第18話「結婚式と告白」
結婚式当日。真一と梨奈は朝から忙しく準備を進めていた。式場に向かう途中も、梨奈は少し緊張している様子だったが、真一はそれ以上に、今日こそ全てを告白するという決意が胸にあり、落ち着かない気持ちでいっぱいだった。
式はお互いの親族と少数の友人だけを招いた、控えめなものになる予定だった。梨奈はそれをよく理解していた。式場も真一の予算に見合った控えめなプランで、華美な演出は期待できないと感じていた。しかし、そんな質素な結婚式でも、二人が誓い合うことに意味があると梨奈は思っていた。真一と共に歩む人生がこれから始まる、その喜びだけで十分だった。
式場に到着した梨奈は、控えめながらも心地よい雰囲気の中、式の準備を進めていた。ところが、式が始まると、彼女は目の前の光景に驚かされることになる。打ち合わせで聞いていた内容とは全く違い、目の前に広がるのは、豪華な結婚式の光景だった。煌びやかな装飾、鮮やかな花々、そして豪華なシャンデリアが式場全体を照らし、梨奈の想像を超える美しい空間が広がっていた。
「こんなはずじゃ……」と梨奈は一瞬戸惑ったが、その驚きはすぐに喜びへと変わった。これまでに見たことのないような美しい結婚式が、自分たちのために用意されている。真一の友人たちが用意したお祝いの寸劇も、感動と笑いを呼び、会場全体が温かい雰囲気に包まれた。梨奈は笑顔を浮かべながら、その瞬間を心から楽しんだ。
披露宴が滞りなく終わる頃、梨奈はこれがただの「控えめな結婚式」ではないことをはっきりと感じていた。それでも、どうしてこんなにも豪華な式ができたのか、その理由をまだ深く考えることはなかった。
披露宴が終わり、会場を後にする時、梨奈と真一は黄色いランボルギーニに乗り込んだ。梨奈は目を見張りながら、「この車、どうしたんですか?」と尋ねた。式が豪華だっただけでなく、まさかこんな高級車が用意されているなんて、全く予想していなかった。
真一はその質問に一瞬、答えを躊躇した。これまで隠してきた自分の資産のことを、今こそ話すべき時だと分かっていたが、梨奈の反応がどうなるかが不安だった。彼女はこれまで、真一を「普通の人」として受け入れてきた。今、この真実を告げたら、彼女の気持ちが変わってしまうのではないかという恐れが、胸を締め付けた。
ドライブが始まり、車のエンジン音だけが静かに響く中、真一はようやく重い口を開いた。
「梨奈、ずっと言おうと思ってたことがあるんだ……」
梨奈は驚いた表情を浮かべ、静かに真一の言葉を待った。
「実は……ずっと隠してきたけど、かなりの財産があるんだ。昔、宝くじに当たって……そのお金を使って事業を始めて、なんとか成功した。でも、ずっと梨奈には言えなくて……」
真一の声は少し震えていた。これが梨奈との関係を変えてしまうかもしれないという恐れが、彼を緊張させていた。梨奈はその告白を聞き、しばらくの間、言葉を失ったように真一を見つめていた。真一もまた、彼女の次の言葉を待ち、息を潜めた。
「どうして……言ってくれなかったんですか?」
梨奈がようやく口を開いた。彼女の声は静かで、驚きと困惑が入り混じっていた。
「本当はもっと早く君に見せたかったんだ。俺がどんなにお金を持ってても、梨奈が俺のことをお金で見てるんじゃないって、信じたかったんだ。ずっと怖かったんだよ……本当に梨奈にとって、俺が必要なのかどうかがわからなくて……」
真一は自分の中の不安と葛藤を言葉にし、全てを梨奈にさらけ出した。その瞬間、梨奈はじっと真一の瞳を見つめ、ふっと微笑んだ。
「真一さん……私は、あなたの財産なんか関係ない。私が好きになったのは、あなたの努力する姿と優しさ。お金があるからじゃない。結婚を決めたのは、あなたがどんな人かを知ってたからです。だから、そんなに悩まなくてもよかったのに……」
梨奈の言葉は真一の心に深く響いた。その瞬間、彼の中にあった不安や恐れが、まるで霧が晴れるかのように消えていった。彼女の愛は、真一自身に向けられたものだった。それを再確認できたことで、真一は心からの安堵と感謝を感じた。
その夜、真一と梨奈はランボルギーニで夜の街をドライブしながら、これからの未来について語り合った。豪華な結婚式と高級車、そして告白の瞬間は、二人の絆をさらに深めた。そして、真一は改めて、梨奈と共に生きていく覚悟を固めたのだった。