第85話『2人のセンス』
ヨシュア君可哀想回!
「えぇ!?ヨシュアが!?」
ちなみにもうすぐパーティーが始まるよ!
「うわぁ…」
前回のあらすじ
メルトちゃん達が会ったヴァルハラの人が気になるけど取り敢えずは皆無事でした。
ヘルメスだけはちょっと大変だったけど…。それはさておきスカーレット君がデザインしたドレスを女の子達が着てファッションショー開始!
え?僕も?
…
「あ、メイク道具が無いわ。困ったわね…。アタシ、寮に持ち込んだのは自分のメイク道具だけだし…
うーん…使おうにも色が足りないわ。」
スカーレット君、メイクしてたんだ。どうりで美人な訳だ。…あ、薄くってのは分かってるよ。
元が良いってやつだと思う。
「話は聞いたぞ、アルカンシエル。」
あ、この凛々しい声は…
「ヒメリア先生!」
ヒメリア=ルージュ先生が部屋に入ってきた。
「事件解決に貢献したお前達にご褒美を、という話でな。会議が終わった後、ヴァルハラのメンツによく耐えたという意味を兼ねて1日城下町散策を許可する。
特別にお小遣いもやるさ。」
マジで!?お金貰えるし城下町歩けるって最高っ!!ゲームの世界を歩けるなんて!!
「それと今、生徒達全員に欲しいものを1つ聞いている。お前達の欲しいものは何だ?」
え、全員で1つじゃなくて1人1人に!?
なんと言う大盤振る舞い!!何にしよう!
「うーん…あ、はい俺は美味しもがもがっ」
レンの口を手で塞いだスカーレット君。
「先生、会議の用意は自分達でやらなきゃいけないのよね。」
「あぁ…悪いがな。
だけど皆、様になってるじゃないか。」
ヒメリア先生に褒められて嬉しそうな女の子達。
そりゃ美人に褒められたら嬉しいよなぁ。
「それでね、先生。見てわかる通りヘアメイクの道具が無いの。だから全員分のお願いを使ってメイク道具を揃えて貰えないかしら。
アタシが使っているブランドで。」
…今全員分のお願いを使ってって言った?
「っふふ…良いだろう。ブランドは?」
あぁ、勝手に話が進んでいく…。
「Silent Change
Lovers list
Royal Sugar
最低でもこの3つあれば良いわ。
本当はもっとあるのだけれど。」
呪文かなぁ。あれ、メルトちゃんやリリアンさんの顔が引き攣ってる。
「ぜ、全部ハイブランド…。」
「さ、流石ですね…。」
「ふふ、贅沢だな。よろしい。
シオンと買いに行ってくるから待ってろ。」
「1つのブランドで1式よ!だからファンデからリップまでを3ブランド分よ!」
「分かってる。ちょっと待ってろよ。」
シオン先生を連れてくんだ…腕大丈夫かな。
「ぷはっ!ひどいよスカーレット君。
俺美味しいもの食べたかったのに!」
口を解放されたレンが頬を膨らませた。
確かに美味しいもの…か。僕昨日の夕飯が散々だったからな…。今日の朝ご飯は美味しかったけど。
「どうせパーティーで食べられるわよ。それにアンタらも顔が良くてもメイクしないと服に着られるわ。
そうならないようにアタシがやってあげるの。
感謝なさい。」
「ぶー。」
「え、僕達もメイクするの?」
「は?当たり前じゃない。え、まさかスッピンでパーティーに参加しようとか思ってる?考えられないわ。もしそのつもりならアタシに近づかないで頂戴。」
「す、すみません…。」
酷い言われようだ。
僕の顔を見たスカーレット君は小さく息を吐いた。
「アタシのメイクでカッコよくなれるのよ。その機会をみすみす逃すの?ねぇ、貴女達?
見たいと思わない?」
彼は女の子達に視線を向け同意を求めた。案の定皆頷く。そしてメルトちゃんと目が合うと彼女は可愛く笑って
「カッコいいエクス君が見たいわ〜!」
と言った。カッコいい…僕を…見たい!??
カッコいい…僕を!??
「スカーレット先生ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します!」
「え、えぇ…(お辞儀の角度が90度…)良いわ。アンタ達もメイク道具が来る前に服の準備よ。召喚獣に頼んで作って貰いなさい!文句は言うわよ!」
よっしゃ!!頼むよゼウス!
僕達は召喚獣を小さなサイズで呼ぶ事にした。
【summon】!
『大分早い呼び出しだな、マスター。良い良い。
頼られるのは良い事だ。して、何用だ?』
「パーティー用の服作って!」
『分かった。む…だがその前に気絶していたヘルメスの解析がたった今終わった。』
ヘルメスは部屋に戻る途中で僕が本に戻したんだ。
ゼウスはほんの一瞬だけ本に戻ってもらったんだけどその間に解析してたんだな。
『結果、何も得られなかったようだ。』
「え?」
『開始早々に何者かに見つかったようでな。
探れなかったらしい。』
そういえばメルトちゃんもリリアンさんも、クリムちゃんとヘルメスがヴァルハラの男に捕まったって言ってたよな。名前は確か…
「ユリウス=リチェルカ…!」
見た目は知らないけどヤバそうな感じだ。
メルトちゃんが目線を下げながら口を開く。
「あの人、聞きたいことがあるならこっそりとではなく私に言ってくれって言ってたわ。
やっぱり怖い人ね。」
「絶対クリムに近づけさせない…。
さぁ、アンタ達!そんな奴にバカにされない為にも早くやるわよ!シャルちゃんは無理しないこと!良いわねアルテミス!」
『はーい!』
小さく呟いた後、手を2回叩いて切り替えるスカーレット君。僕もその人がどんな奴か見てやる!
ふいにスカーレット君の視線がヨシュアへ。
「ヨシュアちゃん?固まってどうしたの?」
「…プロメテウスが…出てこない。」
え?
『そんなはず無かろう。私が浄化の光を…』
「本の火が…消えてるんだ…。」
ヨシュアの持っている魔導書はいつもキラキラな火が煌めいているのに、今は何も無いタダの赤い本になっている。
『…何をしているんだあの馬鹿者は…!』
「俺、もしかしてプロメテウスに酷いことしたの…?誰か知らない??
ねぇ、お願い教えて。
何で出てこないの?」
ヨシュアの瞳が、あの時のヨシュアに戻ったように感じる。光が無い目。
プロメテウスを最後に見たのは僕とゼウス、メルトちゃんとリリアンさん。それにスピルカ先生だ。ヨシュアも見ていたけど正気じゃなかったし…。
1番近くで見ていたメルトちゃんとリリアンさんは困った顔で見合わせている。ヨシュアになんて言おう。
言葉選びミスったらあの時のヨシュアに戻りそうで怖い。するとゼウスが僕達の代わりにヨシュアへ告げる。
『プロメテウスはお主を庇った後、ダメージに耐えきれず本に返った。それだけだ。今でもお主を守る為にそこに居る。お主にビビっているのか出てこないだけで戦えるまで回復はしているぞ私のお陰で。』
回復してるんだ。良かった…。
ビビってるから出てこないってのは本当なのかな。
しかし真に受けたヨシュアは両手で魔導書を抱えた。
「ごめん、ごめんね。プロメテウス…俺、もう大丈夫だから。心配かけてごめん。怖がらせてごめん。
嫌なマスターでごめん…!」
『最後の言葉は取り消せマスター。』
「!」
プロメテウスの声だ!けど姿が見えない。
ヨシュアが魔導書を開くと小さなプロメテウスの目から上だけがページから飛び出ていた。
「プロメテウス!」
『…ホントにもう平気なのか。』
「うん、大丈夫。」
『ホントに?もうナイフ持って笑わないか?』
「暫くは大丈夫だよ。」
『………ぐすっ』
!?
「ぷ、プロメテウス…?」
次の瞬間、プロメテウスは本から飛び出し、ヨシュアの頬をポカポカと連打した。
その顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
『るっせぇ!!ホントに怖かったんだぞテメェ!
壊れたかと思って…でも…傷付けたくなかった!
傷付いてほしくなかった…!
お前が無事で良かったぁあっ!』
「プロメテウスのお陰だよ。本当にありがとう。」
『ぐすっ…おう!』
プロメテウスに笑顔が戻った。良かった、本当に。
『マスター、俺様を呼んだのは訳があるんだろ。』
鼻水を啜り、涙を拭いたプロメテウスにヨシュアは事を伝える。
「あ、うん。あのね、貴族の集まりの立食パーティーに出なきゃいけなくなって服が欲しいんだ。
作ってくれないかな。」
貴族の集まりの立食パーティー?…いや、あながち間違いじゃないか。アムルさんとか貴族だし。
『そういう事なら任せろ!
ベッドから下りてくれマスター。』
「分かった。よいしょっ」
『1番カッコよくしてやるぜぇーっ!』
プロメテウスから赤い光の粒子が沢山舞ってヨシュアの身体を包んだ。光が弾けて消えた時、ヨシュアは袖やズボンにベルトが巻きついた黒と青のカッコいいスーツを着ていた。スカーレット君も
「へぇ…スチームパンク風ね。良いじゃない。」
と褒めた。
『っへへ…だろ!!』
「でも。」
『エッ』
「立食パーティーはシックなイメージが付き物よ。ましてや相手は貴族でお偉いさん。テールコートは良いけど光沢のベルトは避けて。彼が安く見えるわ。せめて艶のない素材にして。袖のベルトは無くしてベルベット素材に変えて。それにコルセットだけどベルト多すぎ。もう少し減らしてラインを見せて。折角細い身体なんだから見せない手は無いわ。でもコルセットの選択はナイスよ。これは本来の使い方してあげないとね。」
『???』
「返事!!」
『ひゃいっ!!』
こっっわ。知らない言葉で訳分からないのにやらされるって怖いの極みだよ。
「ヨシュアちゃんは後ろ向いて。」
「こう?」
「そうよ。そして上着をエクスちゃんに渡して。
プロメテウス、アタシが言った所を直しておいて!
良いわね!」
『へいっ!』
普通に巻き込まれた。僕はヨシュアから上着を貰い、プロメテウスが直しやすいように両肩部分を持った。
「じゃあヨシュアちゃんは窓と窓の間の壁に手をつけて。」
「これでいい?」
「手をつけたまま数歩下がって。えぇ、上出来よ。
次は歯を食いしばりなさい。」
「え?うぐぅっ!!!?」
ヨシュアの苦しそうな声!?
驚いてそっちを見るとスカーレット君が壁に足をつけて思いっきりヨシュアのコルセットの紐を締め上げているのが見えた。
「ほら、まだ細くなる。あのアムルとか言うムカつくお嬢様女をシャルちゃんの代わりにヨシュアちゃんの細さで黙らすのよ!っふふふ…あっははは!!」
目の前にいるのは趣旨変えてる真っ赤な悪魔だよ…。女の子達やシャル君、ローランド君も引いてるくらいヨシュアのウエストが締められてる。
「うぐっ…く、くるしっ…」
「弱音吐くんじゃないわよ!」
「ぐえっ!」
1番遅く目覚めた彼に何という事を…てか今日が本番じゃないならヨシュアまた苦しい思いする事になるんだ…ご愁傷さま…。
僕もあぁなる前に先にゼウスに言っておこう。
「ゼウス、コルセットだけはやめてね。」
『承知した。
…よし、デザインが決まったぞマスター!ほれっ!』
「え、もう?」
僕の体に白い光が集まり、服が変わった。メルトちゃん達やヨシュアの時にも思ったけどやっぱり魔法少女の変身シーンじゃん!
わぁ……ん?白いスーツだけど袖とか刺繍が色々な色でカラフルだな。胸元凄いフリフリしてる。
スカーレット君と目が合った。
あ、彼の顔が引き攣った。
「し…ない…」
スカーレット君、小刻みに震えてる。
次にヨシュアのコルセットの紐を落とした。
『むふふ、私のセンスの良さにに震え上がったか!』
ゼウスが笑った瞬間、スカーレット君は足を踏み鳴らして激怒した。
「違うわよしんっじらんない!!
何そのクソダサセンス!!目を疑うわ!!
アタシの目が壊れてるのかしら!何この絶妙にダサい配色と小物は!これ本当に最高神のセンス!?」
『エッ?』
ボロっカスに言われてる!!
スカーレット君のマシンガンはまだ止まらない。
「冗談でしょう!?小物や袖の配色抜きにしても上下真っ白って何!!結婚式でもあげるのかしら!!
せめてグレーにしなさい!いえ、エクスちゃんは薄い黒ベースで金と髪色よりも明るいオレンジの配色よ!それ以外認めないわ!!いいわね!!?」
『ぁ、ぁぃ…。』
あのゼウスが怒られてるぅー…。
メイク道具が来るまでヨシュアはウエストを絞られ、僕は着せ替え人形にされたのでした。
ちなみに、ローランド君とシャル君、レンは1発OK。流石、美の女神達と天使長…。
…
「もう、またフラフラと居なくなって!
こんな所で立ち聞きですか?ユーリさん!」
「あれ、思った以上にすぐ見つかりましたね。
いや何、子供らしく可愛い会話の中に面白い子が2人も居るものですからつい。
リンネだって気になるでしょう?」
「僕は平和主義です!でも面白い子が2人?
誰ですか?」
「苦しそうな悲鳴をあげている男の子と…最高神様の召喚士ですよ。顔は見た事ありませんが最高神様の召喚士は複数の召喚獣を使役しているようだ。
上手く行けば魔物退治の仕事減らせますねぇ。」
「苦しそうな悲鳴をあげている男の子は?」
「今回の騒動で重要な子、ですね。アスクレピオスでも治せなかったモノを溜め込んだ男の子。
今回の会議は面白くなりそうだ。」
「…(でた〜ユーリさんの悪人面ー。今回の会議は嫌な予感がするなぁ。)」
「それで、リンネ。城下町の警備の情報は?」
「あ、あぁ…いえ、未だ何も。
アビス=アポクリファを発見出来ていません。」
「どうせ名前も姿も変えているんでしょうがね。
城下町に紛れているかも怪しい。シオンさんが退学届に書いてあったって言うから一応警備を置いてはいますが、それこそフェイクかもしれない。」
「でももし本当に紛れていたら…」
「勿論、王の命を脅かす分子は早々に殺す。
この病室の子達以外の生徒には既に手を回され、アビス=アポクリファの見た目、存在すら答えられなくなっている。
だからある程度予測して先に動けるように準備する。
いいですか、リンネ。」
「は、はい。(こういう感じの時はカッコイイのになぁ…。あと何か考えて黙り込んでる時とか。)」
「相手の弱みを探る時もそんな感じで準備するんですよ!」
「いやぁ、そんな笑顔で言われましても。
(前言撤回です。)」
ミカウです。今日は特に書くことないね!!
ヴァルハラの事を個人的に探らないと!




