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第173話『掛けられた手錠』

気がつけば10月になっていました。

あと3ヶ月後にはもう新年とは思えない早さで若さを失っていきますね…。

今のうちに好きなことやっておかないと!って思う今日この頃です。

前回のあらすじ

メルトちゃんだと思ったら幻術を使ったセヲ君だったし、セヲ君だけ大暴れしたのに僕まで一緒に怒られる羽目に。

災難すぎる。


「よって罰を下します。」


リーレイ先生の目からハイライトが消え、

まるでそこに在るかのようにゆっくり開くアイアンメイデンに腰を抜かしそうになる。


「セヲ君は左手、エクス君は右手を出して?」


罰が下る前準備の為だろうか。

僕もセヲ君も言われた通りに手を差し出す。


「がっちゃんこ!」


リーレイ先生に手を添えられたと思ったら僕とセヲ君を繋ぐように手錠を付けられた。


「「なっ…!?」」


2人で反対方向へ力を入れても腕が痛いだけで壊れそうにない。


「このまま、ラブラビちゃんに事情を説明してもらいます。」


「事情って…?」


恐る恐る聞くと、リーレイ先生はいつもの笑顔に戻り、周りに小さな花が舞う。


「ラブラビちゃんのお仕事を増やしちゃった理由よ〜!この子達は召喚獣に運んでもらってね〜!」


この子達とは伸びているセヲ君がボコボコにした生徒達の事。


「ちなみにその手錠にはメタトロンのおめめが付いてます。逃げたり外したら…賢い貴方達なら分かってるわよね〜?」


何らかのペナルティがある事は分かるけど具体的には分からない。

考えてはいけない気がする。

でも困ったな…こんな状況を他人に見られる訳にはいかない。

もしもメルトちゃんやイデアちゃんに見られたら仲良しだねー!!とか言われる。

無理、絶対無理。

ゼウスならこっそりと外せるかな。

そう思って手錠に視線を向けた途端、

真ん中にある金色の1つ目と目が合った。


「ぎょえっ!?」


「これがメタトロンのおめめよ〜!

閉じてる間は大丈夫だから宜しくね〜!」


先生はにこやかに手を振り、本当にいなくなってしまった。

このまま突っ立っててもしょうがないよな…。


「…とりあえず生徒達運ぶ?」


「…ゼウスに任せます。」


「僕何もしてないんだけど…まぁ、うん…。ゼウス来て【summon】」


差してきた夕日を綺麗な髪が反射してより輝くゼウス。


『私を呼んだなマスター!』


「ゼウスぅ〜…」


泣きそうな僕を他所に視線は手錠へ。


『む、随分と腕が滑稽になっているな。』


「これ外すとどうなるの?」


『その目玉…成程メタトロンの手錠か。

何、爆発するだけだ。』


爆発?!


「生徒に爆弾仕掛けたの…!?」


『これその物は爆弾では無い。

何の変哲もない手錠にメタトロンの目が付いた事により爆弾と化したのだ。』


「つまりメタトロンの目が爆弾という事ですね。」


『うむ、そうだ。』


セヲ君に頷いたゼウス。

数回頷いた後、はたと止まる。


『誰だ貴様?』


「初めましてゼウス様。

俺はセヲ=ファントムライヒ。

貴方のマスターが暴れて巻き込まれました。」


「ちょっと僕は何もしてないって!!」


『うむ、マスターがこのような事出来る度胸なぞ無い事は分かりきっている。』


「チッ」


『マスターを愚弄するとは…

命が不要と見えるが?』


「おや、怖い怖い。」


「ちょっと今それどころじゃないんだって!

ゼウス!今からこの寝てる人達全員保健室へ連れてって!」


ゼウスはセヲ君を数秒見つめてから頷いた。


『…あいわかった。』


パチンと指を鳴らしただけで消える生徒達。


『終わったぞ。』


「ありがとう!

ついでにこれって外せる?」


『単純な約束を守れば簡単に取れる物、故に無理に外そうとすると時間が掛かる。』


「そっか…」


『大人しく従った方が良い。』


リーレイ先生に釘刺されたし諦めよう。


「行こ、セヲ君。」


「指図しないで下さい。」


『我がむぁすたぁに何という口を聞いているのだ貴様ぁ…』


「ゼウス、彼はそういう人なんだ。

気にしないで。」


『ぬ〜ぅ…!ぬぬぬ…』


ぬ、しか言わなくなってしまったゼウスに頼んで保健室へとワープさせてもらった。


「…」


「「…」」


着地と同時に真顔で腕を組んでいるラブラビ先生と目が合う。明るく陽気なラブラビ先生は何処へやらと思うほどいつもとの温度差が凄く凍えそうだ。


「ねぇ。」


「ハイッ」


「前に治療した面子が顔を腫らして雁首揃えてるの何で?」


雁首…!?

先生そんな言葉使うの!?


「ねぇ、セヲちゃん。

言ったばっかだよね?」


「…」


「あっあの!」


思わず声を出してしまった!

何してんの僕ってば!?

ラブラビ先生の大きな瞳が僕を見る。


「なぁに。」


「アッ!エット…!

僕達は騙されたというか自己防衛というか…!」


「ふぅん?でもラブラビが言いたいのはそうじゃないの。」


やっぱダメか!!


「ラブラビが言ったこと覚えてるよね?」


セヲ君のネクタイをぐいっと引っ張り、顔を近づける。

もうどうせ二度と暴れないとかそんなんでしょ!早く言って!!


「…やるからには見えない箇所に一撃で。」


んん?


「そのとおり!!

んもう!顔とか傷がめちゃくちゃ目立つじゃん!」


「自己防衛したら粘ったんですよ。」


「一撃で気絶させられなかったって事でしょ!」


「…」


ら、ラブラビ先生って一応保健医だよね?

良いの?そんな事言っちゃって?


「貴方にその技量有るの分かってるんだから。リーレイちゃんに怒られたでしょ?」


「えぇ、まぁ。」


「そうならない為にも言ったのに。

ラビが何とかしてあげるけどね。」


してくれるんだ…。

するとラブラビ先生は僕を見る。


「エクスちゃんも大変だったね。

エクスちゃんは何もしていないの分かってるから安心してね。」


「え?」


「貴方は無闇に人を傷付けないの知ってるからさ。」


「…」


先生の微笑みに胸がじんわり温かくなった。

けれど何処か冷たいままの場所がある。


「単に体力テスト最下位がこんなこと出来ないって事ですよ。」


「煩いな!分かってるよ!」


冷たい理由はこれじゃない。


「え?エクスちゃん最下位なの?」


「知らなかったんですか!?」


「うん。後でスピちゃんに聞こうかと思ってたの。

あちゃ、ネタバレだ。」


ネタバレって…

落胆している僕の横を過ぎ、ベッドに横たわるノイン達の元へ移動する先生。


「エクスちゃんには言うけど、この子達はこの学校に残らない選択をした子達なの。」


「!」


そうなら最初の騒動でセヲ君を疑った時に考えた理由が当てはまりそうだ。


「残らないからこそ後ろめたさが無い…?」


「そうじゃないかなぁって思うよ。

前にセヲ君が守ってあげた子に乱暴しようとしてたみたいだしさ。」


セヲ君が守ってあげた?

彼を見るとどうでも良さそうな呆れ顔になっていた。


「守ったとかじゃないです。

通行の邪魔だったから絞めただけです。」


「んふふ、素直に認めれば良いのに。

守ってあげた子が話してくれたから貴方はブラックリストに名前が載るってだけで済んだんだよ?」


逆に今までブラックリストに載って無かったの?!

入学前から噂が立ってたんだよね?!


()()()に会うための近道として在籍しているだけなので退学しようがどうでも良いです。」


あの男?

セヲ君は誰かを探しているのか。


「誰って聞いても教えてくれないから助けてもあげられないんだけど。」


「他人の手を借りたくはありません。

俺の手で見つけて必ず倒す。

邪魔をするのなら教師であれ殺します。」


「ちょっとセヲ君!

先生に向かってなんて事を」


制止させようとした僕を手を挙げて止めるラブラビ先生。その顔には嘲笑うような笑みが浮かんでいた。


「いーよ、お子ちゃまになんて負ける訳無いから。」


こ、これだ!

さっき感じた冷たさはラブラビ先生の声からだ!何処か恐怖を感じさせるんだ。


「ま!兎に角これからは怒られないようにね!この子達は叱っておく!」


僕とセヲ君の肩にぽむっと手を乗せる先生の顔には先程の恐怖を感じさせる影は無くなっていた。そしてノイン君の手当てをすると言って準備を始めてしまった。


「あ、あの!

この手錠を外して貰えませんか?」


「ラビには無理だよ〜!

召喚士のリーレイちゃんじゃないと解けないよ!」


そんなぁ…。


「チッ…さっさと探しに行きますよ。」


「待ってよセヲくっ痛ててて!」


手錠の方を力強く引っ張るから痛い!


「ばいばーい!」


カチッ


ドアを閉める音と同時に違う音も聞こえ、思わず僕達は顔を見合せた。

爆弾の目が開眼したのだ。そして瞳孔に5と現れ、ゆっくりと下に行き4が現れる。

カウントダウンだ。


「「話が違うッ!!」」


そう言いながら同時に力いっぱい手錠を引きちぎろうと奮闘する僕ら。

息を止めて目を瞑り仰け反るほどに力を込める。

間違いなくこれは爆発するやつ!!!


「ぐぬぅううぅッ!!」


「クソがッ!!」




瞼越しに眩い光を受ける。

刹那、容赦なく爆発が起こった。

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