第56話『ここは任せて先に行け』
エクス君、頑張ろうね。
「…はい!」
前回のあらすじ
アビスの部屋に入ったら退学届が置いてあり、その内容がアルファクラス(不特定多数)と天使クラスの1部が堕天を持っているとか。
最初は嘘だと思っていたけどゼウスがモーブとノートと同じ反応を感知して真実となりました。…本気でやばいかも。
…
僕とシオン先生は部屋を飛び出した。
「ヨシュア!メルトちゃん!!先生!シャル君とローランド君が危ないかもしれない!!」
「アルファクラスの教室へ向かうで!!」
驚く3人に事を話している時間もなく1秒でも速く何とかしないと…!!
魔力を無駄にしないようにひたすら走る。
するとシャル君とローランド君、それにリリアンさんが走りながらこちらに気付いて合流した。
「エクス君!!皆さん!!」
「シャル君!!ローランド君!!それに…」
リリアンさんに目線を向けると彼女と横の王子様は微笑んだ。
「あの時振りですね、エクス=アーシェさん。」
「ですね。リリアン=ナイトイヴさん、それにアーサー王。」
『やぁ、ゼウス様のマスター君。』
「我がライバルよ!!力を貸してくれ!!」
格好が全然違って別人に見えるローランド君が間に割って入り、焦りを見せる。そして僕は一瞬忘れていた焦りの原因を思い出した。
「あっそうだった!!
アルファクラスの人達と天使クラスの1部が堕天を!!リリアンさん堕天は!?今持ってますか!!?」
「え、エクス君落ち着いて!リリアンちゃんに堕天って言っても分かんないでしょ!」
メルトちゃんに言われてはたと気付く。
「あ、ごめん!」
「いえ。」
やばい焦りすぎた…。
するとシャル君が代わりに話してくれた。
「リリアンさんがお持ちの堕天は既に捨ててあります。捨てた瞬間、堕天が勝手に弾けたのです!」
何だって…!!?勝手に弾けた!?
「アルファクラスの教室に堕天を使用したモーブと同じ状態になった生徒が多数。だが教室からは出てこようとしないのだ。」
『ふむ…確かに出てきておらんな。だが…』
ゼウスの言葉の続きは実際に目にした。
「嘘!廊下でも!?」
色のくすんだ召喚獣を連れた足元が覚束無い生徒達がこちらに向かって数人歩いてきたのだ。
「あれは…!?」
そうだ、一応先生達にも伝えないと!
「シオン先生、スピルカ先生!あれは堕天…アビスが作ったとされる薬によって正気を失っている生徒です!直ぐに召喚獣を倒して保健室に連れていかないと生徒が死ぬかもしれません!!」
「なん、やて…!」
あれ?ちょっと待って。人増えてきてない?ざっと30人くらいいるよね?
道という道塞がれてない?いや、完全に塞がれた。そして彼らの背後に見える白く大きな影。まさか…アレって…あの時の化け物!?
スピルカ先生も気付いたのか杖を構える。
「あの化け物まで出てんのか…!!取り敢えず俺とシオン先生でお前らの道を」
「いや、この人数なら私だけで十分ですわ。
アストレイがこの子らの担任やろ。担任がおらんでどないすんねん。」
そう呟いたシオン先生は抜刀し構えた。
「…僕らの生徒を頼んます、神クラス。ナイトイヴ。」
「待って下さいシオン先生!!皆で確実に…」
「そうやって全員が足を止めたら何人死ぬ確率が高まる?アーシェ、ゼウス。お前さん達はこれを止める為に確実に必要になる。だからお前さん達は出来る限り力を使わず上手く立ち回りなさい。その為には…わかっとるな?」
「ぜ、ゼウス!!」
でも…!!ゼウスに呼びかけるが彼は首を横に振った。
『いや、白黒頭の言う通りだ。私達は此処で魔力を使うわけにはいかない。』
「誰が白黒頭や。…すまんが頼んだで。」
シオン先生は僕以外を見て足を肩幅に開いた。
足の踏ん張る音が一瞬、ほんの一瞬聞こえたその時、シオン先生の姿が消え、アルファクラスの教室に続く道を塞いでいた生徒と召喚獣が吹っ飛んだ。そして白い化け物は夜叉の斬撃に倒れる。
「行くぞ!!」
スピルカ先生の声で一斉に走り出した。
「ツキバミ先生…っ!」
リリアンさんの声だ!
足音的にシオン先生が心配で振り返ってる。
「ナイトイヴ!代表として皆を助けなさい!」
「はいっ!」
リリアンさんも決心したようだ。
…シオン先生、あの沢山の生徒と召喚獣だけじゃなくて化け物相手に大丈夫かな。
それに、スカーレット君とイデアちゃんが心配だ…。無事だと良いけど…。
「というか…生徒だけでなく朝にゼウスが見せたあの怪物まで居るではないか!どういう事だ?!」
ローランド君の疑問は皆も思っていた事だろう。僕も知りたいくらいだ。
けれどあれは元が人間のはず…つまり
既に犠牲になった人が居る?
急に頭からサァッと血の気が引く。
え?え?もしかして誰か死んじゃったの?
いや、そんなはずな
「エクス!!危ない!!」
ヨシュアの声にハッとし、ふいに庭園の方を見る。眼前に紫の火の玉があった。
『マスター!』
ゼウスが手を振り上げ雷に打たれた火は消えた。
「ご、ごめんなさい!!」
咄嗟に謝る僕にゼウスは溜息を吐いた。
『考えていることは分かる。だがそうとは限らん。今はこれ以上犠牲者を出さぬようにする事だ。見よ、白黒頭の言う通り1度足を止めるとこうなるのだ。』
庭園を囲む廊下は少数の生徒と召喚獣、大量の化け物に埋め尽くされていた。
「ひ…っ」
僕のせいだ…!
「アルファクラスまであと少しだ!この人数なら俺だけで何とかなるからお前らこのまま走れ!」
スピルカ先生がアストライオスと共に構える。
「…いけません、先生はこの出来事をお偉いさんにお話ししなければならないはずです。ですから先生はエクス君と共に。オレが食い止めますから。」
とシャル君が前に出た。
「教室までもう少しならば大人数は必要あるまい。僕も手伝うよ。」
「ローランド君…。」
「ほら、早く行きたまえ。僕達の何がどこまで通用するか分からんのだから時間稼ぎすら危ういのだぞ。さっさと他クラスを助けたまえ。」
ローランド君は僕らにそう言って生唾を飲み込んだ。
「絶対無事で居るんだぞ!逃げることは戦略だ!間違ってないからな!!」
「「はい!!」」
スピルカ先生に返事をした2人。僕達は同時に駆け出した。
♢ミカウの手記♢
☆ヒメリア=ルージュ
召喚獣:イフリート
好きな物:ヒールのある靴、少女漫画
嫌いな物:己の弱さを認めない者
♢ミカウさんメモ
泣く子も黙る鬼教官!スリットが入ったタイトなミニスカートと網タイツって目のやり場に困るよね。小生は別に気にしないんだけどね。
胸元を大きく開けていて魅せる下着が見えちゃってるんだー。それをシオン先生は「破廉恥な格好やと風邪引くわ」と顔を赤くしながらマフラーを掛けて胸元を隠すという面白いものが見えるよ。
鬼教官で鞭を振るうけど全部生徒の為なんだよね。
生徒の為に心を奮い立たせる火はイフリートを連想させる。…これからも頑張ろうね、ヒメリア。




