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 妙子が召喚されてから10日後、リーヌやマリーと共に大広間の掃除をする妙子の姿があった。


「妙子、掃除は上から!いきなり床拭いてもダメなのよ!貴女自分の家の掃除もしたことないお嬢様だったの?」

「だから、一般庶民だって言ってるでしょう!はたきなんて必要ない部屋に住んでただけよ!」

「洗濯もダメ、掃除もダメ、料理も大して上手くない。どうやって生活してたのか疑問だわ」


 相変わらず容赦のないマリーの言葉に、ぐうの音も出ない妙子だった。


 この数日、自分にできる事は無いか、何か仕事をさせて欲しいと願い出て、マリーと一緒に出来る事を探していた。だが、そもそも家事全般を仕事の忙しさにかまけて必要最低限しかしていなかった妙子にとって、王宮の仕事は高度過ぎた。


 掃除機もなければ洗濯機もない、すべて手作業だ。王族に食べさせる料理を作る料理人達は高級レストランのシェフ並みの腕前。手伝うどころか、どれも邪魔にしかならなかった。


「仕事が忙しかったんだから仕方ないじゃない。それに、ここと違って私のいた世界は便利だったのよ!」

「…ねえ、仕事が忙しければ何もできない事が許されると思っているの?そんなに妙子のしていた仕事は偉い事だったの?」

「ぐっ…、別に偉い事ではない…」

「仕事仕事って言うけどさ、妙子はどんな仕事してたのよ」

「…服飾の会社に勤めてた」

「へえ、服作ってたんだー。どんな服よ?」

「…ウエディングドレス。って言っても私は手伝い位だよ、メインは営業だったから」

「じゃあ、あんた裁縫は出来るって事?だったらサッサと言いなさいよ!真っ先にお針子さんの所連れてったのに!」


時間を無駄にしたーと、マリーは怒る。


「だって、どうせ仕事するなら違う事したかったんだもん。前の仕事あんまり良い思い出ないし、残業、休日出勤あたり前で身体壊したし…」

「そういうセリフは別の仕事ができる人が言うものよ!何贅沢言ってるの!ここの掃除終わったら連れてくから大人しく待ってなさい!」


 話をしながらもテキパキと掃除を続けているマリーの姿は生き生きとしている。手伝う事を止め、邪魔にならない場所に座り込みその後ろ姿を見つめた。


「マリーはこの仕事辞めたいって思ったことないの?」

「ないわよ、給料良いし食事は美味しい。そりゃあ、キツいって思う事もあるけど、仲間もいるし。何よりこの仕事好きだしね」


確かに楽しそうに仕事をしているのは、ここ数日一緒にいて感じていた。仕事が楽しい、妙子はここ数年そんな気持ちになれなかった。好きで選んだ仕事だったのに、いつの間にか苦痛しか感じていなかった。だからこそ何をしてきたのか言い出せなかったのだが、この王宮で仕事を見つけるとなると妙子の能力では選べる仕事がないのも事実。

その上、妙子には仕事を見つけなければいけない理由があったのである。それは、国王ライアンとの初対面の時に遡る。

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