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第143話『決意の夜明け』

相変わらずの遅筆…

ですがブクマありがとうございます!!

今回は先生達3人のお話ですぞ!

前回のあらすじ


わたくし久しぶりの登場回なので前の話をきちんと、その目で、それはもう食いつくように見てくださいまし。



「ヨガミ…」


「………。」


職員寮、神クラス部屋。

スピルカ=アストレイはデバイスに送られた一通の

メールをヨガミ=デイブレイクと共に座って

見ていた。


ヨガミはとある文字の羅列を見て固まってしまって

おり、スピルカは名を呼ぶことしか出来ない。

その文字とは


【喪われし郷】


という、自分の故郷を伏せられた言葉。


ヨガミとスピルカの故郷。



「…悪ぃ、お前も辛いよな…。」


「ぁ、ぃゃ…お前よりかは…大丈夫。」


「…」


表情が変わらないヨガミを見てスピルカは

深呼吸をし、思ったことを告げる。


「なぁヨガミ、これ辞退しろ。」


「え…」


「俺が行けば大丈夫!

多分俺らに案内頼みたいだけだろ?

なら俺だけでじゅーぶんじゃん!」


「…でも…お前だって…」


「つっても案内出来るような場所なんて

もう無いけど!!あっはは!!

俺要るんかなぁ〜?ちょっと聞いてくる!」


「あ、おい!」


早足で部屋を出たスピルカ。


しかし、ヨガミは立ち上がることが

出来なかった。



スピルカは1人部屋を出て、

そのままズルズルと座り込んでしまった。


「ふ……うぅ…うっ…」


自分の意思とは反対に勝手に流れてくる

涙を必死に止めようと目を擦っていた。

思い出してしまう地獄。


自分の行動が何か一つでも間違えていれば

死んでいたかもしれない記憶。

思い出したくもない阿鼻叫喚。


小さかった彼ですら鮮明に思い出せるほど

焼き付いた記憶。

あの時はまだよく分かっていなかった自分の両手を

離さず走ってくれた両親。

スピルカはその温かさを思い出しながらも、

一瞬にして家族全員を亡くしたヨガミの事を思うと

尚のこと涙が止まらない。


ヨガミもスピルカの思いが伝わって、

部屋で涙していた。



「おっ…おれたちの…っ…郷はぁ…っ」


「うしなわれてなんかねぇ…っ!!」



「こないな夜更けに何してはるん。」


「ふぇっ」


目を擦ったスピルカの目の前にはシオンが居た。


「し、しおん…」


「メール、見ました。

ほら、部屋の中に入れて下さい。」


「んぇ、ま、待って…」


「待ちません。」


無理やりスピルカの手を使いドアを開け、

彼はずんずんと進む。


「邪魔するで。」


「っえ!?シオン!?」


「何や、自分も泣いとったんか。」


「なっ泣いてねぇし!!!」


「はいはい。そら、土産や。」


雑に投げた袋の中には団子や最中などの和菓子が

入っていた。


「これは…」


「私の晩御飯。」


「「は?」」


「流石に嘘やで。菓子や菓子。

昼しかご飯にせぇへんわ。」


「「…」」


それはそれでどうなんだと思いつつ

目を合わせるスピルカとヨガミ。


「見ましたよ、メール。」


「「!」」


急に口を開いたシオンに驚き、背筋を伸ばす。


「私は君達の事をよく知らん。

故郷と大切な人を亡くしてしまった人達

という認知です。」


「…」


「いや、俺は…」


否定しようとするスピルカを睨むように見るシオン。


「何がちゃうんや。」


「えっ」


「大小あれど心の傷を負っているのに変わりはない。

…が、何も知らん私が言ってもどうかと思う。

のでゼウリスの教師として言います。」


何を言われるんだと生唾を飲む。

そして放たれた言葉は…


「神クラス教師居なくなるとか阿呆ちゃいます。」


「「…へ?」」


思わぬ言葉で2人は唖然としてしまう。


「自分らのことで気ぃ回っとらんの?

神クラス担任、副担任やろ。

2人して居なくなってしもたら授業どないしはるん?」


「「…」」


「一日で帰って来れます?

無傷で直ぐに授業出来ます?」


「「…」」


何も言えない2人に大きな溜息。

しかしシオンは怒ることはしない。


「はぁ…私が行けるよう説得してきます。」


「えっ」


「ただ、どちらか1人の補填としてしか無理でしょうけど。」


その言葉に目を輝かせたスピルカは机に手を付き身を乗り出す。


「いい、ヨガミの代わりに来て欲しい!」


「はっ?スピルカお前!」


「自分も泣いてはったのに?」


「何のことだ?」


にっこり笑って首を傾げる彼を見てシオンは着物の袖を口に寄せて少し体をスピルカから遠ざけた。


「うわ…平然と嘘吐くやん…こわ。」


「…」


「シオンに今度何か奢るな!」


「おや、それはそれは。

ほなミカウ殿に1番高い和菓子仕入れて頂かんとね。」


「い、1番高い!?

お、お手柔らかに頼むぞ…」


「さぁ、それはミカウ殿次第ですので。」


「…ヨガミ、折半な。」


「………俺が払う。

何で行くお前が払ってんだよ。」


「あ、そっか。頼んだヨガミ!」


「そしてエクス=アーシェの事ですが…

ヴァルハラのせいもあって授業がいきなり

遅れてしまっています。補習もですよ。」


「…あぁ。」


「「…」」


目から光が無くなっているヨガミにシオンとスピルカは次にかける言葉を見つけれずにいた。

しかし少しの沈黙後シオンは口を開いた。


「…デイブレイク。

他の生徒に不安を与えんようにせんとあかんのに

そないな顔でどないしはる。」


「…わり。」


「明日、などと書いてへんことから日程は後ほど

決めると言うものでしょう。

…見透かされてますね、これは。」


「だな…」


3人は改めてニフラムという男に恐怖を覚える。


「この事を私とアストレイでヴァルハラへ。

デイブレイクはテレサリア、ベルカント、

ヒメリアに伝えて下さい。」


「分かった!」


「…おう。」


ふとヨガミは自らの杖を顕現させて、

持ち手の赤い布に目を落とした。

スピルカは布のことを知っており、


「それ…」


と声を零す。


「姉貴が縫った。

離れていても家族を思えるように。」


そして机に置き、シオンとスピルカに見せた。


「黄金の太陽の刺繍やな。

とても上手に縫われとる。」


「いち、にー…あ、これって…」


スピルカが数えたのは丸を囲む5つの光の刺繍。5つの光がある事で太陽だと認知出来る。

その5つの意味を彼は察し、ヨガミははにかんだ。


「あぁ、家族の事だと思う。」


「!…ふへへ、彼女らしい。」


「…」


シオンはじっと太陽の刺繍を見つめていた。


「シオン?」


「…いえ、素晴らしいなと思いまして。」


まさか普通に褒めるとは、

そう思い少し目を丸くしたヨガミ。

素直に嬉しくなり、口角を上げる。


「だろ?

姉貴自身太陽みたいな人だった。

困っている人が居たら絶対に見過ごさなかった。」


「そうだったな…

ホントに、ヒーローだった。」


ヨガミはスピルカの言葉に俯く。


「輝いてた。俺の憧れ。

俺は姉貴の意思を継いで召喚士になった。

成らせてもらった。それで思ったんだ。」


ゆっくりと顔を上げ、シオン、スピルカを

交互に見た彼は


「姉貴が俺の立場になってた時、

どうするんだろうって。直ぐに答えは出た。」


意を決した面持ちになっていた。



「姉貴はどんなに辛くても逃げなかった。

だから、行くはずなんだ。

今生きてる人を護る為に動くはずなんだ。」


「「…」」


「姉貴の意思を継いだと言いながらそれを

実現出来ないのはおかしい。間違ってる。



だから、やっぱり俺が行く。」



「「!」」


「スピルカに授業やアイツらの事を任せる。」


思わぬ言動にスピルカは驚きを隠せず戸惑う。


「で、でも…お前と姉ちゃんは違うだろ

ヨガミ…お前が無理をすることは無い…」


「違うけど違わない。俺は誓ったんだ。

人を守れる召喚士になると。意思は同じだ。」


「…分かりました。

では明日、ヴァルハラへ直談判ですよ。」


「あぁ。

態と何も伝えずに乗り込んでやろうぜ。」


「せやな。どうせ行動バレとるし。」


「あ、お、お前達…」


まだ戸惑っているスピルカに、

ヨガミは袋から取り出した最中を彼の小さな口に

捩じ込んだ。


「むぐぅっ!?」


「頼むから、これ以上心配しないでくれ。

少しでも決意が揺らげば俺は立ち上がれなくなる。

一生後悔することになるから。」


「…」


長い沈黙後、

辛そうに笑うヨガミに黙って頷いた。


「決まりやな。」


シオンも団子を頬張り始めた。


「…あぁ。」


ヨガミも大福を取り出して口に入れた。


「……塩気多いな。」


ピロン♪


「「「…」」」


3人のデバイスが同時に鳴った。

画面を見ると…


“書き忘れちゃってた、明日頼むね。

ニフラム”


「「「…」」」


3人は目を合わせ、


「「「チッ」」」


舌打ち後、和菓子を食べ続けた。


「(アカン…何が見透かされてますね、や。

ただの書き忘れたおっさんやないかい。

買い被りすぎた恥ずかし。

む、最中に餅が…美味しい。)」


「(やっべ煙草吸いたい。

大福しょっぺぇの案外美味いな。)」


「(ヨガミもシオンも大丈夫かな。

俺一人で授業大丈夫かな。団子うま。)」

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