表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全知全能のドジっ子女神、天界会議でパチンコを打つ 〜効率厨のエリート神々に不合理の美学を教えてやる〜  作者: はくもじゃ
天界Wi-Fi無い編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/22

第22話:時空を超えた極寒の地と、究極の自律神経ハック 〜『ととのい』の起源〜

「……さっッッっっっむ!!!」


時空のワープゲートから放り出された先は、見渡す限りの雪と氷に覆われた白銀の世界だった。

吹き荒れる猛吹雪の中、ヒョウ柄のステテコ姿という絶望的な軽装のソフィオスは、ガタガタと震えながら空中にホログラムの地図を展開した。


「座標……北緯約60度。年代測定値、今からおよそ……2000年以上前の過去!? アストラ、君がワープゲートに猪の脂を放り込んだせいで、時空の計算式に深刻なエラーが生じたぞ!」


「ごごご、ごめんなさぁい! 鼻水が凍って氷柱つららになってますぅ!」


ドジっ子女神のアストラも、純白の法衣を雪まみれにして泣きべそをかいている。


「文句を言ってる暇があったら手を動かしな! このままじゃ神でも凍死するよ!」


技巧の女神テクネは、吹雪の中でいち早く行動を開始していた。

彼女は周囲の針葉樹をハンマーで瞬時に伐採し、小さな丸太小屋を組み上げ、その中央に川原から拾い集めた大量の石を積み上げて「キウアス」を作った。


「よし、火を入れな! 薪をガンガン燃やして、この石を限界まで熱するんだ!」


数十分後。


密閉された丸太小屋の中は、テクネの作った石の炉から発せられる熱で、なんとか凍死を免れる温度まで上昇していた。


「……はぁ、助かった。しかし、熱気は上に行く性質がある。足元はまだ冷えるな」


ソフィオスが震える手でステテコを擦っていると、アストラが気を利かせて立ち上がった。


「私が、外の湖で氷を割って、飲み水を作ってきますね!」


アストラは白樺で作った桶に氷水をなみなみと注ぎ、小屋へと戻ってきた。

そして、当然のように――丸太の敷居で思い切り足をつまずかせた。


「あわわわっ!」


バシャンッ!!!

桶の中の大量の氷水が、赤々と熱された炉のサウナストーンに直撃した。

ジュワァァァァァァァァァァッ!!!!!

凄まじい音と共に、超高温の蒸気ロウリュが爆発的に発生した。

水蒸気は瞬く間に小屋の天井に達し、逃げ場を失った熱波となって、三柱の神々の全身に容赦なく降り注いだ。


「あっちぃぃぃぃ!? な、なんだこの暴力的な熱の壁は!」


テクネが絶叫する。


「計算外だ! 室内の体感温度が一気に100度を超えた! 肺が焼けるッ、脱出だ!!」


ソフィオスが扉を蹴破り、三人は全身から湯気を上げながら雪原へと飛び出した。


「熱い熱い熱い! 冷却だ! 急速冷却が必要だ!」


限界まで熱された彼らは、狂乱状態のまま、目の前にあった半分凍りついたアヴァントへと一斉にダイブした。

ザブゥゥゥンッ!!!


「……ッッッ!!!!」


あまりの温度差に、声すら出ない。

100度の蒸気から、シングル(一桁温度)の氷水へ。極限の寒暖差が神々の肉体を襲う。

数十秒後、這うようにして湖から上がり、雪に覆われた岩の上にへたり込んだ三人。

彼らの全身の皮膚は真っ赤に染まり、頭からは白い湯気がもうもうと立ち上っていた。


「……ソフィオスさん、テクネさん……なんだか、視界がぐにゃぐにゃしてきました……」


アストラが、ぼんやりとした瞳で宙を見つめる。

しかし、知恵の神ソフィオスは、自分の体内で起きている「劇的な生理現象」を、恐るべき処理速度で分析し始めていた。


「……いや、違う。これは単なる目眩ではない。……見ろ、私の体のデータを」


ソフィオスは虚空に光のグラフを呼び出した。


「100度のサウナと、氷点下近い水(水風呂)。この極限の『命の危機』により、交感神経が急激に活性化され、血中に大量のアドレナリンが分泌された。……だが今、この安全な岩の上(外気浴)で休息したことで、脳が『危機は去った』と錯覚し、一気に副交感神経が優位に切り替わったのだ!」


ソフィオスの早口な解説は止まらない。


「急激に収縮していた血管が限界まで拡張し、酸素をたっぷり含んだ血液が全身を駆け巡っている。さらに脳内には、鎮痛効果をもたらすβエンドルフィンが大量に分泌……。なんという完璧なサイクル! 交感神経と副交感神経の、奇跡のような強制チューニング(ハッキング)だ!!」


「……小難しいことはわかんないけどさ……」


テクネが、岩の上に大の字に寝転がりながら、恍惚とした表情で空を見上げた。


「……世界が、回ってる。……最高に、気持ちいい。……なんだいこの、身体の芯から作り直される(クラフトされる)ような感覚は……」


「これを『ととのい(ディープ・リラックス)』と名付けよう……!!」


ソフィオスもまた、ヒョウ柄のステテコ姿のまま岩に深く腰掛け、完全に瞳孔を開いて宇宙と交信していた。

その光景を、遠くの樹木の陰から、毛皮を着た古代の狩猟民族たちが畏敬の念を持って見つめていた。


「見ろ……神々が、熱い石に水をかけ、氷の湖に飛び込み、そして至福の表情で岩と同化しているぞ……」


「あれこそが、厳しい冬を生き抜き、心身を清めるための『神の儀式』に違いない!」


こうして、ドジっ子女神の水こぼしと、知恵の神の医学的分析、そして技巧の女神の石積みが合わさり、人類史に燦然と輝く「サウナ文化」がフィンランドの地に誕生したのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ