リシェルは右手の傘を左手に持ち替える。
「させるかぁっ!!」
-ガァンッ!!-
「!?」
盗賊の蹴りで、傘を弾き飛ばされてしまう。
「ひゃはははは!! これで何も出来まい!!」
「死ねええええええええっ!!!」
鎖で動きを制限されたリシェルに、他の盗賊がリシェルに飛び掛かる。
「くっ…!?」
「姉ちゃん、これ!!」
「!」
武器屋から出てきたシオンが、リシェルに向かって一本のレイピアを投げる。
「…!!」
リシェルは投げられたレイピアを左手で素早くキャッチし…
-ズドドドドンッ!!-
「「「ぎゃああああああっ!!?」」」
鎖を断ち切り、盗賊達をまとめて斬り倒した。
「ふぅ……シオン」
「え?」
リシェルは一息つき、シオンのいる方に振り向く。
「…助かりましたわ」
「…!!」
リシェルはニコリと笑顔を見せる。不意打ちだったからか、シオンは思わず顔を赤らめる。
「ボーッとしてんじゃねぇぞガキ共がぁっ!!」
ドラングが巨大斧を持ち上げ、二人に向かって投げつけようとする。
「あら、後ろが危ないですわよ?」
「あぁっ!? そんな手には乗らな―――」
『二度ある事は……三度あるっ!!!』
-ドゴオォンッ!!-
「のがあああああああああっ!!?」
ドラングの後頭部に甲冑のドロップキックが炸裂する。ドラングは吹き飛ばされ、近くの家屋に顔面から突っ込んだ。
『あ~らら、ド派手に吹っ飛んだな』
「まぁ、またしても蹴り飛ばすなんて。あの盗賊さんが可哀想ですわ」
『相手は盗賊、情け容赦がいるのか?』
「…まぁ、その通りですわね」
「「「うらあああああああああっ!!!」」」
二人の後方から、またしても盗賊達が迫り来る。
「いい加減しつこいですわね」
『んん~……あ、そうだ。良い事を思いついた』
「え?」
リシェルの腕を甲冑が掴む。
『力加減は、まぁ少しセーブするくらいで良いかな~…』
「え、え、え?」
リシェルは何の事だか理解出来ていない。
甲冑は盗賊達の方を向く。
『それじゃあ行くぞ~。さ~ん、に~…』
カウントダウンが始まり、リシェルはようやく自分が何をされるのかが理解出来た。
『い~ち…』
「ちょ、ちょっと待っ―――」
リシェルが慌てるが、もう遅い。
『―――そいやあああああああああああああああっ!!!!』
「きゃああああああああああああああああっ!!!??」
甲冑はリシェルを振り回し、思い切り投げ飛ばした。投げ飛ばされたリシェルは回転が加わり、盗賊達の方へと飛んで行く。
「お、おい!! 何かこっちに飛んで来るぞ!?」
「怯むな!! いけええええええっ!!」
盗賊達も怯まず立ち向かう。
「も、もう…ヤケクソですわあああああああああああああああああああっ!!!!!」
リシェルは回転しながらもレイピアを構え…
-ズババババババババァンッ!!!-
「「「ひぎゃああああああああああああああっ!!?」」」
すれ違い様に盗賊達を斬り伏せていった。
『よっしゃ!!』
甲冑はガッツポーズを取る。
「キュウウゥ~…」
リシェルは目を回し、ベンチにて完全にダウンしてしまった。
『よぉ、かっこよく決まったじゃねぇか』
「お、覚えてなさいよぉ~…」
甲冑によって起こされるも、リシェルはまだフラフラしている。
「う、動くなぁっ!!」
『「!」』
二人の振り向いた先に、シオンを取り押さえるドラングの姿があった。
「こいつの命を奪われたくなけりゃ、大人しくしろ!!」
「く…!!」
シオンはもがくものの、やはりドラングの方が圧倒的に力が強く、抜け出せないようだ。
『あらら、人質取っちゃったか』
「汚い真似ですわ…ッ!?」
リシェルをその場に置いて、甲冑はドラングの方へと歩き始める。
「な……お、おい、近づくな!! こいつがどうなっても良いのか!?」
ドラングがシオンを無理やり立ち上がらせ、首元に剣を向ける。
『あ、そう』
しかし、甲冑の歩きは止まらない。
「ちょ、ちょっとあなた!? 何のつもりですの!?」
『簡単な事。さっさとあの馬鹿を捻り潰す』
甲冑はドラングに接近しつつ、鞘から剣を抜く。
「ぬ、ぐ…!!」
今のドラングは、盗賊一味リーダーとしての威厳が既に消え去っていた。
今の彼には、自身に接近している甲冑が悪魔のように見えていた。
ドラングに捕まっているシオンが思い切り叫ぶ。
「ッ……兄ちゃん、俺の事は良い!! 早くやっつけて!!」
「シオン…」
―――大丈夫よリシェル……私は、大丈夫だから…!!―――
「ッ…!?」
リシェルの脳裏に、ある光景が思い浮かぶ。
「…!!」
『さぁ、どうする?』
甲冑は剣をドラングに向ける。
「う、ぐ…うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
とうとうヤケになったのか、ドラングは遂に剣を振り上げる。
シオンは死を覚悟し、目を瞑る。
そしてドラングが剣を振り下ろす。
-ザシュッ!!-
「…あ、あれ?」
シオンは自分の体に痛みが無い事に気付く。
「危ないところでしたわね…」
「なっ!?」
シオンは驚愕した。
「う、ぁ…!!」
ドラングの剣はシオンではなく、シオンをかばったリシェルの右肩を斬りつけていたのだ。
「姉ちゃん、何で…!?」
「さぁ。何故でしょうね、くっ…!!」
右肩から血が流れ、リシェルは膝をつく。
「くそ、邪魔してくれやがって!!」
ドラングはもう一度剣を振り下ろそうとする。
「痛ぅ…!! あなた、誰かの事を忘れてないかしら…?」
「何…ッ!?」
ドラングの肩を、甲冑がポンポンと叩く。
『酷いなぁお前。俺を忘れるとは』
「ヒィッ!? お、おい待―――」
『待ちませんっ!!!』
-ドガァンッ!!-
「はがぁっ!!?」
ドラングの頭に踵落としが炸裂、ドラングはとうとう気を失った。
「…ふぅ」
「姉ちゃん!?」
それを見たリシェルは力が抜けたのかその場に倒れかけ、シオンがそれを上手く支える。
『にしても、お前も結構危ない事をするねぇ。奴が俺に気を取られている隙に、ガキを助け出そうとするなんて』
「ふふ…おかげで、こっちは散々な目に遭いましたわ」
リシェルは愚痴を零すも、その表情は穏やかである。
『そりゃ悪かったな。まぁとにかく…』
甲冑の向いた先には、ドラングを含む盗賊達の全滅している姿があった。
『盗賊退治のパーティータイム、これにてお開きだ』
甲冑は剣をクルクル回転させた後、鞘へと納めるのだった。
盗賊退治、これにて終了。
それでは感想、お待ちしております。