第89話『報告します』
今回から事件振り返りです!
「前の話何回も読んでますよね。」
間違えないように気を付けてるんだよ…。
「皆さんも良かったら振り返って見てくださいね!」
前回のあらすじ
円卓会議が始まり、僕が言えと言われました。どうやって話そう…。
…
「えっと…事件の始まりですよね…。えっと…」
まずい何て言えば良いんだ!?何処から話せば良いんだ!?
「うふふ、固まってかーわいっ!そんな緊張なさらないで下さいまし。」
とアムルさんが言ってくれたことによって少し落ち着く。
「えっと…僕達はアビスが怪しい薬を作って生徒に渡している事を嗅ぎつけて…こっそりと調査していました。」
ユリウスさんは何かを書きながら僕を見て口を開く。
「怪しい薬?何故アビスが作って渡していると?」
「えっと…話が今回の事件より少し遠くなってしまうのですが…授業が終わったとある日に、気になる事を生徒が話しているのを聞きました。内容は僕、エクス=アーシェにアビスが作ったこの薬品を嗅がせればお金がたんまり手に入る、との事です。」
ヴァルハラの人達だけでなく、リーレイ先生達も小さくリアクションしている。
「それでゼウスがその生徒から話を聞き出してアビスから貰ったという黒いカプセルの薬品を盗ん……預かってくれて。ミカウという方に薬品の事を聞きました。するとその薬品は召喚士の魔力を闇に染め廃人とし、召喚獣を闇に堕とすという物でした。」
「!」
スピルカ先生以外の大人が目を見開いてる。ヴァルハラの人達まで…知らないのか知らないフリなのか…。まぁいいや。この流れなら僕は話せる。急ごう。
「僕達はその薬品の事を堕天と呼ぶことにしました。」
「闇に堕ちるから堕天…ふふ、皮肉ですねぇ。」
「ユーリさん(怒)。ごめんね、エクス君。続き頼める?」
リンネさんは怒らせないどこ。
「は、はい…。実際に彼は1度授業中に堕天を使用していました。ゼウスが預かったのは再びアビスからもらった物だと思います。
…翌日、堕天使用者の彼は授業中に暴走しました。」
「吸ったエクス君じゃなくて?」
「はい、僕は平気でした。堕天は僕をターゲットと思わせて本当は使用した本人を陥れる物でしたので。」
「暴走とはどういったものでしょうか?」
ユリウスさんはクルクルとペン回ししている。
「彼の召喚獣は色がくすみ、召喚士の魔力を吸い続けることにより強くなってました。魔力を吸われる召喚士は錬金術で作ったナイフを振り回していました。」
「成程…召喚獣により多くの魔力を渡す為にって事ですかね…。ふんふん…」
ユリウスさん、報告書でも作っているのかな。なら特にちゃんと伝えないと。
「召喚士は口がきけなくなり叫ぶことはあっても喋ることはありませんでした。あ、そうだ。あの、吸われていたのは魔力だけじゃなくて…生気まで吸われていました。そのせいか召喚士はだんだんと痩せ細ってしまっていました。召喚獣を倒しても自然には治りませんでした。なので治療を…」
僕はちらりとラブラビ先生を見た。
「ま、ラブラビちゃんですの?」
僕の目線に気が付いたアムルさんに頷いたラブラビ先生は言葉を紡ぐ。
「はい、そうです。彼は見た事ない症状で焦りました。贅肉が無くなり骨と皮になった彼は見るに堪えない状態でした。パナケイアの回復魔法で元の姿に戻せました。でもその後に…目覚めた彼は…忘却魔法のようなものを掛けられており、暴れた記憶も無く、更にはアビス=アポクリファという存在を忘れ発狂しました。」
「えぇ!忘れちゃったのかー?折角の手掛かりなのにぃ…」
「アーヴァン、しー…。ごめんね、ラブラビちゃん。続き頼むね。」
ニフラムさんに頷いたラブラビ先生。てかお偉いさんにもラブラビちゃんて呼ばれてるんだ。
「それで困っていたら生徒のスカーレット=アルカンシエル君がえーと…ショック療法を施したところ、記憶が戻りました。」
「ショック療法?」
今まで“分かんね”と言う顔をしていたディアレスさんが円卓会議始まって以来初めて喋った。
僕も内容知らないけどそれは聞かない方がいいと思う…嫌な予感…。
「スカーレット君、それは一体…?」
興味津々なユリウスさんに視線を向けられ、目を閉じたスカーレット君。やがて目を開け
「グーでちょっと。」
と笑顔になった。
…殴ったんだな。
「…なるほど、確かにショック療法ですね。」
ユリウスさんが眼鏡を掛け直した…。
ちらりと見える口元が緩んでる…。スカーレット君はその場で手を挙げた。
「あの、それについて発言しても宜しいでしょうか。」
ニフラムさんは両肘をついて組んだ手に顎を乗せて微笑んだ。
「うん、良いよ。」
「ありがとうございます。私はラブラビの治療をロキの召喚士であるイデア=ルークスと見ておりました。そして彼が目覚めた後、ラブラビの言う通り彼に暴れた記憶が無く、その時は頭がぼんやりとしているからか静かでした。私は堕天の事をエクス=アーシェに聞いていた為、調査に協力しておりました。故に彼に堕天を誰から貰ったかという言質を取ろうとしました。その時、アビスが思い出せないと発狂しました。
あまりにも様子がおかしかったので私の召喚獣イーリスに彼を診て貰うと、特殊な忘却魔法だと言いました。思い出そうとすると彼の記憶や精神が犠牲になるとか。」
「それで何故ショック療法をお試しに?」
薄ら笑いを浮かべるユリウスさんにニッコリと微笑み
「アビスの事を知りたかったし取り敢えず殴れば良いかなって。」
殴ったって言っちゃったよ。
「っくくく…そうですか。貴方とは気が合いそうだ。」
笑うユリウスさんの顔を嫌そうな目で見てから微笑んだ彼は
「どうも。言いたい事は以上です。」
と話を終わらせた。
「はーいありがとね〜。シュヴァルツ、今入院してる子達もそんな感じ?」
ニフラムさんはシュヴァルツさんをチラ見。
「…はい…。しかし…発狂、は無かった子が多かったです…。覚えていないって言って…落ち着いてました…。…君も堕天被害者だよね…?
クリム=アルカンシエル…。」
来た…やっぱり被害者としてか、クリムさん…。
「は、はいぃ…。皆さんが何についてお話されているのか…さっぱりで…。」
「ふむ…アビス=アポクリファをご存知でない?」
「はい…。」
「暴れた記憶は?」
「それが何も…あ、でも手に嫌な感触が」
「覚えていないと言っています。それ以上聞くことは出来ないと思いますよ。」
クリムさんを守るようにスカーレット君が質問したユリウスさんを睨みながら口を挟んだ。そんなスカーレット君を見たリンネさんは円卓に手を置いてユリウスさんを見る。
「…僕もそう思います。ユーリさん、楽しむのやめてください。」
「楽しんでませんよ。聞いただけです♪」
ニフラムさんもジト目でユリウスさんを見る。
「ユーリ、俺も注意しとくぞー。で、その生徒が暴走した日っていつ?」
だ、誰が言えば良いんだ?あ、皆僕を見てる。く…言うしかないか。
「じ、事件当日です。」
「マジか…。その間のアビスの行動は?」
ニフラムさんを見ながらシオン先生が右手を挙げていた。
「シオン、頼むよ。」
「はい。事件当日の事をお話致します。
午前中、彼は授業に参加しておりました。ですが午後は姿を晦ましておりまして。授業が無い私は彼を探しておりました。昼休憩にアビスの話をスピルカ=アストレイから聞いて部屋に入りたいと言われた為、部屋以外を探しておりましたが見つからず。授業終わりに事情を知っているエクス=アーシェ、メルト=ガーディア、ヨシュア=アイスレイン、スピルカ=アストレイと共にアビスの部屋へ。非常時に備えアビスの部屋に入ったのは私とエクス=アーシェだけです。部屋を開けた途端、謎の紫の煙が吹き出てきました。それは忘却香という物でした。ゼウスとアストライオスのお陰で全員煙を吸うことは無く、私とエクス=アーシェは部屋の中に侵入成功。しかしアビスの姿は無く、残された退学届を発見しました。それの内容はシュヴァルツ殿に伝えた通りでございます。」
忘却香の事はアビスの退学届に書いてあったんだよね。
「質問ですわ。シオンさん、部屋は寮ですわよね。授業終わりならば他の生徒も部屋に居たかもしれませんわ。その点どうされましたの?」
「生徒3人とスピルカ=アストレイの協力で先に避難させておりました。」
「避難って言っても寮の外に出ろ、というだけです。…ですから面倒は見ていませんでした。」
スピルカ先生の言葉に頷くシオン先生。
アムルさんは右の巻き髪の先端を指で弄っていた。
「へぇ…それはまた無責任ですのね。」
「「…すみません。」」
先生2人が頭を下げた。でもこんな大事になるとは思わなかったしな…。
「…その時姉さんは…何してたの…?」
シュヴァルツさんが自ら発言した。次はヒメリア先生か。
「私は何も気付けなかった。堕天の話も今初めて聞いた。…だから授業が終わったあと、早々に教室を出てしまった。」
ヒメリア先生の拳に力が込められ、小刻みに震えている。シュヴァルツさんは無表情のままだった。
「…そう…。姉さんもシオン=ツキバミさんも居ない昼休みくらいに…多分堕天が配られていたんだろうね…。あれ…何で…症状が出たの…?皆が…使ったの?」
こてんと首を傾げたシュヴァルツさんは何故かユリウスさんを見た。視線を感じた彼はペン回しを止め、リリアンさんに視線を移す。
「リリアン=ナイトイヴさん。貴女アルファクラスですよね、何かご存知ですか?」
「…はい。シュヴァルツさんの言う通り、昼休みにアビスが私にも話しかけて来ました。その時、私は図書館に居ました。彼は私の肩を優しく叩いて黒いカプセルを差し出し、“これを持っててくれない?僕の大切な薬なんだけどお水忘れちゃったから”と。私はそのままポケットに入れておけば良いのでは?と言ったら無理矢理持たされ、仕方なく持っていました。しかし話しかけられたのは私だけみたいで…授業前、教室でテト=カムイという子は“アビス君と肩がぶつかっちゃったんだよ。彼って何か不思議な人だよね”と私に話しました。彼女は薬を貰った、とは言ってませんでした。その話を他の生徒の皆さんも聞いており、貴方も?という会話で溢れました。」
「つまりスリのような手口で物を取るのではなく、仕込んだ…という事ですか。ふむ…慣れてますねぇ。ですが貰っただけならば症状なんて出ませんよね。」
ユリウスさんはそう言ってまたペン回しを始めた。リリアンさんはユリウスさんの手元を不思議そうに数秒見たあと、我に返ったのか小さく頷きながら返事をする。
「はい。症状が出た理由ですが…渡された堕天は勝手に弾ける仕組みだったようです。私のカプセルが勝手に弾けたところを見ましたので間違いないかと。」
「!」
そう…それが怖いところ。モーブと違って自らの意思じゃないことはおろか堕天の存在にすら気付かないという…。本当にクソ野郎だ…。
「リリアンちゃん、カプセル弾けるところを見たのに無事なんだね?」
リンネさんが手を組みなおしながらリリアンさんを見つめる。
「私のカプセルは何故か他の皆さんと違って弾ける時間が遅く、皆さんに異常が出ても何ともありませんでした。平気だったアルファクラスの生徒は私だけだったので、アーサーと2人だと異常が現れた皆さんの対処が難しく、誰かに助けを求めようと教室を飛び出した時、ローランド=ローゼンさんとシャーロット=アルカディアさんが助けて下さり、堕天の存在を知りました。そしてまだ弾けていなかった堕天を投げ捨てた瞬間、カプセルが独りでに弾ける瞬間を見ました。」
「良かった、2人のお陰で間一髪だったんだね。」
リンネさん、微笑むと女性みたいだな。(※女性です。)
リリアンさんもローランド君とシャル君を見てから頷いた。
「はい、そういう事になりますね。」
「ふーん…成程、時間差は何か理由があるかもね。だって最初に暴れた生徒は使用した翌日なのにアルファクラスはその瞬間なんだから。じゃあシャーロット=アルカディア君、ローランド=ローゼン君、君達は何をしていたんだい?」
ニフラムさんの瞳が2人を捉える。
ローランド君が小さく手を上げた。
「では僕は短く話せますのでお先に。」
ローランド君が真面目に話しているの変!
「じゃあローランド君、頼むね。」
「はい。僕はシャーロットと別行動でアビスについて探ることにしました。手っ取り早いのはアビスと同じクラスメイトだと思い、アルファクラスを訪れてたら、アルファクラスの生徒達が黒いオーラを纏って色のくすんだ召喚獣を出して暴れる手前でした。そこで唯一対処しているリリアン殿とアーサー王を発見し、協力して何とかしようと思ったのですが数の多さと強さに手が負えず、リリアン殿に助けを求めるように言いました。そして連れてきたシャーロットと合流しました。」
「何で別行動したんだー?」
アーヴァンの疑問は僕も感じた。…あれ?そういえばローランド君もシャル君もあの時格好違ったよな…。必死すぎてあんま覚えてないけど…。
「僕達が探ってるとバレないように変装していて、シャーロットがじょそ」
「そう!変装していましたし急いでましたし多くの人に話を聞きたかったのでそうしたのです!」
ローランド君の言葉を遮ったシャル君の顔はとても焦っていた。じょそ……あ、女装。
普段とあまり変わったところなかったから気付かなかったけど確かに格好がワンピースだったような…。
「…そういえば最初…女の子だと思った…。格好がピンクのワンピースだったし…。」
あ、バラされてる。
「ほう。…シャーロット=アルカディア君は、女装していたっと…。」
ユリウスさんなんつーことをメモってんだ。
「うぅ…。」
『落ち込まないで!可愛いマスターも魅力的だったわよ!』
アルテミスのフォローに尚のこと落ち込むシャル君。彼のおかげで場の空気が少し軽くなる。話が逸れたことを察したニフラムさんが軌道を戻す。
「えーと…シャーロット君…でいいんだよね?シャーロット君は何してたの?」
「はい、お伝え致します。」
次はシャル君だ。
皆が戦う前に何していたか分かるのは助かるな。
♢ミカウの手記♢
☆ユリウス=リチェルカ
召喚獣:ラジエル
♢ミカウさんメモ
見た目は仕事が出来るエリートって感じ。銀のフレームが輝く眼鏡が目印で常にシワ1つ無いスーツを着ているからパーティーでもあまり服装に違和感は無いみたい。
召喚獣ラジエルは天使でキラキラ光る紺色の翼が特徴だね。皆のことを記録してるんだって。
羽ばたいているのに無音無風だから彼に気付かないで自由に動いてあーんなことやこーんなことを見られて弱みを握られちゃうんだ。…なぁんかお兄さんと似てるなぁ…?




