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第111話『復興アルファクラス』

急に雨降ってきたり変な天気ですが皆さん、いかがお過ごしでしょうか!風邪を引かないようにお互い気をつけましょうね!

前回のあらすじ


皆が検査している中、大爆睡していた僕は

シュヴァルツさんの計らいで起こされなかった。

目が覚めたらアスクレピオスが嫌々迎えに来て

個人検査。その後彼から目覚めない生徒を起こして

欲しいと頼まれてゼウスに頼らず僕の魔法で

起こすことに成功。

そして最後に助けた女子生徒が話しかけてきたんだ。アスクレピオスは隠し撮りしたアポロンにブチ切れてどっか行きました。


 …


「先程はありがとうございました。

あの、貴方の事を聞かせてくれませんか?

えっと…神クラス代表さん。」


千草色の髪を持つ彼女は確かにそう言った。


「神クラス代表って…

僕のこと知っているんですか?あ、ズレますね。」


先程までアスクレピオスが座っていた隣へ移動すると、彼女は「ありがとうございます」と言って

僕が座っていた場所に腰掛けた。


「えっと…

神クラス代表さんの事はオリエンテーションで。

名前は確か…エックスさんでしたっけ?」


絶妙におしい。


「え、エクスです。エクス=アーシェ。」


申し訳ない感じで訂正すると彼女は驚いて口に指先を当て頭を下げた。


「す、すみません!失礼な事を!」


大丈夫、もっと酷い人が国家最高機関にいるから。

と言いたい気持ちをグッと抑え首を横に振った。この動作を見て彼女はホッと胸を撫で下ろし微笑んだ。


「私はテト。テト=カムイと申します。

アルファクラス所属です。」


「!…テト、カムイ…さん…」


確か会議でリリアンさんの口から出た名前だ。

病室でも話してくれたっけ。


「私の事、ご存知なのですか?」


今度は僕が聞かれ、リリアンさんに聞いたという事を伝えると彼女の緊張した表情が緩んだ。


「リリアンちゃん無事なんですね。良かった…」


安堵の表情を浮かべる彼女にとってリリアンさんが

大切な友だとすぐ分かる。

少し黙ったあと、僕の方を見るとふにゃりと笑った。


「あの、私達同じ学年?なんですし敬語やめませんか?ちょっと堅苦しくて辛いです。」


「あぇっ!?あ、うん…わ、わかっ…た?」


我ながら気持ち悪い声が出たなと思うとテトちゃんは手で口を押さえて笑いを堪えている。…恥ずかしい。


「ふふっ…ごめ…っ!」


「そんなに笑わないでよぉ…。」


恥ずかしがる僕を気にして笑うのをやめようとするのが分かるんだけど中々笑いが止まらない。

多分3分くらいずっと笑っていた。

その間僕は羞恥と戦っていた。


「あー…ごめん。面白くて…やっと収まった。」


笑いで出た涙を指で拭いたテトちゃんは急に真面目な顔に変わる。


「あ、のさ。本題なんだけど…私、何で病院に居るか分からないんだ。授業終わってそれから記憶が

無くなってて…エクス君が助けてくれたのは分かるよ。だから知ってたら教えて欲しいの。」


「…」


最初の僕のことを聞かせてくれませんかって言うのは僕の知っていることを聞かせてって意味か。

…僕は嘘が上手じゃない。

下手に変な事言って不安にさせるくらいなら正直に

伝えてあげた方が良いだろうか。

僕がテトちゃんだったら本当の事を知りたいだろうし…伝えよう。


「僕の知っていること、全部話すよ。

全部、嘘みたいな本当の話を。」


僕は知っていること、会議で知ったこと、

病室で皆とあの時のことを話しあったことを伝えた。


「これが僕の知っていること、知ったことだよ。」


テトちゃんは暫く放心状態だった。

僕はただそれを見つめることしか出来なくて、

自力で我に返った彼女は震える声で確認をとる。


「……オロチが…暴れて…皆を…?」


「うん。でも誰も命を落としてはいない。

怪我も酷いのは無かったって聞いたよ。」


メルトちゃん、リリアンさん、スピルカ先生は

切り傷と擦り傷が凄かったけど…。

するとテトちゃんは魔導書を顕現させ、杖を持って


「…お、オロチ!【summon】!」


と言うけど、オロチらしき人物は出てこなかった。


「あれ?オロチ!?どうしたの!?」


紫色の蛇の皮が表紙になっている魔導書を持って声を荒らげるテトちゃん。オロチはそれでも出てこない。反抗期?傷が癒えていない?いや…これはクリムさんやヨシュアと同じで召喚獣が出ないんだ…!!

やっぱり僕だけじゃダメだ!


「来てゼウス!【summon】!」


僕も魔導書を顕現させて相棒を呼ぶ。

光り輝いて出てきたゼウスは相変わらず神々しい。


『私を呼んだな?マスター。』


「うん、あのさ!この子の召喚獣が出ないんだ!」


『召喚獣が?てことは……成程、お主があの

ヤマタノオロチの…良かろう。そこを動くなよ。』


動くな、と言う割には指を鳴らしただけ。

光が見えたりとかエフェクトは何も無い。


『治ったぞ。出してみろ。』


ゼウスに困惑しながらも頷いたテトちゃんはもう一度杖を握り締めてオロチを呼ぶ。すると、切りそろえられた黒髪で豪華な着物を着た男性が現れた。

帯をよく見てみると二匹の暗い紫色の蛇が巻きついて帯の代わりになっていた。


「オロチ!」


テトちゃんが名を呼ぶとフッと微笑んだオロチ。

嬉しさと心配が入り交じった表情の彼女は彼に抱きついた。


「心配したよぉ…!身体は大丈夫?」


テトちゃんの背中を擦りながらコクリと頷くオロチ。彼、喋らないタイプか。何はともあれ良かった。


「テトちゃん、良かったね。」


「エクス君のおかげだよ。ありがとう!」


嬉しそうな彼女を見ているとこっちまで笑顔になる。しかしゼウスは笑顔にならず、腕を組んで僕にこっそりと聞いてくる。


『…マスター。今まで何をしていた?』


「あのね…」


テトちゃんとオロチの邪魔にならないように小声で

生徒を助けたことを告げると、ゼウスはしょんぼりとする。


『む…私を頼らなかったのか。』


「あ、アスクレピオスがね…怒っちゃうから…。」


あそこでゼウスを呼んでいたら間違いなく僕は

解剖されていた事だろう。


『しかし困ったぞマスター。召喚獣が出ない状態が

治っておらんという事は折角のマスターの苦労が…』


「うん…今ので分かった。」


僕は確かに眠っていた堕天アンヘル被害者を起こすことは成功させたけど、召喚獣が出なくなった事については何も解決出来ていないことが。

やっぱり僕だけじゃダメなんだ。悔しいな。


『だがマスター、私に頼らず起こすことが出来ただけでも十分だ。後は私に任せよ。』


「うん…もう1回行こう、眠っていた皆の場所へ。」


椅子から立とうとしたらゼウスが『その必要は無い』と僕を手で制止させた。


『この階は全員眠っていた者か?』


「う、うん…そうだよ。この下の階も。」


『なら早く済みそうだ。刮目せよ、マスター!』


浮いていたゼウスは床に足をつけた。その足から光の線が模様を描きながら伸びて、あっという間に魔法陣を完成させた。魔法陣はその場をクルクルと回っている。ベヒモスにかけた回復魔法みたいだ!


『…』


魔法陣が光り輝き、ゼウスは目を閉じる。

そして右手を天井へ向けると、光が最高潮になり、

僕もテトちゃんもオロチも眩しくて目を塞ぐ。


『終わったぞ!褒めるが良い、マスター。』


「おわ…本当?」


『嘘は言わぬ。確認するか?』


「…うん。」


正直、知らない人と話すのは気が進まないけどこれは確認のため仕方なくやること。我慢しなきゃ。


「私もオロチとついてく!皆元気か知りたいから!」


テトちゃんが居ると心強い。

快く承諾してテトちゃんの隣の病室に向かった。


 コンコンコンッ


「はーい。」


お、女の子の声!


「私!テト=カムイ!いーれーてー!」


「どうぞー!」


僕が名前を言うより友達のテトちゃんの方が良いだろう。そう思って彼女に入室許可を取ってもらうことにしたら成功した。


「失礼します!」


「し、失礼しまーす…」


テトちゃんに続いて僕も入室させてもらうと、

お淑やかな女子生徒は驚いていた。

そりゃ知らない奴が入ったらビビるよね。

謝らないと!


「か、勝手にごめんなさい!

僕は神クラス代表エクス=アーシェです。

こっちは相棒のゼウス。身体の具合はどうですか?」


不思議そうに僕とゼウスを交互に見つめていた彼女

だったけど、やがて笑顔を向けてくれる。


「勝手だなんてとんでもない。

私を起こしてくださった方ですよね。ちゃんとお礼が言いたかったのです。ありがとうございます。」


「い、いえ!」


嬉しい…っ!女の子からのお礼は特に嬉しい!


『娘、お主の召喚獣の調子はどうだ?』


ゼウスが本題を切り出すと、女子生徒は金色のキラキラした粉のような物が舞う黄緑色の魔導書を顕現させる。


「さっき試したら出てこなくて…」


『もう一度試してみよ。』


「は、はい!」


魔導書から杖を取り出した彼女は


「出てきてティターニア!【summon】!」


光り輝いて現れたのはいかにも妖精女王と言うべき

黄金のティアラと黄緑色のドレス、薄い金色の蝶々のような羽根を持った美人。


「ティターニア!」


『マスター!あぁ、無事だったのね!』


むぎゅっと抱き合う2人を見てほっこりする。


「良かった…」


「アーシェさんのおかげです。

ありがとうございました。私の名前はオリヴィエ。

オリヴィエ=レムリアンです。もし貴方に困ったことがあったら手伝わせて下さい。」


もしかしてお嬢様なのかな…。

覚える為に復唱しよう。


「オリヴィエ=レムリアンさんですね。

ありがとうございます、でも1番はお身体に気をつけることですよ。じゃあ僕はこれで失礼します!」


「またね、オリヴィエちゃん!」


「はい、また!」


部屋を出る直前にアスクレピオスの黒蛇が下から

ベッドの脚に巻き付いて登るのが見えた。


「あれ?テトちゃんの所に黒蛇居なかった?」


「蛇?オロチじゃなくて?」


「黒い蛇だよ。普通サイズの。」


両手で蛇の長さを表すけどテトちゃんは首を傾げた。気になったのでテトちゃんの病室に戻ることに。


「黒い蛇…?」


呟きながらドアを開けてくれたテトちゃんに続くと、誰もいないベッドの上で黒い蛇が涙目でみょんみょん上下に動いていた。


「あ、居た!ごめんね、気付かなくて!」


召喚獣がオロチだからか蛇が平気のようだ。

彼女が手を伸ばすと、黒蛇は巻きついた。


「この子、どの子?」


「アスクレピオスっていう此処の医院長さんの召喚獣の蛇だよ。一応テトちゃんが起きた時にアスクレピオスも一緒だったし、蛇の事も少しだけ話したんだけど…覚えてないかな?」


「寝ぼけてたからなぁ…ごめんね。」


蛇の頭を撫でてあげるテトさん。

オロチが少し複雑そうに見ている事は黙っておこう。


「その蛇は検査室に連れてってくれるからその子と

一緒に外へ出て検査を受けに行って。

僕は1人で大丈夫だから。」


それに検査していないテトさんを連れ回したら僕が

アスクレピオスに怒られるだろうし。

テトちゃんも頷いてくれて病室の外で別れた。


人見知りとかしている場合じゃないよね。

検査が終わっていてもいなくても部屋にいる人から

確認しないと。


「行こう、ゼウス。」


『何処へでもついて行くぞマスター!』

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