第97話『はろはろ』
もうすぐ100話…!!頑張ろうねエクス君!
「はいっ!」
電話の内容は何だろね?
前回のあらすじ
イデアちゃんがずっと怯えていた理由は姿を隠しながらユリウスさんにピッタリくっついていた冥界の王ハデスのせいだった。
皆で話していると心優しい彼のマスターから電話が…。
…
「も、もしもし…?」
{はろはろ、マイクテースマイクテース。聞こえてるかにゃ?}
スピーカー越しに聞こえる声は想像した声と真逆で明るい声だった。でも男性か女性か分からない。
「…えっとぉ…?」
{君がゼウスの召喚士かにゃ?}
にゃ。
「は、はい…エクス=アーシェと申します…。」
{知ってる〜。入学早々ブラックリストに載った子ぉ。}
「うぐ…。」
自業自得とはいえブラックリストという言葉を聞きたくないなぁ。
{君に興味がある。だからボクも手伝うよ。
ヴァルハラの一員としてね。}
「あのぉ〜…差し支えなければお名前を教えて頂けませんかねぇ…。」
{んにゃ!ごめんごめぇん。ボクはシルヴァレ。シルヴァレ=ジョーカー。君が今ボクと話す為に使っている機械、デバイスを作った張本人さ!}
「え?デバイス作った!?」
{本当だよ〜?ボク、すっごいんだから。}
「え、えぇ…驚きです。」
スマホって作れるんだ…。
{ふぁあぁ…ふ、君のデバイスに特別なアプリを仕込んどいたの気付いたかにゃ?}
「え、何ですかそれ。ウイルスです?」
{おや、機械のウイルスを知ってるのかにゃ。君、機械詳しーの?}
「え!?あー…えー…そうでも、無いですよ。」
子供と呼ばれるくらいの年齢でヴァルハラの人が作った機械に通用するような情報を持っていたら変に怪しまれるかもしれない…。パソコンとかやってた時の知識だけど気を付けよう。
{ふーーーーん、そっか。}
何か怪しんでる声だな。
{まぁいいや。気が向いたら君の前に現れるよ。あ、そうだ。ボクね?テレビ電話大嫌いだからやめてね。んじゃあ、ばいにゃら〜♪}
「あ、ちょっと!…切れた。」
「どうだった?シルヴァレは。」
どうって…
「ニフラムさん、何故この人を忘れるのか不思議なくらいキャラが濃かったのですけど…。」
皆にも分かるように正直にそう言った。
「あ、スイッチ入ってたんだ。良かった良かった。シルヴァレはオンとオフが激しくて困っちゃってねぇ〜。何故か忘れちゃうんだよね。」
理由になってなくないか?
「オフの時のシルヴァレは何と言うか…お化けみたいなものなのですわ。リンネ君の国の幽霊、でしたっけ?それのような感じになって存在感が消えてしまいますの。」
「ゆ、幽霊!?」
思わず驚いて声をあげてしまった。
「おや、幽霊を知っているのかい?シオンだけだと思ってたよ。」
リンネさんが気になると言いたげな視線を送ってきた。この世界ってお化けどうなってるの!?え?ゴーストとか言う?それともゾンビなの?兎に角こういう時にはいい答え方がある!
「本で読んだことありまして!」
これは何故知っているという疑問を回避すると同時に僕は博識ですよってさりげなくアピールする事が出来る答え方なんだ!!流石僕!それに小学生の頃、図書館でお化けの本借りて本当に読んだことあるからラジエルに嘘とも思われない!我ながら良き!
「へぇ〜エクス君って他国についての本読むんだ。勉強熱心だね。」
リンネさんはちゃんと褒めてくれた。ほらねっ!
“主は気配や存在を消すことに長けております。だから、忘れ去られているというのは主が凄いということにもなります。では私はこれで”
ハデスがスケッチブックを小刻みに揺らし、その音に反応した全員が文字を見た。その中でユリウスさんがメガネを押し上げ口を開いた。
「今度から私の後ろにピッタリはやめていただいても?」
“時と場合によっては…?”
「はぁ…主に宜しくお伝えください。どうせ見ているでしょうけど。」
“えぇ、必ず。”
頷きながら文字を見せたハデスはスケッチブックを閉じ、マーカーの蓋を閉め、手首を返して真上に放り投げた。投げられた道具達は紫の炎に燃やされ消えた。
…え?道具燃やしたの??
『マスター、ハデス兄様の炎は綺麗だろう!』
「綺麗だけど何でゼウスが自慢げに言うんだよ…。」
『私の兄上だからだ!ちなみにあれは燃やした訳ではなく仕舞っただけだ。問題なかろう。』
四次元ポケット的な感じなのかな。召喚獣だし基本何でもありだよね。ゼウスと話しながら消えずに歩くハデスを見送ろうと思って見ていたら、ハデスは出入口の扉ではなくクロノスの時計の針が刺さった壁を目指していた。辿り着いたら針を壁から引き抜き、こちらを見た。何だ?何す…
刹那、僕の左隣に居たゼウスの左腕スレスレを光速の何かが通り過ぎた。ソレはクロノスの真横をも通り過ぎ、反対側の壁にめり込んだ。その瞬間遅れて強風が吹き荒れる。手で顔を押さえつつも壁を見ると、めり込んだ物はハデスが持っていたはずの時計の針。紫に煌めく炎を纏っている。投げた当の本人は髑髏のお面を外し
『お忘れ物、お気を付けて。』
と恐怖を与える無の表情でクロノスを見やる。その後に何事も無かったかのようにお面を付けて
『では、御機嫌よう。』
静かに言ってぺこりと一礼し、扉から出ていった。
「こっっわ!大丈夫?ゼウ…ス?」
閉じられた扉から視線を移し、目に入ったものは血だらけの左手を右手で押さえているゼウスだった。血だらけの左手の袖は鋭利な刃物で切りつけられたような痕が沢山あり、痕に沿って浅く焼けていた。
『っはは…流石ハデス兄様。この私でもこれか。』
「ぜ、ゼウスって魔法無効化EXでしょ?
なん、で?何で傷が付いてるの…?」
『簡単な事だ。魔法じゃ無かったという事。
もしくはスキル無効化スキルとかかもしれんな。』
「えぇ〜…?だとしたらチートじゃん…。」
『ま、私の兄上だからな。それくらい容易かろう。これだけ血を流したのは久方ぶりだな!はははっ』
ゼウスは笑いながら左手に右手を置いて滑らせると、傷が消えた。
「まぁ、ハデス様の炎の傷がもう癒えてしまいましたわぁ。ゼウス様って凄いですのね。」
クスクス笑うアムルさんをジト目で見るゼウス。美女に褒められるとデレデレするはずだけどアムルさんにはときめかないようだ。
…というかゼウスがこれならクロノスは?僕は振り返ってみた。
『…』
「!」
クロノスも左手が痛々しく怪我をしている…!やっぱハデス凄いな…敵に回したくない。
「わー派手にやられたねぇクロノス。リンネ〜!」
「はい、アマテラス。」
クロノスの横に舞い降りたアマテラスは鏡を両手で持ってクロノスの左手を照らす。
ニフラムさんは治療中のクロノスを見てから僕達に視線を向け
「じゃ、かいさーん。おつかれー。デバイスチェック忘れないようにねー。」
と軽く言って手を振った。
「え??」
軽すぎて拍子抜けする僕達に首を傾げるおじさん。
「え??元々解散予定だったじゃん。クロノスとハデスが色々やらかしただけで。」
「あ、確かに…。」
「それに、ウチの子のメンタルケアしないとだからさ。」
ちらっと後ろを見るような動作をしたニフラムさんの視線を追いかけると、壁に背中を付け座り込み、シュヴァルツさんを護るように抱きしめながら震える顔面蒼白のアスクレピオスの姿があった。
「トールにお説教させてもらわなきゃだからさ。だからお願い、今回は早く。」
「分かりました。お前ら行くぞ。」
ヒメリア先生に続いて皆が無言で一礼した後、足速に出ていった。
「あ、あの…」
『…マスター、原因は私とトールだ。早く去ろう。』
ゼウスの手が僕の背中に触れたので何も聞かずに去ることにした。
「う、うん…。皆さん、き、今日はありがとうございました。失礼致します。」
「うん、またね。」
「じゃなー!」
大きく手を振るアーヴァンと小さく手を振る皆さんに会釈し部屋を出て、城の外へ行き、長い階段をゼウスの手を取り浮かぶことで簡単に下り、すぐに馬車に乗り込めた。ゼウスは小さくなり、僕は先に中で待ってくれていたメルトちゃんに謝った。
「待たせてごめんね、メルトちゃん。」
「ううん、全く待ってないわ。」
「ありがとう。」
僕が乗ったことを確認した御者さんが馬車を走らせ始めた。何か話した方がいいかな、と考えているとメルトちゃんが僕を見て微笑んだ。
「緊張したねぇ。」
「そだねぇ。僕、会議中に何言ったか覚えてないよ。」
「カッコよかったわよ。ちゃんと受け答え出来てたわ。…エクス君がどんな感じで頑張っていてくれたのか分かって良かった。」
「え?」
「もし入学式でエクス君に声を掛けなかったら私、何してたんだろうなーとか思ったの。こんな豪華な馬車にも乗れていないだろうし…不謹慎だけどさ、今が少し楽しく思えたの。勿論、エクス君達皆との授業も楽しい!多分エクス君達とだからだよね。」
ふげぇ…元が可愛いのにメイクでもっと可愛くなったメルトちゃんが笑ってくれると心臓がドキッとする。
「そ、そそそ…そう、なら嬉しいな…。」
「うん!ねぇねぇ、明日ってどうなると思う?もう学校に戻るのかなぁ。」
「でもヒメリア先生が城下町で買い物させてくれるって言ってたし…僕達は買い物出来るんじゃないかな?頑張ったし。」
「あ、そっかぁ〜!嬉しいわぁ!んふふ、可愛いお洋服とか買っちゃおうかな〜♪」
こ、これは…もしやデートに誘えというイベントか…!!?いや、玉砕怖いからちょっと聞こう。
「め、メルトちゃんは…だ、誰と回るの?」
「んー女の子皆とかなぁ〜?あとスカーレット君に服選んでもらいたい!」
正面から玉砕の方が良かった…!!
横から様子を伺って砕けるなんてかっこ悪い!!
「そ、そっかぁ〜…。」
『こういう時はなんと言うんだったか。
えー…あ、そうだ。どんとまいんどだ。マスター。』
「煩いな…っ!」
「ど、どうしたの?」
『マスターに不埒な行動をとろうとした罰です。マスターはお気にならさず。』
メルトちゃんに告げたアテナの説明が刺々しい。そのままメルトちゃんの乗り物酔いが発動し碌に会話出来ずに病院へ戻り、各々お風呂に入ってベッドへ。何となく布団を被る。
「はぁあ…疲れたぁ…。」
『お疲れ様だ、マスター。』
小さなゼウスが布団の中に入り僕の顔の真横へ。皆に迷惑にならないように小声で話す。
「ゼウス、手は大丈夫?」
『うむ、心配要らぬぞ。』
ゼウスと話しているとアスクレピオスの事が頭をよぎる。
「…」
僕の表情で察したのかゼウスは口角を上げた。
『アスクレピオスだろう?私が原因と言ったのは彼奴を雷霆で撃ち殺したからさ。彼奴は死因となった雷が1番の恐怖となっている。故にトールがロキを脅すためのアレに心底怯えたのだろう。マスターだって自分が殺された理由の物があると恐怖で震え上がるだろう?』
「う、うん…。」
死にたい願望が無かった自分を殺したモノが再び目に映るのは恐怖以外の何者でもないだろうな。しかも殺した本人じゃなく他人からってのも怖い。…大丈夫か…な。
『む、寝たかマスター。…良い夢を。』
……
「ん…う…ぅん…」
ゴンッ
……ごん?寝返り打ったら何かが手に…。
何だ…?ゴワゴワして……
「うわっ!!」
黒い毛の塊!!何これっ!!
「ん〜…」
この声ま、まさか……シュヴァルツさん??
♢ミカウさんメモ
アスクレピオスは雷神であるトールの事がずっと恐ろしくて成る可く会話をしないように立ち回ってるんだって。でもその事はトール本人に隠してるらしいよ。よくバレないねぇ…。




