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第164話『心配と安眠と称賛を』

実は私…お話のストックが出来たのです!

見切り発車のクセに!ちょっと嬉しいのです。

見てくださってありがとうございます。

ブクマなどが励みになります!

前回のあらすじ


ネームレスがアビスに殺された。

罪を償おうとしていた彼は最期にシュヴァルツさんを護った。

それに比べ僕は彼の死体すら守ってあげられなかった。



「ん…。」


疲れていた身体がふと目を開ける。

重たい頭が冴える頃、思い出すことが。


「今何時?あれ、スマホ…じゃなくてデバイスはどこだっけ…」


枕元をもそもそと探る。


「無い…!?」


焦りを覚え飛び起きる。

服も風呂から出た時に変えられた事を思い出したエクスは声を上げる。


「アイオーン!お願い返事して!」


すると期待していたバイブ音が響く。


『エクス様、アイオーンはこちらです。』


ガラス製のテーブルに小さな光が灯った。


「良かったぁ!」


取りに行こうとベッドから降りようとした時、


「うわっ!?」


足裏に激痛が走り再び立てなくなっていた。


「う〜…いてて…誰も見てないもんね。」


四つん這いで移動を始め、テーブルに辿り着いた時身体を起こす。

そしてデバイスを手に取り、中の人物と目を合わせる。


「アイオーン、良かった。

画面割れてないね。」


『ご主人様曰く超強化ガラスとのことで余程のことが無い限り罅すら入らないそうです。』


「罅…」


言葉から鏡が連想され、ネームレスの事がまた頭をよぎる。


「アイオーン、今何時?」


『只今AM3時です。

エクス様、メールと不在着信がこのように。』


アイオーンは下からメール一覧と不在着信一覧を同時に引っ張りあげた。

そこにはスピルカとヨシュア達の名前が沢山あった。


「返事してなかったから大変なことに…」


『電話しますか?』


「流石にこの時間は迷惑すぎるからなぁ。

…ヨシュアのメール見せてもらえる?」


『はい。

ヨシュア=アイスレイン様からは1件です。』


“エクスへ。

スピルカ先生から聞いたよ。

先生達の故郷へヴァルハラと行くって。

絶対危ないことでしょ?

何時でも良いから終わったら絶対連絡して。

出来れば電話で。

お願い、絶対無事で帰ってきて。”


「ヨシュア…」


初めての友達からの自分を思ってくれている言葉に思わず涙ぐむ。


「何時でも…アイオーン、ヨシュアに電話掛けてもらえる?」


『畏まりました。Calling…』


アイオーンがヨシュアの姿になった瞬間


{エクス!!無事!?}


と耳を劈くほどの大きい声が。


「う、うん、何ともない。無事だよ。

ヨシュア起きてたの?」


{寝れなかった。すごく遅いしエクスに何かあったんじゃないかって。}


「…ごめん、心配かけて。」


{謝るの訳わかんない。

こっちが勝手に心配してるんだから。}


「ありがとう。…皆は?」


{皆すごく心配してたよ。

昼も夜も円卓メンツでエクスの話をしながら食べてたんだ。}


「僕の?」


{あんなことやこんなことをね。}


「どんなこと!?」


{ふふ、冗談だよ。

時間関係無しに皆にメッセージ入れてあげて?メルトも待ってるって言ってた。}


「分かった。」


{…明日には帰って来れる?}


「ヨガミ先生の用事に付き合うことになったからそれが終わり次第になるけど大丈夫だと思うよ。」


{そう。}


短い返事の後、ヨシュアが黙り込んだ。


「ヨシュア?」


{エクス、元気無い。

疲れたのもあるかもだけど…変。}


「え…そうかな。」


{あっ誤魔化した。エクスって自分のことになると無頓着というかなんと言うか。

スカーレットに怒ってもらおう。}


「えー!?やだよ怖いもん。

(彼だって人の事言えないし。)」


{怖くなきゃ意味無いでしょ。

エクスが俺達を思ってくれてるのと同じくらい俺達も思ってるよ。}


「…」


{レンは知らないけど。}


「ウン…僕もそう思う…。」


{自分を大切にしてね。

じゃ、俺寝るね。}


「うん、ありがとうヨシュア。

おやすみ。」


{おやすみ、お疲れ様エクス。}


ヨシュアが電話を切るまで待ち続けたエクス。数秒繋がったままの電話からブツと音がして、画面の向こうのアイオーンが姿を変えた時ほっと一息吐いた。


「…」


『エクス様。

アイオーンは休息を推奨致します。』


「うん、そうだね。

ちょっと疲れちゃった。

けど皆にメッセージ頼める?」


『はい、ご要件を。』


「“僕は無事です。心配かけてごめんなさい。”って。生徒の括りの皆によろしく。」


『畏まりました。

ヨシュア=アイスレイン様』


「あ、ヨシュアは伝えたからいいや!」


『は。では

メルト=ガーディア様

シャーロット=アルカディア様

ローランド=ローゼン様

イデア=ルークス様

スカーレット=アルカンシエル様

レン=フォーダン様

リリアン=ナイトイヴ様

クリム=アルカンシエル様

へ送信致します。』


「(改めて多いな。)うん、お願い。」


頷いたアイオーンは画面外へ。

再び戻ってきた時には小さなロケットの上に乗っていた。そのロケットから降りるとロケットだけが彼方へ飛んで行った。


『送信完了です。』


「ありがとう。」


『エクス様、再び睡眠を推奨致します。』


「うん、寝るよ。

でも皆のメッセージ見せてくれる?」


四つん這いでベッドへ戻ってからメッセージに向き合う。

全員が心配の言葉と連絡が欲しいという言葉だった。


「(文面が全然違う。

でも皆心配してくれてる。…嬉しい。)」


嬉しいのと同時に心に穴が空いた感覚はエクスを落ち着かせることがなく、困らせた。


「…痛いの我慢すればいけるかな。

ちょっとだけ外に出たいな。」


ズキズキと痛む足に力を入れ、そっと扉を開ける。


「…あ。」


「あ。」


目の前にシュヴァルツが居た。


「…エクス=アーシェ…」


「しゅ、シュヴァルツさん。」


お互い沈黙。

どうしたものかと言葉を考えているエクスにシュヴァルツは口を開いた。


「…寝れない?」


「はい…。」


「…じゃあこっち来て。」


「?」


先をスタスタと歩くシュヴァルツ。

多くを語らない彼の後を追いたいが足が痛むため距離が開く。


「…!」


気付いたシュヴァルツは袖しか通していなかった白衣をきちんと着てからエクスに近づき、屈んだ。


「…おんぶ。」


「ええっ!?悪いですよ!」


「…」


断ると頬を膨らませたシュヴァルツに睨まれた。


「シツレイシマス…。」


「…ん。」


シュヴァルツは意外な行動に驚きを隠せないエクスを気遣うように話を始めた。


「…今日はありがとう。

…君が無事で良かった。」


「いえ。シュヴァルツさんも、皆さん怪我が無くて良かったです。」


「…うん。あとネームレスの事、助けようとしてくれてありがとう。」


「え。」


「…あの時のぼく、冷静じゃなくて…

役立たずだった。」


「そんな訳ないですよ。」


「…ネームレスが刺された時、彼はぼくを護ってくれた。ぼくも護りたかった。」


「僕もです。」


「…あの時に彼、ぼくと先生に御礼を言ったの。」


「そうなんですか?」


エクスを抱え直し、再び歩き始める。


「…ありがとうだって。

ぼくは言えなかったのに。」


「…」


「…これは勘だけど彼、アビス=アポクリファが来る事を分かっていたみたいだった。」


「そうなんですか?」


「…ぼくはそう思った。

…仲間にもそういう奴って認識されてるのかな。」


「アビスはそういう奴です。

じゃないとあんな簡単に仲間を殺せるはずがない。」


「…そだね。」


シュヴァルツが止まる。

目の前の窓の向こう側には大きなバルコニーが。


「…着いた。」


「ありがとうございました!

もう下ろして頂いて…」


「…やだ。」


「やだ?????」


宇宙猫状態のエクスを抱えたままバルコニーへ出たシュヴァルツ。

彼の背中越しに寝静まり暗くなった城下町を見下ろす。


「静かですね。」


「…下より上見て。」


促されるまま上を見上げると満天の星空がそこにあった。


「わぁ!綺麗です!」


「…ぼく、夜中の此処がお気に入り。

…夜風が気持ちいいんだ。」


「僕も好きです、此処。」


「…良かった。」


「あのっやっぱり下ろしてください!」


「…えー。」


ゴネて何とか下ろしてもらい、寂しそうな瞳で星を見上げる彼の横に立った。

そんなシュヴァルツは徐に口を開く。


「…彼は何処へ行ったかな。

…地獄か、はたまた虚無か。」


「…」


「…また逢えるかな。」


「全てが終わった後、きっと逢えますよ。」


答えるとシュヴァルツはとても驚いた顔をしていた。


「あれ?僕変なこと言いました?」


「…ううん。

君が言うと不思議と本当に逢えそうな気がするの。」


「そ、そうですか?」


「…うん。…君からその言葉を待っていたのかもしれない。ありがとう。」


「思った事を言っただけです。」


「…ふふ。君は強い子だ。」


表情筋があまり動かなかったシュヴァルツが静かによく笑うのを見てエクスも驚いていた。そんなシュヴァルツが手すりに凭れて俯いた。


「…。」


「シュヴァルツさん?」


「…ぐぅ…。」


「う、嘘でしょ…今の一瞬で寝たの!?」



鼻ちょうちんを出しているシュヴァルツを抱えようとしたが己の足が痛みを訴えた為、

怒られるのを覚悟でゼウスを呼び出す。

月明かりに照らされる銀髪は長髪に戻っていた。


『私を呼んだな!マスター!』


「うん。悪いんだけどシュヴァルツさん抱えてもらって良い?」


『む?良いぞ!』


ひょいっと簡単にシュヴァルツを抱えてくれた為、安堵するが…


「何処に連れていけば良いんだ!?」


『アスクレピオスの気配は感じないな。』


「会った人に聞くか…。」


『マスター、私の背中に乗るが良い。』


「え、良いよ。綺麗な銀髪がぐしゃぐしゃになっちゃうし。」


『気にするな、ほれ。』


以前の戦いのように髪を短くするゼウス。


「(どんな機能なんだそれ…)」


と思いつつ言葉に甘える。


「いつもごめんね。」


『マスターの召喚獣だぞ私は。

お易い御用だ。』


ゼウスに人の気配を探ってもらい、1番近くにいた兵士にシュヴァルツを送り届けた。

兵士によると病院にあるシュヴァルツ専用の仮眠室へと運ぶそうだ。

事を終え、ゼウスと共にゲストルームへ戻ったエクスはベッドの上で下ろしてもらった。


「はふぅ…ありがとう、ゼウス。」


『うむ!造作もない。』


「はは…。」


元気の無いエクスに気付いたゼウスは優しく微笑んだ。


『マスター。此度の活躍、見事であった。』


「僕は何も…でもゼウスは凄いね。

僕を護ってくれながら鏡を直しちゃうだなんて。」


『あれは人為的に砕かれた物だったからな。破片が足りなくなるようなことが無くて良かった。』


「人為的?」


エクスが聞き返すと腕を組み、目を伏せる。


『破片が全てあったという事はあの見つけた場所で割ったという事。もし彼処では無く別の場所に置かれていた場合間違いなく負けていた。』


「そう…だね。」


『術者との距離やら何やらが関与していたのかもしれんな。スキルで彼奴を見た時、悪魔と鏡の破片に彼奴の魔力の供給が見えたのだ。』


「もしかするとネームレスが戦う前に仕掛けていたのかな。万が一のストッパーとして。」


『そしたら砕く理由が無くなる。

負ける気は無かったのだろう。』


“ごめん、落としちゃって”


シュヴァルツに言ったネームレスの言葉。

今となってその言葉が真実を隠す子供のような言い方に感じたエクスに、ネームレスが一人の人間だったという事を思い出させる。


『何れにせよ私達に見つけられた時点で勝敗は決まっていた。』


「ゼウスのお陰だね。」


『ふっふーん!

マスターに褒められるのは気分が良い!

抱き枕になっても良いぞ!』


「それは遠慮しておく。」


『ぬっ!?』


ショックを受けたゼウスに申し訳ないと感じつつ、

魔導書を顕現させ表紙を2回ノックし彼を戻した。


「…よしっ!寝るぞー!!」


未だに疲れていた身体は睡眠を欲していたのか、

直ぐに眠りについた。

当て字が無かった…ルビ振る必要が無かった…楽チン…

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