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第1話 落ちこぼれ妃、未来の皇后を抱きしめる


新作ラブコメ×料理×義妹を投稿中です! こちらもぜひ!


タイトル:【連載版】幼馴染に振られた俺が、国民的アイドルの義妹に手料理を振る舞った結果

URL:https://ncode.syosetu.com/n3415ij/


「やっぱり、あなたはこの後宮にふさわしくないわ。――周 蒼華(しゅう そうか)


 目の前の小柄な少女に、ぴしゃりと決めつけられて、わたしは目を白黒とさせた。


 周 蒼華というのは、わたしの名前だ。姓が周、名は蒼華。


 年は17歳。自分で言うのも変だがそれなりに美少女だ。


 なぜなら、ここは大順帝国の後宮で、わたしは皇帝のために集められた美しい妃の一人なのだから。

 

 まあ、家は没落貴族で、皇帝からも興味を持たれず、すでに皇后になる競争からは脱落しつつあるけれど。見た目もまあ、それなりに可愛いとはいえ、この国では女ではあまり好かれない金髪金眼だし、それに背が高すぎるしね。


 一方で、わたしの目の前にいる少女は、ばりばりの皇后候補の一人だ。

 夏 梨鈴(か りれい)。洛西貴族集団の第一位・柱国大将軍・夏 策真(か さくしん)の娘。家柄も権力も富も、もちろん美貌も兼ね備えている15歳の女の子。


「な、なぜわたしがこの後宮にふさわしくないのですか?」


 わたしの声は震えているが、別に怒りや悲しみや恐怖で震えているわけではない。

 梨麗と話せることが嬉しくて感激(?)しているのだ。


「そ、それは……」


 ところが、梨麗が言い過ぎたと思ったのか、口ごもる。本当は優しい子なのだ。


 二つ年下だけど、本当に美少女だ! さらさらの栗色の髪に淡い灰色の瞳。

 ほっそりとした小さな身体は、同性のわたしが見ても庇護欲をそそる。


 まさに貴族のご令嬢という感じ。小柄なのに、ちょっと気の強そうなところが、落差があって可愛い……!


「梨鈴様……めちゃくちゃ可愛い!」


 ひしっとわたしが梨麗を抱きしめ、頬をすりすりとすると、梨鈴は顔を真っ赤にした。


「そういうところがダメなの! あなたには誇りというものがないの!?」


「わたしには誇るようなものなんて何もありませんから」


 梨鈴の髪を撫でながら、わたしはふふっと笑う。

 所詮、梨鈴とは身分も違うし、後ろ盾もないし、皇帝陛下に興味を持たれてもいないし。


 梨鈴が頬を膨らませて、わたしを睨む。


「やっぱり、あなたはこの後宮にふさわしくない。少しはちゃんと努力したらいいのに。皇帝陛下もあなたに興味を持っていただけるかも……しれないのに」


「ありがとうございます。でも、わたしはいいんです。梨鈴様が皇后になる日を楽しみにしています」


「……ありがと」


 梨鈴は恥ずかしそうに、ぷいっと顔をそむける。

 

 わたしは、この後宮で皇帝の寵愛を得ることに興味はない。たとえ望んだところで、わたしの境遇では叶うことはないだろう。そのために、ドロドロとした争いに巻き込まれるつもりはないのだ。


 一つ、わたしには秘密がある。わたしはもともと、この大順帝国の純粋な民ではない。

 わたしには前世の記憶があるからだ。日本からの転生者。それがわたしの隠し事だ。


 そんなわたしにとって、この世界は根本的に馴染めない。一人の男に複数の美女・美少女が仕える。

 まるでピンと来ない。


 それより……。


「わたしは梨鈴様や他に可愛い女の子を愛でられれば、満足なんです。なんといっても、美女と美少女ばかりですからね」


「あなたって人は……可愛ければ、誰でもいいの?」

 

「もちろん。梨鈴様が一番ですよ」


「ば、バカっ。そ、そういうことじゃなくて……」


 梨鈴は慌てふためいた様子でそう言い、それからぎゅっとわたしにしがみつく。

 この狭い後宮にわたしたちは囚われている。外に出る自由はない。


 日本人のわたしにも、この世界で生きる意味を見つけられるだろうか。

 その答えは意外な形で示された。



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【連載版】幼馴染に振られた俺が、国民的アイドルの義妹に手料理を振る舞った結果
― 新着の感想 ―
[良い点] これからの展開が楽しみです
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