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第4話 文昭儀という強敵


 わたしが梨鈴の夫になる!? いや、考えないといけないのはそこではない。


「わ、わたしが皇帝陛下の身代わりなんて……そ、そんなの無理ですよー!」


「そんなことわかってる。無理を承知で私も言っているの!」


 梨鈴は本気のようだった。しかし、わたしに皇帝のなりすましが務まるだろうか……?

 性別の壁もある。第一、家臣や妃たちは皇帝の顔を知っているはずだ。


 ところが、梨鈴は首を横に振る。


「だいたいの人はね、陛下の顔を遠目にしか見ていないと思うの。あなたもそうでしょう?」


「それは……そうですね。でも、たとえば梨鈴様は貴妃ですし――」


 そこで、わたしは言葉を止めた。


 貴妃というのは、妃の中で皇后に次いで位が高い。現状、皇后は空位なので、梨鈴こそが妃の筆頭なのだ。ちなみにわたしは才人というそれほど高くない地位。


 貴妃なら、皇帝ともそれなりに会っているはず。他の上位の妃も同様だ、とわたしは言いかけたのだ。


 ところが、梨鈴の顔は曇る。


「私も……皇帝陛下とはそんなにお会いしていないし……」


 梨鈴は皇帝とはそれなりに親密な仲だと本人は言っていた。

 皇帝陛下から寵愛されているのは、私なんだと自慢げに話していたと思う。


 ただ、わたしは梨鈴の言動に懐疑的だった。周りの反応や、梨鈴の仕草を見ていれば、まだ皇帝陛下の愛を受けるには至っていないと察しがつく。


 だからこそ、わたしは途中で言葉を止めたのだ。梨鈴を傷つけたくなかったから。

 梨鈴は目をさまよわせる。


「私は一度も陛下から愛されたことはないわ」


 恥ずかしそうに、梨鈴は言う。そうだったんだ。

 寵愛されていると言っていた理由はわかる。貴妃という立場から、虚勢を張ったんだろう。


 わたしは梨鈴の髪を軽く撫でた。

 梨鈴はいつもなら照れて抵抗するのに、今日は素直に受け入れていた。

 

 わたしは微笑む。


「大丈夫。梨鈴様が皇后候補なのは変わらないと思いますよ」


 気弱で病気がちな皇帝陛下は、梨鈴にかぎらずほとんど妃たちを近づけていない。あまり女性に興味がないのかもしれない。


 そういう意味では、梨鈴は特段不遇というわけでもないし、実家の後ろ盾もあるし、いずれ皇后になるのは間違いないだろう。


「でも、あの人がいるわ」


 梨鈴は怯えるように言う。

 あの人、というだけでわたしも誰のことかわかった。


 文昭儀。女列第五位の妃であり、わたしたちよりずっと年上の27歳。身分は高くないが、圧倒的に美しい均整のとれた女性らしい体つきと、抜群の会話術で皇帝陛下の唯一のお気に入り妃だ。


 つまり、現代日本風に言えば、スタイル抜群、エロエロな美女で、コミュ力も高いというわけで。

 皇帝が骨抜きにされてしまうのも理解できる。わたしや梨鈴ではとても太刀打ちできない。


「あの人は陛下がいなくなったら、次の皇帝にも仕えるつもりかしら」


 梨鈴は言う。

 そう。後宮の妃は二人の男には仕えない。それがこの世界のルールだ。


 ところが、文昭儀は例外であり、もともとは先代皇帝の宮女だったのだ。







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