第147話『舞い戻る牧師』
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主人公不在回まだまだ続きまっせ!!
前回のあらすじ
シオン=ツキバミです。
【喪われし郷】にて二手に分かれることとなり、
アムル=オスクルム殿と行動を始めました。
彼女のスキル、魔法の不気味さ…
いえ、凄さを見せつけられて驚いているところです。
死人と話す事が可能…
私も話したい人が居る事を伝えれば彼女は
協力してくれるのでしょうか。
あ…余談が過ぎましたね。
…
アムルとシオンは骸骨の案内で教会内の大きな
ステンドグラスを見上げていた。
「顔の無い天使…そして聖母ですか。」
「顔だけ無いなんて人為的としか考えられませんわね。前からですの?」
骸骨達に問いかけると彼らは首を横に振った。
<違ッタト思ウ。
ソモソモアマリ来ナイ!>
「のにも関わらず犯人さんがこれを見ていたのは
ご存知だったのですのね。」
アムルの鋭い視線にビクリと身体を震わせる骸骨達。
<タ、タマタマ知ッテタ!>
「へぇ…そうですの。」
「…」
何処か違和感を覚えたシオンだったが、
アムルが詮索をしなかった為、目を伏せた。
「この子達の反応的に何かあると思ったのですが…」
「反応?」
「えぇ。この子達が犯人の見ていたものを数々挙げていた時、窓と仰った子に違和感がありましたので。
聞いていた子達も、ね。」
「なるほど…何か隠しているのかもしれへんという事ですね。」
「まぁわたくしのスキルは…
いえ、もしかするとこの子達は犯人」
「ッ!!」
アムルの言葉を遮る様にステンドグラスを睨みつけ、刀の柄に手をかけた。
「シオン君?」
「嫌な気配がします。気をつ…け…」
シオンが目を見開き固まった。
アムルはその視線を辿り、原因を見つける。
ステンドグラスの後ろに人影が見えたのだ。
「まぁ!」
驚いた直後、右手を伸ばし骸骨達へ指示を出す。
骸骨達は動き出し紫色の光を強めた拳で
ステンドグラスを割る。
色とりどりの破片が幻想的に飛び散り、
その奥に見えたものは…
「黒いわたくしと…シオン君…!?」
影が立体的になったような、顔の無い全てが真っ黒なアムルとシオンが、ステンドグラスがあった場所に
立っていた。
「ステンドグラスの後ろに隙間…
やはり何かありましたね!!
【魔刃抜刀・十七番歌】」
地を蹴り、空中で抜刀し、偽物の首を意図も容易く
斬った。
「流石ですわ!」
「…?」
斬った本人であるシオンは手に違和感があり、
着地してから手と刀を見やる。
「どうされました?」
「いや、何かガラスを斬ったような…
人体を斬った感覚ではありませんでした。」
その言葉でアムルは偽物の居た場所へと目を向ける。
彼女の目には斬れた首がゆっくりと落ちる途中だった。
何故か目が離せず、じっと見ていると首が地に落ちたその時、ガシャンと砕ける音が聞こえた。砕けた物は偽物の首であり、黒く輝く破片が飛び散る。
「シオン君、砕ける音聞きました?」
「えぇ、てっきりガラスが割れた音かと思いましたが…違いますね。」
「わたくし、たまにやるから分かりましてよ。
これは…
鏡のような物が砕ける音ですわ。」
「…えぇ、だと思います。
(鏡たまに割るん?)」
「そこに埃の被った鏡がありますわね。」
そこ、とはアムル達の真後ろのことだった。
「既に何かされとるんやろか。」
「このステンドグラスの後ろの隙間、
覗いてみます?」
アムルは骸骨達と覗き込んだ。
すると奥に大きな鏡台があることが分かった。
「あの鏡に光を当てて反射でこのステンドグラスを
光らせていたのですわね。
態々ステンドグラスの後ろに部屋を作り鏡を置くとは…よく分かりませんわ。」
<アンナノ知ラナイ。>
<ネー。>
<ネー。>
「部屋でした?」
「えぇ、奥は少し広そうでしたわ。」
「…行ってみますか。」
「そうしましょうか。」
ステンドグラスがあった場所を跨ぎ、
鏡台へと赴く。
鏡台のある部屋は円状になっており、
小さめの部屋だった。今は天井が壊れており、
周りには沢山の棚があった。
「天井は壊れてますが本は無事ですわね。
天使や神様の事が沢山。」
「そうですね。流石は教会。」
シオンは目の前の本棚に入っていた黒い本を
手に取った。
「………おや、
どうやらそういう訳では無いようです。」
「?」
「これ、悪魔についての本です。」
「まぁ。
という事は本棚に1冊ずつある黒い本は…」
確認する為に黒い本を手に取る。
「“悪魔について知るべきこと”」
シオンも先程の本を戻し、
隣の棚の黒い本を順番に手にしていく。
「“悪魔の儀式”」
「“邪神様とは”」
「“信仰する心”」
「「…」」
この手の内容が教会にあることにも驚いているが、
彼らが1番驚いた理由。
シオンもアムルも本を閉じ、ページを上から覗いた。
「どうも変ですね。
しかも黒い本達は特に熟読してますよ。
このページのヨレ具合。」
「貴方も気づきました?
この部屋に別の入口があると思いますの。」
「探しますか。」
「えぇ、そうですわね。」
と言いながらアムルは目の前の本を取ろうとし
カチッ
と音を鳴らした。
「何の音です?」
「んま。
どうやらスイッチを引き当てたようですわ。」
「え?」
小刻みに揺れる本棚から数歩下がり、
見ていると本棚が回転し出入口が現れた。
「何処に繋がっているのかしら。
行きましょう、シオン君。」
「はいはい。
(何や、急にご機嫌な感じや。
この状況を楽しめるんかこの人は。
仕事以外で関わりたくない…。)」
暗い廊下を5体の骸骨から発せられる淡い紫の光だけで照らし、歩くアムル。の後をついて行くシオン。
「(ただの通路…?にしては曲がり角が多い。
こういうのは部屋から部屋に続く短いもんとちゃうんか?)」
「あら、行き止まりですわ。」
「いや、
また先程のように仕掛けがあるかもしれまへん。」
「ですわね。探してくださる?」
アムルの問に頷いた骸骨達は各々壁を叩く。
すると1体が
<ア。>
と言い壁の一部分が押されカチリと音が鳴る。
刹那、重たい音を立てた壁がゆっくり右へと動き始める。
その反動でなのかアムルの足元に物体がガラガラと
響かせながら転がった。
「あらま、最初に見た人骨ですわね。」
「人骨がもたれかかっていた壁が動いたのですね。」
通路から出て振り返る2人。
シオンの言う通り、何でもない壁が長方形に
くり抜かれ出入口を塞ぐように動いていた。
「さぁ、1番話を聞かなくてはならない御方ですわね。殿方だと良いのですが。」
アムルは猫のぬいぐるみを抱え直し、
足元に魔法陣を形成する。
「【死と舞う】」
「っ!?」
アムルの魔力に触れた骨が勝手に浮かび上がり、
驚くことに真っ白な皮膚も藍色の髪の毛も、当時
着ていたであろう牧師服まで再現され現れたのだ。
「先程は骸骨でしたのに…何や、これ。」
「殿方ですわラッキー!」
「オスクルム殿!」
「あらごめんあそばせ。
彼は強い意志…未練が特に強いそうですわ。
神父さんかしら。」
「いえ、恐らく牧師殿です。
神父とは格好が違います。」
「お詳しいのね。」
「とある狐の知識で。」
「ふぅん…
兎に角、お話聞いてみましょうか。
貴方のお名前とご職業は?」
虚ろな瞳はアムルを捉え
<メルヴ=メルヒェン、牧師です。>
と頭を下げた。
「骸骨達よりも流暢に話すんやな。」
「言ったでしょう、未練が特に強いそうですわと。
この子達と違いまだこの人は自分がお亡くなりに
なった事を認めていませんわ。
自分を生きた人間だと錯覚してますの。」
「…残酷やな。」
「貴方、何を思い残しているのです?」
<悪魔を、邪神様を呼ぶのは…
私のはずだった…>
「まぁ…」
「…何やと?」