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顧問の先生が素手で幽霊を殴るんだが、どこかおかしいのだろうか?  作者: くろぬか
本編

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ネトゲと恐怖と恋心


 「鶴弥ちゃーん、おーい。 7件目終わったよー?」


 「あ、はい。 そうですね、そうしましょうか」


 「いやうん、何が?」


 さっきからずっとこんな調子だ。

 後ろに座る少女は、心ここにあらずと言わんばかりにボーっとしてる。

 一度危険な場面があったので、気を引き締めないとって時だったわけだが……大丈夫かコレ。

 まぁこんな調子でもちゃんとナビしてくれていた辺り、根っからの真面目っ子なんだろうが。


 「鶴弥ちゃーん? お次はどこへー?」


 「先輩に言われた場所は回り切りました、今のとこ付近からカレらの声も聞こえませんね。 そうしましょう」


 「そうしましょうって、どうしましょうか?」


 「そうですね」


 「あ、うん」


 ダメだコレ、完全にダメだ。

 原因なんて分かり切ってるし、あえて茶化したりするつもりはないが……ちょっとここまでいくモノかね?

 一目惚れなんておとぎ話的な何かだと、俺は思っていたよ今日までは。


 「やーさっきの少年、カッコよかったなー」


 「えぇ、まぁ」


 あんまり男同士を褒め合うというのは、普段やらない行為なのでちょっとアレだが。

 っていうか年下の男子をこんな風に褒めるのは、俺としては非常に悲しい。

 俺も一度でいいから、あんな風に登場してみたい。


 「鶴弥ちゃんはああいうのが好みなのかー」


 「そうかもしれません」


 だがこの状況は結構面白い。

 ボロボロ答えてくれる、あの口悪い筈の鶴弥ちゃんが。

 もしかしたら意識半分で、適当に答えているだけかもしれないけど。


 「名前くらい教えてくれても良かったのにね? ”大した者じゃありませんから”って台詞、初めて聞いたよ」


 「ほんと、そうですね」


 うーむ、一応少しは考えながら答えているようだ。

 っていうか早く夢の世界から戻って来てくれ、今後どうしたらいいのか俺じゃ分からない。

 こう言う場合どうしたらいいんだろうな、怒らせるとか?

 それだと後が怖いんだよなぁ……とりあえずしばらく続けるか? この虚しいやりとり。


 「好きになっちゃった?」


 「よく、わかりません」


 「もう一回会いたい?」


 「そうかもしれませんね」


 おうふ、コイツは強敵だ。

 べ、別にそんな事! みたいなツンデレ的反応が来るかと思っていたんだが、ふっつうに答えちゃってますわこの子。

 むしろこのまま聞き続けらた、逆に後で怒られそうなんだけど大丈夫かな。


 「ちなみに今日のパンツの色は?」


 「白ですけど……っ! ふんっ!」


 「いだぁ!?」


 首に、鶴弥チョップを頂きました。

 やっと戻ってきたか。


 「馬鹿ですかセクハラですか? 何聞いてるんですか変態ですか!?」


 「あぁ、いや。 普通の質問じゃメルヘンワールドから帰ってきてくれなそうだったから……ていうか普通に答えた鶴弥ちゃんも鶴弥ちゃんだと思うんだけど」


 確かにね、最後のはセクハラだったね。

 それは反省しますよ、もちろん。

 でもね、こっちとしてもいつまでもメルヘンされてたら気まずい訳で、っていうかどこ行けばいいのか分からない訳で。


 「誰がそんな愉快な地に行ってたっていうんですか! っていうか最後の答えだけは忘れてください!」


 「別に直接見た訳じゃないんだからそこまで怒らなくても……っていうか鶴弥メルヘンちゃんは自覚が無いと仰いますか」


 「……うぅ」


 「あんな事があった後だから、もう少し気を引き締めて貰わないと」


 「……すみません、反省します」


 素直にペコリと頭を下げる鶴弥ちゃん。

 あら可愛い。

 普段からこんな調子だったら、間違いなく自慢したくなる後輩キャラですわ。

 そんな事したら後で蹴られそうだから絶対しないが。


 「とにかく、どうする? 予定してた所は回り切ったし、一回黒家さんに連絡してみる?」


 「そう、ですね。 街中回りながら”耳”だけで探すのは限界があるでしょうし」


 なんとか正気に戻ってくれたが、未だ顔が赤い。

 さっきまでの鶴弥ドリームを恥じているのか、それともパンツの色を自白してしまった事を悔いているのかは分からないが。

 どっちにしろ普段俺と仲良くしている女の子たちと比べれば、とんでもなくウブな反応であることは間違いない。

 高校生にもなると、割と貞操概念薄くなる人って男女共に結構多いんだけど……オカ研女子達は、なんかこう色々違うよね。

 今まで周りに居なかったタイプが多いというか、正直言うとグッと来ますハイ。

 特に黒家さん、もしも許可が出るなら俺が定時連絡とかしたい。

 まぁ、電話番号教えてもらってないんですけどね。


 「あ、もしもし……って何で浬先生が電話に出るんですか。 黒家先輩は?」


 「え、なにそれちょっと詳しく」


 「黙れトリカブト」


 「虫ですら無くなった!?」


 はい、はい……なんて会話を続けて居るが、悲しい事にこっちまで電話越しの声は聞こえてこない。

 なに、マジでどういう事なの。

 世に言うアレですか? 「黒家? あぁ俺の隣で寝てるぜ?」みたいな感じなんですかね。

 ちょっとそれは止めて頂きたい。

 こちとら必死で街中動き回ってたのに、草加ッち黒家さんに何してくれちゃってんの?

 寝取られとか専門外なんですけど、返して。

 なんて妄想を繰り広げている内に、鶴弥ちゃんが耳からスマホを放した。


 「俺の黒家さんの身に何が!?」


 「それ本人に言ったらぶっ飛ばされますよ?」


 ですよね、絶対言えないです。

 すんませんと頭を下げてから、報告を聞いた。


 「とりあえず、今日の活動は終了だそうです。 どこに居るんだが知らんがさっさと引き上げろーって言われちゃいました」


 「え、そうなの? 黒家さんと早瀬さんは?」


 「なんか体調不良とかで、自宅に送り届けた所だったみたいです。 丁度電話した時に、黒家先輩を部屋にポイしてきた所だったみたいです」


 「捨てるな捨てるな、俺だったら拾うぞ」


 「あと今日の夜ネトゲしようぜって言われました」


 「本当に自由だなこの部活!」


 そんなこんなで、俺たちも帰路に着くことになった。

 最後の最後でなんとか鶴弥ちゃんの連絡先だけは教えて貰えたが、すっげぇ嫌そうな顔されてしまった。

 何故だ、部活の連絡用にってちゃんと言ったのに……


 とはいえ今日は初の”活動”だった訳で、予想以上に疲れを感じていた。

 最初はただの心霊マニア的な集いだと思っていたのに、蓋を開けてみればとんでもない勘違いだったと実感させられる。

 むしろそういう類を嫌っている人間しか、あの場にはいない。

 だからこその”活動”であり、いざという時逃げ場となる”オカ研”なんだろう。

 なんとも想像していたよりも生々しく、俺たちのような”異能持ち”が生き残るには最適な場所という訳だ。

 先日早瀬さんが言ってたのは、こういう事だったんだなぁ……なんて、改めて実感してしまった。


 「ココしか無い、逃げ道がない……かぁ」


 ぼやきながら、バイクを走らせていく。

 街中を走れば見えてくるのは人、人、人。

 そしてたまに黒い霧が、人の間を縫う様に動いている。

 その程度なのだ、俺が感じる事が出来るのは。

 いくらだって逃げ道はある気がする、無視する事だって出来る気がする。


 「皆には、どう見てんだろうなぁ……」


 黒家さんの様に、カレらの居場所が分かる『感覚』があったら?

 早瀬さんの様に、その姿形まではっきりと見える『眼』があったら?

 鶴弥ちゃんみたいな、カレらの声が容赦なしに聞こえてくる『耳』があったら?

 彼女達は皆、”受け取る側”の異能ばかりだと思えた。

 自身が何もしなくても、容赦なしにその情報を”異能”が伝えてくる。

 俺の様な”押し付ける”側とは、きっと苦労の数も天と地ほどの差があるように思えた。

 この世界そのものが、彼女達に地獄の様に見えているのだとしたら……


 「どうにか、なんないもんかねぇ」


 ヘルメットの下で漏れる声。

 具体的にどうしたいのか、何が出来るのかなんて妙案は浮かばない。

 でも、なんとなく。

 そこらの人達よりずっと、ずっと幸せになってほしい……というか”幸せになるべきだ”と、そう思えた。

 俺の勝手な妄想だとしても、不幸の後に幸せが待っていて欲しい。

 だったら、彼女達はもう充分辛い思いをしたんじゃないかな。

 そんな風に思えて仕方ないんだ。


 ————


 薄暗い部屋の中で、ベッドの上に転がる。

 何ともまぁ今日は色々とイベントが盛りだくさんだった気がする。

 黒家先輩が急に復活したり、天童先輩のバイクに乗せて貰ったり、人が飛び降りて来たり、浬先生みたいなおかしな身体能力の人が現れたり。

 うん、おかしいな、後半に行くにつれて現実味が薄れる内容になっていく。

 とはいえまぁ、助かったのは確かだ。

 今でもあの女の子が飛び降りてきた光景を思い出すと足が震える。

 怖かった、とにかく怖かったのだ。

 身近に人の死というモノが、簡単に降り注いでくる。

 こんな現状になるなんて、到底思っても居なかった。

 だからこそ助けてくれた彼には、もう一度会ってお礼の一つでも言いたい所だが……


 そんな時、ブゥゥ! と枕元に放りだしたスマホが音を立てて振動した。

 多分浬先生からのネトゲのお誘いだろう、帰り際電話でそんな事言われたし。

 全く……ゲームを起動すればネット通話するんだから、メッセージ一つで済ませれば良いものを。

 なんで毎回電話してくるかな、別にいいけどさ。


 「……あい」


 『おいっす』


 「インするんで、ちょっとお待ちを」


 『あいあいー』


 のそのそと重い体を動かしながら、パソコンの電源を入れた。

 っていうか私帰ってから着替えてないじゃん、どうりで寝ずらいと思った。

 なんて今更な感想を抱きながら、通話をハンズフリーにしてベッドの上に放り投げる。


 『いてっ』


 ボスッと音を立ててベッドに着地したスマホから、おかしな声が響いた。


 「いつから浬先生は私のスマホと神経繋がったんですか、っていうか地味に凄い事しないで下さい。 タイミングとかバッチリじゃないですか」


 『前はよく黒家と通話繋ぎっぱなしで、こんな風に喋ってたからな。 地味に慣れたわこの遊び、今度黒家にもやってみ? あいつも同じ事やるぜ?』


 マジか、それは是非ともやってみたい。

 黒家先輩が無表情のままこんな遊びに興じて所を想像すると、なんというか不思議な光景の出来上がりだ。

 なんか楽しそう。

 っていうかウチの顧問は本当に仲いいな、ちょっと羨ましいぞそのコミュ力。


 『他にも色々あるぞ? お前今着替えておるな……何となく音で分かる』


 「ナチュラルなセクハラ止めてください。 まぁ着替えてますけど」


 音だけで分かるんかい。

 ある意味凄いな、全然役に立たない特技だけど。


 『んじゃちょっとカメラをですね』


 「おいコラ変態教師。 まさか黒家先輩にも同じような事言ってたんじゃないでしょうね?」


 『むしろこういうネタは進んでノッてくるぞアイツ』


 「まぁじかぁ……」


 意外すぎる発言に思わず敬語が吹っ飛んでしまった。

 まぁ浬先生相手には結構あることだが。

 え、でも待って。

 ノッてくるって言っても、まさか本当に着替え見せたりしてないよね?


 『ちなみにそういう話になった時は、大体こういう感じで終わる』


 何の事だろう? なんてスマホを覗き込むと、そこには浬先生の顔がドアップで表示されていた。

 ちょっと焦ったわ。


 「ちょちょちょ! なにやってるんですか。 そっちがカメラ起動する感じになっちゃうんですか? 全く意味ねぇぇ……」


 『どこだ? どこにいるぅ? こっちかぁぁ?』


 完全に馬鹿だ。

 画面に映った浬先生は、こちらの室内を見回すかのように視線を動かしているが、当然何も見えていないだろう。

 というかこの人は自分のカメラ目掛けて、部屋の中で一人芝居を繰り広げているのだ。

 思わず噴き出してしまった、こりゃそういうネタ振りたくなる気持ちも少しわかる。


 「ほんっと馬鹿やってますね浬先生は」


 『む、そこだな!』


 「残念、逆方向です」


 二人してケラケラと笑いながら、スマホを回収してパソコンに向き直った。

 ネトゲの中でもぼっちで遊んでいた私としては、こういうお誘いは嬉しい限りだ。

 まぁ当人にはそんな事言ったりしないだろうが。


 「この前始めたゲームでいいんですよね? 今日はどうします? あっ、てか通話切り替えましょうか。 ボイチャ繋ぎますね」


 『ういうい、今日は——』


 「あっ」


 なんか言いかけた所で切っちゃった。

 あるある、別にすぐ繋ぎ直すんだし気にしないだろうが。

 なんて思っている内に、モニターにネトゲの通知が届く。


 ——ピコンッ! 『草海林(くさかいりん)さんからボイスチャットが届きました』


 色んな意味で凄い名前だよな、知ってる人からすればある意味本名だよコレ。

 っていうか知らない人はなんて読むんだろう。

 なんて人のプレイヤーネームにケチを付ける前に、自分ももう少し考えて付ければ良かったと早々に後悔している訳だが。


 『おいつるやん、喋ってる途中で切るんじゃねぇよ』


 そう、これなのである。

 先日誘われて始めたこのネトゲ、変な名前を付けるのは恥ずかしかったので早瀬先輩に呼ばれている”つるやん”にしてしまったのだ。

 深夜のテンションって怖い。


 「その名前で呼ばないで下さい草海林先生」


 『なんだその頭おかしい名前の奴、ちょっと病院行ったほうがいいぜ』


 「お前だよお前」


 ゲームが始まると大体こんな感じだった。

 浬先生が気にしない事もあって、失礼発言のオンパレード。

 ゲーム好きとしては、ちょっとこういうのに憧れていたりもしたので嬉しい限りだ。

 なんてやっている内に、ボイスチャット欄にもう一人名前がある事に気づいた。

 あれ? 珍しいというか初めてだな。

 っていうか誰だろう、あんまり知らない人と話すの得意じゃないんだけど……

 ”くろやん”って名前のプレイヤー、うん何かシンパシーを感じるね。

 やんやんコンビとして仲良くなれるといいな、うん実に馬鹿っぽいコンビだ。

 何かこの流れだと黒家先輩が登場しそうな名前だが、それは流石にないだろう。

 見る事は多いが、プレイすることはほとんどないって言ってたし。

 なんて事を思っている内にマイクのアイコンが表示され、スピーカーから声が響いた。


 『あーあー、テステス。 聞こえますか? 先生ー、どうですかー? 姉さんに機材いじって貰ったんですけど』


 『おうバッチリ聞こえる聞こえる。 黒家もお疲れ様ー』


 はい?

 どっかで聞き覚えのある声が響いた。

 気のせいだろうか? ほら、通話とかだと声が違って聞こえたりするし。

 なんて混乱している間に、会話が進んでいく。


 『先生、姉さんも通話だけ参加するって言ってたんで呼んじゃっていいですかね』


 『おう、その方がつるやんもやりやすいだろうしな。 いいんじゃね?』


 「え、え? ちょっと待ってください。 さっきから言ってるのって、あの黒家先輩ですか? それでえっと、”くろやん”さんは……弟さん? あとつるやん言うな」


 『そうですよ鶴弥さん、どうも私です。 こんばんわ』


 疑問を口に出した瞬間、新しいプレイヤー”くろやさん”さんが御光臨なされた。

 間違いなく黒家先輩、そんでもって名前そのまんま! いいのかコレは!


 『えっと、間違いでなければもしかして昼間の方ですかね? 路地裏で会った』


 「え、あ、はい。 この二人にお世話になってます、鶴弥麗子と申します……昼間は、どうも」


 なんてモゴモゴ喋っている内に、”くろやん”さんこと、先輩の弟さんが興奮気味に喋り始めた。


 『凄い偶然ですね! 改めて、黒家俊です! 中学二年の若造ですが、どうかお見知りおきを! オカ研の人の知り合いがまた増えて感激です』


 「は、はぁ……」


 どうやら俊君というらしい、そして中学生だったらしい。

 マジか、嘘だろ。

 あのガタイで中学生は嘘だろ。

 っていうかオカ研の知り合いが”また”増えてってなんだ、浬先生の事か?

 いやでも先生って呼んでるし、他の誰かだろうか?


 『うっし、じゃあ始めるか』


 『はい先生!』


 『うーん、私も少しやってみようかな……見ているだけというのアレですし』


 なんて会話を繰り広げながら、事態は勝手に進んでいく。

 是非とも待っていただきたい、もう少し理解する時間を頂きたい。


 「じゃ、じゃぁ……とりあえず最初は黒家先輩のレベリングから行きますか、皆始めたばっかりですし、すぐ追いつくと思います」


 結局ゲーム脳が勝った。

 ビバゲーム脳、私のコミュ能力の半分以上はゲームとオタ知識と言っても過言ではないだろう。

 タピオカと聞けば、思わず手を使わず胸の上に鎮座するタピオカドリンクを想像するくらいだ。

 私には絶対無理だが、黒家先輩ならいけそうだ。

 是非ともチャレンジして頂きたい、あの光景をリアルで一度は目にしてみたい。

 いやそれはどうでもよかったな、うん。


 「ちなみに……黒家先輩の弟さんは、普段こういうゲームを好むんでしょうか……?」


 ちょっと気になってしまいまして、えぇ深い意味はありませんが。

 今後も御一緒する可能性があるなら、相手の趣味くらいは知っておかないと、話題提供にも困りますし、ね?


 『そうですね。 先生に勧めて頂いたゲームとか漫画、映画なら何でも好きですよ? 特撮とかなら昔から大好きです』


 あ、この子……いわばジャンル『先生』だ。

 絶対的草加浬主義者だ、間違いない。

 どうしよう、特撮は結構私も好きだけど、そっちばっかり話を振るのも……


 『特に龍〇ですね、カードデッキとか買っちゃいましたし』


 『え、マジで? 今度見せて! 一緒に鏡の前でポージングしようぜ』


 『いいですね、是非是非』


 おい、盛り上がるな中年と中学生。

 お前たち傍から見たらヤバイ光景だからな?

 オタク系脳内で考えても、浬先生とかあのデスマッチに参加したら大変な事になりそうだ。

 ファイナルベ〇トとかいう前に右ストレートで終わりだろ? 知ってるんだからな?

 そんなんじゃ物語進まないだろ、いい加減にしろ。

 あ、いやでも弟君も居るから、結構いい勝負になるのか? ヤバイちょっと見たい。

 なんて妄想を垂れ流している内に、黒家先輩が呆れた声を上げる。


 『この人達なら、鏡に入る前に殴り合って決着付けそうですけどね。 まぁいいです、キャラクター出来たんで始めましょうか』


 先輩の一言によって、私の妄想はガラスの様に砕け散った。

 確かに、この人達むこうの世界に行く必要なさそう……っていうか黒家先輩も結構そっち系がいける人だったのは大きな収穫だ。

 確かにゼ〇ターとか言ってたもんね、納得。

 なんてやっている内に、夜は更けていった。

 いつの間にか今日味わった恐怖が緩和されたのか、足の震えも止まりギャアギャア騒ぎながら皆で遊んでいた。

 普通に生活していたらあり得ない恐怖。

 それに立ち向かう彼女達の平穏の取り戻し方が、少しだけ分かった気がする。


 『あ、すまん早瀬から電話来た。 ちと待ってな』


 『スピーカーでお願いします。 おーい夏美ー?』


 『夏美さん聞こえますかー? どうもでーす』


 「こ、この時間に普通に電話とか来ちゃうんですね……この調子なら天童先輩も呼びますか?」


 なんて、下らない会話を繰り広げながら時間は過ぎていく。

 楽しい、そんな率直な感想を浮かべられる環境に、私は身を置いている。

 それだけで、私は今充分に幸せを感じていた。


 なんとかここ最近は、ギリギリ、デイリー更新、デス!

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[一言] 鏡の前で \変身!/ \変身!/ \クァメンラァイダー!/
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