聖剣を捨ててみた
邪悪な魔王を倒せる聖なる剣を聖なる山で抜いたのが一年前の俺だ。
村一番の腕っ節の強さで遊び半分に聖剣を抜いてみたら勇者にされた。
半ば無理矢理、村の衆の多数決で旅立って一年目の春。
なんやかんやで魔王の城に殴り込みかけてみたら、聖剣の威力か神のご加護か、俺はあっさり魔王を倒してしまった。
いや、聖剣がチート過ぎた。
鞘から抜いて振り回すだけで、謎の七色光線がほとばしり、向かってくる屈強な魔物どもが灰になりにけり。
あんまり深く考えたくないが、この聖剣のスペックは村一番の腕っ節とか全く関係なくね?って、戦いにもなってない一方的魔王軍蹂躙劇の最中思った。
魔王の配下が灰になる様を視た魔王様も驚きを隠せない様子だったが、なんか偉そうな衣装と角がチャームポイントなのか知らんけども、聖剣の七色の輝きの前には魔王様も日照りの道ばたのミミズ同然だった。
困ったことが一つある。
聖剣を授かったは良いけれど、返却の仕方がわからない。
JISマークもないし、リサイクルマークもない。
魔王亡き今、この銃刀法違反な聖剣はただただ邪魔だった。
魔物から身を守る必要がなくなった以上、魔物以外に対し果物ナイフより弱い聖剣をぶら下げている意味がない。
試しに、自宅近くの山林の奥の泉に投げ込んでみた。
すると泉から女神様が現れて「あなたの落とした聖剣は金の聖剣ですか?それとも銀の聖剣ですか?」と尋ねてきた。
俺は荷物が増えるのが嫌だったので「俺が捨てたのは普通の聖剣です」と馬鹿正直に答えてしまった。
女神様は「正直者のあなたには金の聖剣と銀の聖剣をあげましょう」と粗大ゴミ同然な貴金属系聖剣を一本ずつ押しつけてきた。
リサイクルマークはないが、この金の聖剣と銀の聖剣は仮にも貴金属だ。
最寄りの質屋に売りに行ってみた。
「お客さん、これ模造剣ですな。回収費用を別途いただければ当店で引き取りますが」
俺は、いらん出費を容認できるほど裕福ではないので、質屋から引き上げ、仕方なしに性能ががた落ちした聖剣どもを、今度は海に捨ててみた。
その様子を海浜公園の監視カメラに撮られていたので、足がついて、定置網にかかった聖剣のせいで地元の漁協からこってり油を絞られる羽目になった。
おかしい。
世界を魔王の魔の手から救った勇者なのに、粗大ゴミが増えて、前科までついた。
村の衆に多数決で押しつけられた聖剣が金と銀に増えましたと村長に伝えたら、しこたま怒られた。
聖なる泉に聖なる剣を投棄した罪で、村長の庭の草むしり10年を言い渡された。
勇者の役が済めば、ただ腕っ節だけが自慢の村人Aに過ぎない俺は、仕方ないので、聖なる山の山頂に金の聖剣と銀の聖剣をぶっさして、その足で夜逃げすることになった。
魔王を退治した英雄は名も告げず去るのが良いらしい。
めでたしめでたし。




