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第101話『悪魔のタロット』

凄く久し振りにストーリーが進む気分です…。


「今回もまた新しい…人?が出るんですね。もう覚えられないですよ…?」


ね…。自分もですわ。

 前回のあらすじ


 ヨシュアと青春していると、泣いてる女の子ベスカちゃんと出会った。その子は親御さんとはぐれてしまったらしくヨシュアと探すことに。でも中々見つからず困っていると女性の悲鳴が聞こえて…


 …


 悲鳴を聞いたヨシュアの笑みが過去ヨシュアを彷彿とさせ、内心怯えた僕は大声で彼を引き戻す。


「ヨシュア!!」


「っ!ご、ごめ…っ」


「大丈夫、ベスカちゃん頼んだ!」


「あ、う、うん!」


 彼に頷き、人混みをかき分けゼウスが治療中の女性の元へ駆けつけた。女性は今も切りつけられた腕の苦痛に耐え、顔を歪ませている。息はあるみたいだ。


「あの!大丈夫ですか!?」


「うぅ…っ…」


 するとゼウスが曇った表情を僕に向けた。


『マスター、この怪我の治りが遅い。私ですら1分掛かる。』


「えっ」


 ゼウスがそんな…まさか…


「あ、堕天(アンヘル)……?」


『…それよりかは軽い。堕天(アンヘル)の簡易的な物かもしれぬ。』


「れ、連絡し、しなきゃ!」


 僕は慌ててポケットからデバイスを取り出した。あれ?こういう時は誰に相談すれば良いんだ!?震える手で画面を指さした状態で思考が詰まる。それに反応するように1つの猫のアイコンの右上が赤丸で1と通知されている事に気付き触れてみる。

すると画面が真っ暗になってしまった。


「嘘!?壊れた!??」


『落ち着けマスター。』


 ゼウスの声が低く優しく僕の呼吸を整える手助けをしてくれた。


「ありがとうゼウス。」


『うむ、それと治療は終わった。』


「分かった。」


 デバイスが震えて画面を見ると、見知らぬ白髪で目が琥珀色の若い男性がサイバーチックな服装でネオンカラーで縁取られた黒い猫耳ヘッドホンを付けて画面に映っていた。ヘッドホンのスピーカー部分は僕から見て右が黄色く、左が青い。…誰??


『サポートAIアイオーン起動。デバイスを読み込みます。ダウンロード開始。所持者の声紋、虹彩記録。データダウンロード再開。』


 口が動いたと思ったら喋ってる!?


『…全データダウンロード完了。

 初めまして、私はシルヴァレ=ジョーカー様によって創られたAIのアイオーン=ジョーカーと申します。エクス=アーシェ様、貴方のサポートを努めさせて頂きます故、末永く宜しくお願いします。』


「え、えーあい?」


『はい。』


 僕の独り言に反応した!??え?どうなってるの!?じ、人工知能って事だよね!?


『マスター?どうしたのだ?』


 首を傾げたゼウスに画面を見せる。


「こ、これ!シルヴァレさんが作ったらしいAIだって!」


『えーあい?何だそれは。』


「人工知能だよ!」


『人工知能とな?ふむ…まぁ良い。それで?連絡は取れたのか?』


「あっ」


 やばいやばいそれどころじゃないんだった!再び画面と向き合うと今度はアイオーンが首を傾げていた。


『お困り事ですか?』


「そ、そうなんだ!あの、えっと!困ったことがあったら誰に相談すれば良いかなっ!?」


『緊急性の場合はニフラム様、ユリウス様へ。それ以外は必要に応じてスピルカ様、ヨガミ様、ご友人へ。と、ご主人様がデータを残しております。何方かにご連絡致しますか?』


 アイオーンは半歩右に移動し、電話帳らしきリストを開いて見せてくれる。ニフラムさん…はちょっと怖い。怖いより嫌だの方が平気だから…


「ゆ、ユリウスさんにお願い。急いでるんだ。」


『畏まりました。緊急性共にお繋致します。』


 リストからユリウス=リチェルカと書かれた行を掌で触れ、Callingと画面に現れる。リストは閉じてアイオーンが目を瞑っている姿しか映っていない。不思議に見ているとアイオーンは目を開き、ユリウスさんの姿になって


『ユリウスです、早速どうかしましたか?エクス君。』


 と声に合わせて口を動かし、眼鏡を中指で押し上げる動作をする。まるで本人とテレビ電話してるみたいだ。


「あ、あの!た、大変な事がっ!」


『大変な事?落ち着いて状況を説明してください。何処で、何があったのです?』


「は、はい。えっと…じょ、城下町の噴水広場前で女性の悲鳴が上がって、駆けつけたら…腕を何者かに切りつけられたみたいで…!」


『ほう?』


「それでゼウスに治療を頼んだんですけど、ゼウスでも腕の怪我を治すのに1分掛かる変な怪我で!あ、いつもは手をサーってするだけで治るんです!数秒で!」


『…ふむ、それは変ですね。分かりました、そちらへ直ぐに向かいます。電話切って大丈夫です。』


「は、は…」


 ガチャッ


 返事する前にそっちが切ってんじゃん!!

少しイラッとして画面を睨むと、ユリウスさんからアイオーンに姿が戻っていた。


『お役に立てましたでしょうか?』


「うん、助かったよ。ありがとうアイオーン。」


素直に御礼を言うと彼は無表情で頭を下げた。


『それが私の創られた理由ですから。何かございましたら画面に向かって私の名前をお呼びください。では。』


「おや?不思議な画面ですねぇ!」


「そうなんですよ!シルヴァレさんの……」


 勢いで左を向くといつの間にかユリウスさんが立っていた。


「うぎゃあっ!!?」


「おやおや。呼んだのはそちらでしょうに驚かれるとは心外ですね。空間魔法使っただけですよ。で?女性はあちらのゼウス様が抱えていらっしゃる方で間違いありませんか?」


「はい、そうです。」


 ユリウスさんは女性に歩いて近づき、膝をついて腕の状態を確認している。そして笑顔を作った。


「こんにちは、私はユリウス。貴女を今から病院へ連れていきます。ゼウス様に変わって私が貴女を抱えますので無礼をお許しくださいね。」


 ゼウスから女性を受け渡され、ユリウスさんが抱えた瞬間、女性からカードが落ちた。僕が拾い上げるとそれはタロットカードだった。


「趣味悪…」


 絵柄はXV番の悪魔。ユリウスさんもゼウスも覗き込む。


「おやまぁ…随分とどストレートと言いますか何と言いますか。」


『占星術の1つか。』


「えぇ、そうでしょうね。最も、悪魔のカード1枚だけならタダのメッセージとかでしょうけど。エクス君、持つなら逆さまにしなさい。」


 逆さま?一応言われた通りに上下逆にして悪魔の頭部分を下にした。


「効果があれば良いですがね。では、私は女性をシュヴァルツに預けてきます。報告に電話か直かは考えておきますのでどちらでも対応出来るようにしておいて下さいね。」


「はい!」


 ユリウスさんは女性を抱えたまま異空間を作り出し、中へ消えた。


『悪魔のカードか…。』


「完全におちょくられてるよね。」


『だな。ところで占星術ならそれも意味があるのだろう?』


「うん。意味あるのは知ってるけどタロットカードはよく分かんないな…。」


 あ、こういう時こそ人工知能では?


「あ、アイオーン…?」


 画面に話しかけるというのが少し恥ずかしい僕は小声で呼びかける。流石シルヴァレさん。機能が良いこともあってどうやら聞き取ってくれたらしく、電源ボタンを押した訳では無いのに画面が点灯する。


『お呼びですか?』


「あのさ、タロットカードの悪魔の意味知ってる?」


『少々お待ち下さい。タロットカードについて、データダウンロード…完了。

悪魔のカード、大アルカナナンバーXV。意味は裏切り、堕落、嗜虐的、誘惑、その他etc。正位置とされる向きでは加虐性のある意味が多いようです。そして逆位置は回復、覚醒、リセットなど本当に真逆の意味があるようです。』


「へぇ…。」


 逆位置…だからユリウスさんは逆さまにしろって言ったのか。意味知ってたんだ…。


『では、今のマスターの手元にある向きならば回復などの意味があるのだな。』


 ゼウスに頷いた僕は悪魔のカードを正位置に戻した。


「本当はこっち。…これを仕掛けたのは…」


『「アビス…」』


 だから、アビスは此処に居て僕達を見ていたんだ。ずっと…。ユリウスさんの事だ。分かっているんだろうけど僕に探せと言わなかった。取り敢えずヨシュアの元へ戻ろう。


「あ、エクス!大丈夫だった?」


「僕はね…。女性は腕を切りつけられていた。ユリウスさんに連絡して今は病院。それでこれが落ちてきたんだ。」


 悪魔のカードをヨシュアに見せると眉間に皺を寄せた。


「タロットカード…だよね。」


 ヨシュアも知ってるんだな。


「うん。絶対アビスの仕業だ。アビスは城下町に居る!」


「それなら皆にも伝えた方が良さそうだね。また探し人が増えたわけだし。」


 ベスカちゃんのことが心配になりプロメテウスを見ると、彼の腕の中で微睡む彼女の姿があった。良かった、眠れるほど安心したんだ。


「多分プロメテウスがあったかいからね。」


 ヨシュアが耳打ちしてくれた。確かに火の神様だもんな…。


「なるほど。」


『チッ…何で俺様が子守りなんて…。』


 と言ってる割には文句も小声だ。皆に連絡しないと。


「アイオーン、何度もごめんね。」


『いえ、頼られるのは本望です。如何致しましたか?エクス様。』


「え?何それ。」


 ヨシュアが僕の画面を覗き込んで目を丸くした。


「デバイス作った人が作った人工知能なんだって。名前はアイオーン。このアプリ触ったら出てきたんだ。」


 アイオーンが気を利かせて横にずれてくれて猫のアイコンを指さした。


「そんなアプリ?は無いけどな。」


『今の私はエクス様とご主人様にのみ御奉仕しております。ご主人様にアプリケーションをインストールして頂ければ御奉仕させて頂きます。』


「そうなんだ。」


 ヨシュアの会話も拾ってるんだな…。やっぱり声を聞いていて理解してるんだ。

すご…。僕とシルヴァレさんだけってことは電話で言ってた特別なアプリってウイルスじゃなくてアイオーンのことだったんだ。


『して、エクス様。ご要件は?』


「あ、そうだった。皆にアビスがいるって情報を一気に流したいんだけどどうすればいい?」


『メッセージと電話、どちらに致しましょう。』


「気付かないと困るから電話の方がいいんじゃない?」


 そう言ったヨシュアに頷いて


「電話でお願い。全員じゃなくて…えーと…シャルく…シャーロット=アルカディア君と、メルトガーディアちゃん、それと…スピルカ先生と…ヴァルハラはユリウスさんが知ってるから良いか。3人でお願い。」


 と言うとアイオーンは頷いた。


『畏まりました。シャーロット=アルカディア様、メルト=ガーディア様、スピルカ=アストレイ様へ同時にお繋ぎ致します。』


 目を閉じたアイオーンは3人に分身し、目を開けた時には3人の姿に変わった。


『もしもーしエクスか!早速どうしたー?』


「スピルカ先生!」


『はーい、エクス君呼んだー?』


「メルトちゃん!」


『はい、シャーロットです。どうかなさいました?エクス君。』


「シャル君!えっと今、スピルカ先生、メルトちゃん、シャル君の3人に電話を掛けてます!その理由なんだけど城下町でアビスが潜んでいる可能性大!皆にも探してもらいたいんだ!」


『!』


 音とアイオーンの表情で3人が息を飲んだのが分かった。


『分かりました。ローランド君、レン君。人探しです。』


『分かったわ!皆、聞いて!アビスが城下町に!』


『俺らも数人城下町に行く。城下町は広い。手分けして探すぞ。ヴァルハラには伝えたか?』


「ユリウスさんにだけ伝えてあります!」


『なら警備隊も来るな。何かあったら直ぐに伝えろ!いいな!』


『『「はい!」』』


 返事をして通話を切った。アイオーンは姿を戻し1人になった。


「凄いねそれ…。ねぇエクス、ベスカどうするの?」


「あっしまった!どうしよう!」


「おや、実は迷子さんを助けていたのですか?」


「そうなんですよ!そしたら女性が…って」


 右隣にユリウス=リチェルカさんが。


「うぎゃあっ!!」


「ふふ、同じ驚き方でつまらない人ですねぇ。こんにちはヨシュア君。」


「…こんにちは、ユリウスさん。」


「で、プロメテウスが抱えているその子が迷子なのですね?」


 ユリウスさんの視線はヨシュアから穏やかな寝息を立てているベスカちゃんに。


「はい。親を見つけてあげるって約束したんです。…でもアビスが…」


「うーむ…迷子にはアーヴァンが役に立つのですよ。伝えましょうか。」


「…でも…約束したんですよ。僕らが見つけてあげるって。」


 僕が俯くとユリウスさんはまたクスクスと笑った。


「ふふ、分かってますよ。私もそこまで鬼じゃありませんから。貴方達2人はこの子の親の捜索をしなさい。そのついでにアビスで良いです。正直この人混みを今規制しようとするともっとパニックになりますし、何よりいきなりは国民の反感を買ってしまいますからね。故に今アビスを捕まえられるとは思いませんから。警備隊もアビスを捜索し始めるので人手はまぁ良いでしょう。では私は行きますね。」


 僕達に背を向け手を振りながら人混みに消えたユリウスさん。僕とヨシュアはお互いを見やる。


「…ヨシュア、ちょっと歩く?」


「そだね、じゃあプロメテウス頼むよ。」


『へーへー。』


「ゼウス、ベスカちゃんと似た感じの人の気配とか無い??」


 そう聞くとゼウスは腕を組んで眉間に皺を寄せる。


『うーむ…何せこの童はまだ魔力が無い。探すのが難しいのだ。判断材料が無さすぎる。…が、やってみようか。タナトス、ヘルメス!』


『『は!』』


 わっ!魔導書から2人が勝手に出てきた!!


『子供を探している人間の親を探すのだ。良いな?』


『『畏まりました。』』


 ゼウスに頷き、影に溶けた2人。


『よし、数には数だからな。』


 思った以上に普通な事だったな…。親、見つかるかな。


『お待たせ致しました。』


 タナトスが下から出てきた!


『見つかりました。』


「「え?」」


 ………もう?

ミカウお兄さんは夏季休暇もらいまーす!暑いと仮面で汗かいて目に入って痛いからね!!

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