第41話『友達闇堕ち?』
前回のあらすじ
購買部に着いた僕達はミカウという狐仮面の不思議な人と出会いました。彼は購買部の店主であると同時に情報屋でもあるそうです。
初回サービスという事はタダで教えてくれるんだよね…?
…
「ゼウス…アレ、ある?」
『うむ、ちゃんと持っているぞ。ほれ。』
ゼウスは空間に手を突っ込み黒いカプセルを取り出した。
何その亜空間。まぁいいや。
「この正体が知りたいです。使うとどうなるのですか?」
ゼウスがカプセルから手を離すと、勝手にミカウさんの手元へ移動した。
それを受け取ったミカウさんは不思議そうに眺める。
「おやまぁこれは驚いた…。これ、何処で手に入れたんだい?」
「良からぬ事を企んでいる人から盗ん…拝借しました。」
「ふーん…」
上から、下から、横から、斜めからカプセルを眺めるミカウさんは小さな溜息を吐いた。
「…コレの中身は高ランクの魔獣の血と臓器がすり潰されて含まれている。そしてかなり高度な術式で編み上げたモノだ。この入れ物は錬金術で作ったんだろうね。」
「…?」
「分かりやすく言うと禁術的なアレさ。それに触れるか触れないかレベルだねぇ。」
「禁術…!?」
え、それって結構ヤバくない!?
僕達は口が半開きな状態で固まってしまった。
「キミ達は踏み入れてはいけない所の1歩手前で足を止めている。このまま足を進めるのなら命まで危うくなるよ。
黒幕に殺されるかもしれない。
その協力者に殺されるかもしれない。
友達に殺されるかもしれない。全てにおいて起こる可能性が1%以上ある。それでもキミ達は1歩踏み出すの?」
「ともだちに…?」
黒幕や協力者に殺されるかもしれないのは分かる。でも友達に…?
疑うつもりは無いけどなんとなく両サイドの2人と顔を合わせられなくて俯く僕。
多分その2人も同じ気持ちだろう。
「おや、暗くなっちゃったね。まぁ無理もない。
ちょっと意地悪したから。
友達と言っても人によって感じ方が違うだろう。
例えば…君達のように常に共に活動する人間。
沢山話すクラスメイト。
少しだけ話したことのあるクラスメイト。
クラスは違っても数回話した人間。
1度挨拶しただけの人間。
君達にとってどれが友達という定義だい?」
ミカウさんの目は仮面で見えないけど口角は上がったまま。
僕達を困らせて楽しんでいるのか。
でもそれを聞いて僕は思ったことがある。
「…友達って定義が必要なのかな。」
あれ、口に出してしまった。
なら全部言っちゃおう。
「ほう?」
「相手がどう思おうが自分が友達だと思った人が友達だと思ってます。それに、友達は僕とゼウスが守ります。殺し?そんなことさせない。」
「キミを利用するために良い子を演じてるだけかもしれないよ?それでも友達なの?」
「本性を見せてもらうまでです。そして利用される前に止めてみせる。手を血で染めさせない。」
「まずそいつはキミを友達だと思っていないかもしれない。」
「さっきも言いましたが相手がどう思おうが構いません。だって人の考えなんて分からないじゃないですか。感性や定義なんて人それぞれじゃないですか。違うじゃないですか。だからミカウさんも聞いたんでしょ?
だから結局友達に定義なんて必要ないんですよ。黒幕、その協力者、友達に殺される可能性があろうが僕は進みます。」
「……っふふ…」
え、笑う?何か恥ずかしいこと言っちゃった?
ミカウさんは手で口を押さえ肩を揺らしていた。
「…っふふふふ…そっかそっか。うん、そうだね。その答えはきっと正しいだろう。
キミって臆病に見えて芯が通ってるよね。」
「え…臆病ですよ…。」
「…オレ、一瞬でも皆さんを疑った自分が恥ずかしいです。そうですよ、自分が思うお友達はそれだけでもうお友達なんです。定義なんてありません。何より途中で投げ出すなんて男が廃ります。」
シャル君…。
「私もエクス君について行くわ。疑うより裏切られた方がマシ。そして救う!それが友達だもの!」
メルトちゃん…!
「うん。君らの覚悟は分かった。
気に入ったから本来ならお金を取ろうと思ったけど特別にもう一つだけタダで教えてあげる。」
お金取るつもりだったのか。
そう思いつつ人差し指を口元に寄せるミカウさんをじっと見つめる。彼が口を開いた瞬間、僕は背筋が凍った。
「その薬品は使うと召喚獣が闇に堕ちる。」
闇に堕ちる…?どういう事?
「堕天使って知ってるかな。元々天使だった者が悪魔になったモノのこと。
簡単に言うとぉ…それにみたいになるーって感じだね。天使だけじゃないよ。神様だって亜人だって、召喚獣ならなるさ。
これを使った召喚士の魔力に侵食して闇に染め、そいつの召喚獣を狂わせる。狂った召喚獣は召喚士の命令も聞かずに暴れ回る魔獣となるだろう。
命令も聞かずと言ったけど召喚士は魔力侵食に耐えきれなくて廃人になるだろうから口は聞けないと思うけどねぇ。」
「……っそ……え?」
そ、そんな怖いものなの…?え?闇堕ちだって?
『ふむ…なるほど…。だからか。』
「ゼウス?」
『やはりマスターもあのモーブと言う奴にその薬品を少量嗅がされたのは間違いないようだ。薬学の時にな。マスター、食事の時の話だが自覚があったのだよな?』
自覚だって?あ。
「黒い気持ちがぐわってなった。けど反抗心だと思って…」
ゼウスは机の上で腕を組み下を向く。
『その時、マスターに黒いオーラがまとわりつき私の心臓部分に痛みが走った。
実際召喚獣の私に心臓は無いのだが。
あの時私は浄化の光をマスターに放った。覚えているか?』
「うん。ゼウスがぴかーってなった時だよね。」
『そうだ。それでオーラは消えた。だが、根源が残っていてな。私じゃ浄化しきれなかったのかもしれぬ。風呂の時に皆と話していた時、完全な消滅を確認した。』
ゼウスが浄化しきれない?
これもスキルロックのせいなのかな…。
その時、頬杖ついて聞いていたミカウさんが口を開いた。
「黒いオーラに黒い気持ち、か。これが被害者を見つける手がかりかもね。
けれどキミが嗅いだのは少量だけ、ゼウス様の召喚士で魔力量、魔力濃度はとてつもないのにそんな風なんだ。」
「え、僕のこと分かるんですか?」
「そりゃね、小生は見たら分かるの。
…で、話戻すけどさ。そんな凄いキミでさえ少しだろうが効果が現れてしまったんだ。
ならキミを貶めようとするふっつーの子達はどうなるんだろうね?この量を直で受けるならキミのように軽い症状では済まないね。」
「じ、じゃあ急がないと!!彼が危ないですっ」
「しー…美人さん、まだダメ。」
と優しい声でシャル君を宥めた。
「でもっ」
「行ってどうするの?キミ達に何が出来るの?」
「そっ…れは…」
確かに何も出来ない。
「キミ達はまずこの事を知っている大人に伝えなさい。これを作った者の証拠を集めなさい。それこそ黒幕の協力者にでも。そして困ったら小生のところに来なさい。
次からお金取るけどね。にひひ。」
ミカウさんは手をお金の意味を示す形にしてニヤリと笑った。
「友達、守るんでしょ?被害が広がる前に頑張ってね。」
「狐お兄さんは手伝ってくれないんですか?」
メルトちゃんは出された抹茶を啜った。
あ、もう和菓子無くなってる。
「ふふ…小生はね、楽しければ何でもいいの。キミ達の協力者になって欲しければそれ相応の対価を求めよう。ま、頑張ってね。
困ったら小生の所へいらっしゃい。勿論、買い物にもね。さ、閉店だ。ぐっない!小狐ちゃん達♪」
彼が手を1回叩いた刹那、僕達は購買部の外に立っていた。
ミカウお兄さんは何でも見通すぞ!
という訳で次話から後書きに彼らのプロフィールを書きます!ミカウさんが!多分!




