第1話 これが出会い
第1話、投稿しました。
それではどうぞ。
『ほぅ、あれが街の入り口か』
現在、甲冑は巨大な森を抜け、街の大きな門の前まで来ていた。
『さて、この街にはいったい何があるか……にしても結構でかいなこの門…』
甲冑が両手で門を開けようとした時…
「おっと待ちな」
『…ん?』
甲冑の前に、三人の男が現れた。手に剣や斧を持ってる辺り、あまり良いお出迎えではなさそうである。
『歓迎……ってわけじゃないか』
「へ、よく分かってんじゃねぇか」
「この街に入りたけりゃ、1000G支払って行くんだな」
(1000G……無駄に高いな)
甲冑は心の中で愚痴を零す。
『…支払わなかった場合は?』
「その場合は、残念ながら街には入れられんなぁ。もし意地でも通ろうってんなら…」
男達は手に持っている武器をギラつかせる。
『…なるほどね』
甲冑は何となく理解する。
「さぁ、通りたいんならとっとと金を支払…」
-ドスゥン…-
「「「!?」」」
『お?』
突如響き渡る大きな足音。
「な、何だ……ヒィ!?」
男達は驚愕する。
森から姿を現したのは…
「オォォ…!!」
一つ目の巨人のような魔物“サイクロプス”だった。機嫌が悪いのか、甲冑や男達を睨みつけている。
『あぁ、森で会った奴か。適当にあしらったのに、まさかここまで追いかけて来るとはな…』
「「「ま、魔物だあああああああああああっ!!?」」」
『って、おい!? お前等だけで逃げるな!!』
男達は猛スピードで街へと逃げ出し、門を閉じてから鍵もかけてしまった。
『逃げ足早いなオイ……まぁ、無理も無いか』
甲冑はやれやれと言わんばかりに、サイクロプスと向き合う。
「オオオォォォ…!!」
『随分と機嫌悪そうだな。まぁ、元々俺が悪いんだろうけど』
甲冑は鞘から剣を抜く。
「オオオオオオォォォォォォッ!!!」
サイクロプスは手に持った巨大な棍棒を振り上げ…
-ズドオオォォン!!-
そして甲冑に向かって力強く振り下ろした。甲冑のいた場所が、円型に大きく陥没する。
「オオォ…」
サイクロプスは手応えを感じていた。
確実に潰した、そう思っていた。
しかし、サイクロプスの予想は大きく覆される。
『それだけか?』
「ッ…!?」
棍棒で潰したはずの甲冑の声が、サイクロプスの耳に聞こえてきた。
陥没している地面で、甲冑は潰される事なく、サイクロプスの棍棒を左手で受け止めていたのだ。
『お前が相当な力持ちなのは認めてやる。だが…』
-シュパパパパァンッ!!-
「オォ…!?」
サイクロプスの棍棒が、甲冑の持つ剣で細切れにされる。
『まだ弱い』
「オォ……オオオオオオオオォォォォォォォォッ!!!」
サイクロプスは臆する事なく、甲冑に向かって拳を振り下ろす。
『さぁ来いよ…!!』
甲冑も剣を構え、サイクロプスの攻撃を迎え撃った。
一方、街のとある酒場にて…
「おい!! まだ捕まらねぇのか!!」
頭に緑色のバンダナを巻いた無精髭の男が、土下座をしている手下の男達に怒鳴りつけていた。
「す、すいませんドラングさん!!」
「あの小娘、思っていた以上にすばしっこくて…」
「言い訳なんざ聞きたくねぇ!!」
「「「ひぃぃぃっ!?」」」
ドラングの怒りが更に増し、手下達は完全にびびってしまっている。
「とにかくだ!! あの小娘に逃げられたままじゃ、俺達“グランダシーフ”の名が廃るんだ!! どんな手段を使っても良い、何としてでもとっ捕まえろ!!」
「は、はぃぃっ!!」
手下達は急いで酒場を出て行った。
「くそ、何処の誰だか知らねぇが、ナメた真似してくれやがる…!!」
ドラングは椅子にドカッと座り、手に持った酒を一気に飲み干す。
彼の左肩には、髑髏に剣を突き刺したかのような刺青が刻まれていた。
「急げお前等!!」
「わ、分かってるよ!!」
先程、門から逃げてきた男達はサイクロプスが現れた事をドラングに伝えるべく、街を全力で走っていた。
「くそ、何であんなヤバそうな魔物が出てくんだよ!! 今まで街の近くにあんなのは出なかったってのに…!!」
「あの黒い鎧の野郎が引き寄せやがったんだ!! とにかく、急いでドラングさんに伝えるぞ!!」
男達が走る中、その会話を盗み聞きする人物がいた。
(魔物が街の近くに…?)
リシェルだ。
家屋の屋根から追手が来ないかどうか見渡していたところ、たまたま男達が走っていたので会話を聞いていたのだ。
(それに黒い鎧……帝国軍の兵士かしら?)
リシェルは疑問に思いつつ、屋根から屋根へ次々と飛び移っていくが…
-ズドドンッ!!-
「!?」
リシェルが屋根に飛び移った途端、彼女の足元に数本の矢が突き刺さる。
「見つけたぞ小娘ェッ!!」
他の家屋の屋根から追手が現れ、リシェルに向かって弓を構える。
「まぁ、これまた物騒な…」
「撃てぇっ!!」
命令と同時に、複数の矢がリシェルに襲い掛かる。
「くっ…!!」
リシェルは素早く矢をかわし、屋根から飛び降りる。
「仕留めるぞ!! ガキだからって容赦するなぁ!!」
「「「おおおおおおおおおおっ!!!」」」
男達も同じように屋根から飛び降り、リシェルを追い始める。
「しつこい連中ですこと…」
リシェルは呆れつつ、噴水のある広場まで走る。
「逃がさねぇぞぉっ!!」
前方からも追手が現れ、リシェルに向かって斧を振るう。
「そんな物騒な物を向けるなと…」
リシェルはその場で立ち止まり…
-ズドドドドンッ!!-
「「「ごはぁぁぁっ!!?」」」
傘をレイピアのようにして、連続突きを炸裂させる。
「何度も言わせないで貰えます?」
追手が倒れ、リシェルは余裕の表情を見せる。
「このアマァッ!!」
-ジャララララッ-
「!?」
リシェルの腕に鎖が巻きつく。
「もう逃がさねぇぜ小娘」
「ッ…!!」
鎖を巻きつけた男を筆頭に、次々と男達が広場に集まってくる。
(流石に、これはまずいですわね…!!)
「覚悟せぇや小娘ェッ!!!」
「「「うらあああああああああっ!!!」」」
そして男達が一斉にリシェルに襲い掛かろうとしたその時…
-ドゴゴゴゴゴォンッ!!!-
「「「ぎゃあああああああああああああああああっ!!??」」」
「!?」
突然何かが飛んできて、リシェルを囲っていた男の大半が吹き飛ばされた。飛んで来た何かはそのまま近くの家屋に突っ込む。
「な、何だぁ!?」
「何か飛んで来たぞ!?」
「今のは…」
リシェルを含むその場にいた全員の視線が、何かが突っ込んだ家屋に向く。
「お、おい!! あれ魔物じゃねぇか!?」
「何ィッ!?」
よく見ると、飛んで来たのはあのサイクロプスだった。家屋に突っ込んで頭を打ったからか、目を回して気絶している。
「い、いったい誰がこんな…」
『あらら、少し力を入れ過ぎたか』
「「「!?」」」
男達が驚いていたところに、甲冑が姿を現す。
『…それにしても、何だこの状況? 見た感じでは、複数の良い大人が一人の少女をよってたかって襲っているってところか?』
「だ、誰だてめぇ!! よくも仲間達を!!」
「おい、こいつもやっちまえ!!」
男達は甲冑に向かって攻撃を仕掛ける。
『俺か? 俺は―――』
-ズババババァンッ!!!-
「「「うぎゃああああああああああああああっ!!!??」」」
襲い掛かった男達は、全員甲冑によって斬り倒される。
『何の目的も無い、ただの暇人さ』
そして甲冑は剣を地面に刺し、だるそうに男達を指差した。
「凄い…」
リシェルも今の光景を見て、ただ呆然とする事しか出来なかった。
ひとまず、二人がこれで遭遇しました。
ちなみにこの話の中では、“G”が通貨単位となっています。
それでは感想、お待ちしてます。