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見える人


 心霊現象ってやつを、皆はどう思うんだろう?

 昔テレビに出てる霊能力者ってやつが言っていた。

 こっちが見えているなら、相手もそれに気づいて霊が寄ってくる。

 なんて事を偉そうに語っていたっけ。

 でもこいつは何も知らない、こいつは何も見えてないんだって。

 当時中学生の私にだって、テレビ越しの映像を見て分かった。


 『この廃墟の霊は、とても怒っています。強い波動が——』


 そんな事を語っている彼の体の周りには、満面の笑みを浮かべた黒い塊が巻き付き、せわしなく蠢いていた。

 それはもう嬉しそうに、唇の端を釣り上げて。


 ミエルノ? ミエルノ? コッチ……コッチダヨ……


 そんな言葉を口々に呟きながら、誘うように奥地へと引き込もうとしている姿が映し出される。

 番組はそのまま進み、いざ先に踏み込もうとした瞬間。


 『これ以上は危険だから引き返した方がいい! 霊達が私達を拒否している!』


 なんて台詞を吐いて、他の出演者と共に廃墟を後にするんだ。

 そして彼の後を追うように付いていく影と、その場に残る影。

 その両方がカメラの方を振り返って、こう言い放った。


 ネェ、オマエハミエテルノ?


 ゾッと背筋が冷たくなったのをよく覚えている。

 まるでモニター越しの私に問われたようで。

 さっき見えていた全ての影たちが、私という存在に気づいたように感じて。

 だから私は慌ててテレビの電源を落とした。

 何も見えないふりをした。

 子供の言い訳の様に、何も見えていない何も聞いていないって、私には関係ないんだって自分自身に言い聞かせて頭から毛布を被った。

 そんないい訳を押し通して、そこら中にいる『彼ら』に無視を決め込んで、ここまで生活してきた。

 今までずっと、そうやって過ごしてきた。

 カレらがいつか、見えなくなると信じて。


 でもその期待に反して、私の見える世界はどんどんと広くなっていった。

 昔は靄のように見えていたソレも、段々と形が分かるようになっていき、今では彼らの死に様がどうであったか、それが見ただけで分かるほど鮮明に見えようになっていた。

 それだけでは収まらず、目が合うたびに付いてきたりする事だってある。

 私はただ普通に過ごしたいだけ、皆みたいに普通の生活を送りたいだけ。

 なのに——

 彼らはそれを許してはくれない、いつだって仲間を欲しがっている。

 コッチに来いと、一緒になろうと誘ってくるんだ。

 家に居るときも学校に居るときも、帰り道の脇道にだって彼らは現れた。

 いろんな所で、いろんな姿の彼らは皆同じように、ミエテルノ? って、そう聞いてくるんだ。

 それが私の知っている心霊現象。

 わざわざ心霊スポットだの降霊術だの、そんなもの必要ないんだ。

 彼らは、どこにだっている。

 だからこそ、私はどうすればいいのかわからない。

 何をすれば楽になれるのかわからないんだ。

 友人や家族にも相談できず、ただただ一人で悩むしかない。

 逃げ道も、改善策だって何も浮かばない。

 ただただストレスだけが溜まっていくのを感じた。

 日に日に疲れは溜まっていくし、眠れない夜を何度も過ごした。

 だから毎晩、私は考えてしまう。


 もしも、誰かが助けてくれるなら。

 もしも、少しでもこの状況を良くしてくれるなら。

 私はその人に何だって捧げよう、全てを差し出したっていい。


 ——だから、私を助けてください。

 この悪夢から、私を救って下さい。


 そんな願いと共に、私は今日も眠れない夜を過ごすのであった。


なろう小説初投稿です。

よろしくお願いします。


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