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第178話『少しだけ反省』

休みとは何故簡単に過ぎ行くのでしょう!!

休みは24時間ではなく更にあるべきなのです!!

お金で時間が買えれば良いのにと常々思いますね…。

やりたい事が多すぎて!

前回のあらすじ


クレアさんから預かった手紙、海ではしゃいだ時に濡らしてしまった。

セヲ君に怒られちゃうかな…。

怒られちゃうよね…。



中庭へ向かったのは前にセヲ君がボーッとしていたから。セヲ君なのに植木に咲いた花を眺めていたんだよな。そういえばアルマリー村にもあの花があったな。


「あ、居た。」


「げっ」


思わず声を出してしまい、さっきまで前回会った時のようにボーッとしていた彼に気付かれ逃げられそうだ。


「ま、待ってセヲ君!

君に渡さなきゃならない物があるんだ!」


そう言ってもセヲ君は走る。


「貴方から貰うような物なぞ迷惑もしくは不快感以外にありませんので。」


むきーっ!!

でも我慢しろ僕!!


「クレアさんからの手紙だよ!!」


セヲ君は誰も居ない廊下でピタリと足を止めた。


コツ…と振り返る時の足音が1つ。

1つだけした。

それなのに彼は既に僕の目の前に居た。

瞬時に怒りを孕んだ目で僕を見下ろし、胸ぐらを掴まれていた。


「何処でその名を聞いた…?」


「何処って」


「直ぐに答えろ。

さもなくば首をへし折り殺す。」


右手で僕の首を締め付ける。


「ぅあっ」


「早く、早く早く。」


ミシッと首から音が鳴る。

痛い!しかも呼吸が出来ない!

こんなの答えようがない!


「が…っ」


やばい…息が…っ!!


「3秒もあげる。その手を離せ。」


「ッ!」


急に手が離れ、意識が飛ぶ寸前で解放された。


「げほっ…げほげほっ!!」


酸欠で目の前が火花を散らしたようにチカチカする。


「貴方、人間ですか?」


「残念ながらお前と同類さ。」


この声…


「ぅ…よしゅあ…?」


「エクス!大丈夫?」


「よしゅ」


よく見るとセヲ君の後頭部に白銀の銃を突き付けていた。

あのセヲ君が黒革の手袋をした両手を小さく挙げていた。

ヨシュアの光が無い目…過去ヨシュアと同じだ。


「ヨシュア、ダメ!」


「ダメ?セヲはエクスを殺そうとしたんだよ?」


「それでもダメ!今回悪いのは僕だ!」


「…」


納得していないからかまだ銃を下げてくれない。


「お願い、僕は大丈夫だから。」


「……」


「護ってくれてありがとうヨシュア。」


「………チッ…エクスの優しさに感謝しなよ。」


渋々銃を下げ、背を向けてスタスタと歩いていってしまった。


「言葉足らずでごめんね、セヲ君。

クレアさんの事はクレアさん本人から聞いたんだ。」


「…会ったのですか、彼女に。」


「うん。セヲ君の事、とっても心配して話しながら泣いちゃってたよ。」


「どうやら本当に彼女に会ったようですね。

ヴァルハラとの任務というアレですか。」


何故セヲ君がそれを…。

先生が話したのか?


「知ってるの?」


「アムル=オスクルムと言う者から手紙が届きましてね。」


アムルさんが?また何で?


「体良く書かれていましたが遠回しな脅しが書かれていました。最終用件は貴方達とヴァルハラに協力しろと。」


流石はアムルさん。セヲ君を脅すなんて…

というか脅すという事は断る事を許さないという事だよね。


「もしかしてその脅しにクレアさんが関わっているの?」


「話す必要はありません。」


関わっているんだな。

だからあんなに怒ったんだ。

アムルさんの脅しの内容が分からないけど僕がクレアさんへの差し金だと思ったのかもしれない。


「クレアさんの村を護る為に行ってきたんだ。

嬉しそうにセヲ君の事を話してたよ。」


「あの人…いつまで経ってもお喋り癖が治りませんね。」


「クレアさんから手紙を預かったは良いものの濡らしちゃってさ…。本当にごめん…。」


シワシワになった手紙を差し出すと彼は普通に受け取った。


「…問題ありません。

元々、彼女の字は読みにくいので。」


「そうなんだ。」


綺麗な字を書きそうなのに。

手紙を少し眺めた後、セヲ君はバツが悪そうに顔を背けた。


「…先程の件は詫びます。

冷静ではありませんでした。」


セヲ君が謝るなんて…。

僕は首を横に振った。


「大丈夫だよ。」


「痛い目に遭ったのにおめでたい人。」


「あはは…」


手紙の件が有るから何も言えないだけだよ…。

するとセヲ君は手紙をロングコートのポケットに仕舞い腕を組んだ。


「それにしても…

貴方、随分な化け物を飼っていたのですね。」


「化け物?飼う?」


「ヨシュア=アイスレインですよ。

彼、気配が全くありませんでした。」


ヨシュアの名前を聞いてギクリと身体が強ばる。


「ヨシュアは化け物なんかじゃない。」


「いいえ、アレは人間ではありません。

少なくとも半分は。」


何故そんなにも鋭いのだろう。

でもヨシュアは違う。

ちゃんと人間なんだ。ちゃんと…


「…違うもん。」


「貴方が目の前に居なければ彼は迷いなくトリガーを引いていたでしょう。」


「そんなこと無いと思うけど…」


僕の否定をセヲ君は溜息で返した。


「俺を撃てば返り血と肉と骨の欠片が貴方にぶちまけられますから。」


「ひぇ…」


「(昔に会った時と雰囲気が微妙に違う。

…エクスと言う首輪が付いたからか。)


脳裏には実行し満足気な顔をしているヨシュアが簡単に思い浮かべれた。


「そしてまだ用がある人が居るみたいですよ。」


セヲ君は僕の横を見た。

勝手に顕現した魔導書の金細工と魔法陣が光ってる。


「ゼウス?どうしたの?【summon】」


魔導書から出るや否やセヲ君へ殴りかかろうとしたゼウス。


『貴様、只では済まさぬ。』


「!?」


「ちょっゼウス!ダメ!」


僕の声でゼウスは止まってくれた。

ほんの少しでも遅れていたらセヲ君の鼻にゼウスの拳が入っていたくらいスレスレで。

僕が殴りかかられそうになったかと思うくらい心臓がバクバク言っている。


「急にどうしたのゼウス?!らしくないよ!」


振り返る彼は静かに話す。


『マスターに害を為したのだぞ。

らしい、らしくないなどの話ではない。』


「ぼ、僕は大丈夫だから」


『私はマスターと魔力で繋がった召喚獣だぞ。

マスターの事はよく分かっているつもりだ。』


僕が首を絞められていた時に大丈夫じゃなかったと思ったんだ。実際大丈夫じゃなかったけど。確かに視界の隅っこで魔導書が光っていたような気がしないこともない。

まずい…この感じめちゃくちゃ怒ってる。

どうにかしないと。


「セヲ君謝ってくれたし、今回に限っては僕も良くなかったから大丈夫だよ。」


『マスター…。』


「最高神様の目の前にいると殺されそうなので俺は行きます。さようなら。」


「あ。」


セヲ君は本当に歩いていってしまった。

直ぐに視線をゼウスへ戻すと彼はまた悲しそうな顔をしていた。


『何故直ぐに私を呼ばなかった?』


「と、突発的で…吃驚しちゃったから…」


『…』


あの目は信じてないな。

嘘は言っていないし声が出せなかったのもあるけど、

本当は怖かった。

先生に怒られることとセヲ君が怪我を負ってしまう可能性があったことが。

ゼウスが力加減してくれるか分からなかった。

あんな一瞬の間でももし、万が一にも怪我をさせてしまったらと不安になった。

怒られるだろうかと身体に力が入る。

しかしゼウスは優しく僕の頭を撫でた。


『我がマスターは優しいなぁ。

自分を虐げている者を私が殺めてしまうことが恐ろしく感じるなぞ。』


バレてる…。


『人間を勝手には殺さぬ、そうマスターに誓おうぞ。』


「ほんと?」


『うむ。如何に愚かで救いようの無い人間だとしてもマスターの許可無しには殺さぬ。』


「うん、じゃあ約束。」


『但し、私をしっかり頼る事。それが条件だ。』


「分かった、頼んだよ相棒。」


『うむ!』


彼にはバレてるのかな。

前世で誰も助けてくれなかったから助けてって言うこと自体怖いし、迷惑になるのも怖い。

無視されるのも怖いけど僕なんかに時間を割いてもらうのも苦しい。


『では私は戻るが何かあったら直ぐに呼ぶように!』


「うん、ありがとう。」


僕に頷いて魔導書へ自ら戻ったゼウス。

何故だろう、一気に疲れた…。

帰ろう。



「エクスッ!!」


「ヨシュア!?」


帰ってきた途端ヨシュアが大慌てで迎えてくれた。


「大丈夫だった!?

わっ首が赤いよ!!」


さっきと真逆にワタワタと心配してくれているヨシュアにホッと息をついた。


「セヲ君、握力ゴリラ…じゃなくて力強いから助かったよヨシュア。」


「エクスの立ち位置さえ違えばトリガー引けたのに…」


「え」


ボソッと言うヨシュアの言葉は僕の耳にクリアで入った。やっぱりトリガー引こうとしてたんだ!

セヲ君の言う通りだったなぁ。


「ん?何でもないよ?」


ニコッと笑顔で取り繕うヨシュア。

僕に聞こえてるの分かって敢えて首を傾げたのだろうか。

彼は背を向け歩き出す。

僕もその後ろをついて行く。


「明日やっと休みだね。」


「そ、そうだね。ゆっくり寝れるよ。」


「エクスは休日寝るタイプ?」


「うん、大抵夜更かししてるから。」


この世界が舞台のゲームを徹底的にやっていたからね。

何してたのって聞かれたら……答えていいのか?

ゲームってこの世界にある?

いや、携帯すら全然普及していないんだ。

ありそうにない。


「エクスが夜更かしするなんて意外だなぁ。

何してたの?」


凄いピンポイント。

僕の前世の娯楽はこの世界にほぼ無いだろう。

無難なのは読書だけどヨシュアも本を読むって分かったから深堀される可能性が高い。

それ以外も同様。つまり最適解は


「気が付いたら朝になってた。」


だ。反応はどうだろう…?


「気が付いたらって…エクスってば変なの〜。」


最適解では無かったけど誤魔化せたみたい。

宿題とか言っておけば良かったかな。

いや、それも含めて気が付いたら朝になってた、だ。揺るがないようにしないと。

僕の話題を逸らそう。


「そ、そういうヨシュアは?」


「俺?俺はよく城下町を歩いていたよ。」


「へぇ…ウィンドウショッピングってやつ?」


「そんなとこ。セヲもたまに見たよ。」


「えぇ!?」


そういやセヲ君って片っ端から人を殺しにかかってたんだっけ…。

城下町でってそりゃ噂が広まるよね…。

ヨシュアは自分のベッドに腰掛けて微笑んだ。


「ねぇねぇエクス。

今日、何したか教えてよ。

俺も教えるからさ。」


「うん。じゃあ僕とシャル君はね…」


今日の出来事を出来る限り簡潔にヨシュアへ伝えた。

クレアさんの事は伝えていない。

そしてヨシュアはメールであった通り、街の人々に聞き込みをしたらしい。

魔女の(ワルプルギス・)(ナハト)を直接探るのではなく、黒い噂を追うような素振りで。

第三者が興味を持って近づかないようにという保険でもあるとユリウスさんが言ってたのだとか。

なるほどね。


「有益な情報は無し。

寧ろ俺がユリウスさんやレンに根掘り葉掘りの質問攻め。最悪だったよ。」


ズモモ…とヨシュアから黒いオーラが出ている。

ユリウスさんは元々それが目当てでヨシュアを指名しただろうし…僕あの人苦手…。


「俺あの人苦手。人の事めちゃくちゃ探るクセに自分は探らせないとかタチ悪い!」


ヨシュアが珍しくぷりぷりと怒っている。


「僕も苦手…。

何かされそうで怖いや…。」


「うん、情報を簡単に渡しちゃダメだよ。」


ヨシュアの念押しに頷いて僕達は一日を終えた。


そして数日後。


「おーっす!おはようお前ら!」


「さっさと席に着けよ〜。」


いつも通り教室に入ってきたスピルカ先生とヨガミ先生の姿に生徒達はぎょっとする。

2人とも顔にガーゼが当てられていた。

スピルカ先生の板を持つ小さな手にも包帯が巻かれていた。ヨガミ先生は黒い手袋をしているから分からないけど…。


どうしたんだ?

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