第0話 ここから始まる
初めての一次創作です。
多少おかしな部分もあるかもしれませんので、その時はご指摘お願いします。
それではどうぞ。
「「「ギャハハハハハ!!」」」
満月の夜、とある洞窟にて…
複数の男達が焚き火を囲い、酒瓶を持って大はしゃぎしていた。
「いやぁ~、やりましたね親分!! 今回は大収穫ですよ!!」
「あぁ! 奪うもんは全部奪い、逆らう奴は皆殺し、ひっ捕らえた女は奴隷として売り飛ばして、こっちはもう最高の気分だぁ!!」
男達はまた高笑いする。
会話からして、どうやら彼等は盗賊のようだ。その証拠に彼等の周りには、金貨の入った箱や金色に輝く剣や盾など、彼等が奪ったと思われる財宝がたくさん置かれている。
「良い気分だぜ……んぉ?」
その時、リーダーらしき盗賊がある物に気付く。
彼の視線の先に、壁を背に立っている黒い騎士甲冑があった。全体傷だらけであり、腰には鞘に納められた長剣がある。
「おいおい、誰だ? こんなガラクタまで持って来てんのは」
「あぁ、武器屋にでも売れば金になるかと思って、引き摺って持ってきやした」
手下が答える。
「馬鹿、売れるわけねぇだろうが。こんなボロっちぃのが」
リーダーの男が甲冑を足で蹴り、甲冑が倒れる。
「まぁ、どうせ誰も使わねぇだろうし、さっさと処分すんぞ」
「え~壊しちゃうんすか~?」
「うるせぇ、文句言ってんじゃねぇ!!」
「ちぇ、勿体ない…」
手下が袋から大きな金槌を取り出す。それをリーダーの男が無理やり奪い取る。
「売れるとは思うんだけどなぁ…」
ぶつぶつ呟きながら、男は甲冑を叩き壊―――
『処分されると困るんだけどな』
「「「!?」」」
―――せなかった。
突如、何処からか謎の声が聞こえてきた。
「だ、誰だ!?」
「ちぃ、帝国の連中か…!?」
盗賊達は剣を抜き、周りを見渡す。しかし周りには盗賊以外に誰もいない。
『何処を見てる? 俺はこっちだ』
「何処だ!? 何処にいる!!」
『こっちだっての』
「くそ、隠れてないで出て来やがれ!!」
『いや、隠れてはいないんだが……仕方ない』
-ザシュッ-
「…え」
一人の盗賊が、血を流しながら倒れ伏した。
倒れた盗賊の背後には…
『やっと気付いたか? ゴロツキ共』
先程壊そうとした、黒い甲冑が剣を持って立っていた。
「なぁ…!?」
盗賊達は驚愕する。
『全く、人が眠ってる最中に解体しようとするとはなぁ。油断して眠る事も出来ん』
「くそ、いつの間に鎧の中に入って…!!」
「野郎共、かかれぇっ!!」
「「「おおおおおおおっ!!!」」」
盗賊達が一斉に襲い掛かる。
『やれやれ…』
甲冑はため息をつき、盗賊達を迎え撃つ。
「死ねぇ!!」
一人の盗賊が斬りかかるが…
『ほっ』
「ぐぇっ!?」
攻撃をかわし、右足で蹴り飛ばす。
「野郎!!」
他の盗賊達も剣を振り下ろすが、攻撃は全て長剣で受け止められ…
『せいっ』
「「「ぎゃああああああっ!?」」」
まとめて斬り倒される。
「くそ、だったら…!!」
リーダーの盗賊が斧を取り出し、甲冑に向かって投げ飛ばす。
『ん……のぁ!?』
見事に甲冑に命中し、兜が弾き飛ばされる。
「よっしゃあ!! ざまぁ見やが―――」
言葉が途中で途切れる。
『あぁもう、危ねぇ事しやがるな』
「な、な、な、…!?」
「馬鹿な……中身が…!?」
盗賊達は唖然とした。
兜を弾かれた甲冑には、“誰も”入っていなかった。元から、中身は空っぽだったのだ。
「ま、まさかこいつ、“デューラ”…!?」
盗賊達は顔が青ざめる。
『全く、頭が落ちたのはこれで何回目だよ…』
甲冑は落ちている自分の兜を拾い上げて頭に戻し、盗賊達に振り返る。
「「「ひぃ…!?」」」
先程までの威勢は何処へやら、盗賊達は後ろへ後ずさる。
「ま、待て、すまん!! 俺達が悪かった!! だから―――」
言いかけたところで、リーダーの盗賊の首がはねられる。
「う、うわあああああ!?」
「た、助けてくれえええええ!!」
手下の盗賊達はそれを見て、恐れをなして逃げようとする。
『おいおい、待てよ』
「「「ひいいいいい!?」」」
甲冑が先回りし、盗賊達の前に立ち塞がる。
『人の眠りを勝手に妨げただけでなく、解体までしようとしたんだ。俺にとっては、迷惑以外の何でもないんだ』
『だからお前等…』
甲冑は盗賊達を指差す。
『ここから、生きて帰れると思うなよ』
数秒後、肉を斬り裂く音や、盗賊達の断末魔が洞窟内に響き渡った。
『さぁて、これからどうするか…』
盗賊達の始末を一通り完了した甲冑は、ようやく洞窟から抜け出した。その鎧は、ところどころ返り血を浴びている。
『まずはここが何処なのかを確かめねぇと…』
甲冑は崖から周りを見渡す。辺り一面、森だらけである。
そんな中…
『ん?』
甲冑はある方向に、一つの大きな街があるのを発見する。
『ふむ、街か。退屈する羽目にならなきゃ良いんだが……まぁ、退屈なら寝れば良いか』
甲冑は他に行く所も無い為、ひとまずその街に向かう事となった。
一方、甲冑が向かっている街では…
「くそっ!! あの小娘、いったい何処へ行きやがった!?」
「探し出せ、何としてでも!!」
何人かの男達が、ある人物を見つけ出すべく街中を探し回っていた。
「全く、しつこい連中ですこと…」
そんな男達の様子を、建物の陰から金髪の少女が覗いていた。
「街に入った途端、あんな野蛮な男達に追い掛け回されるなんて……この私を捕まえようだなんて、百年早いですわ」
少女は文句を垂らすも、男達が近くを通りかかろうとしていたのですぐに路地裏に隠れる。
(けど、このままじゃいずれ捕まってしまうのもたしか……全く、どうしたものでしょう…)
少女は傘を差した状態で近くにあった木箱に座り、この場から逃走するべく策を考え始める。
「見つけたぞ!!」
「!」
一人の男が息を荒げながら、少女の目の前に現れた。
「あら、見つかってしまいましたわ。さっきから全く見つからないから、てっきり私の事は諦めてくれたのかと…」
「小娘ぇ、よくも俺達をコケにしてくれたな……仲間達まで何人も倒してくれやがって!!」
「あら、先に手を出してきたのはあなた方じゃなくって?」
「黙れ、とっ捕まえてやる!!」
男が手に持った棍棒を振り上げる。
「そんな物騒な物…」
「死ねやぁ!!」
「―――私に向けないで下さる?」
-ドゴォッ-
「のごっ!?」
男の振るった棍棒をヒラリとかわし、折り畳んだ傘が男の後頭部に炸裂する。
そして…
-キィンッ-
「ほごああああああああっ!!??」
少女の蹴りが、男の股間に命中した。
「また、つまらない物を蹴ってしまいましたわ」
少女は再び傘を差す。
「この私、リシェル・ミア・ヴィクティオーレ。簡単に捕まるような女ではなくってよ?」
少女もといリシェルは、股間を押さえたまま倒れている男を見下ろしながら言い放った。
とある黒い甲冑と、一人の少女。
この二人が遭遇する時…
物語は、始まる。
初めての一次創作、どうでしたか?
感想、よろしくお願いします。