表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/194

第127話『魔女の夜』

明けましておめでとうございます!

挨拶をしても、三が日だと言われても全くお正月感が無いです!!

皆様はいかがでしょうか?これからもエクス君やゼウス様達をよろしくお願い致します!


前回のあらすじ


僕じゃ分かりません!!



大聖堂前の廊下にてヨガミは一服していた。

頭の上にいる小さなアポロンが嫌な顔をしながら問いかける。


『ねぇヨガミ〜それ何本目ぇー??』


「1(箱)。」


『絶対1箱目だよね。1箱目の1だよね?』


「あらあら〜?

煙たいと思ったらやっぱりヨガミ君ね〜!」


聞いた者を脱力させるようなフワフワとした声が校舎側から聞こえ、目を向けるとシスター姿の女性が歩いてきた。


「うげ、リーレイ…。」


『メタトロンのマスター!』


「も〜!煙草は身体に悪いわよ〜?」


頬を膨らませ、ヨガミの口元にある煙草を啄く。


「わぁってるし…。」


「と言ってるけど止めないのね〜。

ヨガミ君、今日はお祈りしてるの〜?」


「…」


「今日は私と一緒にならなかったから聞かせてもらったのよ〜。」


「やってるよ、毎日ちゃんと。

ずっとずっとずっと…コレ吸う前にも。」


携帯灰皿に煙草を押し付け、ポケットにしまい込んだ。それを見て微笑むリーレイ。


「それだけエクス君達が心配なのね〜。」


「あぁ心底な。嫌な胸騒ぎが止まらねぇ。

隣に神が居るとは言えど無事を祈らずにはいられない。」


眉間に皺を寄せながら頭上のアポロンを見る。

アポロンは視線に気付いて、にぱっと笑う。


『大丈夫、祈って!

祈りの太陽の光を届けよう!』


「アポロン…。」


「あの子達も心配していることでしょうね〜。だからこそ大人の貴方とスピちゃんがちゃんとしないとダメよ〜?」


「…お前って案外甘やかさないよな。」


「生徒を守る先生だもの〜!」


えっへんと胸を張るリーレイにヨガミは授業での生徒達の顔を思い出していた。


「確かに。メルト達、不安がってた。

俺やスピルカまで不安になってちゃダメだよな。」


「うん!あの子達なら大丈夫!

レン君もみーんな凄い子なんだから〜!」


「…それは分かってる。

あぁ神様、アイツらの無事をどうか…っ!」



「ゼウス、どう?」


『むむ…目を凝らしているが蔓が邪魔して集中出来ぬ!!』


確かに…。

地面から蔓が突き出てきて避けながら見つけないといけないせいで集中出来ない!


『お、待てマスター!

またもやスキルロックが解除出来そうだ!』


「嘘!」


『本当だとも!さぁやるぞ。

【万物を見通す者】!』


ゼウスの瞳が紫色に変わり森の主を捉える。


『…首の後ろか!それに…

むっ!もうスキルロックされた!!』


ゼウスが何か言いかけていたな。


「ゼウス、何が見えたの?」


『あぁ、首の後ろに強大な堕天アンヘル反応。

それに生命の核を失っている事が判明した。』


「生命の核…?」


何それ?

首を傾げるとゼウスは迫り来る蔦を回避しながら説明してくれる。


『生きとし生けるもの全てには、生命の核という物が存在している。』


うん?心臓の事かな?


『生命の核を外へ引き抜かれたら最後。

全身の細胞が活動を停止し朽ち果てる。

つまり死ぬ。』


そりゃあ心臓無くなったら皆死ぬよね?


『だが、森の主始め此処の動物達は核が無くなった身体で動いていた。』


「だから不死身なんでしょ?」


『あぁ。しかし私が言いたいのは引き抜かれた形跡が無いという事だ。』


引き抜かれた形跡が無い…?


「どういうこと?」


『生命の核は自分では取り出せない。

故に何者かが彼らの生命の核を引き抜いたという仮説を立てよう。』


「ん?」


僕の脳が理解しようとするが拒む。

するとゼウスは僕に分かりやすいよう言葉を変えてくれる。


『マスター、例えば平らな地面に根を張った草を綺麗に根ごと引き抜いたとしよう。

草を引き抜いた直後の地面はどうなる?』


小学生の時にやらされた草刈りを思い出してみた。

1人で隅っこの雑草を抜いていた記憶しかないけれど。


「…草が生えていた場所に穴が空いて地面の表面が

ボロボロに…的な?」


語彙力無いな僕。


『左様。』


通じた。


『そのように引き抜いた形跡が残るはず。

更に生命の核に触れられてしまったのなら、細胞を活性化させ傷を癒す回復魔法が使えずにその身体は死んで誰も痕を消すことが出来なくなる。

しかし森の主にも、他の動物にも核が無いがそれらは無かった。』


「ん??」


『つまり、考えられるのは引き抜かれたのではない可能性。もしくは森の主達の生命の核が身体の外に出ていても、何らかの理由でまだ生きている可能性。』


「あ、そっか。生命の核が無くてもそれが生きているのなら、細胞が死んでないなら痕を消せるんだもんね。」


『そうだ。故に有力なのは後者だろう。

消えた核を探すために1度森の主から撤退したいところだが…』


「だ、ダメだよ!

僕達がいなくなったら皆が危ないんだよ!!

怪我してないの僕達だけだろうし…」


[その意気や天晴レ!!素晴らしいでス!]


何処からか陽気で不気味な声が聞こえた。

すると黒い渦が目の前に現れ、烏になった。

烏はゼウスが蔦を避ける動きに合わせて視界の真ん中に居座り続ける。


[もウ!これだと話が出来ませんネ!]


烏は下にいる森の主に向かって


[止まれ]


と言葉を放つ。すると蔦は動きを止めて地面へと引っ込んでいく。


[これでお話が出来ますネ!]


『貴様、何者だ。』


ゼウスが睨みをきかせたのとは関係無く烏は自分の事を喋り始めた。


[俺はノイズ。

祈りの森を今の感じにした犯人でス!]


はん…にん?てことはアビスの仲間?

コイツのせいで森が苦しんでいる…?

コイツのせいで森の主も動物も…

コイツのせいで…


『マスター、まだだ。耐えろ。』


[っふふフ!流石はゼウス様!

寛大な御心をお持ちですネ!]


『下等生物の分際で我の名を口にするな。』


ゼウスも怒ってるじゃん…。


[あァ、この姿だからですかネ。

戻ります戻りまス。]


そう言ってノイズと名乗った烏はなんと人型に変わった。人型なのに宙に浮き、肌は顔と首しか出ておらず、身につけている物と髪の毛が真っ黒だった。怪しげなピンクの瞳が僕らを捉える。


「この姿なら良いでしょウ?」


薄ら笑うノイズを見てゼウスは僕を抱え直し力を込める。少し痛い。


『貴様…ノイズと言ったか。』


「えェ、言いました。

覚えて頂けるとは恐悦至極!嬉しいでス!」


この人、ヤバイ人だ。何か、変。

普通の人間じゃない。何この胸騒ぎ。

あんな奴、見たことない。知らない。


『マスター、気をしっかり持て。』


ゼウスの優しい声で我に返る。


「っ…ごめん。」


ノイズは僕らを見て数回頷く。


「仲が宜しいのですねェ。うんうん良い事でス!

そんな貴方達に伝えておこうと思っテ!」


「伝えておく…?」


「近々、我が相棒ライアーの結婚式が開かれるかもしれませン!花嫁さんは君達の仲間ですから招待しようと思いましテ!」


結婚式?仲間?え、どういうこと?


「今、悲しいことに花嫁さんに逃げられていますが捕まったら結婚式でス!貴方達を


式場である我らのアジトへご招待しますヨ!


勿論、アビスもネームレスも居まス!」



『「!?」』


アジト…!?アビス達のアジト!?


「あ、花嫁さんの為にも君達に俺らの事をお教えしましょうカ!」


『…』

「…」


情報提示されると聞いてどうすれば良いか分からず、僕は耳障りな声を聞くしかなかった。


「まず俺達個人は悪魔憑き。悪魔を崇拝する者。

サタニズムってご存知でス?」


さたにずむ…?


『さっきコイツが言ったように悪魔を信仰する者達のことだ。』


「へぇ…。」


魔女の夜ヴァルプルギス・ナハトって組織名でス。かっこいいでしョ!」


ヴァルプルギスもナハトも聞いた事あるな。


『マスター、ヴァルプルギス・ナハトは魔女が春の到来を待つ祭りの事だ。』


「そーウ!俺達はね、人生に1度も春を迎えた事が無いのでス。

…ずっとずっとずっと!!!

人間達のせいで苦しい思いをし続けたッ!!

フフ、そんな人間達への復讐劇を行う為のキャストの集まりですヨ!」


じ、情緒が不安定だな!!


でも凄い悲痛な声が聞こえた…人間のせいで苦しい思いをし続けた、か。


「相手が同じ人間なのがとても辛かった。

その苦しみを、アイツらがのうのうと生きているこの世界に味あわせてやるのです。」


その耳障りな声から発せられた言葉を聞いた時、前世で受けた嫌な思い出が嫌々しく全身を駆け巡る。


あぁ、いけない…悪い人なのに同情しようとしている自分が居る!


いくら辛くても関係の無い人間を巻き込んで良い訳ないだろう!!

だって僕は!あぁあ違う違うそうじゃない!

落ち着け、落ち着け!!


「はぁ…っ!はぁ…っ!」


『マスター?

おい、マスター?どうしたのだ!』


「嗚呼成程。

ゼウス様のマスターくん、キミ…

()()()こっち側かァ!!」


「ッ!!違う!!僕は違う!!!」


『マスター!?落ち着け!

おい暴れるな!!』


「僕は違う!!お前らとは違うんだッ!!

だって僕は独りでッ!!独りで…っ…」


何故僕は今泣いているのだろう。

何故こんなにも苦しいのだろう。

何故孤独を感じているのだろう。

何故頭だけは冷静なのだろう。

嫌な感情だけが掻き回されているようだ。


「ほらほらやっぱリ!!

悲しかったのでしョ!辛かったのでしョ!


キミも花嫁とこちらへおいで。

皆、キミを分かってあげられるよ。」


ノイズの声がぐちゃぐちゃの心に浸透していく。不思議と手を伸ばしたくなる。


ノイズに向かって伸ばした手はゼウスに叩かれた。

最後には身体の向きを変えられ、ゼウスと向き合った瞬間強めにビンタされた。


『馬鹿者!意識を強く持て!

精神干渉の類だぞマスター!!』


「っ!」


ゼウスの声が僕の頭に響き、我に返ったようにハッとなった。


「チッやっぱ召喚獣には効きませんカ。

あとちょっとだったのになァー!」


しまった…相手の罠に嵌ったのか。


「ご、ごめんゼウス。…本当にごめん…。」


『反省は後だ。

今は森の主の核とアイツのいう花嫁だ。』


「ノイズは?アビスの仲間だよ!?」


『この私を前にしても怯まず、本物の情報を提供したという事は逃げ道を既に用意している可能性がある。』


「ふふ、ピンポンピンポン!いくら最高神様でも召喚獣の貴方から逃げれますヨ!

じゃア…


動け。」


指を鳴らして姿が薄くなるノイズ。

それよりも今は


『マスター…これは骨が折れるなぁ。』


「うん…」


再び動き始めた森の主の対処だ。


『〜!』


『アルテミス!!』


ゼウスが弾かれたように左を向いた。


「ゼウス?」


愛娘(アルテミス)の声がした!

パパ助けてと声がした!』


嘘!僕には何も聞こえなかったけど…

ゼウスが言うなら本当だろうな。

てことはシャル君が危ないのでは…?


「…シャル君…」


『なぁマスター、アルテミスのマスターは愛いよな。傍から見たら女そのものだ。』


「うん……ってまさか!」


ノイズの言う花嫁は…


『花嫁は…シャーロット=アルカディアだろうな。しかし私達がこの場を離れる訳にはいかぬ。それにアルテミスの声しか聞こえなかった故に周りに誰も居らぬやもしれんな。』


「ど、どうしよう!2人が!」


『アルテミスの場所は分かった。

彼奴らに分からせればよい!』


僕を片手で持ち、空いた左手で指を鳴らした。

すると一部分で光の柱が立ち上った。


「何あれ。」


『私の雷だ。

雷だから触れると火傷じゃ済まない。』


なんちゅーもん立ててるんだっ!!


『そして、その雷柱を目印に彼奴らがあちらに行けば…』


「あ!僕達は逆方向に動ける!」


『ご名答!行くぞマスター!

あわよくば核を見つける!』


「うん!」


『…(彼奴らが雷柱を見ることが出来る状態ならば、の話だがな…。)』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ