表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/194

第104話『過去の傷』

優しい評価をして下さった方、ありがとうございます!!嬉しくて心の底から泣いております(T^T)

ブックマークして下さる方々にも感謝感激しております!頑張るモチベになります!良ければこれからも見守って頂けると嬉しいです!

前回のあらすじ


不思議なことが起こりました。怪しい人影をヨシュアが発見したんだけど、何故か召喚獣はその姿を捉えることが出来なかった。不思議なことはそれだけでなく、怪しい人影…名をネームレス。

彼は自分の顔を持たぬ者で、見た人にとって大切な人の顔になるらしい…。


こんな時に言うのもアレですがシオン先生の魔刃抜刀カッコよ!!!



シオン先生はネームレスと名乗る男に刀の先を

突きつけたまま。その手は僅かに震えている。


「た、大切な人…やて?

僕は父の顔を見たことが……」


彼が玉藻前をチラリと見ると、

玉藻前は手元を口に寄せた。


『私と出会って少しした幼い頃、私の親友ということで写真を1回見たきりやな。それと今さっき。』


「…だろうな。だって…覚えとらんかった…!

そんな父上の顔が何故現れるんだ!」


何かに耐えるシオン先生の手が力の入れすぎでもっと震え刀がカチカチと音が鳴る。確かに先生の話だと

お父さんを実際に見た事が無く、写真だけでしか

知らないみたいだ。つまり実際に話したことも無いのだろう。それなのに大切な人として現れるのも不思議だ。…シオン先生の家族事情を知らないから憶測だけど。


ネームレスは暫くシオン先生を見てから


「あー…すみません、説明が面倒くさくて省いたせいで生まれた言葉の綾です。

大切な人と言っても何と言うんでしょう?

えー…思い入れが強いと言いますか…

例えば会いたいと強く思ったり、好きだと思ったり、殺したいと思ったり、色々な感情が人間にはありますでしょう?

そのどれかの感情が1番強く、その1番の感情を抱く人間の顔が僕の顔なんですよ。例え顔だけが記憶の奥底に眠っていたとしてもね。

つまり貴方の中で会いたいという気持ちが1番強く、

それが幼い頃1度見たこの顔の人物だった。

と言うだけですよ。」


とヘラヘラ笑う。

それなら大切な人とは違うじゃないか…。

全ての感情の中で恨みが1番強かったらその恨んでいる人の顔になるってことだろ?

と言うかゼウスの声と顔で喋らないで欲しい…。


「貴方達はアビス=アポクリファ…でしたっけ?

彼を恨んでいますか?いいや、恨んでない。

なら特別な感情があるか…それはあるかもしれない。でも、1番じゃない。

そんな人達に協力する理由はありません。」


ひ、否定が出来ない…。

口でアビスめと言っても、怒ってると言っても…

別の感情の二の次になっているという事が分かってしまったのだから。


「いいや、自分には協力してもらうで。」


刀の先をネームレスの喉にちょんと付けた。

ネームレスは両手を小さく挙げつつ驚いた顔を見せる。


「は?話聞いてました?」


「何故アビス=アポクリファが男だと分かった?」


「…あ、やべ。」


呆気なくボロ出したな。けれどヤバイと言っている

割には笑ってんだよなネームレス(コイツ)は。


「うーん…捕まるのは嫌だなぁ。

拷問とかされそうだから。」


そう言って腕を拘束していたゼウスの輪が石となり

砕けた。ゼウスも想定外だったようで眉間に皺を寄せる。


『何…?』


足はそのままだけど間髪入れずシオン先生に突きつけられた刃を右手の人差し指と中指で挟んだ。次の瞬間


「ッ!!?」


挟まれた部分から刃の光沢が無くなり、ピシピシと

音を立てて柄に向かって罅が走るように入っていく。


『紫苑の魔刃が石化しとる!手を離せ紫苑!』


「く…っ!」


玉藻前に従って落としたからか刀の石化が止まった。が、刃の部分全てが石化して割れてしまったため柄の部分だけになってしまった。

そしてシオン先生の手から離れたそれは形を維持出来ず、白黒な杖に戻った。

悔しそうな顔で拾い上げたシオン先生。


「あらま。よし、魔力を通じて貴方の昔の記憶見ました。座敷牢にずぅーっと1人でご飯も満足に食べられなかったのに見知らぬ餓鬼に石を投げられたりされて

辛かったですね……そんな貴方に効く言葉は…

“忌み子”ですかね。それとも…“座敷牢”?」


「な…何故それを…」


「言いましたよね、記憶を見たって。嘘じゃないですよ。だからこんな事も出来ちゃうわけで。」


シオン先生の過去の傷であろうものを掘り起こすように顔の前で手を翳したネームレス。次の瞬間、顔が見知らぬおじさんに変わった。


「じゃーん。」


「ッッ!!!」


顔が変わった!?顔が定まったのか?

いや、それよりもシオン先生の様子がおかしい。


「まだ出来ますよー。」


次は綺麗な女性の顔になった。


「……それは…それだけは、やめろ…」


左手が上がらないシオン先生は右手で右耳を押さえ声を聞かないように必死だ。

押さえてあげた方が良いのかな!?


「見逃してくれるまでやめない。

ねぇ、シオン。」


「やめろ…っ…」


『紫苑?』


ネームレスは大きく息を吸って


「貴方はやっぱり忌み子よ!化け物の妖の子!!

人間じゃない貴方なんて私の子じゃないわ!


貴方なんてあの時に死んだ方が良かったのよ!!」


最低な言葉を一気に吐いた。偽者だと分かっているはずなのに脳が本人だと錯覚しているのか、シオン先生は顔面蒼白になる。


「先生!耳を貸しちゃダメですっ!!」


僕の声は既に聞こえていないようで、

シオン先生はこっちを見てくれない。


「ぁ…は、はうえ…ぼ、ぼくは……

ぼくは…やはりしんだほうが…」


拾い上げた杖を落とし、右手を口に当て震える足で

数歩退ってしまう。異変に気付いた玉藻前が目を

見開いてシオン先生の傍に駆け寄る。


『おい紫苑!!さっきからホンマにどないした!?

ゼウスはんのマスター説明せぇ!!』


「あ、えっと……ネームレスが、玉藻前達からじゃ

見えない奴が女性の顔で…多分お母様の顔でシオン先生に向かって…貴方はやっぱり忌み子よ、化け物の妖の子、人間じゃない貴方なんて私の子じゃないわ…

貴方なんてあの時に死んだ方が良かったのよって…

最悪な言葉を吐きました。」


ちゃんと伝えたら玉藻前の耳と尻尾がぶわっと大きくなる。


『何やてッ!?紫苑、まさかそんな嘘を真に受けたんか!?あの子が…お前さんの母親がそないな事言うわけない!!!身を呈してお前さんを守ったくらいお前さんの事を愛しとったんやぞ!!なぁ紫苑!!』


「……」


シオン先生は何も喋らない。瞬きもしない。

玉藻前の声も届いていない。


『紫苑ッ!!』


「無理ですよ。だって彼の記憶の中の母親の声色も、発音も、喋り方も真似してますから錯覚くらいしますよ。って召喚獣には聞こえないか。ふふ…美人さんの絶望した顔って美しいですよねぇ…。」


蕩けた表情のネームレスの顔のパーツはゼウスに

戻っていた。そんな顔を


オペラ先生が空いている左手で思いっきりひっぱ叩いた。


「痛っ!!」


「オペラ先生!」


「ったた…。」


「シオンの過去を弄ぶなッ!!!」


初めて聞くオペラ先生の荒らげた声は顔が見えない分の怒りを表している。


『ミカエルはんのマスター…。』


「私はシオンとヨシュアを傷付けたお前を許さない!!【summon】ミカエル!!」


翼の金装飾が美しい赤の魔導書を顕現させ美しい天使を呼び出す。


「空間隔離!」


『は!【天空宮殿】!』


ミカエルが赤い剣を振ったその時、

辺りが宮殿へと姿を変える。


「す、すごい…」


「私達はもうあの場にいない。

此処はミカエルが作った私が選ぶ対象者以外には認知されない亜空間、天の神殿。ここならお互い好き放題暴れられるぞ。アビス=アポクリファについて知っている事を吐け。だがその前にお前が特に傷付けたシオンに謝れ。人の心を傷付けた罪は相当重いぞ。


償ってから贖罪として口を割れ!!」


怒りに満ちているオペラ先生はミカエルの人形を外して僕に預け、ワインレッドの杖をスタンドマイクに

変えてネームレスの目の前で構えた。

今回ネームレスをホームレスと書きそうで焦りました( 'ω')

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ