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第153話『聖地神光』

時間が経つの早すぎませんか??

4月終わるんですか?え??

前回のあらすじ


遂にディスト=マモンと名乗る悪魔と対峙しました。

戦う気は無いと言いつつ鏡像を創り上げる彼に僕は眠らされてしまったようです。



真っ黒な辺りの中、自らの腕の中で眠るエクスを抱き締めディストを睨みつけるゼウス。


『貴様…!マスターに何をした!!』


「あら?

貴方でも分からないことあるんだ。

ふーん…最高神以前に召喚獣だからか。」


『答えろ!!』


「追体験だよ、とある人物の記憶のね。」


『追体験…貴様もしやあの森に居たのか!』


「いやいや。僕は行ってないよ?

祈りの森のことでしょ?

じゃあ追体験のネタばらししてあげるよ。」


『何…?』


ディストはふわりと浮かび、ゼウス達の目の前に立つ。


「あはっ最高神を見下げちゃった!

いい眺めぇ♡」


ディストが嘲笑した直後、

ゼウスの背後に後光を象ったような金色の輪が顕現し輝きを増す。


『…』


怒鳴りや攻撃での反論があるかと予想をしていたディストを裏切るようにゼウスは彼を睨みつけたまま黙っていた。


「こわ…無言で圧かけないでよ。

ちゃんと教えるからさ。

悪魔憑きになった彼の血を使っただけだよ。

瘴気が蔓延した理由はなんだっけ?」


『…(森を司っている主自身が堕天(アンヘル)を打ち込まれ堕ちたことにより、己から森へと渡していた魔力そのものが汚されてしまったからだったな。)』


「流石に覚えてるよね。

後は精神干渉で心をリンクさせればOK!

貴方わざと精神干渉されたマスターの治療しなかったでしょ?」


『…』


「でも治療しなかったから今、再び彼は寝ているんだよ。

貴方が治しておけばこんな事にはならなかったのさ。」


『…』


「ま、お察しの通り精神干渉された人間の治療を勝手にすると壊れちゃうこともあるからね。」


黙っていたゼウスは重たい口を開く。


『先程から治療だのとほざいているが…

貴様の言う治療とは何だ?』


「えっ流石にそれは教えられないよ!

十分すぎる情報開示でしょ?」


『では貴様は既に用済みだという事。

どうせ本体では無いだろう。』


「あれぇ〜?もうバレちゃった。

僕を倒すのは勝手だけどマスター君がどうなっても知らないよ?」


ディストの視線はエクスに向けられる。


『…』


「彼の目が覚めるまで僕、戦わないであげるからさ。」


『貴様に何の得がある。』


「疲れないね!」


『…(偽物が疲弊するのか?)』


「安心して!

起きたらちゃんと殺してあげるからさ!」


『図に乗るな。』


「こわぁ…ま、僕は暫く手を出さないよ。

ただ、契約者の方は知らないけれど。」


『アスクレピオス…』


「今お話中みたい。

小さい頃からずっと彼の事が心配だったから

長話になるだろうねぇ。」


『…(幼少期、か。

アスクレピオスは知っているのだろうか。

自身の召喚士のことを。

いや、今は自分(わたし)のことだな。)』


パチンと指を鳴らし、ディストとの間に雷を降らせる。


「どわわっ!!」


『マスターは私が護る。

来い、祓ってやる。』


「っふふふ…マスターを背負って戦うのぉ?

ま、別に何でもいいけど。

折角戦わないであげようと思ったのにね!」



一方、エクス、ゼウス、ヨガミを鏡に吸い込ませて

シュヴァルツと対面するネームレス。

アスクレピオスは彼を見ることは出来ず、

杖を構えシュヴァルツの意識を保つ魔法を永続的に掛けて解決策を巡らせていた。


『(マスターの心の振れ幅を抑える…!

今の私にはそれしか出来ない…!

マスターに危害を加えないか保証の無い今…

私にはこれしか…ッ!)』


ネームレスはアスクレピオスが見えていないかのように、穏やかにシュヴァルツを嬉しそうに見つめる。


「シュヴァルツに会えるとは僥倖でした!

嗚呼…良かった!!」


「ぅ、う…?」


頭を抱え、汗を流すシュヴァルツは言葉を発せない。

それを見たネームレスは笑みを絶やし眉を下げる。


「あぁ、混乱してる?可哀想に。

僕のこと、まだ思い出せない?」


「だ、れ…?」


「やっぱり大人になったから僕のこと…

忘れちゃったの?」


ゆっくりと1歩ずつ近づくネームレス。


「…知らない…!

ぼくは君を知らない…!」


一瞬歩みが止まったが、再び歩き始める。


「そんな…

ここに居たことも忘れちゃったの…?」


「…ぼくの家は…ルージュ家なんだ…!」


「悲しいな。覚えていないんだね。

でもほら、僕の顔を見て。」


「…き、君みたいな…真っ黒なクレヨンで

汚した顔なんて見たことない…!!」


「ッ!?」


ピタリと足を止めたネームレス。

その顔は驚愕を浮かべ、徐々に酷く悲しい顔をする。

が、その顔すらもシュヴァルツ、アスクレピオスには見えない。


「そんな…そんなッ!!

君は僕が見えていたのに!!

じゃあ誰かの顔を浮かべてくれないと…

僕は君の中で存在出来ない!!」


顔を両手で覆いぐしゃぐしゃとしている

彼を呆然と見るシュヴァルツ。


「何で…何で誰の顔にもなれないの…?

君は…嫌いな奴も…好きな奴もいないの…?」


「…ぼ、ぼくは…」


「何で何で何で何で何でぇ??

そんなの人間じゃないよぉ…!!」


ネームレスの泣きそうな声が

シュヴァルツの心を僅かに揺らす。


「…」


途端、ピクリと肩を震わせ、

何かに気づいたように顔を上げる。


「…人間じゃ……ない…?……まさか…お前か?

お前がシュヴァルツの心の振れ幅を一定にしてやがるのか…?」


アスクレピオスを睨みつけるネームレス。

姿を捉えることは出来ずとも向けられた殺気に思わず身の毛がよだつ。

シュヴァルツは慌ててアスクレピオスの前に立ち、

護るように手を広げる。


『なっ…マスター!?』


「…」


「何で?

召喚獣は召喚士を護るモノでしょ?

何で召喚士が召喚獣を護ってるの?」


「…アスクレピオスには手を出させない。」


『!』


「何で!?

護るくらい大切なんでしょ!?

じゃあ何でソイツの顔にもなれないの!?」


「……覚えていられなくて…ごめんね。」


謝られた事がトリガーだったのか、

駄々っ子のように地団駄し始める。


「やめろよ…やめてよ…そんなの…

やだ!!やだやだ戻ってよ!!

僕の知ってるシュヴァルツに戻ってよ!!」


「…ぼくはシュヴァルツ=ルージュ。

…それに変わりはない。」


そう言って白い表紙に赤く細かい模様の十字架が描かれた魔導書を顕現させた。


「………あぁ、そう…。

じゃあ勝手に戻すから…。

嫌って言ってもソイツを殺しても止めてあげない!!」


「…いつもぼくを護ってくれている

アスクレピオスに手は出させない…!!」


『マスター、やめろ。

私は戦える!

マスターが死んだら意味が無いんだ!!』


「…ぼくが死にそうになったその時は…

君が治してくれるでしょ…?」


『…何でそのような顔をしているんだ…。

怪我なぞ許さんぞ。』


「…うん、大丈夫。

…ぼく、これでもヴァルハラ所属だから。」


普段動かない表情筋を動かし、微笑むシュヴァルツ。

彼は魔導書から杖を取り出し白く長い白蛇の杖へと変えた。


「…(凄く久し振りの前線…大丈夫かな。

…大丈夫。ぼくは1人じゃない。)」


「今のシュヴァルツは嫌い!!

今のシュヴァルツはシュヴァルツじゃない!!」


ネームレスの横には1枚の大きな鏡。

白蛇の杖を握りしめ、足に力を込める。


『また鏡か!』


「…嫌い、か。…そっか。(攻撃はあまり得意ではないけれどそんな事言ってられない。)」


「嫌い嫌い!!だいっきらい!!!

だから悪魔憑きの力を見せてあげる!」


シュヴァルツの全身が鏡に映され、

鏡像が出来上がる。鏡から出てきたそれは

シュヴァルツそのものだった。


『マスターの偽物…私にも見える。』


「…悪魔憑き…大丈夫、ぼくがやる。

聖地神光せいちしんこう】」


白蛇の赤い宝石で出来た目が光り、

杖全体が光を纏い、薄い霧で辺りを包む。

杖の先をネームレスに向けて


「【治療開始カウンセリング】」


と詠唱した。

攻撃が来るかと身構えたネームレスは呆れたように

ぶらりと手を下げる。


「何これ変なの。攻撃じゃない。」


『マスター?(相手に【治療開始カウンセリング】だと?

治療開始カウンセリング】は相手の心を落ち着かせ、回復量を高め治療をしやすくする魔法だぞ?)』


「…君に攻撃はしない…。…なるべく。」


「は??同情だったらやめてよね。」


『…(何故マスターは攻撃しないのだ…?

攻撃出来ない理由があるのか?

いや、祖父の召喚士の魔法が反射されたから避けているのか!)』


「…ぼくは医者。

…君を救いたい。」


「はぁ?悪魔憑きを?

それを病気とでも言いたいの?」


「…君の心を救いたい。

…君の心が苦しいと泣いている。」


「誰のせいだと…」


ボソリと呟いた声も聞こえず悲痛な面持ちも見えないが、シュヴァルツは強く杖を握りしめる。


「…君はぼくの患者さん。

だから、助ける。(たす)けたい。」


「僕は違う!

助けなんかいらない!」


手を突き出し、シュヴァルツの鏡像に攻撃の指示を出す。

鏡像は白蛇の杖を握り、

魔法ではなく物理でシュヴァルツを狙ってきた。


「…!」


『物理か!マスター!』


「…問題ない!」


アスクレピオスの心配を受け止めつつ必要最低限の動きで避け続ける。

そんな中、足元が少し気になるシュヴァルツ。


「…(サンダルやめればよかった。)」


隙をつき、その足で鏡像の腹を蹴りつける。


『(マスターも物理でやる気か?ならば)

冥界の(コラスィ・)叛逆者(プロトディス)】!』


アスクレピオスのアシストで身体能力の向上を感じた

シュヴァルツは礼を言う。


「…!ありがとう。」


蹴られた鏡像は痛みを感じている素振りも無く立ち上がる。

しかし腹部に穴が空き、己を創り上げている鏡の破片が血のようにポロポロと落ちている。


『(アレはマスターの蹴りだけで穴が空くほど脆い。

しかし腹部に穴が空いたとしても動くことは可能、

となれば)』


「…狙うは全壊。」


「出来た。」


途端にネームレスが口を開いた。


「ほら見てシュヴァルツ。

僕の記憶から創ったシュヴァルツだよ。」


鏡が白く光り、再び見えるようになったその時、

シュヴァルツとアスクレピオスに見えたのは

無表情な黒髪の少年だった。


『あれは…』


「…ぼく?」


「そう、君だよシュヴァルツ。

思い出して。此処で過ごしていた時を。」


鏡の中の少年は無表情でただシュヴァルツを見つめていた。

過去を考えようとした刹那、

自分の鏡像が杖を振り邪魔をしてくる。


「…っ邪魔!」


杖を全力で横に振り、脆くなった腹部を壊す。

ガシャンと音を立てて倒れ、上半身と下半身が離れた鏡像はピクリとも動かなくなった。

壊れた鏡像を一瞥し、ネームレスへ視線を移した。


「…ぼくに思い出して欲しいはずなのにどうして邪魔するの。」


「だって今の君は偽物だから攻撃しないと気が済まないもん。」


『マスター、相手が何を言っているか知らんが思うように動くなよ。

思い出してと言われているなら思い出すな。』


ネームレスはアスクレピオスの言葉が気に入らないようで、歯を食いしばり睨みつけた。


「やっぱりそいつが邪魔!!

お前から潰してやる!!」


壊れたシュヴァルツの鏡像が姿を保つのをやめ完璧に崩れた後、アスクレピオスの姿へと変わり、再び物理攻撃を仕掛けてきた。


「…アスクレピオス!」


『ふん。問題ない。』


「余裕ぶってんなよ!!」


『マスターは離れていろ!』


「…待って魔法は…!」


『分かってる!!』


アスクレピオスは攻撃を避け杖を左手だけで持ち、

右手の拳で鏡像を砕いた。


「………。」


アスクレピオスの細腕は非力だと思っていたシュヴァルツには驚きの光景だった。

無言で魔導書のアスクレピオスのページを見ると…


“師から医術と少しの武術も教わっており、

自信がある。”


「…(知らなかった…。)」


「ぁあぁあうざいうざい!!!

人が折角手を抜いてやってんのに!!!

すぐに邪魔しやがって!!」


ネームレスが怒ると鏡が光り、

シュヴァルツとアスクレピオスの鏡像が5体ずつ現れ、10体の鏡像が出来上がる。


「…思い出させようとして攻撃してそれを手抜きと言う…めちゃくちゃ…。」


『マスター、目的は?』


「…時間稼ぎ。【神殿:アバトン】を展開。

…やれるか分からないけれど悪魔祓い。」


【聖地神光】をシュヴァルツが発動していたのを思い出したアスクレピオス。


【聖地神光】は大掛かりな結界魔法を発動する為の魔法。

消費魔力があるものの、無しで発動するよりも

【神殿:アバトン】が早く使えるようになる事、

【神殿:アバトン】でのシュヴァルツの魔法効果が格段に上がるメリットがある。


『だから【聖地神光】を先に使ったのか。

なるほどな、分かった。力を貸そう。』


「…行こう、アスクレピオス。

…時間勝負だよ。」


『ふん、私達の得意分野ではないか。』


「…うん!」


「消えろ消えろ!!!

シュヴァルツの邪魔しやがって!!!!」


「…邪魔しているのはそっち!」


『相変わらず何を言っているかは分からんが

ネームレスとやらは頼んだぞマスター。』


「…分かった。」


神殿展開まであと


10分

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