第99話『迷子の子うさぎ』
プロローグ含め100話になりました!
いつも読んでくださってありがとうございます!!
エクス君達と頑張っていきますので宜しくお願い致します!まだまだ終わりません!!応援して頂けると嬉しいです!!
前回のあらすじ
ヨシュアと今から青春します!
…
食べ歩き〜♪というか城下町にもキッチンカーとかあるんだなぁ…。まるでアウトレットみたいな街並みだ。現実的〜。
「ヨシュアは城下町よく来たの?」
「ううん、実はそんなに。あ、でも昔に夜の城下町はよく行ったな。」
「夜に?」
「夜だと明かりがキラキラしてて綺麗なんだ。それを見ると気分が落ち着いて好きだった。」
ヨシュアの過去…あの怖いヨシュアの時の話なのかな。
「そっかぁ。良いなぁ夜の城下町。僕も行きたかったなぁ。」
そう言うとヨシュアは首を傾げる。
「じゃあ今日の夜にも回ればいいじゃん。お供するよ。」
「え?夜って出られなくない?」
「でも門限言われてないよ。1日自由にさせてもらえる証拠じゃない?ずっと外にいればいいよ。それに今日逃すと自由に動けなくなるよ?」
あ、そっか。これから外に出れるって言ってもヴァルハラの人と行動を共にしなきゃいけないんだ。僕はディアレスさんとシャル君と一緒に…ってあれ?
「ヨシュア、何でこの事知ってるの?この話はヨシュアが気を失った後で決まったことのはずだけど…」
するとヨシュアはデバイスを取り出した。
「使い方よく分からなくて適当に触ってたら何故かユリウスさんからメッセージあってさ。私とレン=フォーダン君と週1で暫く一緒に行動してもらいますよ♡って書かれてて鳥肌たった。」
よ、ヨシュアの目が死んでいる…!
「さ、災難だね…。一応説明しておくとね、アビス探しの為にヴァルハラの人が1人に対して僕達生徒が2人で毎週2日の休みの内の1日を費やすことになったんだ。で、ヨシュアとレンはユリウスさんご指名だった。一番最初に。」
最後の言葉が嫌だったのか顔に表れている。ヨシュアってこんな表情顔に出てたっけ…。
「何でエクスとじゃなくてレンと一緒なんだ…。レン以外だったら誰でも一緒で良いのに。ユリウスさん我慢出来るのに…。」
声が小さいけどそう言ってる。少し嬉しい。
「僕はシャル君と一緒にディアレスさんについて行くんだ。」
「ディアレス…あぁ、トールの召喚士の…エクスの名前間違えてた人か。」
「そうそう。あの人って実はおバカさんだったみたい。」
「へぇ…意外かも。黙ってれば分からな…あ、空見てエクス。」
「空?」
ヨシュアの指差す方へ視線を向けると小さく見える飛竜が僕達の上を通り過ぎる。
「うわっ!凄い!飛竜だ!ワイバーンだ!」
「国の警備隊だね。沢山居る。ワイバーンを操縦しつつ召喚獣と一緒に戦うって凄いよねぇ。」
警備隊は召喚士なんだな。納得。空のパトロールか…確かに魔力を使って飛ぶよりも魔力を使うこと無く飛べるワイバーンに乗った方が良いよね。ヨシュアは警備隊を見て呟いた。
「俺も誰かを守れるほどに強くなりたい。」
「…僕も!」
僕は成り行きでこの世界に来ちゃったけど…エクスの思いを知らないけど…これは僕の物語なんだから自分の意思を貫いてもいいよね。ゼウスと共にこの世界の人を護りたい。
「ぐすっ…」
「ん?」
何か声が…?
「どしたのエクス。」
「いや、気のせいかも。」
「ぐすぐすっ…ふぇ…」
やっぱり気のせいじゃない!女の子の啜り泣く声が聞こえる!
「ヨシュア、何処かで女の子が泣いてる!」
「え、えぇ?こんな人集りで泣いてる子なんて…!俺は声も聞こえないよ?」
確かに今、道の真ん中で止まってしまっていて皆が迷惑そうに避けていくくらいの大人数だ。その人達も喋ってるわけだし普通なら聞こえないだろう。でも…
「聞き間違いなんかじゃない…はず!」
確かに泣き声が僕の鼓膜を揺らしているんだ!ヨシュアは僕を信じてくれたようで、一旦店の壁に寄って人が疎らな場所で魔導書を顕現させる。
「親とはぐれたのかもしれないね。その女の子を捜そう。【summon】プロメテウス!」
僕も真似してゼウスを呼び出す。
「ゼウスも来て!【summon】!」
小さくね!魔導書が光ってぽふんと音をたてながら小さな召喚獣が2体現れる。
『うわ!俺様復活してる!』
『私を呼んだなマスター!』
笑顔のゼウスを手に乗せてプロメテウスを見た。
「プロメテウス、気分はどう?」
『ふんっ!てめぇに心配かけるようなもんでもねぇよ!』
鼻を鳴らしそっぽを向かれた。寂し。
「…え?プロメテウスまた何かあったの?」
ヨシュアの疑問は当然だ。
「ヨシュアは覚えてないよね。あのね、ヨシュアが倒れた後にプロメテウスも消えちゃったの。」
事実を述べると彼は目を見開いた。
「またプロメテウスが…?俺のせいで…?ごめん、やっぱ休んでて」
プロメテウスを気遣い、魔導書の表紙をノックしようとしたヨシュアの手に抱きついてそれを止めた。
『はぁっ!?俺様そんなヤワじゃねぇーし!お前は俺様のマスターなんだから気負うな。俺様のマスターなら堂々としてろ!』
「………うん…。そうだね、ありがとう。じゃあ頼みたい事があるんだけどさ。」
『おう!任せろよ!』
「女の子捜すの手伝って?」
『はぇ?』
すっごい間の抜けた声が出たな。
「だめ?」
『は、いや、だ、ダメじゃねぇけど…』
「ゼウスも手伝って欲しいんだけど良いかな?」
『お易い御用だ。どのような童だ?』
「見た目は分からないけど泣いてる子。多分女の子だと思うんだ。」
ゼウスは腕を組んで辺りを見回す。
『ふむ、マスターの耳に届く泣き声とな?はて…そのような童はこの辺には居らんぞ?』
「え?そんなはずないよ。…あれ?」
そういや静かだな…。
「エクス、何処から聞こえたか覚えてる?」
「何処だろ…多分あっち?」
僕は直感で声の聞こえた少し遠目の噴水広場の方を指さした。なんとなくなんだけど…。
「じゃあ捜しながら目指そう。」
その時、泣いていた女の子よりも僕の返答を待たずに先を行くヨシュアを心配する気持ちの方が強くなる。
「確証は無いんだけど…間違いかもしれないし…ヨシュア倒れたばかりなんだからあまり歩くのも…」
「やだなぁエクス、今更じゃん。それに俺はそんなに弱くないよ。それにプロメテウスもエクスもゼウスも居るんだから何かあっても大丈夫、でしょ?」
振り向きざまに笑って答えるヨシュアを見ても心配の気持ちが強くなる一方だった。でも僕は「うん、任せて。」と頷いて隣を歩く事にしたんだ。
「泣いてる女の子…女の子…」
この人集りの中、もう泣き声は聞こえない。何であんなに鮮明に聞こえたんだろう。何故今は聞こえないんだろう。
「この通行人達が余程薄情な奴らじゃない限り目立つ所で泣いていたら気付いて話しかける人が数人くらいは居ると思うんだ。だから目立たない場所を見てみよ?」
『なぁマスター、二手に分かれて捜した方が早くね?』
プロメテウスの言葉に首を横に振るヨシュア。
「ごめんね、暫くエクスと別行動は避けたい。また何かの拍子で俺が俺じゃなくなるかもしれないから。保険は大事でしょ?それはプロメテウスを信頼していないなんてことは無いよ。絶対。」
『マスター…。』
「……」
何か言ってあげたいんだけど言葉が見つからない。その分、ヨシュアがおかしくなったら絶対に止めるんだ。僕とゼウスで。
『…む?おいマスター。あの荷台の後ろに人の気配がする。』
ゼウスが指を差しているのは前のめりで停めてあるタイヤが2つ、木で出来ている荷台に膨らんだ麻袋が沢山積まれた物だった。人通りが無い場所に置いてあるあたり気遣える人の荷台なんだな。ファンタジーでよく見る荷台だ。中には何が入っているんだろう。
『マスター、見に行くぞ。』
「あ、待ってよゼウス。」
先に動いたゼウスの後を追いかけると…
「!」
泣き腫らした目をした幼稚園児くらいの水色髪でラベンダー色のワンピースを着た少女が荷台タイヤの後ろで膝を抱えて蹲ってた。この子が…泣いてた子?
「…」
女の子が怯えている。えっと小さい女の子と話す時は目線を合わせてっと…。
「こんにちは。君の悲しそうな声が聞こえて助けに来たよ。」
「たすけ…?おにーちゃん達だぁれ…?」
達?わ、いつの間にかヨシュアが横に立っていた。気付かなくて心臓がバクバク言ってる。いけない、笑顔笑顔。
「僕はエクス、召喚士見習い。」
『その相棒、ゼウス様だ!』
「俺はヨシュア。エクスの友達だよ。」
『…プロメテウス。』
4人で自己紹介すると女のコは持っていたウサギのぬいぐるみをぎゅっと抱いて
「べ、ベスカ…。」
か細い声で呟いた。
「ベスカちゃんか。ベスカちゃんはどうして此処で泣いてたの?」
僕は自分の思う優しい声でベスカちゃんに話しかける。彼女はぬいぐるみの頭に顎を乗せた。
「パパもママも居なくなっちゃった…。」
迷子か。それとも……
「パパとママに会いたい?」
ヨシュアも同じ事を思ったのか彼女の意思を確認する為に聞いた。ベスカちゃんはこくりと小さく頷いた。
「パパとママは好き?」
僕の答えにも小さく頷いた。良かった、ならただの迷子みたいだ。
「じゃあ捜そう、パパとママを!」
「捜す…?」
「お兄ちゃん達が手伝ってあげる!今頃ベスカちゃんが居なくなって心配してるよ。早く戻ってあげよう?」
「……うん!」
僕が手を差し伸べるとベスカちゃんは立ち上がって握ってくれた。小さいな、心細いだろうな。早く…見つけて…あげなきゃ……
何だろう、急に悲しくなってきた。僕は買い物の時に親とはぐれたら泣きながら1人で捜したっけ。誰も助けてくれなくて、やっとの思いで合流しても…心配、してもらえなかったな。とても悲しかったな。そこで愛されてないって幼心でも分かってしまったんだ。
「…」
「エクス?」
『マスター?』
ヨシュアとゼウスに呼びかけられ我に返った。ベスカちゃんにはそんな悲しい思いをさせたくない。早く捜してあげないと。
「僕の手を離しちゃダメだよ。」
「うん。」
片手にウサギのぬいぐるみを持ったベスカちゃんは小さな歩幅で僕らと歩き始めた。城下町の中心っぽい噴水広場まで距離があったから彼女を不安にさせないように話そうと思い、会話を試みる。
「そのウサギ可愛いね。」
ヨシュアのそのひと言が嬉しかったのか泣き腫らした目が輝いた。
「バニたんって言うの!」
「ば、バニたん…?」
「うん!ママが作ってくれたの!」
「そっか。じゃあ宝物だね。」
「うんっ!」
お、機嫌が良くなってきたぞ。
次は僕が聞こう。
「ベスカちゃんは何か好きな食べ物ある?」
「クッキー!」
「いいねぇ。お兄ちゃんもクッキー好きだな。」
「じゃあ一緒だ!ヨシュアお兄ちゃんは?」
「え、俺?」
…?ヨシュアがベスカちゃんの方に向く前、一瞬怖い顔に見えたような…気のせいか。
「俺の好きな食べ物か……………なんだろ。食べれれば何でも良いと思ってるからこれと言って…」
あ、そんな馬鹿正直に話すとベスカちゃんが困るだろ!ほら見ろ大人の対応で表情には出すけど敢えて喋らないを選んだ!!何とかしないと…!
「あれ?ヨシュアって…えー…あ、そうそう。チョコ好きじゃなかったっけ?」
「え?別…に…」
ヨシュアがベスカちゃんに気付いた!
「…そういえば好きでした。」
苦し紛れの変換でもベスカちゃんは笑顔になった。
「ベスもチョコ好き!」
「お揃いだー。(棒)」
棒読み。ヨシュアって嘘吐くの上手だったはずだけどな…。
「…ねぇエクス。噴水広場に着いたは良いけどこの沢山の人集りの中でベスカを歩かせるのは危険だと思う。」
「あ。」
それは確かに。ベスカちゃんの身長は僕の膝よりちょっと上しかない。この人混みの中で歩かせるのは危険だ。なら抱っこが良いかな。するとヨシュアが浮いているプロメテウスを見上げた。
「プロメテウス、頼むよ。」
『あ?』
「ベスカを抱っこして今より高めに浮いてくれないかな。」
『俺様が??ゼウスにでもやらせれば…』
おっとそうはさせないぞ。
「ゼウスって変態だからさ。ロリコンに任せておけないじゃん。」
『えっ?マスター??ひどくないか??』
悪い言い方したとは思っているけど間違った事は言ってない。神話参照。
「お願い、プロメテウス。」
彼は両手を合わせるヨシュアを見て嫌そうな表情を浮かべた後、溜息を吐いた。
『チッ仕方ねぇなぁ…おら、こっち来い。』
元の大きさに戻って着地し、膝をついたプロメテウスはベスカちゃんに向けて小さく手を広げた。しかしベスカちゃんは威圧的な彼が怖いのか歩きもせずバニたんを強く抱きしめる。
「ベスカ?プロメテウスは怖いけど良い奴なんだ。雨の中捨て犬を拾ってあげるくらいね。」
いやそれヤンキーのギャップでよく例えられるやつ。でも幼いベスカちゃんにはそれで充分だったらしく、僕の手を離れてプロメテウスに抱きついた。
『おし、ちゃんとウサギと掴まってろよ。』
「う、うん…。」
プロメテウスはベスカちゃんを抱えて人集りの上までふわりと登った。それ故に一際目立った。お、いい具合じゃない?そしてプロメテウスは大声を出す。
『コイツの親ー!!さっさと出てこーーい!!』
「「おいおいおい言葉選んで!!」」
最早誘拐と間違えられそうだ!!でも注目されれば早めに親と会えるかも…!
僕とヨシュアは頷きあって噴水の縁に登ってベスカちゃんの事を伝える。
「あのー!!ベスカちゃんのご両親を捜しておりまーす!!」
「俺の召喚獣が抱えている少女でーす!!ウサギのぬいぐるみを持った水色髪でラベンダー色のワンピースを着てまーす!ご両親はみえますかー!!」
しかし皆、哀れみの目を向けるものの何も言わずに去っていく。でも諦めてたまるか!
「ゼウス何とか出来ない?」
『ロリコンに働かせるとろくな事ないぞー。』
拗ねたー…。僕が悪いんだけどね。でもそうなるとどうしようかな…。うぅーん…。
「きゃあぁああっ!!」
えっ!?悲鳴!!?誰の!?
人々が悲鳴に驚き足を止め一方に視線を向ける。僕の視線も自然とそちらに向いた。視線を集めた原因は…
倒れ込み血だらけになっている左腕を押さえて苦しんでいる女性だった。…何が起こったんだ!??沢山の人が彼女の心配よりも自分の身の安全の為に走り去る。やばい…皆がパニックだ…!
『どうやら何者かにナイフで切りつけられたらしいぞマスター。治療するか。』
「うん、お願い!」
身体を元の大きさに戻し、女性に近付くゼウスの後を追いかけるときに横目で見えたヨシュアの横顔は…
興奮しているような笑顔だった。
次は100話記念で本編から一旦離れようと思います!宜しくお願い致します!