第95話『うわ、不穏』
アスクレピオスの胃に穴空いたんじゃないかな。
「もう既にゼウスやアポロンにキレてましたしね…。」
前回のあらすじ
やっっっと会議が終わりました…。
スマホも貰えたし、ご飯は美味しいし頑張ったかい
あったなーと思おうとしたその時、早速貰ったスマホが震えました。それはニフラムさんからのメールで、おかしくなってしまったシュヴァルツさんについての事だった。
…
「あしゅ、あーん。」
『あー…ってでかいぞシュヴァルツ。
私の口は蛇ほど開かん。もう少し小さく切って』
「あーん!」
『もががっ!!』
アスクレピオスの小さな口の中に結構大きめの鶏肉が捩じ込まれた。あぁ…今日は彼の命日だろう。
するとまたスマホが震える。
“今のシュヴァルツは子供っぽいよね。
シュヴァルツは精神疾患の中の幼児退行を患っているんだ。”
幼児退行…確か心が子供に戻っちゃうやつか。
別名赤ちゃん返りだったかな。
“何かの拍子であぁなるみたいでね。記憶力は抜群なのにそれがあるから大変なんだ。手術中とかになると
困るからね。でも薬は無い。幼児退行は心を、自分を
守るための正当防衛な訳で薬でどうこうできる問題じゃない。”
でもアスクレピオスは薬を渡していたはず…。
“アスクレピオスが渡していたのはただのお菓子さ。
人間の脳みそって結構都合良く作られてるからね。
思い込ませるんだって。何だっけ?”
あ、それは多分…と思い僕は指を走らせる。
“プラシーボ効果というやつですね。”
送信っと。んーっチキン美味しいなぁ〜…!
イデアちゃん大丈夫かな。
あ、良かったちゃんと食べてる。
「ニフラムさん、ヨシュアちゃん休ませてあげたいから私とルプスは帰ります〜!」
ラブラビ先生の声へ向くとフェンリルに跨った
ラブラビ先生、ルプス先生が見え、ルプス先生の腕の中に気を失ったヨシュアが居た。
「うん、お疲れ様。ご飯はそっちに持ってかせるから安心してね〜お休みー。」
ヴァルハラの人達は彼らに小さく手を振った。
ラブラビ先生も手を振りフェンリルでその場を後にした。ルプス先生ちょっと涎出てたな。
「皆さん静かですね?お話しましょうよ。」
ユリウスさんがにこやかに笑い話を切り出す。
「はなすー!」
シュヴァルツさんが反応しパッと手を挙げる。
それを腕で止めるアスクレピオス。
『こら、行儀悪いぞ!』
「むーっ!」
精神疾患、か。余程の事があったんだな。
「ほら、シュヴァルツ君もそう言ってますし、ねぇ?お姉さん?」
「ねーね!」
お姉さん?とユリウスさんが言った瞬間、シュヴァルツさんはパッとヒメリア先生に手を伸ばす。
ヒメリア先生はくすりと笑った。
「あぁ、ねーねはココだぞ。
いつもすまない、アスクレピオス。」
『………慣れた。』
舌打ちしそうになって我慢した渋い顔だ。
「キラキラ!」
シュヴァルツさんはスピルカ先生とアストライオスを指さした。
「おう!お星様がキラキラだぞーう!」
「はんぶんこ!」
それはシオン先生。
「…えぇ、半分…ですね。」
先生、顔が引き攣ってます。
「へんなわかめ!」
これは絶対にヨガミ先生だ。
「っははは!何だとクソガk」
『ヨガミ抑えて!!多分ボクも一緒にされてる!!』
アポロンの制止によってヨガミ先生は歯を食いしばりながら席に座る。
「おめめ!」
指をさされたオペラ先生は肩を震わせる。
それを見て楽しそうに笑うシュヴァルツさん。
それからリーレイ先生を指さした。
「ふわふわ!」
「はぁい、ふわふわよ〜!」
先生に渾名を付けてご満悦のようだ。
「ふふ、可愛いですこと。」
シュヴァルツさんのお陰で会議の時の硬い空気が緩和されたように思う。あ、スマホが震えた。
“よく知ってたね。あぁなったら時間しか解決出来ないんだ。不思議なことに、いつの間にか元に戻ってるんだよ。”
時間?時間ならクロノスが時を進めれば良くない?
“もし、クロノスの事を考えたのならおじさん、
無理だと答えよう。”
思考を読まれた…。
“精神状態が不安定なまま時を進めれば、
勝手に進むが故に彼の心が耐えきれなくなり壊れる。
心というものは非常に脆いんだ。
大切な物を壊したくはないだろう?
仮に壊れた後に時間を巻き戻して心を戻すという事をしても、時間の軌道を遡るだけで時間が経てば必ず、敷いてある心が壊れた道しか進めない。所詮結末から逆行しているだけなんだ。その間とはごく僅かしかない。だから見守ることを選んでいるんだ。”
ヴァルハラの人も大変なんだなぁ…。
“シュヴァルツは生死に敏感だ。ヨガミ=デイブレイク先生と同じくらいにね。シュヴァルツの方がメンタル的にも脆く、過剰に反応する。気を付けてほしい。
って言うのを皆に伝えてくれる?”
自分で言えよ…と思いはしたけど僕は
“分かりました、伝えておきます。”
と書いた。
今更だけどニフラムさんのアイコンが時計だから圧を感じる。
スマホをしまうと鶏肉の次はスープが出てきた。
うん?順番バラバラなのかな。何の順番これ。
前菜とかそういうのじゃない?
「ちなみにコレはシュヴァルツプレゼンツなので
こんな順番でーす。文句は受け付けませーん。」
とニフラムさんがまたも僕の思考を読む。
え、怖っ。素直に怖っ。
「気にしませんわ。美味しいですから。
いつも同じ順番は飽きてしまうもの。」
そう言うアムルさんに頷く僕達は暫く食事を楽しんだ。その間シュヴァルツさんが元に戻ることはなく、髪を引っ張られたり料理を口にねじ込まれたりして
何度かアスクレピオスの胃に穴が空きそうになった。
多分空いた。だからこそ限界になったアスクレピオスがニフラムさんを睨みつけた。
『おい…早く終わらせろ…もう限界だ…。』
「そんな訳で皆食べ終わった?」
「デザート美味しかったね、シュヴァルツ。」
リンネさんが話しかけると子供らしい笑顔で頷いた。
「うんっ!」
「良かったよ。皆会議お疲れ様。今回はこれで終了…だけど、君達は悪いがこれから暫くは参加してもらう。」
マジかぁ…。
「明日学校の破損部分の修復が終わる。他の生徒も意識が回復次第授業を開始してね。じゃあ今日は解散」
ニフラムさんが立ち上がろうと机に手をついた瞬間
『っ!』
隣にいたゼウスの首元スレスレを何かが通る。
彼は首筋を最小限左に傾け避けた。
その分、髪に穴が空く。
「ゼウス!」
『大丈夫だマスター。しかし…随分なご挨拶ですね
父上。会議は終わったはずですが。
いえ、終わったからですか?』
ゼウスの視線の先には手を前に突き出しているクロノス。ゼウスが避けた後ろの壁には大きな時計の針。
『…』
『っくく…良いですよ。また殺りますか?』
『…』
『嘗めておりませんよ。兄上達を腹に入れていない
父上なぞ私の敵ではございませぬ。』
クロノス黙ってんだけどゼウスにテレパシーでも
送っているのかな。てかニフラムさん止めてくんないかな。怖いんですけど。
『マスター、父上と戦おうぞ。』
「は?」
ゼウスは口角を上げている。
『父上は私が嫌で仕方ないそうだ。
ハデス兄様とポセイドン兄様を助けた後のあの戦いをもう一度。10年ではなく10分の簡易的なティタノマキアを。…いや、父上が時の神クロノスとシステムに同一視されたことにより色々面倒臭い訳だが。如何でしょう?父上。』
『…』
クロノスが地に降りた時、やっとニフラムさんが口を開き
「クロノス、乗るな。お前が暴れると俺がアイツに怒られる。ゼウスもだぞ。」
先程のクロノスの大きな時計の針が刺さり抉れた壁を指さした。ゼウスは気付いたらしくとても嫌そうな顔をする。
『げ。』
「え、何?時計の針以外何も無いよ??」
『いや、マスター。最初からあの神は居たんだ。…私でも気付かなんだ。挨拶が遅れてすみませんでした。お久しゅうございます。
ハデス兄様。』
ゼウスが微笑みかけると何も無かった壁が歪み、
ゆっくりと形を成し、黒装束の人型が下を向いて現れた。こちらをゆっくりと向く人の顔は
骸骨だった。
「ヒュッ」
僕達生徒があの神を認識した瞬間、驚きと
恐怖で悲鳴をあげた。
悲鳴は生徒だけじゃなく、ヨガミ先生とアーヴァン、ディアレスさんのも混じっていた。
次回、ハデスとお話します…!!




