給食の「ウズラの卵による窒息死」に見え隠れする日本の「病巣」
筆者:
本日はこのエッセイを選んでいただき誠に光栄です。
今日は小1男子児童が給食のウズラの卵を喉に詰まらせて亡くなるという非常に痛ましい事故とそれに関する個人的な見解と解説を行っていこうと思います。
質問者:
事故が起こってしまった福岡県をはじめ一部の自治体では給食で提供することを停止しているところも出ているようですね……。
◇事故を起こすたびに提供中止していたら子供が食べるものがなくなる
筆者:
亡くなってしまった方に対しては大変お気の毒だと思っています。
しかし、このことと給食でウズラの卵の提供することを中止することはやめた方がいいと思うんです。
質問者:
どうしてでしょうか? やっぱり事故を起こす確率を下げるためにも提供を中止した方がいいのではないでしょうか?
筆者:
確かにそういう見方もあるかもしれません。
ただ、ウズラの卵はそんなに珍しい食品ではなく一般的な食べ物です。
家庭や給食から排除をしても、飲食店では普通に提供されるでしょう。
そうであれば、アレルギー性などが確認されないのであれば、
ウズラ卵をきちんと食べる方法を伝えていくことが家庭や学校の役割の1つなのではないかと僕は思いますね。
ウズラの卵だけでなく似たような丸いタイプの食品は、鶏団子、ミニトマト、白玉など数多くありますからね。
質問者:
なるほど……。
筆者:
極端な話、窒息事故を起こすたびにメニューから消えていけば食べるものが無くなります。
事故を起こした食品を排除することは問題の根本治癒には役立ちません。
食材を大量に提供している会社としてもラインナップが頻繁に変わっては対応に苦慮することでしょう。
また、ウズラの卵は安価でありながら、
ビタミンA、ビタミンB、葉酸、DHA等などの栄養素が多いです。
小鳥は早く成鳥になる必要があるため、卵内にビタミン群を多く蓄えているからですね。
そういった食品を消すことは子供の食育においても大きくマイナスになるのではないかと僕は危惧します。
質問者:
つまりお子さん型によく噛んで食べられるようにすることが大事ということなんですね?
筆者:
そういうことです。
2010年などではこんにゃくゼリーで死亡事故が起き、やり玉にあがることがあったのですが、本質ではそこでは無いと思います。
極端な話をすればパンだって丸めて勢いよく食べれば死亡リスクが出るでしょう。
焦って早食いしてしまうことが問題を生じさせているように思います。
質問者:
しかし、どうして焦って食べてしまうんでしょうか?
◇食べる時間は取られるようになっている――が
筆者:
よくこういう議論の際に「食べる時間が少ない」という話になりますがおおよそ、配膳から片付けまでで45分というところが多そうで、そこまで短くないと思っています。
アメリカのイリノイ大学の研究では「実験では給食時に着席時間を20分間確保することで、子供たちの野菜と果物の摂取量が増え、残量が減った」といったものもあります。
45分のうち20分なら配膳片付けを含めてもそこまで問題にはならないでしょう。
文部科学省では、
『時間内に食べられる、自分に合った量を子どもが食べる』という給食指導が基本と
なっており、
無理に完食させるケースというのは減少しているようです。
質問者;
では何が問題なのでしょうか……。
筆者:
配膳が慣れていないケースです。今回の事故でも1年生の子だったので全員の配膳と片付けの効率が悪く食事時間が20分取れなかった可能性があります。
問題は続けて「遊ぶ時間」がある場合でありさっさと食べてお友達とお話したりする時間や勝手に遊ぶ時間に充てたい子がいることです。
質問者:
つまり先生方の指導の問題ということでしょうか?
筆者:
ただ、今小学校の先生方は本当に激務でして、ある調査では先生の休み時間は平均で6分しか取れないといったこともあるようです。
ただでさえ先生方は給食の時間となれば食物アレルギーのほか、その子の食に関する情報(好き、嫌い。うまく食べられない食材)などの情報を給食情報と参照しなくてはいけないです。
そうなると「よく噛んで食べる」などの食べ方については家庭の教育問題なのではないかな? と思ってしまうんですよね。
食べ方について子どもに対して負荷をかけることは、
「ハラスメント」などにあたるリスクもありますから先生方も指導しにくい社会になっていると思うんです。
質問者:
なるほど、中々根深い問題のようですね……。
筆者:
こうなってくると家庭での指導の問題にはなりますが、
これも今の社会状況ですと余裕がないご両親の方も多いと思うんです。
共働きをしなければ子育てをできない経済状況になりつつあるので、
親の余裕も無くなってきています。
この事故は社会全体の歪みや病巣が滲み出ていること示しているのではないだろうかとも思ってしまうんです。
質問者:
なるほど……。
◇この事件を受けて一番やってはいけない政策
筆者:
さて、ここからはこの問題の“最悪の解決方法”を考えていこうと思います。
質問者:
え……解決できるのなら“最悪”とまではいかないのではないでしょうか?
筆者:
いえ、あります。
それは「給食の総量を減らすこと」です。
そうすれば、配膳時間の効率が悪かろうと、食べる時間が少なかろうと時間数による窒息リスクは格段に下がるでしょう。
質問者:
な、なるほど。そういえばコロナ対策でも「給食の総量を減らすことで配膳時間を減らして接触時間を減らす」とかそういうこともありましたよね……。
筆者:
あれも大変本末転倒な考えでした。栄養状態が悪くなれば免疫力は下がり、
むしろ感染症にかかるリスクというのは上がっていきますからね。
ただこう言った、「給食総量を減らす」という動きは広まっていく可能性はあると思っています。
学校給食などを提供するホーユー(広島市)が23年9月に経営破綻となりました。
かといって給食費をあげることも、保護者とのコンセンサスの統一が難しいでしょう。
つまり、「給食時間の確保」をお題目とした利益の収支の改善も行える
「給食総量の減少」といった最悪の選択肢が取られる可能性は自治体次第ですがあるのではないかと危惧しています。
質問者:
その一方で給食が無い夏休みはご飯があまり食べられないというご家庭もいらっしゃるようですからね……。
筆者:
7人に1人が相対的に貧困で、高校や大学・専門学校などへの進学を経済的理由から諦めざるを得なかったり、1日で栄養のある食事を学校給食の1回でしか摂取できていないと言われています。
これも国の経済政策の失敗の延長線上にあることだと思っていますので、
給食を国費で支えるぐらいしないとダメなのではないかと思っています。
セコセコしている状況では、例え子供が増えたとしても不幸な子が増えるだけだと思いますからね。
質問者:
まさか給食の窒息事故が「政府よ。お金を出せ」という筆者さんのいつもの論調で落ち着くとは思いませんでした……。
筆者:
これは僕が普段からこのようなことを永遠と考え続けているからこういう風に捉えただけなのかもしれませんが、一側面だけで見てはいけない問題だと思います。
複合的な要素が絡み合った結果としての「窒息事故」として社会や政府が総合的に考えていかなくてはいけない問題だと僕は捉えています。
僕の感覚では「衣食足りて礼節を知る」と思っていますので、
もっと国が所得の配分をうまいこと行うことが出来れば様々な諸問題を解決できるのではないかと思っていますね。
ということでここまでご覧いただきありがとうございました。
今後もこのような社会問題をはじめ、政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説を行っていきますのでどうぞご覧ください。