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「…喉乾いた、…お腹空いたー」


 ひとしきり泣いて喚いて枕に八つ当たりして疲れ果てた最初に思ったことがこれか~と、妙子は苦笑した。ふと、周りを見るとベッドサイドのテーブルに水が置かれている。


「毒でも入ってたりして…ね。まあ、それでもいっか」


 異世界に飛ばされ、二度と帰れないと言われショックと怒りで当たり散らした挙句に気絶。こんな厄介者いなくなった方が良い。妙子はグラスに入った水を一気に飲み干した。


「はーー、美味しかった。人生最後に口にしたのが水ってとこが残念だけど、こんなフカフカのベッドの上で死ねるならいっか、どうせ帰れないんだし…」


 ポスンっと再び寝転がる。目を閉じ最後の時を待つ…が、一向に変化はない。むしろ、グゥーとお腹が鳴り、空腹で死にそうである。当然のことながら、水には毒など入っていないのだから死ねるはずもない。妙子は「残念」と呟きながら再び身体を起こし、天蓋カーテンをそっと開き部屋の中を見渡した。


「…連れてこられた部屋なのかな?分かんないや」


 広々とした部屋にフカフカの絨毯。ロココ調様式風のテーブルや椅子、ドレッサーに大きな鏡。天井にはシャンデリアまである。良くある物語のお姫様の部屋の様だった。ひとしきり部屋を見渡し、誰もいない事を確認すると、部屋の中へと歩を進める。

 どこも触るのを躊躇ってしまう程ピカピカに磨かれている家具や調度品、どれを見ても高価であると理解できる。


「もう少し普通の部屋は無いのかねー、庶民には分不相応な豪華さだわー」


 妙子がいるこの部屋は他国の王族用の貴賓室。調度品も超一流品で整えられている特別な部屋であった。ライアン国王の妙子に対する誠意から選んだ部屋だったが、妙子には有難迷惑だった。

 このまま突っ立っている訳にもいかず、最初に座っていたと思われるソファーに座り、膝を抱えて蹲る。ふと、テーブルの上を見ればメモの様な紙と色とりどりのフルーツが置いてある。どうせ何が書いてあるか読めるはずもない、と思いながらも異世界の文字ってどんなのだろうと紙を取り視線を送る。そこには、

【ごじゆうにおめしあがりください】と平仮名だけの日本語で書かれていた。


「えっ!何故日本語?しかも平仮名のみ?ここ、異世界じゃなく地球?そうだよ、だって言葉も通じてたし!もしかして壮大なドッキリとか?いやいや、そんな事私にする人はいない…」


 これを書いたのは誰なのか?本当はここはどこなのか?疑問が沢山浮かぶが、それより何より妙子にとって重要なのが目の前にあるフルーツだった。空腹に耐えかねていた妙子は躊躇いなく美味しそうなフルーツに手を伸ばした。

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