空音と石川の通話
「もしもし、あきちゃん?」
「やっほー、そらね〜」
夜9時頃。
空音と石川は通話していた。
「で、今日あのあとどうだったの〜?」
石川は少しからかうような口調で、空音と三嶋が2人きりで帰ったあとのことを聞いてきた。
「......何も話せなくて、ほとんど無言で終わった」
「あちゃー」
「うぅ......恥ずかしくてもう思い出したくもない......」
「空音にしては頑張った!ナイスファイト」
「うん、ありがと......」
空音は恥ずかしさに悶えながら、そう返事した。
「でさ、少し踏み込んだこと聞いていい?」
「な、なに?」
「三嶋くんと相合傘してみて、どう思った?」
「え?」
空音は今日の出来事を頭の中に巡らせる。
自分よりも頭1つ分大きい背丈。
自分に歩幅を合わせてくれる歩き方。
自分のことを気遣ってくれる優しい声色。
今日の出来事の断片を集める度に、顔に熱を帯びてくるのが分かる。
三嶋のことを思う度に、顔が熱くなるのが分かった。
「......距離が近すぎてこれ以上ないほど緊張したけど、すごい優しかった......かな」
空音は顔を真っ赤にしながら、素直にそう話した。
「かぁぁぁ......!!もう電話越しでも可愛い!!」
「あきちゃん!からかわないで!」
「いや、ごめんごめん。なんだか嬉しくて。」
「嬉しい?」
石川から出た言葉に、空音は少し意外そうな表情を浮かべる。
「嬉しいよ。友達に好きな人が出来るのはホントに嬉しい!」
「あきちゃん......」
「だから、空音のためならどんなサポートも惜しまないから!困ったことがあったら何でも言って!」
「......うん。ありがとう」
空音は石川の素直な言葉に、感謝でいっぱいになった。
この子が友達で、本当に良かった。
「でも、途中で三嶋くんと2人きりで相合傘で帰らせたのはやりすぎだったかもしれないけど。」
「え?」
「あれが原因で、私が三嶋くんのこと嫌ってるって勘違いされそうになったもんね」
「え?!」
凄く恥ずかしい思いをした腹いせのようなつもりで、空音は今日の出来事を当てつけのように石川に話す。
「いや、確かにわざと2人きりで相合傘させるように仕向けたけど悪気があった訳じゃなくて、その、ごめんなさい」
「ううん。悪気がないのは分かるし、私のためにしてくれたってことも分かるから、気にしないで?」
「うぅ......空音たんまじ天使。今すぐにでも抱きしめたい」
「えっと、友達からたん付けされるの恥ずかしいからやめて欲しいかな」
石川はどこかのアニメで聞いたようなセリフを口にしながら、空音への愛を吐露した。
「そうだ、すごい話変わるけど明日の土曜日って何か予定ある?」
「突然だね?うーん、特にないけどどうしたの?」
「最近できたイタリアンのお店あるんだけど、一緒にどうかな〜って」
一見、ただの食事の誘いに見えるが、これはただの建前であることを空音は気づいていた。
「そうなんだ。で、本当は?」
「ラノベの新刊が出たから空音に布教したい!」
こっちが本音だ。
石川は意外にもラノベや漫画などが好きで、たまに空音に布教してくる。
そのため、空音もラノベや漫画にある程度詳しくなってしまった。
「いいよ。あきちゃんの布教してくれる作品、面白いから」
「ありがとう〜じゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」