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顧問の先生が素手で幽霊を殴るんだが、どこかおかしいのだろうか?  作者: くろぬか
本編

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陸に上がった人魚姫


 ゴポッと水音が聞えたと思うと、急に吐き気を覚え盛大にむせ込んだ。

 ゲホゲホと咳き込みながら息を吸い込むと、体中に酸素が行き渡るのが感じられるような、不思議な感覚に陥った。

 何が起きた?

 やけに重い瞼、ジンジンと痛む胸……というか肋骨? そしてやけに熱の残る唇と、口の中に残る僅かな煙草の香り。

 訳も分からないままゆっくりと瞼を上げれば、そこには一面の夜空が広がっていた。

 知らない天井どころではない、もはや天井がない。

 うん、なんだこれ。


 「黒家! 目が覚めたか!? 俺が分かるか!?」


 デカい声が聞えたかと思うと、すぐ目の前に先生の顔が迫っていた。

 え、いや何してるのこの人。


 「近い近い近い! 何してるんですか先生!」


 思わず相手の顔面に右の拳を突き出してしまった。

 だがいつもより重い身体は言う事を聞いてくれず、ベチッと情けない音を立てて彼の頬を押さえるだけで終わった。


 「おっ前なぁ……」


 呆れた顔で離れていく先生。

 そしてさっきから胸の辺りに感じる謎の圧迫感。

 視線を向けてみれば、息を切らした弟が両手の掌を組むようにして、私の胸を押さえつけていた。


 「お前も何してるかー!」


 「ちょ、ちょっと蹴らないで姉さん。 ホントに緊急事態だったんだから、救急救命ってやつだよ」


 困った顔で笑いながら、ゲシゲシと蹴られ続ける俊。

 先生共々どこか気の抜けた表情で、二人とも私の攻撃を避けようともしない。


 「あ、の……説明を——」


 「——巡ぅ!」


 「いっだぁ!」


 視界の外から、夏美がタックル紛いな速度で抱き着いて来た。

 その拍子に彼女の頭が顎に衝突し、危うく意識が持っていかれそうになる。

 クラクラする頭をさすりながら、首元に巻き付く彼女の頭をポンポン叩いておいた。

 どうやら今回は、私が足を引っ張ってしまったらしい。


 「それで、何がどうなったんですか?」


 私の一言にガバッ! と状態を起した夏美はえらく不機嫌な様子で睨みつけ、怒っています! とばかりに口を開いた。


 「本当に大変だったんだからね! 巡は正気じゃないし、海に引っ張りこまれるし! そんでもって私と俊君が一緒に引きずりこまれた挙句先生に助けられるし! その後巡は息してないし!」


 きっと彼女は興奮状態なのだろう。

 詳しい説明になってない、とは言え大体の状況は分かったが。

 私に残っている最後の記憶は、先生を追って屋外に出た所。

 その時”歌”が聞え、私は意識を失った。

 それがどういうモノだったのか、相手が何だったのかはわからないが、とにかく私は”ソレ”に良いように操られた挙句海にドボンした訳だ。

 そして助けに来た皆を巻き込み、最後には救急救命を受ける程の状態に……

 ん、待て。

 ちょっと待て。


 「俊が、心臓マッサージ?」


 「だね」


 「えっと、それじゃ……先生は?」


 「……」


 スッと無言で顔を反らされてしまった。


 「先生、まさか見ていただけって訳じゃないですよね? 貴方がそんな状況で動かないはずないですもんね?」


 「……医療行為だと思え。 他意はないし、そういうモノでもない」


 その言葉を聞いた瞬間に、口の中に残る煙草の香りの正体に気づく。

 いや、どっちかというと改めて認識したと言ったほうが良いのかも知れないけど。

 とにかく、そう言う事なんだろう。

 不味い、顔が熱い。


 「……あ、ありがとうございました。 助かりました、はい」


 「おう」


 しどろもどろになりながら視線を落とせば、ジトッとした眼差しを向けてくる夏美。

 不満そうに頬を膨らませながら、眉を寄せている。


 「ノーカン! ノーカンだからね!」


 「わ、わかってますよ!」


 二人して真っ赤な顔でギャアギャア騒いでいる間に、鶴弥さんと天童さんが並んで歩いて来た。

 鶴弥さんの方は随分と消耗している様子で、天道さんに肩を借りてるが。

 ちょっとサイズ的に違い過ぎて、天童さんがえらい体制になってる。


 「皆無事で良かったよ。 もう少ししたら救急車来るから、せめて見える所に移動しない? 黒家さんもだけど、俊君の足も結構酷いし」


 「黒家先輩……本当に良かった……」


 鶴弥さんが泣きそうになっているが、そんなに怖い思いをさせてしまったのだろうか。

 これはちょっと、というかかなり反省しなくては。

 ていうか足って何の事だろう? なんて思って視線を向けてみれば、弟の踵が真っ赤に染まっていた。


 「俊! それどうしたの!?」


 慌てて夏美を振り払いながら立ち上がろうとして、失敗した。

 未だ身体が本調子ではないのか、フラッとしたかと思えばそのまま前のめりに倒れてしまった。

 その体を、先生が受け止めてくれたわけだが。


 「お前らを引っ張りこんだ鮫にでも噛まれたんだろ。 ホラ、お前も無理すんな」


 鮫……? みたいな顔を一同が浮かべて居るが、まあそういう事なんだろう。

 ここで突っこんでも”怪異”の説明なんてする訳にもいかない以上、黙っていた方がいい。


 「大丈夫だよ。 まだ痛いけど、出血も収まってきたし」


 困った様に笑いながら、右足を隠そうとする弟。

 この子も、巻き込んでしまった。

 そう考えると、胸の奥から冷たい感情が湧き上がってくるのを感じた。

 出来れば関わってほしくなかった、弟にだけは”普通”に生きて欲しかった。

 もう、今更言っても遅いだろうが。


 「で、でも早瀬さん凄かったね! めっちゃ息続くじゃん! まさか俊君の方が先に上がってくるとは思わなかったよ」


 私の雰囲気を感じ取ったのか、天童さんがやけに明るい声で喋り始めた。

 こういう時のムードメーカーって結構勇気がいるよね、純粋に凄いと思う。

 なんて関心した所で、違和感に気づいた。

 俊よりも長く海に潜っていた?

 自慢の弟はそれはもう健康体の、半分ウチの顧問の領域に片脚突っ込んでいる男子だ。

 いくら夏美が”狐憑き”の状態になったとしても、身体の構造ばかりは変わり様がない。

 あんなとんでもない脚力や腕力をしていても、瞬間的に腕や足がぶっとくなる訳ではないのだ。

 詰まる話、内臓の大きさだって変わらない。

 だとしたら、物理的な意味でも行動的な意味でも、彼女が弟より長く息を保つ事など出来るんだろうか?

 俊の事だ、海に入った瞬間無駄な酸素を使わない為に変に動いたりなどしなかっただろう。

 対して夏美はどうだ。

 海に引きずり込まれたりなんかすれば、普通はパニック状態に陥る。

 そして身体を動かせば動かすほど血液は酸素を欲し、通常よりずっと早く息苦しくなるはずだ。

 だとしたら……


 「な、何を見てるのかな……」


 視線を合わせれば真っ赤な顔の夏美が居る。


 「何回くらい、息継ぎしたのかなぁと」


 ニヤニヤした眼差しで覗き込んでみれば、俯いてプルプルしながら2本指を立てた。


 「今からお姉ちゃんと呼んでみますか?」


 「ノーカンッ! アレもノーカンだから!」


 彼女が何を叫んでいるのか察したらしい弟も、赤い顔をしながら視線を反らしている。

 いやはや、今回の合宿もずいぶんと内容の濃いモノとなってしまったらしい。

 喜ぶべきか、嘆くべきか。

 今の所何とも言えないが、それでもまぁ……


 「全員無事だったんですから、良しとしますか……」


 そう呟いて、改めて砂浜に寝転がった。

 今回も色々あった……なんて言っても、私は大半覚えていない訳だが。

 それでも体中が痛い事から、結構な出来事があったのだろう。

 詳しい話は皆から後で教えてもらうとして、今はただ疲れた。

 美しい夜空を見上げながら、私は再びゆっくりと瞼を……


 「なぁに綺麗に終わらせようとしてんだ? あぁ?」


 全員の耳に恐ろしい声が響き渡った。

 まるで『上位種』でも目の前にしたような寒気を全身に覚え、思わず上半身を急いで起こした。

 恐ろしい気配を感じたのは皆同様だったらしく、視界に映る全員が肩を震わせながら、”彼”を見つめていた。

 そこには……鬼のような形相を浮かべた先生が立っている。


 「お前らよぉ、何やったかわかってんのか? 黒家、てめぇが一番反省しろ。 何やってんだ? 一人で居なくなるわ、夜の海で遊んでるわ、馬鹿かてめぇは。 他の連中もだ……俺は”帰れ”っていったよな? 確かにお前らが黒家を先に見つけたから、この程度ですんだのかもなぁ……だがよぉ、何でお前ら一緒になって海に入った? 鮫に齧られるまで、夜の海に危険がねぇとでも思ったのか? あぁ?」


 あ、不味い。

 コレは非常に不味い。

 久々に見た、ガチギレモードの先生だ。

 右手をワキワキさせながら近づいてくるその行動は、普通ならキモッ! っで終る行動だろう。

 しかしながら、彼が指を動かす度ポキッ! ポキポキッ! と明らかに意図的に指を鳴らす時のあの音が聞えてくるのだ。

 指一本の筋肉で、その指を鳴らすって何、超怖い。

 きっと、多分、あの手に捕まったら無事では済まない気がする。

 げんこつ一発で済めばいいが、今回ソレはないだろう。

 一晩お説教か、それとも今回ばかりはお尻でも叩かれてしまうのか。

 やけに古典的な方法だが、今の彼の圧力と腕力とを考えれば、正直どっちもご遠慮したい。

 だとすれば、私たちの取る行動は……


 「全員撤退!」


 逃げた、そりゃもう逃げた。

 足を怪我している俊だけは、諦めた表情を浮かべながら大人しく先生の肩に担がれていたが。


 「まてやコラァ! てめぇら今日は寝れると思うんじゃねぇぞ!!」


 砂浜で鬼ごっこを始めた私達の合宿は、こうして終わりを告げる。

 如何せん”鬼”が、マジものっぽいのがアレだが。


 そうこうしている内に救急車が到着し、元気に追いかけっこをしていた私と、終始先生に担がれていた俊は病院送りになった。

 他のメンツは、今頃草加家で正座でもさせられているんだろう。

 なんともまぁ、やはり穏やかな日常というのは、なかなか訪れてくれいご様子だ。

 今回ばかりは、大人しく過ごしたかったんだけどなぁ……

 なんて事を考えながら、私は病院の天井を見上げていた。


 ————


 ザバッと音を立てながら、海に突き出した岩の上に”ナニか”が身を乗り上げた。

 その身は爛れ、腐ったようにどす黒い色をしている。

 長い髪を揺らしながら、這いずるように岩を登る彼女に下半身は存在しない。

 それどころが、顔の半分は今しがた吹き飛んだばかりだ。

 とてもじゃないが、普通だったら生きて居られる様な状態ではない。

 苦しそうに繰り返す呼吸は今にも止まってしまいそうな程弱々しいが、死んだ魚の様に白く濁ったその瞳は、まだ闘気を宿していた。


 ——何ダ……アイツハ。 オノレ……オノレェ!


 別に誰かに聞かせる為に声を放った訳ではなかった。

 だただた憎しみから漏れる言葉、ただそれだけ。

 だというのに、頭上から返事が返ってきてしまったのだ。


 「これが”マーメイド”ですよーって見せたら、絶対子供が泣くよね、間違いない。 あ、スターゲイザーって魚知ってる? 結構キモイ人面魚って感じなんだけど、多分今の君の方がキモイよ?」


 ケラケラと笑うその声に、思わず視線が上がる。

 そこに居たのは場違いな程警戒心のない黒いセーラー服の少女。

 そしてその足元には、大きな三本足の烏が”人魚”を見下ろしていた。

 ”異常な光景”

 怪異となった”人魚”が言っていい言葉では無いとは思うが、それでもそう考えられずにいられなかった。

 だってココは普段人が立ちよらない、彼女だけの場所。

 人が来るような砂浜からは離れているし、何より人が一人か二人立てば埋まってしまうほどの小さな岩肌。

 そんな場所に、この少女と烏は鎮座している。


 ——女ノ……肉。


 「あぁもうそればっかり。 人魚の肉を食べると不老不死だっけ? 歳を取らないんだっけ? どっちでもいいけど、実際は逆だったなんてねぇ……文字通り夢も希望もないんだねぇ、現実は」


 冷めた表情で言葉を吐きながら、彼女は”人魚”の頭を踏みつけた。

 必死で抵抗しようとしている”人魚”だったが、いくら彼女の足を振りほどこうとしてもビクともしない。

 なんだ、なんなんだコイツは。

 焦燥感が込み上げる中、彼女は再び笑顔を浮かべた。

 その瞳は、酷く冷たいモノだったが。


 「まさかとは思うけどさ、このまま逃げてもう一回皆に手を出そう、とか思ってないよね? 出来ると思う? 無理に決まってるじゃん」


 彼女は踏みつけていた足を降ろし、足元に転がる”怪異”を指さした。


 「君はここでお終いだよ? 私の可愛い姉弟に手を出した”化け物”なんだから、許す訳ないよね。 それじゃ、バイバイ」


 ——クアッ。


 やけに軽い声を上げた烏は、彼女の言葉が終ると目の前の”怪異”を喰らい始めた。

 普通の烏の捕食とは違い、突く様な行為は取らない。

 大きく口を開け、肉食動物の様に”人魚”を喰らっていく。

 傷口から溢れ出す黒い霧でさえ、吸い込む様に烏の口の中へと消えていく。

 食べられている本人でさえ現実が飲み込めず、ただただ苦痛に顔を歪ませる。

 パクン、パクンと獣が口を閉じる度、”人魚”の身体は大きく欠損していく。

 今まで味わった事のない恐怖、それこそ”生きていた頃”でさえ、ここまでの痛みは味わったことがなかった。


 ——ヤ、ヤメ……


 「もう遅いよ。 そんな顔する資格すら無いくらいに、君は”生きた人”を殺しすぎたね」


 その晩、付近の海岸では”この世のモノ”とは思えない悲鳴が響き渡ったという。


 ————


 次の日、俺たちは椿の運転する車に揺られながら高速道路を走っていた。

 病院送りになった黒家姉弟は、結局特に何の問題もなく戻ってきた。

 二人とも一応検査だのなんだので一晩病院に泊まる事にはなったが、姉の方は特に異常なし。

 心臓マッサージも綺麗なもんで、肋骨にヒビすら入ってなかったらしい。

 しかし弟の方はと言えば、右足を包帯グルグル巻きにされて帰ってきた。


 「珍しい歯型の魚に齧られたねぇ……鮫、うーん。 ドデカいイカにでも噛まれたのかい? まぁ血液検査の結果じゃ感染症とか炎症もないし、しばらく様子見て」


 なんて言われていた。

 コイツらマジで何に遭遇したのやら。

 それこそ心配だったもう一人の溺れかけ、早瀬に関しても特にコレと言った体調不良は見受けられず、さっきまで元気に動き回っていた。


 「なんていうか、ゴメンねぇ……大変な時にグロッキーで」


 申し訳なさそうに肩を竦めながら運転する椿。

 今日の朝話を聞かせた時には、寝起き一番に病院に飛び出そうとしたくらいだ。


 「全員無事だったから別に気にすんな。 けど今度から酒の量には気を付けろよ」


 「う、うっす……」


 車内のミラーを覗き込めば、全員が全員眠りこけてやがる。

 全く、あんな事があった後だと言うのにお気楽なものだ。

 だからこそ疲れている、と言えるのかもしれないが。

 なのでまぁ、無理に起そうとは思わない。


 「でも、なんで黒家さん海になんて入ったんだろうねぇ」


 「浮かれてたんだろ? お前みたいに酒飲んだ訳じゃあるまいし」


 俺の返答に対して不満があったのか、ムスッと不機嫌な顔がこちらを睨む。

 前を見ろ、前を。


 「おばさんに聞いたんだけど、もしかしたら”人魚”に攫われたんじゃないかって」


 「はぁ?」


 ずいぶんと昔に地元でそんな話しは聞いたことがあるが、流石にバカバカしいだろう。

 そもそもアレは子供騙しであって、聞いた話では元ネタは女性陣に言えたモノではないくらいエグい話だった気がしたが。


 「んな訳あるかよ、馬鹿馬鹿しい。 その人魚の話、聞いた限りで良ければ教えてやろうか? ガキんちょ達は眠りこけてるしな」


 「へー、聞きたい聞きたい! どんな話?」


 やけにノリ気な椿に対して若干の呆れを覚えつつ、暇つぶしがてら口を開いた。


 それはとある女の話。

 まだ成人前だった彼女は、年上の相手と恋人関係にあった。

 その女は地元では知らない者が居ない程の美人で、大層周りからは人気があったそうだ。

 そしてとある晩、事件は起きた。

 夜遅くに帰った女は、暗い夜道で男に襲われた。

 彼女に片思いをしていた男の一人だったらしい。

 身体を汚され、終いには両足を潰されて、そのまま浜辺に放置された。

 運よく地元住民に見つけてもらい一命は取り留めたものの、病院に来た恋人からは冷たい言葉が浴びせられたそうだ。

 ”君が若くて美しかったから僕は一緒に居ただけだ。 もう随分歳もとったし、その足は美しくない”

 そう言った彼は二度と姿を見せなかったそうだ。

 そして次の晩、彼女は海に身を投げた。

 病室からは彼女の遺言書が見つかった。

 そこには、”若くて綺麗な私を取り戻せば、彼はもう一度振り向いてくれる。 だから私は”

 その短い文章だけが残されていたそうだ。

 どういう意味なのか、何をしようとしたのか分からない住民たちだったが、次第に知れ渡る事となる。

 まるで人魚姫の様な姿をした彼女が、夜な夜な若い女性を海に誘い込んでは”食べている”所を、猟師の一人が見てしまったそうだ。

 その後、彼等は子供たちに語って聞かせた。

 ”夜に女の子が一人で出歩いたらダメだ、人魚に攫われるぞ”

 これが、地元に伝わる人魚の言い伝えの始まりである。


 「とまぁこんな感じだ。 アホらしいだろ? そもそも若い女を食えば歳とらない的なのはどこから来たのやら……しかも両足を潰されたのに飛び降りたって、どうやったんだろうな? っておい、どうした椿」


 青い顔でフルフル震えている運転手は、やけに調子が悪そうだ。


 「草加君が怖い話するから……トイレ行きたくなってきた……」


 「おい、お前が話せって……次のパーキング寄るか」


 「……うん」


 なんともまぁ締まらない感じで、夏休み前の最後の合宿は幕を閉じたのであった。

 全く、コイツらと一緒に居ると退屈はしないが、やけに問題ばかり起しやがる。

 そろそろ普通の休暇というモノが欲しい所だが……


 「夏休みは……静かに過ごしてぇなぁ……」


 おっさんの呟きは、静かな車内に響き渡ったのであった。


 これで3章は終了になります。

 次回からは4章、というか予定では最終章になる訳ですが。

 ここまでお付き合い頂きました皆様ありがとうございます。

 お楽しみ頂けたでしょうか?

 一応現在進行形でポコポコお話を制作しておりますが、今後は更新速度が落ちるかもしれません。

 落ちるかも、しれません。

 わかんないけど。

 今後共お付き合い頂ければ幸いです。

 場合によっては番外編とか後日談とか書くかもしれないので、ストーリー的には最終章ですよって事で!


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