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短編小説集  作者: Evans
1/1

意識の暗闇(1)

 

           意識の暗闇


 

 朝一番に目を開けると、ぼんやりとした薄い光が滲んで広がっていく。

 その時、僕の心は安らぎもするし、少し心地良くもなるし、でも煩わしくもなるし、憂鬱にもなる。つまり、光は闇を埋めてくれるけど、それ故、闇の再来を待たなければいけないのだ。少しづつ意識は鮮明になり、いつもの部屋が現実として形を持ち始める。白くて四角いだけの部屋。何もない部屋。テーブルも引き出しも、窓さえもない。辛うじて正面の壁の上側に埋め込み型のスピーカー、それから一台のテレビモニターがあるくらいだ。それ以外は真っ白、何もない。光は僕をいつも複雑な気持ちにさせるんだ。

 少し時間が経つと台車の揺れるような音が聞こえてくる。外を見れないから、台車かどうかは分からないけど。そしてその音が止まると、壁の隅にある食器口が開けられ、食べ物が差し出される。大抵、朝はいつもパンと牛乳なんだ。僕はいつもその瞬間、少しの緊張を覚えないわけにはいかない。というのは、早いうちに食べ物を受け取らないと、食器口の向こうから強く放り込まれるから。放り投げられたものを食べるのは楽しくないし。

 ご飯を食べ終えて食器口の向こうに残ったゴミを出した後、真っ白なキャンパスを呆然と眺めているかのような沈黙が部屋を覆う。その時は何も聞こえないし、何も考えられない。それはただやり過ごすだけの時間。

 また少し時間が経つと、ゴミ回収の台車の揺れであろう、カタカタという音が響き渡る。それが終わるとまた沈黙が辺りを覆い、僕は黙って白い壁を睨み、上のスピーカーから音が出ないか出ないか、と、待ちわびる。

 やがてスピーカーから音楽が聴こえてくる事になる。奏者の名前はわかないけど、僕にはその楽器の種類が分かる。それはベースであったり、ドラムであったり、ピアノであったり。ロックは嫌いではないけど、少しうるさい気がする。音楽の時間は多分2時間くらいだから、うるさいと疲れという事。ジャズピアノ・トリオが流れると僕の心は嬉しくなるのだ。

 その時間僕の心臓はドキドキする。普段はあまりドキドキしないし、それは身体にも心にもあまり良くないと思うし、僕はそのドキドキを大事にしたいと思うんだ。その時、生きてると思う。目を閉じて、頭の中で色んな場所へ旅に出る気がする。そこは砂漠みたいな所であったり、海みたいな所であったりするけど、奏者が分からないのと同じ感覚で、その場所の名前もまた分からなくて、同時に風景も曖昧でもどかしい気持ちになる。でも僕はそんな風景について思いを巡らせるのが好きだな。それで、そんな事をしていると廊下から足音が聞こえてきて物珍しそうに耳を澄ませたりしてね。でもその足音の主が誰なのかも僕には分からない。音楽が鳴り止む。天井の薄い光。何もない廊下の溜息。どんな廊下だろう?間もなくやってくる空腹の頃合いに、昼ご飯の台車の音が聞こえてくる。そんな僕の生活。

 お昼ご飯が終わると、扉反対側のテレビがついて映画が流れる。その時は音楽よりも好き。それが1番楽しい時間だと思う。全部思い出せるか分からないけど、沢山の映画を僕は観てきた。

 例えばそうだな……、重罪を犯した女が政府によって

 


 

 

 



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