第38話『調査開始だ』
前回のあらすじ
アビスが生徒を利用して僕を陥れようとしているようです。
ゼウスがギャルに変身して上手く聞き出してくれました。
そのついでに魔獣殺しの事、アビスの事を知らなかったローランド君とイデアちゃん、補足でメルトちゃんに伝えることに。
…
『…。』
ゼウスがテレパシーしてくれてるみたいだけど本当に通じているのかな。
『という事だ。分かったか?』
ゼウスをまん丸になった目で見つめる3人。
ちゃんと通じているようだ。
『さっきも言ったが私ら以外に相談無しで口外した場合、容赦しない。分かったな!』
無言で敬礼する3人。
それで目立ってるよ!!!
ゼウスはくるりと振り返って
『伝えたぞ、マスター!』
とにこやかに伝えてきた。
「ありがとう、ゼウス。3人とも、そういう訳だよ。今からは声を潜めて。それから何か聞きたいことはある?」
するとローランド君が凄く綺麗に手を挙げた。
だから目立つって。早く下ろさせる為にも名指しした。
「はい、ローランド君。」
「魔獣の事、レン=フォーダン、アビス=アポクリファの事は分かった。だからさっきの話に戻るのだが…先程の彼ら、金を貰ったというモーブとアビスの話だ。
何故アビスはモーブが我がライバルに薬品を嗅がせたと分かる?」
「それはカプセルが無くなっているから分かるんじゃ?」
僕の回答にローランド君は眉間に皺を寄せた。
「だがアビスは別クラスだ。
授業中に“嗅がせた”と認知は出来ないのでは?
モーブがしっかりと実行したかも分からないし失敗したかもしれないのに。なんなら使わずに隠し持っている可能性もあるはずなのに。
まあ嗅がされたエクス君に特別な何かでも出ているのなら話は別だが。」
「確かにそうね…。」
た、確かに…。
『それについて話すために話を変える。
アビスの1番の目的は果たして本当にマスターを間接的に陥れることなのだろうか。』
「どういう事?」
首を傾げたヨシュアにゼウスは目線を移した。
『私が思うにアビスの1番の目的はマスターを陥れることではないと思う。
マスターは二の次で本来の目的は協力者にこのカプセルを使わせることだと思うのだ。』
ん?ということは…
「アビスさん、実はエクス君ではなく協力者を標的にしている、ということでしょうか?」
シャル君の言い回しは分かりやすかった。
ゼウスもシャル君に視線を移した。
『あぁ。あくまで私の考えだがな。
もし仮説通り協力者が本当の標的だった場合、アビスにとって協力者がこのカプセルを使ったという事実だけが大事であり、』
「エクスに嗅がせた事実を知らなくても彼にとってはどうでも良い。」
ヨシュアの呟きに繋げてゼウスが話す。
『ということになる。アビスも目的を果たし、標的は金を貰える。ウィン・ウィンの関係というものだろう。』
「じ、じゃあさっきのモーブくん?危ないんじゃないの?」
イデアちゃんの発言に僕達は焦り出す。
『落ち着け皆の衆。表情で怪しまれる。
どんな効果があるのか分からない今は迂闊な行動を避けるべきだ。しかしゆっくりもしてられない。さっきのモーブやそれ以外の手を組んだ奴が私が演じたような金目当ての奴に情報を売ったら…』
「アビスの餌が次々と勝手に増える…ってことだね。」
いつもならヨシュア言い方っ!て思うけど今回はその表現が最適だと思った。
『あぁ。就寝時間は22時。今から約2時間後。それまでアビスとその息のかかった者を探るぞ。』
全員がゼウスに頷いた途端、円盤が頼んだご飯に変わった。
皆同時に?不思議…。まさか、聞かれてないよね?
『マスター、料理が同時に出て驚いたな?
大丈夫、話など聞かれていない。私が話しながら料理を運ぶための転移魔法をずっと妨害しまくっていただけからな!
はっはっは!』
「えぇ!?怒られないかな!?」
『大丈夫だろ、多分。』
「多分じゃ困るっ!」
『だーいじょうぶだーいじょうぶ。マスターは心配性だな!』
「そういう問題じゃないよ!」
そんな会話をゼウスとしていると皆が笑った。
それが嬉しくて僕も笑った。
ご飯を食べながら皆の好きな事を話した。すっごく楽しかったです!
…
「ご馳走様でした!」
皆で手を合わせてから食器を返却口に運んだ。
沢山の人の隙間を通って出口へ。人に見られないように人気の少ない壁際に寄って声を潜める。
「これからどうする?」
と聞くとヨシュアが
「二手に分かれて探さない?大人数だと怪しまれる。」
と提案してくれた。
「賛成です。どうやって分けます?」
聞いたシャル君の前にゼウスがふわりと浮かぶ。
『万が一に備えて戦力分担した方が良いだろう。マスターとプロメテウスのマスターは魔力が空に等しい。2人は分けるべきだ。(というかプロメテウスと共闘は嫌だし。)』
僕もそう思った。お互いに顔を見合わせ頷いたのだからヨシュアも同じことを考えていただろう。ゼウスは少し私情が含まれてるような気がするけど。
「僕の姫君アフロディーテは全員に良い効果を美しく付与させることが出来る。支援に回れるだろう。」
アフロディーテはいつからローランド君の姫になったのか。何だ美しく付与って。
「オレのアルテミスも支援出来ます。ではオレらも離れた方が良さそうですね。」
「あぁ、そのようだね。」
ローランド君とシャル君で別れることになった。
「じゃあ必然的に私達も別れることになるわね。イデアちゃん。」
「そだね!ちょっと寂しいな。」
問題はどうやって分けるかだけど…迷っているとヨシュアが
「じゃあ俺の方にはイデアとローランドに来てもらっていい?」
と言った。何でその2人?しかもヨシュアはイデアちゃんかロキが苦手なんでしょ?いいの?
「エクスはメルトとシャルの事になると特に奇行に走っていたから。近くに居た方が安心でしょ?」
「え」
シャル君の時は兎も角メルトちゃんの時に奇行に走ったっけ!?覚えがない…!
あーやめて皆そんな顔で僕を見ないでぇ…。
「分かった。もし何か手がかりを掴んだ場合はどうする?連絡手段が無いぞ?」
と言ったローランド君の顔面にゼウスが体当たりした。
「いだっ!!」
『私に任せろ!誰か召喚獣を出せ。今の私のサイズで。』
体当たりする必要とは。
3人は顔を見合わせヨシュアは首を横に振り、イデアちゃんがローランド君の袖を引っ張った。
「分かった。来たまえアフロディーテ、【summon!】」
ローランド君に呼応し小さなアフロディーテが現れた。小さいのも可愛いっ!!
『アフロディーテ、お前にタナトスの加護を付与させる。これでアフロディーテを通して貴殿らの声が私に伝わる。』
アフロディーテが電話の役割をするってことか。凄いな、タナトスの加護。
「ありがとうゼウス。じゃあ22時に近くになったら解散。部屋に戻ってお互いあった事を話す時間にしよう。」
皆僕に頷いてくれた。ちょっとリーダーみたいでかっこいい気がする、今の僕。
『決まったな。では、深淵の入口を探そう。』
お互い背を向け僕達は左へ、ヨシュア達は右へ歩み始めた。
あ、結局ゼウスの指揮になってしまった。




