第114話『授業再開!』
とうとう学校に戻って授業が始まるー…!
前回のあらすじ
学校へ帰ってきました!久しぶりです!!
…
先生が予定してた時間よりも早く着いたらしい僕達は寮へ戻った。僕達の部屋は壊れていたかどうかも分からないけれど綺麗だった。荷物も無事で安心した。
扉の奥からカタンと音がしたから覗いて見ると、朝食が2つ置いてあった。持って行ってヨシュアと食べ始める。入院生活でも僕達は元気だったから病院食ではなく普通の味付けだったので感動するとかは無いけど…何だか安心する。
「美味しいね。」
ヨシュアがパンを飲み込んで笑いかける。
僕も笑って返した。
「うん。帰ってきたーって感じ!」
「分かる!…これから授業が始まるんだね。」
「ね、何か変な感じだな。日付が空いたからかな。」
「かもね。…あ、そういえばエクスってノート写した?」
ノート…?
「あっ!!写してない!!」
やばいやばい!また写さず授業が進むところだった!
「今のうちだよ!見せてあげる!」
「ありがとう心の友よ!!!」
ヨシュアという神様のノートを借り、片手に朝食、片手にペンを持って急いで終わらせた。
「「ご馳走様でした!」」
ノートも写し終わってご飯も食べれて最高!
よし、授業の準備を…
「ばぁ♡」
鞄を取ろうと振り返った瞬間、黒色の狐の仮面を付けた着物の男性が目の前に居た。
「ひぃっ!!?」
僕が怯えると男性はケラケラと笑う。
「あっはは!良い反応〜♪おかえりエクス君、ヨシュア君!」
あれ?よく見たら…
「ミカウさん!」
名前を呼ぶと開いていた口を閉じた購買部のお兄さん。
「よく無事だったね。お兄さん、安心したよ。」
優しい言葉をかけてくれるミカウさんに向かって訝しげな目を向けるヨシュア。その視線に気付いたミカウさんは手をポンと叩いた。
「あ、そっか。ヨシュア君とは初めましてだったね。小生、購買部のお兄さんだよー。お兄さん何でも知ってるの。だから何かについて知りたくなったら館へおいで。取引しよう。」
ヨシュアは疑いの目を向ける。
「…何故俺の名前を?エクスと親しげだから悪い人…では無いのですよね?」
僕のこと信頼してくれているんだなぁ。嬉しい。
「言ったじゃん、何でも知ってるって。君はヨシュア=アイスレイン君。パートナーはプロメテウスでアビス=アポクリファの被害者である。エクス君やシャーロット君、メルトちゃんに堕天の事を教えた存在さ!」
「!」
最後の言葉であっと言う顔をするヨシュア。
ミカウさんは分かっているのにニヤッと口角を上げた。
「まだ聞きたい?エクス君居るけど君の過去を話そうか?」
過去という言葉にまた目を大きくしたヨシュアは笑って両手をひらひらさせた。
「いえ分かりました、信じます。」
「でも1つ。小生、悪い人では無いよ。でも常に自分のことしか考えていない狐さんさ。」
…あれ?ミカウさん、病院に居なかったよな?聞いちゃお。
「ミカウさん、ミカウさんは病院に居ませんでしたよね?」
ミカウさんはこくりと頷く。
「うん、購買部が無事だったからお留守番してたんだよ。ほら、危ないヤツとかが侵入しないようにさ。」
お留守番…。
「あ、そうだ。あの2人から衣装回収しないと。」
ふと顔を上げたミカウさんはメモ帳を取り出す。
「ま、不幸が重なったから期限は多めに見るけど…ボロボロだったら…んふふ。」
仮面で目はよく見えないけど怪しげな笑みを浮かべているのが分かる。あの2人というのはシャル君とローランド君のことだろう。会議で変装したって言ってたしさっき新しい制服を貰っていたから。
「小生は彼らから物を回収しに行かないと。生存確認出来たからコレで失礼するよ!ばぁい!」
両手を狐の形にした彼はなんと扉から出ずに煙を出し、それが晴れる頃には姿が見えなくなった。まぁいっか。
授業の準備の続きをー…って
「あれ、授業何からだっけ?」
ヨシュアに問うと彼も首を横に振った。
「聞いてないねそう言えば。」
するとポケットに突っ込んでいたデバイスが震える。ヨシュアもだったらしく同時に取り出して画面を見るとスピルカ先生が僕達に向けてメッセージを一斉送信していた。内容は
[最初は薬学からやるぞーっ!錬金術部屋にしゅーごー!多少遅れても良いから神クラスの奴らに伝えておいてくれ!]
とのこと。要は伝言係、パシリだ。ヨシュアもヨガミ先生から同じ要件だったらしく顔を見合せた。
「頼まれちゃったし…行こっか。」
溜息混じりのヨシュアに頷いて上からローブを来て授業の用意を手に持って部屋の外に出た。シャル君やローランド君、スカーレット君はメッセージ受け取っているのかな?
部屋近いし2人の部屋に声をかけに行くか。
扉の前に立ち、声をかけようと大きく息を吸い込んだ瞬間
「きゃあぁああっ!!!」
女の子…いやシャル君の悲鳴!?ヨシュアにも聞こえていたようで僕を見て確認をとる。
「シャルの悲鳴だよね、今の。」
「うん。シャル君!!ローランド君!!どうしたの!?」
暫くすると扉が勢いよく開いた。
「わっ!」
出てきたのはなんと上の方でツインテール結びされているシャル君本人だった。何だっけ、死ぬ前に流行っていた…地雷系?のような全ての髪を結ばず少しだけ結んだツインテールだ。
「エクス君!ヨシュア君!」
そんな髪型してるのに違和感が仕事していないのが怖いよなぁ。
「た、助けて下さい!ミカウさんにいきなりやられて、この髪型が解けないのです!」
ミカウさん?そういえばさっき回収しに行くって言ってたっけ。シャル君は僕の肩を掴んで思いっきり揺さぶる。
「ろ、ローランド君も髪の毛弄られてましてっ!」
の、脳が揺れる!!
「シャル落ち着いて。似合ってるから大丈夫だよ。」
ヨシュアが宥めるも言葉を選ばないせいでシャル君は頬を膨らませる。
「こんなの嫌ですぅ!!」
と言ってもなぁ…やっと揺さぶりをやめてくれたので試しにツインテールのリボンを取ろうとしても接着剤で付けられたと誤認するほど固くて取れない。
「これは…外せないな…。」
呟くとシャル君はショックを受け瞳を潤ませる。
「今日1日これね!と言われてしまって…今ローランド君は…」
「ぼ、僕は無事さ…」
扉に息を切らしたローランドく……んが?誰だこのイケメン…。ローランド君は前髪が短く弧を描いているけど…ヘアアレンジされて最早誰か分からない状態だ。
「ミカウお兄さんのヘアアレンジは凄いでしょー!」
先程の狐仮面がふーっと息を吐き額の汗を手の甲で拭いながら現れた。左手には櫛が。
「その頭で授業受けて、終わってから写真撮らせてねぇ〜!んじゃ、ばぁい!」
あ、また煙と共に消えた。
「シャル、ローランド、写真撮らせてって?」
首を傾げるヨシュアからシャル君は視線を逸らした。
「変装する為に取引したのです。服を貸してあげるからモデルになれと。」
成程、ローランド君とシャル君スタイル良いもんな。…シャル君は女性の代わりだろうけど。
「あらら…でも最初は薬学だからローブ着るし、フードで見えなくなるよ。」
という僕にハッとした2人は急いでローブと授業の用意取りに行き、僕達以外の神クラス生徒に呼びかけることにした。
…のは良いんだけど誰が神クラスかまだ覚えていないしなぁ…ここで大声をあげて聞かせるか…?
「あれ?」
ヨシュアが扉の横の表札を見て?を浮かべる。
「どうしたの?」
「ほら、表札変わってるんだ。名前だけじゃなくてクラスも書いてある。」
ヨシュアが指を差した白い四角の真ん中には名前と思わしきアルファベットと下にGod Classと書かれていた。ホントだ…書いてなかったはずなのに…ニフラムさんとかかな。
ヨシュアは優しく笑った。
「今この状況だと分かりやすくて良いね。」
「確かにね。よし!皆で声をかけよう。」
「そうね。」
いつの間にか真横にスカーレット君が居た。驚いて汚い声が出る。
「ヴぇっ」
「あらヤダ汚い声。潰された魔物かしら。」
クスクスと笑うスカーレット君はローブ姿も様になっている。くそ…足長族め。
「スカーレット、君もデバイス見た?」
「えぇ。薬学やるから生徒に伝えろ、とね。その感じだとヨシュアちゃん達も同じでしょう?」
見たなら話は早い!
「皆で声を掛けているんだ。スカーレット君も」
「嫌よ。声を荒らげるなんてアタシのやる事じゃないわ。」
えぇえ…?スカーレット君は面倒くさそうな顔をし、腕を組んだ。
「第一、いちいち扉の前に立たずとも聞こえてるわよどうせ。部屋の中から外の音は聞こえても外から中の音は聞こえにくいけどね。しかも隣は防音ときたわ。」
「そ、そうなんだ…」
初めて知った…。ならシャル君は余程の大声をあげたんだな…。スカーレット君はシャル君とローランド君の元へ移動した。取り敢えず大声出して錬金術部屋に移動しよう。
…
声を出し生徒が部屋から出てくるのを確認したあと、僕達は錬金術部屋に移動した。
「エクス君!皆!」
メルトちゃんとイデアちゃんが巨大釜の近くで手を振っている。よく見ると女子生徒は既に沢山居るな。
「女の子皆早いね。」
メルトちゃんに話しかけるとピースした。
「んふふ、アテナとロキにも手伝ってもらったから早く声掛けが終わったの!」
「なるほど!」
「わー!シャル君可愛いね!」
イデアちゃんが悪意0の言葉のナイフでシャル君を貫く。フード被っているはずなのにと思ったらいつの間にかイデアちゃんにフードを取られていた。
「うぅ…嬉しくありません…。」
「どうしてー?こんな可愛いのにー。」
イデアちゃんやめてあげてっ!!
手を伸ばそうとしたら前の扉が開く。ローブ姿のスピルカ先生とヨガミ先生が入ってきた。
「改めておっはよー!全員居るかー?」
「出席とるぞー。」
出席とったらちゃんと全員居た。良かった、僕らの声は届いてたようだ。
「よぉーし皆居るな!早速授業を始めるぞぅ!」
てっきり何か話すかと思ったら通常運転だなスピルカ先生。
「今回作るのはじゃーん!コレです!」
スピルカ先生は手に水色や紫に輝く1つのクリスタルを出した。ヨガミ先生はそれをひょいっと取った。
「あ。」
「簡単に言うとコレは魔除けのクリスタルだな。今回の件もあって薬学は暫く自分の身を守る物を作れるようになってもらう。」
堕天の被害を受けてのことだよね。
先生の手の中のクリスタルをじぃーっと見ていると再び扉が開いた。
『お〜も〜い〜っ!』
アポロンがプルプルと震える腕で水の入った箱を持って、アストライオスが大量の瓶が入った箱を持ってきたんだ。
「おー、そこにそっと置いてくれ。」
『人遣い荒い〜っ!ボク神様なんですけどぉー!』
文句を言いつつアポロンはヨガミ先生に従い、そっと床に置いた。アストライオスはスピルカ先生に瓶の箱を渡した。
「ありがとう2人とも!これはお馴染みただの水!これに魔力を込めて魔法水にしてからが本番だ。魔法水に夜光石という月の光から溢れる魔力を受けた特別な石を沈める。」
瓶に水を入れて杖を振り魔法水を作った後、夜光石らしき黒い石が入った箱を教卓の下から持ち上げたスピルカ先生を補助するアストライオス。親子の絵に見えるな。ん?よく見るとスピルカ先生の瓶が青白く光っている?夜光石が青緑色になってきてるし…
「んふふ、見えるか?今光っているんだ!魔法水と夜光石の魔力が反応して発光するんだぞ!仄かな明かりには最適だ!んで、夜光石から黒色が消えて青緑色になった時、魔力を追加するとぉ!」
先生が瓶の中に向けて杖を振ると、瓶の中の輝きが増し真っ白になり眩しくて目を閉じてしまった。再び目を開けるとスピルカ先生の瓶の中に水色や紫に輝く石だけが入っていた。
「夜光石の中で生成されている浄化作用の魔力が最大まで行くとこのようにクリスタルになるんだ!魔法水は夜光石の浄化作用を増やすだけでなく、クリスタルへ姿を変える為の補助アイテムなんだぞ!」
へぇ…。スピルカ先生の後ろでヨガミ先生が話を黒板に書いてくれている。僕も書かなきゃ。
「黒板写した奴から材料取りに来いよー!」
…よし、書けた。僕も材料を貰ってノートを置いた場所へ戻る。僕は魔力量を抑えなければならない。頑張ろう。まず、魔法水を作って…夜光石を入れ…
入れた瞬間、瓶が真っ白に光って
1mくらいのクリスタルが瓶の中から現れた。クリスタルになって勢いよく伸びた先端で前髪が少し切れた…。
でも魔力追加無しで作れた…。
「凄いわねエクス君。凄く綺麗だわ。」
メルトちゃんがそっと触れた時、クリスタルが呆気なく砕けた。ローブのフードに守られ欠片が振っても大丈夫だ。
「えぇっ!!?ご、ごめんなさい!私そんな強い力使ってないのだけど!」
「め、メルトちゃんのせいじゃないよ!」
床に落ちたクリスタルは砂のように粉砕していた。その中でも少し大きな欠片を拾おうとし、手に取ったらすぐにパキンと音がなって砕けてしまった。やっぱりとても脆い…。
「どうやら魔力が多すぎて夜光石がキャパオーバーらしいな。頑張れよーエクス君?その場に無ければ出来ていないのと一緒だぞ?」
ヨガミ先生がニヤけた顔で僕を見る。
「ぐぬぬ…」
今に見てろよ…!もう一度材料をもらって先程よりも弱くと念じながら同じ手順を踏む。
夜光石を入れて…
夜光石は魔法水の中に入りすぐ真っ白に光り輝かなかった。よーっし!これで…
心躍らせた瞬間、魔法水の中で夜光石は光り輝いた。魔力追加してないけど!
どうだ見たかヨガミ先生!!
先生の方をドヤ顔で見ているのに先生はニヤけたまま。やがて指をさした。
「何処にクリスタルがあるのかなぁ?」
「へ?」
見ると瓶の中に光り輝く砂が溜まっていた。まさかクリスタルが中で砕けた!??
これは…まずいぞっ!!
また僕だけ補習になってしまうっ!!!