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第187話『アルカディア家へ』

前話を出してもう1ヶ月…月日は早く過ぎて行きますが暑い日ばかりで嫌になりますね。

自分は着込めばある程度何とかなるので冬が好きです。早く過ぎてくれ夏と思いながらクーラーの効いた部屋で毛布を被って寝るのが好きな奴です。

前回のあらすじ


アルカディア家に何か異変を感じたヨシュアとセヲ。互いが別々に行動を始める。



セヲはクレアの母、ミザリーからアルカディア家について話を聞くことにした。


「現在、アルカディア家では非人道的な実験が行われています。」


「非人道的?」


セヲが聞き返すと、ミザリーは身体を震わせ、両手で腕をさすりながら説明を始めた。


「使用人を使った人体実験です。」


「「!」」


シャーロットが家出をした後から入った使用人が1人、また1人と姿を消し始めたことに疑問を抱いたミザリーはこっそりと調査をしていた。ある日アルカディア家当主であるシャーロットの母親は極度の男嫌いであるのにも関わらず家に男を招いたという。

そこで聞いた2人の会話で人体実験をしていた事が明らかになった。

アルカディア家当主は被検体を提供し、男はそれを大金で買収し実験をしていた内容だった。

セヲは眉を寄せてミザリーに問う。


「その男の特徴は?」


「20代あたりで肌は陶器のように白いのですが髪と衣服が真っ黒で顔と首元以外に肌は露出しておりませんでした。」


脳内に記憶し、更に求める。


「他には?」


「全く騒がないカラスが1羽。

彼の肩に乗っていました。」


セヲの隣で聞いたクレアは口角を引き攣らせた。


「な、何か怖い人だね…。」


「怖いなんてものじゃないわ。

人間を使って実験してるんだもの。」


確かにと頷くクレアの横でセヲは小さく溜息を吐き、質問を続けた。


「実験について何か言っていましたか?」


「確か“最初の実験体のおかげで”とか“望みの為に”など言っていたはずです。」


「「望み…」」


話していたミザリーは今まで堪えていた感情をセヲにぶつける。


「奥様はシャーロット様に何かするつもりです!どうか…どうかシャーロット様をお助け下さい…!」


大粒の涙を零しながらその場に座り込んでしまうミザリー。クレアは背中を摩り、セヲはそれを無表情で見下げていた。


「セヲさま…」


瞳を潤ませたクレアが縋るようにセヲを見上げた。


「シャーロット様はとても優しく、寄り添いながら村の者達の傷を癒して下さったのです!

本当に、本当に良い方なのです!」


暫く黙っていたセヲだったが、観念したように大きな溜息を吐いた。


「はぁあ…分かりました。

この期間世話になる対価として貴女の願いを聞くのはこれで最後です。」


ポケットから何かを取り出すセヲを見てクレアの瞳は眩く煌めいた。


「セヲさまっ!はいっ!」


「嗚呼…ありがとうございます、セヲ様…!」


ミザリーとクレアは深々と頭を下げるがセヲは「礼を言われる筋合いはありません。」と言い少し離れた。

セヲが持っているのはアムルから貰ったデバイス。電源を入れていないそれを持ったままアムルの言葉を脳が再生して少し固まる。


“電源をつけた瞬間、デバイスを持っている人間に貴方のデータが飛びますわ。”


1人で行くには流石に危険すぎるかと思い取り出したデバイス。しかしやっぱり壊そうかと思ったがクレアの涙目を見て舌打ちを堪えながら親指に力を込めた。

説明書の内容は貰って見た時に全て頭に入れてある為、直ぐに電話のアプリを押しアムル=オスクルムの表示をタップし右耳に当てる。

プルルル…とコール音が響き


{ふふ、貴方から電源を入れてすぐにご連絡があるとは思いませんでしたわ。何か御用ですか?}


小馬鹿にしやがってという気持ちを必死に抑えて外面を取り繕う。


「至急アルカディア家の調査をお願いしたいのですが。」


すると電話越しなのにアムルの雰囲気が途端に冷たくなったのを感じた。

その時、アルカディア家とオスクルム家の仲の悪さを思い出したセヲ。

断られる可能性を考慮し次に電話すべき相手を考えていたところ、カチャリと音が聞こえてから


{…聞きましょうか。}


と低い声音で会話を続ける事になった。

セヲはミザリーに聞いた事の顛末を話した。

アムルはセヲが話終えるまで質問を一切せず、相槌すら打たず聞いていた。

そしてやっとスピーカーから声が聞こえた。


{貴方がちゃあんと約束を守ってくださっているなんて思いませんでしたわ。}


「暇なんです?話を逸らさないで下さい。」


{嫌ですわ。偉い子にはちゃんと偉いと褒めて差し上げないと手を噛まれてしまいますからね。}


イライラが募っていくセヲをハラハラした様子で見るクレアとミザリー。実際デバイスの存在を知らない2人にとってはセヲが独りでに話してイラついているようにしか見えず気が狂ったのかと心配しているのだった。


{しかし至急とはいえ調査をしている時間はおありです?}


「……」


{やはりありませんわね。でしたら

セヲ=ファントムライヒ、アムル=オスクルムが貴方に緊急調査を命じます。}


「!」


{貴方が頼まれたのなら貴方が解決なさい。

エクス君にはわたくしから声を掛けておきます。}


エクスの名前が出た瞬間、カチンと頭にくるセヲは不満げに


「はぁ?彼は関係ないでしょう。」


とアムルに抗議するものの


{あら、ご存知なくて?彼は便利ですよ?

エクス君以外の人選は後ほどお伝えします。}


と押し付けられ通話を切られた。


(便利なのは彼でなくゼウスでしょうが。)


思っても口にするのはやめておいたセヲ。

不安そうなクレアとミザリーに


「では行ってきますので。」


と一言だけ伝えて部屋を出ようとする彼をクレアは慌てて引き止めた。


「お、お待ちください!

もう行かれるのですか?」


「えぇ。」


「必ずお戻りくださいね!

ご馳走を用意してお待ちしております!」


「…えぇ。」


笑顔のクレアを見て少し懐かしさが込上がって来たのを気付かれないよう足早に扉へ向かい、開け放った扉の1歩前から箒に足をかけ飛び立った。

姿が見えなくなってから扉を閉めたクレアは母の背中を再び摩る。


「セヲ様が向かって下さったから安心だよ!

お母さん!」


「ごめんね、彼を巻き込んでしまって…」


「セヲ様は昔から嫌って言うことはちゃんと嫌って言ってどっか行っちゃうの。

だから大丈夫、私のご主人様はすっごーく優しいんだから!」



アルカディア家に向かう為、箒で移動しているセヲの右ポケットの中身が振動する。

取り出したデバイスの画面には

アムル=オスクルムと表示されており、電話を掛けてきた事を知らせるものが映っていた。

出るか一瞬迷うセヲ。バレると面倒だと思い通話ボタンをタップした。


{今の一瞬、わたくしの電話に出るの渋ったでしょう。}


「そんなまさか。

随分と想像力が豊かでいらっしゃる。」


笑顔から青筋が一瞬出たアムルはコホンと咳払いをして会話を変える。


{人選をお伝えします。

責任者はわたくし。

調査に向かうのはエクス君、ヨシュア君、貴方の3名と引率1人ですわ。}


予想していない言葉を思わず聞き返してしまう。


「ヨシュア?引率?」


{はい。どうやらお2人がアルカディア家の違和感を覚えたようで引率からヴァルハラに報せがありました。}


(アイツか…。)


セヲはヨシュアと隣にいたカイルを思い出していた。


{彼も入学前の貴方の暴れ具合を存じ上げていますわ。説明は不要でしょう。}


「俺は彼を知りませんけど。」


{彼の職業柄詳しい事はお伝えできません。

本人から聞いてくださいまし。}


めんどくせ…とかったるい思いを全て詰め込んだ溜息をわざとらしく吐くセヲの事をアムルはクスクスと笑っている。


{ふふ…勿論手紙に書いた通り、わたくしの依頼を完遂すれば貴方の望みを1つ叶えて差し上げましょう。考えておきなさい。}


「…」


セヲの望みは決まっていた。

村で自分の安全を祈ってくれている彼女の笑顔を胸にしまい、通話を切った。


(責任者が彼女なら俺が暴れても怒られるのは彼女では?)


いざこざに乗じて喧嘩してやろうと企むセヲ。

速度を上げてアルカディア家へと向かった。



『エクス様』


部屋で寛いでいるとポケットのデバイスが震えて光り、取り出すとアイオーンがNewの文字を両手に乗せて見せていた。隣に居たレンもデバイスを覗き込む。


「え、何か凄い。人間が中に入ってる。」


レンを気にせずアイオーンに問う。


「どうしたの?」


『新しい連絡先が追加されました。』


アイオーンが持っていたNewの文字が竜巻のように巻き上がり、

Sewo = Phantom Reichという文字になってアイオーンの手に戻ってきた。


「セヲ…ファントムライヒ!?」


驚くエクスの横でレンもデバイスを確認していた。


「わぁ、俺のデバイスにも書いてある。

新しいお友達…?セヲ君ってアレだよね、城下町の不良を公正させたっていう。」


「公正…?片っ端から人をボコしてたって聞いたけど…」


「まぁ同じ彼だね。

急に何で彼の連絡先が出たんだろう?」


レンが首を傾げるのと同時にエクスのデバイスから音が鳴る。


『アムル=オスクルム様よりお電話です。』


「げ…分かった出るよ。」


エクスの了承によりアイオーンがアムルの姿に変わる。


{こんにちはエクス君、今お話宜しいですか?}


「はい、家なので。」


{シャーロット=アルカディア君の安否が不明となりました。シルヴァレ君のマップを見て至急アルカディア家へ向かってください。}


「…え?シャル君が…?何で…?」


エクスの疑問に答えずアムルは


{これはヴァルハラの命令です。

貴方以外にも協力者が居ますのでまずは合流して下さいね。}


と電話を切ろうとする。

すかさずレンはそれを止める。


「ちょっと待って下さい。」


{あら、その声はレン君ですわね。

エクス君のお家に上がるほど仲睦まじかったのですね。貴方も行きます?}


「えぇ。それでシャーロット君が安否不明って言ってるのに何故アルカディア家の調査なんですか?」


{そのままの意味です。

アルカディア家の中で何かがありました。

なので貴方達に調査を依頼します。}


「…っレン君!早く行こう!」


「うん、行こうか。」


{ご武運を。

良い知らせを期待していますわ。}


エクスはレンと頷き合い、家を飛び出した。

多分いつか挿絵が入るかもしれません!!!

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