第96話『怯えた理由』
「おおぉぉおぉおばけっ!!おばけ!!」
おばけかどうかは見て確かめよう!!!
「うぇえぇぇ!!?」
前回のあらすじ
シュヴァルツさんがおかしくなってしまったのは精神疾患の1つ、幼児退行のせいだった。彼は多分ヒメリア先生の言葉で…いや、今はクロノスとゼウスの親子喧嘩が起こりそうな瞬間に現れた骸骨の人が怖すぎるのが問題だ!!!
…
「ぎゃあぁああっ!!おばけぇっ!!!!」
急いでゼウスの背後に隠れる僕。
何あれ何あれ!!!骸骨じゃん!!
身体の肉付き良いのに顔面骸骨って何!??
顔だけ髑髏ってこと!??
『これマスター。あの方は私の兄上だぞ。
冥界の王ハデスだ。』
「は、はでっハデス??」
『あぁ。ハデス兄様はとても優しい心の持ち主だ。大丈夫だぞマスター。』
恐る恐るゼウスの背中から顔を出し、ハデスと呼ばれた髑髏さんを覗き見ると、彼はスケッチブックのような物を取り出してきゅぽんとマーカーのキャップを外しサラサラと何かを書いた。え、スケブ?マーカー?
書けたのかこちらに見せる。
“驚かせてごめんね。
ゼウスがいつもお世話になってます。”
とめちゃくちゃ綺麗な字が。しかも僕宛。
僕の頭は混乱中だ。
“ドクロはお面なんだ。コレが無いと色々困るの。
だから、本当に驚かせるつもりはなかったんだ。”
『な?』
あれ…めっちゃいい神じゃね?
“それと、お父様とケンカはダメだよゼウス。”
『む、私か?』
“お父様、コソコソしている私に気付いて怒ったんだから。だから、今回はゼウスが悪い。ちゃんと謝ろう。”
『えぇー…。』
“謝ろう!”
『えー…。』
渋るゼウスに謝ろう!と書かれたスケッチブックを上下にブンブンと振るハデス。それでも謝ろうとしないゼウスを見て
“謝れ”
と短く書き直した。
言い方変えただけじゃ…
『すみませんでした、父上。』
ふっつーに頭下げた!!!?
「だって、許してあげたら?クロノス。」
『…』
ふいっと視線を逸らしたクロノス。
許してくれたのかな。
「だって、許してくれるらしいよ?ゼウス。」
あ、許されたんだ。全くわからん。
『……ぐぬぬ…。私が嫌なくせに…っ』
「ごめんね、ハデス。
今回もそのー…呼ぶの忘れた…。」
そう言うニフラムさんを始めヴァルハラの人達、先生達はバツが悪そうに目を逸らす。
今回もって…結構呼ばれない可哀想な人なのかな…?それにハデスはペンを走らせる。
“だと思って主の代わりにずっと後をつけてました。姿を隠して。”
ずっと後をつけていた?
“そこのお嬢さんにはバレてたみたいですけど”
と、イデアちゃんを指さした。イデアちゃんはビクリと肩を震わせてロキに抱きつく。
「ろ、ろきぃ!」
『(うわ役得。じゃなくて)マスターが怯えていた理由はアンタか。ハデスサマ。パーティーの時に何かいるとは思ってたけど。』
ロキの質問にこくりと頷くハデス。
イデアちゃんはユリウスさんが怖かった訳じゃないんだな。
“そっちに近づいても良いかな。ちゃんと謝りたい。”
『だってよマスター。どうする?』
「…貴方が謝る理由なんてないもん。あたしが勝手に怖がってるだけだから…。」
ロキの後ろで震えるイデアちゃんは頑張ってハデスを見ているように思える。
“君はとても優しいんだね。ごめんね、私の事が見えてると思わなかったから。目が合ったのもたまたまだと思ってたんだけど…ずっと怖がってたんだよね。
私がラジエルのマスターの後ろにピッタリくっついたから。”
スケッチブックにはちゃんとそう書いてある。
ピッタリくっつかれていたらしいユリウスさんの顔にも汗が一筋垂れる。
「…わ、私の後ろにぴ、ピッタリ…?」
“いえす。”
急にフランク!!
「てっきり私の本性がバレて恐れているのかと思いました。なぁんだ残ね…安心しました。」
自分で言うんだ…。
ハデスはふわふわと浮かびながらこちらに近付いてくる。お面と分かってもやっぱ怖い!!死神がこっちに来てる!!
『兄様、姿を隠す必要はもうありませぬ。面を外せば怖がられませんよ。』
“顔見られるの恥ずかしいから”
は、恥ずかしいって…そんな理由!?
『何を言う。私と似たような顔ではありませぬか。隠すなど勿体ない。』
ゼウスと似てるって…相当イケメンだぞ…。イケメン死すべし!と思いつつも見てみたい。
『それに優しい兄様が怖がらせて泣かす事など…胸が痛みますよね?』
ゼウスは手を広げシュヴァルツさんと女子生徒を示す。ハデスはそれを見て少し固まり、その後スケッチブックに文字を書く。
“外して謝ったら付けていい?”
『それは兄様のご自由に。』
スケッチブックとマーカーを置き、瞬間移動くらいの速さでイデアちゃんと距離を詰める。
「ひぇっ!!」
『…』
そして髑髏のお面を外した。
『…怖がらせてごめんね。ロキのスキルで見えるの知らなかったんだ。』
「あ、あたしの方こそ…勝手に怖がって…ごめんなさい。」
『君が謝る必要は無いのに、優しい子だね。』
イデアちゃんの頭を黒い手袋を付けた手で撫でたハデスは一瞬で置いたスケッチブックの元へ戻った。顔には既に髑髏のお面が付いている。
待て待て待て、すっごいイケメンだったぞ…!?僕の位置からして横顔しか見れなかったのにイケメン過ぎるとよく分かる!!
冥界の王なのにキラキラが見えるよ!!?
“恥ずかしかった”
髑髏の面が照れてる様に見える僕は末期なのか。
そんな事を考えている僕を引っ張るようにロキがハデスに問いかける。
『なぁイケメンさんよ。何故俺のスキルがそーゆーのだって分かったんだ?』
確かに、何でだろう。
“勘かな?”
勘?
『勘って…おいおいマジかよ…。自分から白状しちまった…。』
『ロキ、貴様のスキルを教えよ。』
わ、トールの声初めて聞いた気がする…!
会議前のパーティーでトールに土下座していたロキはその出来事を思い出したのか肩を震わせる。
『い、いや〜…味方でも手の内明かすっつーのはぁ…し、信頼問題と言うかぁ〜…』
途端にトールから大きな雷が爆ぜる音が聞こえる。やばい、僕がロキだったら泣いてる。それくらい怖い。
『告げよ。』
『“嘘の代償”と言います!!効果は相手の真実を知ることが出来るのです!変身魔法とか自分を偽る魔法を使っている奴が分かります!!分身や透明化も本体を見抜けます!!マスターもそんな感じでっす!!』
涙目のロキはイデアちゃんの後ろに隠れながらそう伝える。成程、イデアちゃんはそのスキルのおかげでハデスに気づいていたのか。
…え?変身魔法を見抜けるの?それって…
「アビスを見つける1つの手段ではありませんか!」
僕の代わりにユリウスさんが言ってしまった。
トールはロキにゆっくりと近付く。
『何故それを会議時に言わない?』
1歩、また1歩とロキは退き、トールは進む。
『えっ!?いやほらだってぇ…アンタ達を信用してないわけじゃないんですけどぉ〜…いくら味方でも簡単に手の内バラしたくないでしょう??ラジエルのマスターだって同じタイプだろ!!』
遠くから指をさされたユリウスさんは眼鏡を掛け直す。
「まぁ否定はしません。それが真実かも分かりませんし。」
『今回は本当です!!つか疑うならアンタの召喚獣に聞けよ!!』
ちらりとラジエルを見るユリウスさん。
ラジエルはフルフルと首を横に振る。
「真実みたいですね。ではリンネ、ロキの召喚士を今回は貴女が引き抜いたのですからその辺はよろしくお願い致しますよ。」
「はーい、了解しました。メルトちゃん、イデアちゃん。頑張ろうね。」
「「は、はい!」」
『お?(よくよく考えればラッキー…召喚獣含め女性しかいねぇじゃん!両手に花〜♪どころか周りに花〜♪)』
トールを恐れていたはずのロキの顔が嬉しそうに綻ぶ。うわぁ…絶対変なこと考えてる…。
ちらっとニフラムさんを見ると彼は目を泳がしながら口を開く。
「あ〜えーと、おじさん話ししていい?あのさ、ハデス。この事アイツは知ってるかな。」
“えぇ、ご存知です。いつものように大きなでばいす?を使ってニヤニヤしておりましょうぞ。”
「うーん…良かったと言うべきか見られていることに震えるべきか…。まぁ見られているのはいつもか。君のマスターが乗り気ならこちらとしても助かる。手伝ってくれる?」
“はい、私と主も助力致します。主が興味を持たれた方に電話するとの事ですよ。”
電話?ヴァルハラの人に電話なら言葉の意味が分からないぞ?
と首を傾げた瞬間、タイミングよく僕のズボンのポケットに振動がくる。ま、まさか…
デバイスを取り出すと『非通知』と書かれた画面が。下にはフリックして対応とも表示されていた。
皆を見ると頑張れと片手をグッと握るポーズを取る。
“主からのお電話ですよ。ゼウスのマスター。”
出ない訳にはいかないよなぁ…。
僕は思い切って電話をとった。
「も、もしもし…」
♢ミカウさんメモ
ハデス様はゼウス様よりイケメ
うわ、怒られて紙破られた!!!




