第31話「はじまりの教室」
春風がそっと吹き抜け、桜の花びらがひらひらと舞い落ちる4月の朝。新一年生として初めて教室に足を踏み入れた真奈は、胸の高鳴りを抑えきれずにいた。ランドセルの重みはまだ少し慣れないけれど、新しい生活が始まる期待感に心が弾む。周囲を見回すと、すでにちらほらと新しい制服を着た子どもたちが席に座っている。どの子も緊張している様子で、真奈も同じ気持ちだったが、その一方で不思議とわくわくした気持ちも膨らんでいた。
「ここが私の席かぁ……」と、真奈は教室の後ろの方にある自分の席に向かって歩いていった。後ろの棚の上にはまだ何も置かれておらず、教室の壁も白く無機質だ。掲示物もなく、これからどんなふうに彩られていくのだろうと想像すると、自然と笑顔がこぼれた。
「真奈ちゃん!」
後ろから元気な声が聞こえて、真奈は振り返る。そこには米持詩音が立っていた。詩音は幼稚園の頃からの友達で、いつも明るくて元気いっぱいの子だ。彼女の姿を見て、真奈の緊張もすっと和らぐ。
「おはよう、詩音ちゃん!」と、真奈は笑顔で手を振る。
詩音は軽快な足取りで真奈の隣にやってきて、「同じクラスになれてよかったね!」と満面の笑みを見せた。
「ほんとだね! これから一緒にたくさん遊べるね!」真奈も同じくらいの笑顔で応えた。詩音と一緒なら、この新しい環境にもすぐに慣れるだろうという安心感が湧き上がる。
2人が話していると、今度は教室の入り口から増田めぐみが静かに入ってきた。めぐみもまた幼稚園時代からの友達で、少しおっとりした性格だが、その優しい笑顔がいつも周囲を和ませてくれる存在だ。彼女は詩音と真奈を見つけると、控えめに手を振りながら近づいてきた。
「おはよう、真奈ちゃん、詩音ちゃん」と、めぐみは穏やかな声で挨拶する。
「おはよう! めぐみちゃんも同じクラスでよかった!」詩音が興奮気味に言い、真奈も同じ気持ちだった。
「ほんとに、みんな一緒でうれしいね」と、真奈はうなずきながら微笑んだ。3人は自然と近くの席に座り、すぐに和気あいあいとした雰囲気に包まれた。幼稚園時代から一緒だった友達と再び同じクラスになれたことが、真奈にとって大きな安心感を与えていた。
教室には次第に他の新入生たちも入ってきた。まだ幼さの残る子どもたちが、新しい環境に少し戸惑いながらも、席を見つけて座っていく。誰もが緊張しながらも、どこか期待に満ちた表情を浮かべている。先生がまだ来ないため、子どもたちは自由に話し始め、教室全体が徐々に賑わいを帯びていった。
詩音は嬉しそうに教室を見回しながら、「みんな新しい友達、たくさん作るのかな?」と言った。
「きっとそうだね」と、真奈は笑顔で答えた。「私たちも、これからたくさんの友達と一緒に楽しい時間を過ごせるんだろうなって思うと、なんだかドキドキするよ」
めぐみは少し照れくさそうに、「私、ちょっと緊張するけど、詩音ちゃんと真奈ちゃんがいるから大丈夫」と言った。
「大丈夫だよ、めぐみちゃん!」と詩音は明るく言い、「私たち3人はいつも一緒なんだから!」と、軽く肩を叩いた。その瞬間、3人はふっと笑い合い、すでに心地よい一体感が生まれていた。
新しい教室にはまだ何もないが、これからどんな思い出や作品がこの空間を満たしていくのか、3人はそれを楽しみにしていた。真奈は窓の外に目を向け、青い空と舞い落ちる桜の花びらを見つめながら、これからの学校生活がとても楽しみでならなかった。期待に胸を膨らませながら、3人は笑顔で話し続けた。
教室内は次第にクラス全体が和やかな雰囲気に包まれ、子どもたちは自然と小さなグループを作り始めていた。誰もが緊張をほぐし、少しずつおしゃべりを楽しむようになっていく。真奈もその一員として、詩音とめぐみと一緒に、自然と周りの子どもたちとの会話に混ざっていった。
「ねえ、みんなで一緒にお昼ご飯食べない?」と、詩音が提案すると、周りにいた子どもたちも笑顔で賛成した。
「いいね! 楽しそう!」と、真奈も目を輝かせた。
「じゃあ、明日はみんなで集まろうね!」と詩音はにっこり微笑んで、周りの子どもたちにも声をかけた。すぐにクラス全体がその提案に賛同し、まるで小さな輪が広がっていくように、自然と仲の良い雰囲気が形成されていった。
真奈はその様子を見て、心の中で温かい気持ちが広がっていくのを感じた。この教室で、新しい友達とたくさんの楽しい思い出を作ることができる。詩音とめぐみと一緒に、そしてクラスの他の子たちとも仲良くなりながら、新しい日々が始まるのだ。真奈はそのことに対する期待と希望で、胸がいっぱいになった。
こうして、真奈たち3人は新しい環境の中で、自然とクラスの中心的な存在となり、周りの子どもたちとも良い関係を築いていくことになった。