眼球の上の村
薬…
薬を、飲んだ。
暗い部屋の、ベッドの上で瞼を閉じる。
そこに浮かんできたのは、1つの村だった。
村といっても、半壊したレンガ積みの納屋とその破片、牛なんかに食わせる乾いた牧草が散らばっているくらいで。
ただ寂れた道と言っても良い所だった。
ぼくはその村を見、目を瞑りながら、ベッドにあるぬいぐるみを抱き寄せた。ふわふわだ。
「十条」
「十条、十条」
アイロンか何かに頭を乗っ取られたご夫婦が騒いでいる。
上を見ると、いちめんの星空があったのだ。
ミルキー・ウェイも薄っすらと見える好環境。しかし、この村は完全に廃れている。
「ねえっ、あっちの街は栄えてるそうよ」
長くて細い髪の、金髪の女の子だった。赤いチェックの服がなんとも田舎らしい。
ぼくも、隣町にいるやつらが気に食わない。そんな気がする。
「それ、投げちゃいなよ」
レンガの塊で、はじっこ に泥と、そこから芽吹いた命ーー雑草ーーがくっついていた。
「いいわね。オラッ」
女の子がオレンジ色のレンガを投げると、それは高度10000ft付近まで上昇し、その後滑空、隣の街に直撃した。命中の問題はなかった。
いまごろ、ぼくの気に入らない人は爆散しているだろう。ざまあみろと思い、もうそんなものに使うリソースは勿体ない ので、早急に、ぼくは記憶を消した。
そして目を開けると、あの美しい星空も、湿った冷たい空気もすべて消え、おふとんという装置に集約される。私はこれから夢を見て、苦しむ。それを抑えるのがお布団というシステムなのだ。
まどろみの中で、なにかを破壊した。なにかを殺した。
でも最後は、そのまどろみごと、一瞬で霧散する。
儚い村の住民になるには、どうすればいい。




