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晴れ嫌いな少年と雨嫌いな少女

作者: 藜ヶ原

    ―雨―


晴れは嫌いだ。

皆は晴れると気分がいいと言う。

だけどぼくはそうは思えない。


晴れは全てを暴いてしまう。


晴れは全てを晒してしまう。


晒されたくない人だっているかもしれないのに……。

例えばぼくみたいな奴はそう思うんだろう。


今日は中学三年生の始業式の日で、外は素晴らしく嫌な快晴。

ぼくは始業式へ行かなかった。

ぼくは晴れの日は学校へ行かず、雨の日にだけ外へ出向いた。


晴れとは逆で雨の日は大好きだ。

雨の日の、雲に覆われた鉛色の空を見ると落ち着く。


始業式からの数日、ぼくは雨の日だけ学校へ向かった。


そしてある日、雨嫌いな少女とぼくは、曇りの日に出会った。


    ―晴―


雨は嫌い。

皆は雨が降ると気持ちがいいと言う。

だけどあたしはそうは思えない。


雨は全てを浚ってしまう。


雨は全てを覆ってしまう。


覆われたくない人だっているかもしれないのに……。

例えばあたしみたいな人はそう思うんじゃないかな。


今日は中学三年生の始業式の日で、外は素晴らしい快晴。

あたしは始業式へ行った。あたしは雨の日は学校へ行かないで、晴れの日だけ外へ出向いた。


雨とは逆で晴れの日は大好き。

晴れの日の、雲ひとつない真っ青な空を見ると落ち着く。

始業式からの数日、あたしは晴れの日だけ学校へ向かった。


そしてある日、晴嫌いな少年とあたしは、曇りの日に出会った。


    ―雨―


ぼくは言った。


「こんにちは」


なんでもないただの挨拶。


「こんにちは」


少女も返してきた。


「初めまして。晴嫌いです」

「初めまして。雨嫌いです」


変わった自己紹介をしたら、変わった自己紹介をされた。


ぼくはその少女に興味を持った。

ぼくと同じ、だけど違うにおいがしたから。


その日、ぼくは少女と公園で話した。


少女は晴れの日の話ばかりをした。


ぼくは雨の日の話ばかりをした。


そしてぼくは少女に言った。


「雨の日に一緒に出かけよう」と。


    ―晴―


少年は言った。


「こんにちは」


なんでもないただの挨拶。


「こんにちは」


あたしも返した。


「初めまして。晴嫌いです」

「初めまして。雨嫌いです」


変わった自己紹介をしてきたから、変わった自己紹介をした。


あたしはその少年に興味を持った。

あたしと同じ、だけど違うにおいがしたから。


その日、あたしは少年と公園で話した。


少年は雨の日の話ばかりをした。


あたしは晴の日の話ばかりをした。


そしてあたしは少年に言った。


「晴れの日に一緒に出かけよう」と。

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― 新着の感想 ―
[一言] わたしもこういう視点の小説をまだ書きかけて放置していますが、とてもいい感じですね。 短編なのがちょっと残念です…。 なんとなく凸凹な、それでいて2人の惹かれあう姿がとても印象深いです。  も…
[良い点]  心理学において、人間は必ずドグマ(偏見)でものを見るといいます。どこかの誰かが、自分は常識があると思っていても、その常識自体すら共通のドグマ(偏見)でしかないということです。  そのよ…
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