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第184話『家出少年』

お久しぶりです。

お察しの方はいらっしゃるかと思いますが暫く里帰り編が続きますので見守っていただけたら嬉しいです!


前回のあらすじ


僕のお父さんとお母さんは先生が言っていたようにとても良い人達だった。

愛に触れられて安心していたらレンから助けてという1文だけのメールが送られてきて…



アイオーンに検出してもらったレンの居場所を表示したスマホ画面を呼び出したゼウスに見せる。


「ゼウス早く連れてってッ!」


『む、うむむ近い!

そして見方が分からんぞマスター!!』


「あ、ご、ごめんっ!えっと…アイオーン、場所って…」


助けを乞うとアイオーンは画面下からひょっこりと顔を覗かせた。


『はい、城下町噴水前かと。』


「だって!」


『分かった。が、ママ殿とパパ殿に伝えた方が良いと思うぞ。』


あ、確かに…。

まだ遅すぎない時間だから急いでお母さん達の元へ。幸いなことに2人はまだリビングに居て談笑していた。


「おとーさん!おかーさん!」


「「エクス?」」


「あっあのね、えっとあの…」


デバイスの存在は口外出来ない!

ど、どうしよう!でもレンが!


「えっと…そのぉ…う…」


『マスター…。』


服の裾を両手で握りしめ言葉を詰まらせる僕を察してお父さんが


「大丈夫だよ、言ってごらん。」


と言ってくれた。お母さんも頷いてくれた。

言わなきゃ。


「とっ友達が、友達が助けを…求めてて…あの…」


ダメだ頭が真っ白になって言葉が出ない。

デバイスの存在を隠すのならどうやって助けを求めたかの理由がつかないのは分かっている。なのにこんがらがってデバイスの事を隠す必要があるのかもうわかんなくなっちゃった。どうしよう支離滅裂というか意味不明だよ。


「友達が助けを求めている?」


ほら疑いの目!当然だ!何か言わないとなのに何も出てこない!泣きながら「アッ…ワァ…」しか口から出てない。お父さんとお母さんの次の言葉が出るのを震えて待っていると


「それなら早く行ってあげなさい。」


と思わぬ返答が来て思わず


「へ?」


と間抜けな声が出た。


「エクスが慌てるような大切な友達なんだろう?夜道に気を付けて行ってあげなさい。」


「なんなら家に連れてきて良いわよ。

お布団あるから!」


何と優しいのだろう。

エクス(主人公)は、僕は幸せ者だな。

だから精一杯の笑顔で応えよう。


「ありがとう!行ってきます!」


「決して怪我しないように!」


お父さんに頷いてゼウスに目配せした。

ゼウスも頷いて転移魔法を使った。


「…急にどうしたんだろうエクス。

不安な夢でも見たのかな。」


「あれは真実よ。あの子は昔から言いたい事を我慢する時に服の裾を掴むもの。」


「そっか…。相変わらず君に似て優しい子だね。」



ゼウスが転移した先は城下町の中心にある噴水前ではなく、その外れの通路だった。

ベスカちゃんに会った場所だ。


『急に人前に出るのは良くないと思ってな。』


ゼウスの気遣いか。

僕は御礼を言って彼を魔導書に戻すと同時に走って噴水を目指す。

街の灯りに照らされた夜の城下町は少しひんやりしていて鼻が冷たくなりツンとする。

疎らな人の間を走り抜け目的地へ到着するもレンが見当たらない。


「はぁっ…レン…!」


息を整えながら辺りを見回す。

アイツは独特な雰囲気だからすぐ分かると思…


居た。


黒いロングコート系の衣服に身を包んで噴水をボーッと見つめる黒髪の男…紛れもなくレン=フォーダンだ。複数の女性がレンを気にかけてチラチラ見ている。むきーっ!邪魔してやるっ!


「レン君!」


「…あれ?エクス君!」


ん、待てよ。僕はレンに助けてとメールで送られてきたからてっきり家で何かあって心身のどちらか、または両方ズタボロになったのかと思って家を飛び出したんだ。

それなのに。

件の男は綺麗な衣服、顔面でボーッと噴水を見ているだけ。


僕は何のために来たんだ?


「帰る。」


「ちょちょちょっ待って、待ってよ!」


両手で腕を掴まれ、仕方なく足を止めた。


「助けてって書いてあったから急いで来たのに…元気そうだね。」


「あれ文字を打ってる途中で送っちゃったの!」


「途中〜?」


訝しげな僕の視線にバツが悪そうに頷くレン。“助けてくれる?って聞いたら君はどうする?”と打とうかと思っていたらうっかり途中で送信したとか。


「訂正文くれれば良かったのに…。」


「送ろうとしたよ〜?

でもその前に君がもう来た。」


あぁ、偶にやるやつ…。

あれ?でもさっきのレンの行動…。


「さっき噴水をボーッと見てたよね?」


「ウッ!まぁ実の所“ほぼ間違いじゃないしいっか!”って思いました。」


だろうね。焦っている素振り無かったし。


「まさか本当に助けに来てくれるなんて正直思わなかったよ。」


レンの今までの交友関係的に思われなくても当然かもしれない。

彼の薄ら笑みの奥の安堵した顔を見るに先程の言葉も、助けてという言葉も本当だろう。


「僕は友達を見捨てるような人間じゃないよ。」


「うん、知ってる。」


め、面と向かって肯定されるとむず痒いんだけども!歯をギリギリしているとレンは急に綺麗な顔に影を落とした。


「相変わらず息苦しいったらなんのなんの。」


「お家、やっぱしんどい?」


「うん。帰ったら俺のことってより学校の事ばかり。順位に固執しまくりさ。」


「でも1位じゃないの?」


「天使クラスではね。」


レンは意味ありげな視線を送ってきた。


「全体となると君がいる。」


僕が弊害となっているのか。

体力テストに至ってはろくでもないけど魔法だったら確かに負ける気は無い。


「…体力テストは譲るよ。」


「あははっ!ありがと〜。

でもぜぇんぶ1位じゃないとね。

それに負けるつもり無いし。」


いつものうざい挑発顔だ。

僕だって負けるつもりは無い。

例えレンの…居場所が……無くなってもと言いたいけれど…。


「エクス君、体力テストの後のアレやった?」


「アレ?」


「機械で造られたベヒモス倒すやつ。」


機械で造られた…あぁ、シルヴァレさんが作った奴か。


「うん、やった。」


「何秒だった?俺は6秒だった。」


こういう時に嘘は吐かないほうが良いか。


「3秒だったよ。」


「わーやば!自信あったのに勝てな〜い!

幸い両親には天使クラスでの結果しか届いていないみたいだから良いけどクラス全体結果出て届いたら死ぬ〜!あはは!」


本当に思っているのか疑問になるほどレンはケラケラと笑っていた。

割と本当に死に近いはずなのに。


「あっ!俺の為に弱いフリとかやめてね。

そういうの無理!」


「は?」


「エクス君ならちょーっと手を抜いてくれそうだから先に釘刺すの!手を抜かないでね。」


「…でも君の家が…」


「キミに負けたんなら俺はそれまでってこと。

でも簡単には負けないから問題なし!」


レンの笑顔は無理に作った顔ではなかった。

手を抜いたら失礼だし、僕の成績にも関わるし…シルヴァレさんにも怒られるしで悪いことづくめだもんな。


「分かった。君を家から追い出してやる。」


「あれ〜?気にしてくれていた割に殺意高めの返答だなぁ?」


「何?いつもの僕が不満?」


「全く?キミらしいのが1番張合いがあるってもんだからね。」


レンもいつもの腹立つ笑みを浮かべた。

鼻が少し赤いのを見ると噴水前というのもあってか寒さを思い出した。


「で、プチ家出したキミはどうするの?」


「…どうしよ。帰りたくないし今夜は野宿かな。」


「貴族であろうフォーダン家の子息が何か言ってるよ。ご両親には良いの?」


今現時点でご両親というワードはレンには地雷らしい。

初めて彼の顔が嫌そうに歪んだ。


「俺の事なんてどうでも良いはずさ。

居ても居なくても1位という結果だけが手元にあれば良い家だから。」


フォーダン家って相変わらず狂ってるな。

仮にも家族であり息子であって、命ある者なのに。

強がっている彼の外面だけは演技が上手だと褒めてあげよう。

でも内面が苦しいと言っていることが分かる。こんなの、放っておける訳ないじゃないか。


「じゃあ僕の家においでよ。」


「えっ?いいよ。エクス君の御家族にご迷惑かけたくないし。」


こういう所はちゃんとしてるな。


「お父さんもお母さんも良いって先に言ってるから。大丈夫、行こう。」


「…ホントにいいの?」


「うん、先に許可取ってる。」


あのレンの瞳が揺れている。

必死に迷っている目は迷惑かけたくないのと頼りたいという思いが引っ張りあっている状態だ。


「ほら、行こう。」


僕は彼の手を取って引っ張った。

彼の動かなかった足が1歩踏み出された。


「……うん、ありがとう。

じゃあ手土産買って良い?」


「いらないよそんなの。」


「ダメ、お邪魔するのに手土産無いとか人間として終わってる。」


「…ソウ。」


レンの気が済まないという事で近くのお店でお菓子を見ることに。

夜だけれどお客さんは割と居る。

レンは腰を屈めながら様々なクッキー缶を見ていた。


「ご両親って紅茶派?コーヒー派?」


えっ知らない。でもお母さんが用意してくれた紅茶とクッキー、美味しかったな。


「紅茶好きだよ。」


「おっけー。紅茶のお供ならコレとアレと」


値段を見ているのだろうかこの男。

左手に持った買い物カゴの中に商品をバカスカ入れている。


「そんなにいらな…」


「ダメ。」


「はい…。」


怖…。レンが怖いなんて前世以来だよ。


「全部俺が美味しいって思ったやつだから味に間違いはないと思うよ。安心して。」


まぁお貴族様御用達なら間違いないだろう。

ふとレンが取ったクッキー缶の値段が目に入る。


たっっっっか。

庶民のクッキー缶の値段ではない。

レンのカゴの中のクッキー缶やその他諸々のお菓子を見て値段を確認すると高い物だけピンポイントで入っていた。


「ちょ、ちょっと待って!?

高すぎるって!1個で良いよ!」


「大丈夫、お金あるから。」


「そういう話じゃ…あーもー!僕をおいて行かないでよ〜!」


結局レンはカゴの中身を全てお会計に通した。合計額が耳を疑う値段だったのは言うまでもない。

オシャレなショッパーに入ったお菓子を見つめて


「これでご両親喜んでくれるかな?」


と疑問に思うのが分からない。

当たり前だろう。でもまず…


「ぶったまげると思う…。」


値段知ってるか分からないけど…。


「でもエクス君、ご両親と上手くいったの?」


「うん、お陰様で僕の杞憂だったと分かったよ。」


仮にもレンに心配をかけたんだ。

これで御礼になると良いけど。


「そっかぁ!良かったよ!」


自分の家はしんどいのに僕の事を喜んでくれている。嘘か本当か分からないけど、今考えるのはやめよう。


「じゃあゼウスに来てもらうね。」


「うん。」


ゼウスを呼び出すとすぐ訝しげにレンを見やる。


『む、ルシファーのマスターか。』


「こんばんはゼウス。お世話になります。」


『世話になる?マスター、どういう事だ?』


かくかくしかじかと先程の出来事を伝えた。


『ふぅん…マスターのママ殿とパパ殿を困らせるなよ。』


「勿論そのつもりさ。」


即答したレンに渋々頷き、家の前まで転移してもらった。


「ただいま〜。」


ドアを開けるとすぐお母さんが待っていた。


「おかえりエクス…ってまぁ!」


お母さんは僕の隣のレンに驚いている。

レンはすかさず頭を深々と下げた。


「こんばんは、夜分遅くにすみません。

そして初めまして。

エクス君に助けて頂いたレンと申します。」


ファミリーネームは明かさない、か。

その方が良いかもな。…何かあった時に。


「あらやだ顔を上げて?

貴方がエクスのお友達なのね。

息子がいつもお世話になっています。」


「いやいや、僕の方がお世話になってます。」


ちょっとむず痒いから会話を変えよう。


「お母さん、レン君泊めて良い?」


「えぇ、歓迎するわ。」


良かった。お母さんが受け入れてくれて安心だ。


「いきなりの事で本当に申し訳ありません。

こちらつまらない物ですが宜しければ。」


お母さんは少し考えてから差し出された紙袋を受け取った。


「お気遣いありがとう。

…まぁ!こんなに沢山!?」


「野宿を覚悟していたところをエクス君に助けて頂いたのです。少ないくらいですよ。」


多いだろ、どう考えても。


「じゃあ明日、一緒に食べましょう。

お夕飯は済ませた?」


「はい。」


「じゃあお風呂入って!狭いかもだけど。」


「いえ!お風呂も済ませてありますので!」


えっ!?済ませてたの!?それなのにあんな肌寒い噴水の前に居たの!?


「何してたの湯冷めして風邪引くよ!?」


「大丈夫大丈夫!

俺、割と丈夫だから…っくし!」


「ほらもー!!

お母さん、温かい飲み物ある?」


「ホットミルク作るわ!

こっちにいらっしゃい!」


「あ、お構い無く…」


「「ダメ!」」


「ハイ…スミマセン…オジャマシマス。」


レンの腕を引っ張り自室で僕の部屋着に着替えさせ、階段を降りてリビングの椅子へ座らせた。


「エクス君の服ちょっと小さいね。」


「うるさいな、いらないの?」


「ごめんごめん。嬉しいよ。」


顔が整ってるクセに手足まで長いとかムカつく〜…キャラデザ担当の人レンに二物も与えすぎだよ。


「はい、どうぞ。」


お母さんはホットミルクを僕とレンの前に置いてくれた。僕の分まである…。


「蜂蜜平気?」


「わぁ…好きです!」


瓶の中で琥珀色に煌めく蜂蜜を木製のスプーンで掬いあげて僕とレンのカップに1杯ずつ落としてくれた。そしてそのスプーンはレンのカップの中に。


「え、こんな贅沢いいんですか!」


家では良い物食べてるだろうに、子供のように目を輝かせている。食事すら我慢させられてたのだろうか。


「えぇ!ね、エクス?」


「何で僕?まぁいいんじゃない。

僕達の家でくらい。」


僕は先にホットミルクを1口飲んだ。

蜂蜜が入っているから甘さが際立ち、ほっと息が漏れる。

レンは食事を共にしたゼウスの様に僕の飲む姿を見てから手を合わせた。


「嬉しい…。頂きます!」


1口飲んだ彼は尚のこと黄金色の目を輝かせた。


「美味しい…。何か安心する。」


綻んだ笑顔に僕とお母さんは顔を見合わせた。

そこでお風呂上がりだからかタオルで頭をワシワシしながらお父さんが部屋に来た。


「お!?知らない黒髪君が居る!」


レンが声に反応し光の速さで立ち上がりお父さんの前で深々と頭を下げた。


「お邪魔しております、エクス君に助けて頂いたレンと申します。」


「君がエクスの友達の!しっかりしてるねぇ。」


「いえ、僕なんかがそんな。

申し訳ありませんが少しお世話になります。」


「いいよいいよ!大したもてなしは出来ないかもだけどゆっくりしてって。」


「本当にありがとうございます!」


レンが懐に入るのが上手いのか両親が寛大なのか。お母さんもお父さんも椅子に座り、レンと学校の事を話していた。けれど家や家出の事は一切触れなかった。


夜が深くなるほど時間が過ぎた為、僕とレンは流しで歯を磨いた。使っていない歯ブラシってあるもんだな。


「ごめんね歯ブラシまで…こういう事に気が向かなかったや。」


鏡越しでお互いを見ながら話すなんていつぶりだろうか。


「あの状態ならしょうがないでしょ。持ちつ持たれつってね。」


「大きな借りが出来ちゃったね。」


「ちゃあんと返してもらうよ。」


「勿論。」


お父さんが僕の部屋にマットレスと毛布を運んでくれた。レンにベッドで寝るよう伝えたけど頑として頷かなかった彼がマットレス、僕がベッドで横になった。


「至れり尽くせりで申し訳ないよ。」


「やりたいからやっただけだよ。

申し訳なさを感じないで感じるなら感謝にしてよね。」


「そうだね、ごめん。ありがとう。」


なんだろう、少し気まずいな。

レンは他人の家だし当たり前か。こういう時はどうすれば良いのだろう。友達を泊めることは疎か友達すらいなかった奴にはハードルが高いな。


「ご両親、本当に優しいね。」


レンが話してくれる事に感謝をして頷いた。


「うん、ホントに。」


「温かくて優しくて…良いなぁ…。」


家出の原因であるレンの家族とは真反対に優しいうちの両親。羨ましがるのは至極当然だろう。いくらレンに対して憎まれ口を叩いてしまう僕でも「いいでしょう」なんて言えるはずが無かった。


「家の事、家出の事、聞かないでくれた。

話している時も相槌を打って優しく聞いてくれた。」


彼の声が震え始めた。

僕は彼に背を向けるように寝返りを打った。


「エクス君が優しいはずだね。」


「…そうかな。」


「うん。あまり感じたことの無い温かさをくれてありがとう。」


「…どういたしまして。」


どう返せば良いか分からず素っ気ない返事になってしまう。彼が気にしている様子は無いけれども。


「ヨシュア君だったらあっそ、野宿ついでに野垂れ死ねば?って言われるだろうし。」


あぁ、絶対言うだろうな…。

特にレンを毛嫌いしている気がするし。

そういえば


「ヨシュア、どうしてるかな。」

「ヨシュア君、何してるかな。」


…レンと言動が被った。


「エクス君がメールか何かで聞いてみてよ。」


「自分ですれば良いじゃん。」


「俺だと無視されると思うから。」


それは確かにやりそうだ。

ヨシュアにも心配かけたしメールするのはアリか。


「ヨシュア君ってさ、リーレイ先生の監視下だったよね。」


そう、円卓会議で決まったことだ。

アビスの実験の成功者とヴァルハラにバレてしまった事により発生した妥協案。

無数の目を持つ天使メタトロンの召喚者であるリーレイ先生がヨシュアを常に見張ってくれているというものだ。

でもそれは


「学校内で、ね。」


リーレイ先生と行動を共にしていないのならば今、ヨシュアに監視は付いているのか。

もし、万が一過去ヨシュアが現れて誰かを手にかけてしまったら…。


「流石に誰か付いてるよ。

先生達も1番の気掛かりだろうし。」


思考を読み取ったように欲しい答えをくれるレンに少し腹が立つ。けれど欲しかった答えが不安を消そうとしてくれているのも事実。


「そうだね、ヨシュアにメール送ろっと。」


“心配かけてごめんね。

僕の方は大丈夫だったよ。

そっちはどう?大丈夫かな?”


っと。アイオーンに頼んでメールを送ってもらった。


「よし、メール送ったよ……ん?」


その間に何とレンは眠りについていた。

自分の家、僕の家に気を張っていたんだろう。寝顔を見ていたら僕まで眠くなってきた。



ゼウリス魔法学校職員寮。


「あ〜…皆大丈夫かなぁ。」


スピルカが珍しく不安を口にした為、ヨガミとシオンが彼を丸い目で見やった。


「大丈夫だろ。」


「せやで、というか考えてもどうにもならへんやろ。」


スピルカの為と口にする2人だったがシオンがバッサリと言った為、スピルカは歯を食いしばる。


「そうなんだけどさぁ〜…い〜っ!」


「妙な奇声発しちまったよ…。

まぁ心配な奴らは多いよなァ。」


「そういえばヨシュア=アイスレインの学校外の監視は確か…」


シオンの疑問にヒメリアが口を開いた。


「もう頼んである。ヴァルハラがアイスレインに目をつけている事もあって容易かったさ。

“あの人”への依頼は…。」


ヒメリアの眉間の皺を解すようにリーレイとオペラが頷き合う。


「それなら安心ね〜!

あの人は息子さんと娘さんが優秀なだけあって良い方だもの〜!」


「ケケケッ!特に子供に弱ぇからナ!」


「…そうだな。」



2人が寝静まった頃、ブブッと独りでにエクスの枕元に置いてあるデバイスが震える。


『エクス様、ヨシュア=アイスレイン様よりメールです。』


「ふぇ…」


寝ぼけ眼を擦りながらデバイスを手に取る。


「うぅん…みせて〜…」


『はい、こちらです。』


【エクスが大丈夫で良かった。

俺の方は初めて見る監視の男が居るよ。

ユリウスさんと同じでニコニコしてて人当たりがよく見えるけど探りを入れる目をしてる。所属がヴァルハラじゃないらしいんだけど王様の狗なんだって。


名前はカイル=ルージュ


エクスも気をつけてね。】


『との事ですがエクス様…?

…衝撃を検知。どうやら寝てしまったようですね。アイオーンもこの画面を開いて落ちます。』


寝ぼけていたエクスはそのまま寝落ちをし、ヨシュアのメールを見るのは明日の朝となった。

もしお時間がありましたら別の小説も目を通していただけたら嬉しいです…!

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