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第181話『帰りたくない』

もう3月が終わりそうですね。

周りに桜が咲いている木を見ていると春だなぁとしみじみ思う反面、「寒くね?」となり身体が震えます。

体調にお互い気をつけましょうね!

…毎回同じこと書いてる気がする…。

前回のあらすじ


先生からの通達で3日間、実家へ帰省することになりました。卒業するまで家には帰れなかったはずなので何か色々と驚いています。



スピルカ先生から帰省の話を聞いた後の授業は全く頭に入らなかった。

気がついたら放課後になっていたほど、呆然としていたようだ。


「…」


周りはいつも通りの賑やかな話や笑い声が聞こえているのに、僕は夢の中に居るような、声は聞こえるけれど何を言っているか鮮明には聞こえない現象に陥っている。

そんな時、目を覚ませてくれるかのように誰かの手が頭に乗って左右にわしゃわしゃと撫でてくれた。誰かと思い振り返ると後ろの席のイデアちゃんが手を引っ込める途中だった。

いつも笑顔な彼女の眉は下がっており、次にヨシュア、シャル君、スカーレット君の頭を順に撫でて行った。

そしてセヲ君の頭まで撫でようとし、止めようと思う前に彼女の伸びた手を振り返らずに掴んで止めた。


「気持ちだけで充分です。」


そしてイデアちゃんを見ることなく退出した。

彼は握力強すぎるけどイデアちゃんが痛がっていないという事は優しく掴んだのだろう。

そして撫でられた僕達はもう一度イデアちゃんを見る。


「…元気、出た?」


「うん、ありがとう。」


僕がお礼を言うと小さく笑った。

隣に居たメルトちゃんとローランド君も心配そうに僕達を見る。

心配をかけてはダメだ。何か言わなくちゃ。


「こういう時はおやつが1番!

さ、皆で行きましょう!」


メルトちゃんは笑顔を浮かべ、食堂へと誘った。皆で軽食を頼み席に着こうとしたら御手洗いに行くと言って待っているのは僕とスカーレット君のみとなった。

どうしよう、何を話そう。

友達との会話ってどうしてたっけ。


「驚いたわ、貴方まで同じ顔してるもの。」


「えっ」


綺麗な横顔は下を向いていた。

そしてゆっくり僕と目を合わせてくれる。


「貴方も帰りたくない派?」


悪戯っぽく笑う彼に小さく頷くと、彼は小さく息を吐いた。


「困っちゃうわよね。

帰るつもりも、帰る予定も無かったのに。」


「うん…。」


「せめてクリムだけでも帰らなくて良いようになれば良いのに…。」


黒い手袋を付けた手はギリリと音が鳴るほどの力で組まれる。

彼の呟きは無理だと悟っての言葉だ。

一瞬「しまった」と言うような表情で顔を上げた彼はすぐに平常心を取り戻して僕に話を振ってくれる。


「でも意外だったわ。

貴方、ご家族と幸せそうだと思った。」


「レン君にも言われた。」


「あらやだ、それはごめんなさいね。」


レンの名前を聞いて嫌そうなスカーレット君に思わず笑ってしまう。


「本当にごめんなさい。

帰りたくない理由があるのにそんなこと言って。」


「ううん。

これは両親じゃなくて僕自身の問題だから。」


「…ねぇ、エクスちゃんって彼女いた事ある?」


突拍子も無い事に僕の頭は混乱した。


「えっ?えっ??な、無いよ!1回も!」


「でしょうね。」


肯定された。


「もし彼女が出来たら何したい?」


「えっ…何それ、どうしたの。」


「いいから、考えて答えて頂戴。」


真剣な彼に気圧され、メルトちゃんの事を考える。いや、何で普通にメルトちゃんで考えるんだ!?失礼すぎる!!


「何1人で頭抱えてんのよ。

そんなに難しいこと?」


「うぅ…」


彼女、彼女か。

もし彼女が出来たらしたいこと…。

色々とあるけどまずは…


「手を繋ぐとか?」


「ふっ…純粋すぎて眩しいわ。

それより先の事だって考えたくせに。」


「そっそんなこと!!」


「アタシの父は、それをクリムに強要しようとした。」


「………え?」


先程の雰囲気とは打って変わって静かに怒りを露わにするスカーレット君に僕から熱と恥ずかしさが消えた。


「アタシの母親が死んでしまって、事実が受け止めれず壊れた父はアタシ達と母親の区別をつけれなくなった。」


「……」


「クリムに求めたのは恋人のそれ。

貴方が思い浮かべた()()。」


「…!」


「不幸中の幸いかアタシとクリムの区別すら出来なくなっていてね、クリムを守る事が出来たの。」


「それって君が代わりになったってこと…?」


「…」


喋ってくれていた彼の突然の沈黙は肯定を意味した事が分かった僕は口を手で塞いだ。

色々な感情がせり上がって言葉か何かが出そうになったから。


「そんな家に帰ったら今度こそクリムが酷い目に遭うかもしれない。だから帰りたくないの。」


酷い目に遭ったのは君もだろう。

彼は身代わりになるほどクリムさんが余程大切なんだな。

するとスカーレット君は無理に口角を上げた。


「貴方へのお詫びはこれで良い?」


「お詫…え?そんな事のために話してくれたの?」


「対価には充分だと思ってね。」


そういうところもレンと同じだ。

と言うと怒られそうだったので黙っておく。


「幻滅した?」


「するもんか。」


自らを嘲笑するような薄ら笑いを浮かべた彼に首を振ると一瞬だけ目を大きくしてから優しい笑顔になった。


「…ちょっとスピちゃん先生に掛け合ってくる。」


「今から?」


「行動は早い方が良いでしょ?

ただクリムや皆に悟られたくないわ。」


「じゃあ皆と過ごして別れてから行こう。」


「ついてくるの?」


当然のようについて行こうとした僕に首を傾げるスカーレット君。

シャル君の力になれるかもしれない。

頷く僕を彼は拒絶しなかった。


「分かった、何かあるようね。」


少し喋ろうかとしたら皆が戻ってきてちょうど良いタイミングで軽食も出来た。

メルトちゃんやローランド君、イデアちゃんが頑張って話題を作ってくれるから僕とスカーレット君、ヨシュアが話題を切らないようにしていたけれど1人、顔色が悪くなるばかりの彼を笑顔にする事が出来なかった。


「…気を遣わせてすみません。

…オレ、体調が良くないみたいで…部屋に戻りますね。」


「あ…」


紅茶の入っていたカップを持って席を立ち、足早に返却口を目指す彼を追いかけようとした時、ローランド君が素早く後を追いかけた。


「シャル…!」


ローランド君が愛称で呼ぶなんて…。

いや、驚く事はそこじゃない。


「う…迷惑だったかなぁ…」


メルトちゃんが今にも泣きそうだ。

シャル君だってメルトちゃんを泣かせたいわけない。


「迷惑なわけないよ!僕は嬉しかった。」


「アタシも。貴女の気遣い嬉しいわ。」


「俺も〜。」


「ごめんねぇ…!皆辛そうだったから…!」


涙を流すメルトちゃんの背中を優しくさするイデアちゃん。


「泣かないで。僕、嬉しかったよ。」


「貴女は笑顔が1番、可愛い顔が台無しよ。」


僕達は対面のメルトちゃんの元へ行き言葉をかけ、ヨシュアは黙って紺色のハンカチを差し出した。


「ありがと〜…。

洗って返すね…。」


「大丈夫、そのままちょうだい。」


「やだ。」


ヨシュアは涙を拭いたハンカチを握りしめる彼女から回収しようとしたが思った以上に彼女の意思が強固で抜き取れなかった。


「…分かった。待ってる。」


「うん。」


「今日は解散しましょ。メルトちゃん、またご飯一緒に食べましょうね。」


「…うん!」


「俺、2人を寮まで送ってくよ。」


ヨシュアは僕を見てそう言った。

まるで僕がしたいことが分かっているかのような提案だ。

それにメルトちゃんもイデアちゃんも元気が無いしお願いしよう。


「分かった、お願いするね。」


「うん。任せて。」


頷いたヨシュアに慌てて首と手をを横に振るメルトちゃん。


「いっいいよ!悪いよ!

イデアちゃんと2人で大丈夫だよ!ね!」


「う、うん!あたし元気だし!」


慌てる2人と反対に低く落ち着いた声で諭すヨシュアの瞳からハイライトが消えた。


「メルト、イデア。

男はろくでもない奴が多いの。」


「「う…」」


「弱っている2人を喰おうとする奴なんていっぱい居るの。だから任せて。」


メルトちゃんとイデアちゃんは顔を見合わせ、申し訳なさそうに頷いた。


「じゃあ行くね。」


ヨシュア達に手を振って2人になった僕達。


「ヨシュアちゃんってエスパーか何か?」


「そうなのかも…。」


ヨシュアの気遣いに驚きつつも感謝しながら職員室へと向かった。



職員室って何でちょっと緊張するんだろう。

至って普通の扉なのに空気が違って思える。


「…」


「…入りなさいよ、神クラス代表。」


「こういう時だけ代表扱いしないでよ…。」


手をこまねいているとスカーレット君は大きな溜息を吐いて僕の代わりに職員室の扉を3回ノックした。


「はーい。」


スピルカ先生の声だ。

扉を右へスライドさせてから


「失礼いたします。」


と挨拶してから1歩踏み出し、頭を下げる。


「神クラス、エクス=アーシェ並びに

スカーレット=アルカンシエル。

担任のスピルカ=アストレイ先生に用があり、参りました。」


「おーう!俺ここー!」


キャスター付きの椅子でにゅっと現れたスピルカ先生は背もたれを利用し仰け反り、両手を上げていた。


「行くわよ。」


「あ、うんっ失礼します!」


前世と変わらない普通の職員室だ。

ただ教師が10人も居ないからか大分狭い。

周りを少し見てからスピルカ先生の前に2人並んで立つと、先程の無邪気な笑顔が消え、大きな緑色の瞳が静かに僕らを見据えた。


「まさか職員室に来るなんてな?

どうしたんだ?」


スピルカ先生は意識していないかもしれないけれど大人特有の圧を感じ、スカーレット君は


「…帰省に関して…」


と口数少なく呟くように言った。

スピルカ先生は察したのか一瞬視線を横に逸らしてから頷いた。


「そうか、じゃあこっちおいで。

お茶入れてやる。」


ぴょんと椅子から降りた先生は職員室の奥へと進んでいく。

目を合わせてから先生の後へついて行くと、ドアノブを捻り一室へと招かれた。

黒革のソファーが2つ、ガラス製のローテーブルを挟んで対面で置いてある。


「好きに座りな〜。」


スカーレット君は手前のソファーの右側に腰掛けた為、僕は隣に座った。

少ししてスピルカ先生が紙コップを2つ机に並べた。中には緑茶が入っていた。


「「ありがとうございます。」」


「んーにゃ、良いってことよ。」


ぼすっと音を立てて座ったスピルカ先生は息を吐いて苦笑いを浮かべた。


「言いたい事はぶっちゃけ分かる。

帰りたくないんだろ?」


「「!」」


「お前らの列だけ顔が葬式だったからな。」


まぁそりゃあ先生から全員見えるもんな。

スカーレット君も握る力を強めた。


「…帰るのって学生全員なのですよね。」


「あぁ。」


「クリムだけでも帰らなくて良いように出来ないでしょうか。」


「お前が敬語って変な感じだな。

それだけ本気って事だろう。

…ただすまないが…」


否定が聞こえた瞬間、スカーレット君は身を乗り出した。


「ッ!お願い!帰るとクリムが傷付いてしまう!!心も!!身体も!!」


「落ち着け、1つ話さなきゃいけない。」


「スカーレット君…。」


彼は怒りと焦りでいっぱいの金色の瞳で宥めようとした僕を見る。その後、目を伏せ歯を食いしばって座り直した。


「アルカンシエル家に謝罪に行った時だ。

お前のお父様に会った。」


「え…

あの人が外の人(先生)に会ったっていうの…!?」


「あぁ。ただお前たちが居なくなって憔悴しきってた。」


先生の話はこうだ。

謝罪の為に話そうとした時、アリア…スカーレット君のお母さんの名前をずっと呟いていたらしくハッと我に返った途端「返せ」と捲し立てられたようだ。


「まだアタシ達をお母様だと思ってんのね…」


「いや。息子と娘を返してくれと言われた。」


「………は?」


予想外の言葉にスカーレット君は目をこれでもかと見開いた。


「そしてその場で泣き崩れてしまったよ。」


お父さんはお母さんに似ていたスカーレット君とクリムさんの区別をつけられなかったこと、特にスカーレット君にひどいことをしてしまったことを先生に話したらしく、会って謝りたいのだと言っていたらしい。


「だから、帰ってあげてほしいんだ。」


「そんなっ…今更…口だけかもしれないのに…またアタシ達を苦しめるかもしれないのに…!」


スカーレット君の悲痛な声に僕の胸がズキリと痛む。


「俺も話を聞いた時にそう思った。

だからお前の“帰らない”という事には頷けないが、“1日だけ帰る”なら問題ない。」


「1日…」


「もし酷いことされそうになったら電話しろ。

アストライオスと必ずすぐ助けに行く。」


「…………っ…」


暫く手を組んで葛藤していたスカーレット君は諦めたように額を組んでいた手に付けた。


「…分かった。1日だけ帰る。

後は此処に戻るわ。」


「助かるよ。」


微笑んだスピルカ先生は僕に視線を移した。


「お前も帰りたくない?」


「あ…えと…」


「お前のお母様とお父様な、

めっっっっっちゃくちゃエクスの事心配していたんだぞ!」


「…え?」


聞き返すとスピルカ先生はにぱっと笑った。


「無事なら早く会いたいって!

俺らにお茶菓子まで出してくれてさ。」


「…え?え?」


「お前が1番頑張ってくれたから最初にアポ取らせてもらってさ、エクスが頑張ってくれた事を伝えたらとても嬉しそうにしてて俺まで嬉しくなっちゃったくらいだ。」


困惑している僕にスカーレット君が微笑みかける。


「とても優しいご両親じゃない。

これは帰ってあげた方が良いと思うわ。」


「…うん…。」


スカーレット君への申し訳なさとよく分からない感情がぐるぐると渦巻く。


「で、エクス。

言いたい事はそれだけじゃないだろう。」


「えっ!?」


どうしてそれを!!

先生もエスパーか!?


「恐らくシャーロットの事を相談しに来たんじゃないか?本人に何も言わずに。」


エスパーかもしれない…。

先生は小さく溜息を吐いて視線を逸らし、足を組んだ。


「アルカディア家は特に深刻だな。

謝罪も必要ないし戻ってこなくて良いってピシャリと言われた。」


シャル君…。


「何とかしようと思ったら従者に締め出されたよ。無抵抗アピールしたけど普通にボコされた。」


さすさすと頬のガーゼを触るスピルカ先生。

その傷はアルカディア家で負ってしまったものなんだ…。


「正直シャルが帰るのは俺もちょっとな…

うん、敷地すら跨がせないつもりだろうから家にそもそも戻れるかって話になる。」


「なら…!」


僅かな希望が見えた気がして詰めようとするがスピルカ先生は分かっていたように首を横に振った。


「しかしシャルだけ帰らないという事は出来ない。スカーレットにも帰ってもらうのもあってな。」


「「…」」


つまりシャル君も1日は帰らないといけない…。


「すぐ学校へ戻ってこれるなら良いが…

下手すると戻れても家から出られなくなるかもしれない。」


「!」


「ありえるわね…。」


家出した息子が戻ってくるチャンスなら二度と出さない可能性もあるか…。

でも戻ってこなくても良いって言ったんだよな…相手が先生だからそう言ったのか?


「取り敢えず困ったら連絡をすぐ寄越すこと。

俺達はお前達の味方だから!」


先生に頷いて僕とスカーレット君は退出した。


「…聞いて良かったかもね。」


「…そうだね。」


互いにそれ以降会話をせず、真っ直ぐ寮へ向かった。


「ただいま〜。」


「おかえり〜。」


扉を開けるとヨシュアが部屋着でくつろいでいた。僕も着替えようとクローゼットへ向かう。


「メルトちゃん達の事、ありがとうね。」


「ううん。まぁ傍からすると俺が女の子2人泣かせた絵が出来上がっちゃったけど。」


あぁ…ってイデアちゃんも泣いちゃったのか。


「気を遣わせた挙句泣かせちゃうとは…

申し訳なかったな…。」


「だね。お詫びを考えといても良いかもね。」


「そうだね…。」


他愛ない話をしてあっという間に夜になった。

就寝時間だ。ヨシュアに「おやすみ」と言って布団を被る。

あれからお風呂でもご飯でもシャル君に会うことは無かった。

メッセージ送ろうかな。

そう思ってデバイスの電源を付けるとアイオーンが黒い空間でフワフワと浮いていた。

白髪の頭に映える猫耳ヘッドホンのネオンが呼吸するように水色で発光している。


『あ、エクス様。お疲れ様です。』


「お、お疲れ様…。」


AIも「あ」とか言うんだ。


『何かなさいますか?』


アイオーンに聞かれ、メッセージアプリに触れようとしてやめた。


「…ううん、時間確認しただけ。」


『左様ですか。

また何かあればお申し付けください。』


「ありがとう。」


フッと画面が暗くなる。

不安な僕の顔が液晶にぼんやり映る。

そりゃメルトちゃんもイデアちゃんも気を遣うよなと思う顔だ。

先生によればお母さんもお父さんも心配してくれたんだな…。

ゼウスも会ってくれるかな、どう思うかな。


「ゼウス、小さく出てきて。【summon】」


ヨシュアを起こさないようにと念じながら相棒を呼び出すと、ちゃんと小さく光も少なめで現れた。


『私を小さく呼んだなマスター。』


「うん、あのね」


家に帰らなくてはならなくなった事を簡潔に伝えるとゼウスは首を傾げた。


『ふむ、お母上にもお父上にも会えるのか。

良かったではないか。』


「ゼウスは嬉しい?」


『うむ、何せマスターを産んでくれた方々だからな!挨拶したいものだ!』


僕は転生者で気が付いたらエクスになっていた訳で…中身は別の生活をしていたからな…。


『マスターは嬉しくないのか?』


「う〜ん…思春期拗らせたかも…。」


『ふはは!大いに結構!

子供はそうでなくてはな。』


「ちょっと!ヨシュアが起きちゃうでしょ!」


ゼウスの高笑いに思わず僕まで大きな声を出してしまい手で口を押えた。


『私は正直、思春期というものを分かってやれないが両親に会いたくないのは少し分かってやれる。』


僕は疑いの目を腕を組むゼウスに向けた。


『ほら、私の父はアレだし。』


「あー…」


ニフラムさんの召喚獣クロノス。

ゼウスのお父さんだったな。

ゼウスもハデスも怒ってたというか嫌っていたというか…。


『まさか召喚獣として会うとは思わなんだ。』


「でも味方になってる訳だし…?」


『味方?いやいや、アレは隙あらば私を殺そうと考えておる。絶対と言っていい。』


まぁ…否定が出来ない。

ずっとゼウスの事睨んでたしな。


『マスターの御両親はそんな事ないだろう?』


「流石に無いかな。」


『うむ、だから安心して眠るが良い。

絶対に良い方々だから。』


ゼウスは僕の頬を小さな手で撫でて微笑んだ。

そして自分で魔導書に戻った。

ゼウスに話した事で心が少し軽くなった僕はすぐに眠りに落ちた。

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